大気科学入門 - 金星大気東西風の超回転について -

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大気科学入門 - 金星大気東西風の超回転について - 気象学の応用としての惑星気象学があるが、その中で未解明な問題の1つである、金星大気の中層に存在する高速の東西風について 内容:  金星大気の概要、地球大気との対応  高速東西風について  いくつかの考え方  最近の大気大循環モデルによる研究 気候システム研究センター 高橋正明 2007年12月21日

1:序 金星大気の条件(地球大気と比較して) 金星 地球 半径 6050 km 6378 km 公転周期 224日 365日 自転周期 紫外線で観測した金星 金星 地球 半径 6050 km 6378 km 公転周期 224日 365日 自転周期 243日 1日 1太陽日 117日 大気組成 CO2 N2, O2 アルベド 0.78 0.3 地表面気圧 92 bar 1 bar 地表の赤道で1.8m/s -> 地球の場合は460m/s

金星大気の鉛直構造 鉛直構造 厚い雲層 太陽光の吸収 ポイント 自転速度が極めて遅い(赤道で1.8m/s) CO2の濃密な大気 地表面気圧92気圧、温度730K 下層大気(0~40km)は右図のよう 雲層より上は等温的 太陽光の吸収 厚い雲層 濃硫酸液滴(硫酸エアロゾル) 全球を覆う(高度45~70km) 太陽光の大部分を吸収 雲層 自転速度が極めて遅い(赤道で1.8m/s) CO2の濃密な大気 中層大気(45~70km)に厚い雲層が存在 ポイント 92気圧、730K

大