ー Convergence on Stakeholder Governance― 菊澤研宗 Kenshu Kikuzawa

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Presentation transcript:

ー Convergence on Stakeholder Governance― 菊澤研宗 Kenshu Kikuzawa コーポレート・ガバナンス の 多様性と収束性 Convergence and Persistence       in Corporate Governance         ー Convergence on Stakeholder Governance―                菊澤研宗              Kenshu Kikuzawa

1問題(Problem) 従来、日米独CG比較研究⇒CG多様性+問題点 今日、日米独CGの改革進行  Convergence on Stakeholder Governance

プログラム(Program) 1)米国での議論要約 Doctrines developed in the U.S. 2) SGへの収束説の理論的妥当性 Theoretical Legitimacy of Stakeholder Governance 3) SGへの収束説の経験的妥当性 Empirical Validity of Stakeholder Governance

2 米国での議論 Doctrines developed in the U.S. 1米国型株主志向モデルへの収束説  Convergence on a shareholder-oriented model  2多様性維持説  Persistence of differences 3一部多様性維持・一部収束説 Partial Persistence and Partial Convergence

米国株主志向ガバナンス収束説Convergence on a shareholder-oriented model     H.Hansman and R.Kraakman 米国の株主志向モデル ドイツの労働者志向モデル             日本・フランスの国家志向モデル                1段階 非効率で代替案淘汰       3段階を経て 2段階 金融グローバル化                3段階 政治圧力プロセス ●米国流の株主志向モデルへと収束

H.Hansman and R.Kraakmanの 議論の問題点 Problem 株主志向モデル⇒唯一絶対的効率的CGではない 非効率で債務不履行の企業でも存続させる 非効率な甘い企業統治 ∴株主志向モデルも1段階で淘汰される可能性

多様性維持説 Persistence of differences L.Bebchuk and  M.Roe 経路依存性⇒全体変革⇒高い変革コスト発生 (Path Dependence⇒High Changing Cost) 制度的補完性⇒一部変革⇒高い変革コスト発生 (Complementarity⇒High Changing Cost )        現状の多様性維持

L.Bebchuk and M.Roe の議論の問題点 Problem 現状のガバナンス非効率 変革コスト高いので、変化できない それ自体非効率 ⇒結果的に淘汰 ⇒多様性一時的

一部維持と一部収束説 Partial Persistence and Partial Convergence R.Gilson 一部多様維持+一部収束 収 束 例)経営者のパフォーマンスが悪い場合   日米独⇒経営者が代わる可能性 非収束 例)ペンチャーキャピタル・株主のガバナンス機能     ⇒銀行は代替不可能

R.Gilsonの議論の問題点 Problem 収束+非収束=自己矛盾的な言明 自己矛盾言明=何でも説明できる可能性 実は、何も主張していない可能性

3 Stakeholder Governance -Theoretical legitimacy-  エージェンシー理論(Agency Theory)  ●PrincipalーAgent関係  ●両者の利害の不一致  ●両者の情報の非対称性  エージェントのモラル・ハザード  (Moral Hazard)

企業=エージェンシー契約束(Firm = nexus of Contract) 図表1 Shareholder  Creditor 経営者         CEO Employee Supplier

Agency Theory and Corporate Governance 株主と経営者のエージェンシー関係 債権者と経営者のエージェンシー関係 経営者のモラルハザード発生 モラルハザードを抑止する制度 =Corporate Governance System

コーポレート・ガバナンスの エージェンシー理論分析 ●自己資本比率が高い企業(High equity ratio Company) 株主と経営者とのエージェンシー問題  Shareholder oriented Corporate Governance ●負債比率が高い企業(Low equity ratio Company) 債権者と経営者とのエージェンシー問題 Creditor oriented Corporate Governance

中間的な資本構成の企業(1)好況 In peaceful time when a corporation gets a profit  経営者と株主(情報の非対称性+利害不一致)  経営者    ●従業員を不必要に多く雇用  モラルハザード●部下の待遇を不必要に向上  経営者と従業員の利害一致  株主の利害無視  Shareholder oriented Corporate Governance

中間的な資本構成の企業(2)不況 In an emergency when the company shows a loss or debt default. 経営者(株 主)⇒リスクの高いビジネス関心  債権者     ⇒リスクの低いビジネス関心  利害の不一致+情報の非対称性  経営者のモラルハザード  Creditor oriented Corporate Governance  倒産失業リスク回避の従業員の利害と一致  倒産取引喪失リスク回避の取引企業と一致

Stakeholder Governance (1) In peaceful time    ⇒Shareholder oriented Corporate Governance In an emergency ⇒Creditor oriented Corporate Governance Contingency Corporate Governance 直接的・間接的に、株主、債権者、経営者 従業員、取引企業など利害関係者全体を調整 =Stakeholder Governance

Stakeholder Governance (2) どのようにして統治の主権を移動させるか? 1)分離型ステークホルダーガバナンス   (Separate Stakeholder Governance)  株主と債権者が分離しているガバナンス 2)統合型ステークホルダーガバナンス   (Integrate Stakeholder Governance)  大株主かつ大債権者によるガバナンス  例)ドイツのユニバーサル・バンク    日米金融コングロマリット

Stakeholder Governance (3) 資本市場・債権市場発達 分離型ステークホルダーガバナンス (Separate Stakeholder Governance) 株式市場・債権市場未発達 統合型ステークホルダーガバナンス (Integrate Stakeholder Governance) 二種類のStakeholder Governance  今後、日米独に出現・収束

4 Stakeholder Governance -Empirical Validity- 図表2 (Debt/Capital %)OECD(1987) Year 70-72年 73-75年 76-78年 79-81年 82-84年 US 41.20% 37.60% 34.60% 34.80% 37.80% Germany  74.70% 76.10% 77.00% 78.90% 79.90% Japan  85.40% 86.50% 84.80% 83.90% 83.00% US⇒自己資本比率高  株主と経営者の間にエージェンシー問題発生   株主CG

ドイツと日本(Germany and Japan)        ↓ 債権者と経営者との間にエージェンシー問題        ↓    ユニバーサルバンクCG ●Japan⇒負債比率高   メインバンクCG

図表3 90年代 日米独(Debt/Capital %) 国際比較統計(日本銀行,1999) year 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 US 59.8% 59.9% 63.0% 63.6% 62.5% 61.5% 60.7% 60.5% G  51.5% 51.8% 51.0% 50.4% 49.7% 49.2% 49.6% J  69.4% 68.8% 68.4% 68.0% 67.7% 67.4% 65.9% 65.1%   Japan、US、Germany  50%:50% Capital Structure   ⇒Stakeholder Governance

日米独の法改正の意味 米国(U.S.) ●従来 株主と債権者が相互に独立 Separate Stakeholder Governance ●従来 株主と債権者が相互に独立   Separate Stakeholder Governance ●株式と社債を購入する巨大年金基金 ●グラス=スティーガル法改定  銀行が証券会社を保有することも可能   Integrate Stakeholder Governance

ドイツ (Germany) ●従来 ユニバーサル・バンク制度 Integrate Stakeholder Governance ●従来 ユニバーサル・バンク制度  Integrate Stakeholder Governance ●90年代以降、法改正⇒株式市場発展  株主と債権者(特に銀行)による   Separate Stakeholder Governance

日本(Japan) ●従来 メインバンクとコア従業員 Separate Stakeholder Governance ●株式市場発展 ●従来 メインバンクとコア従業員   Separate Stakeholder Governance ●株式市場発展  銀行と株主(特に外国人株主) ●法改正により、金融コングロマリット出現   Integrate Stakeholder Governance

5 結 論 Conclusion 株主主権のガバナンス収束 (×) 現状の多様なガバナンス維持(×)  株主主権のガバナンス収束 (×) (Convergence on a stockholder-oriented Governance)  現状の多様なガバナンス維持(×) (Persistence of differences)   ステークホルダーガバナンスへ収束(○) (Convergence on Stakeholder Governance)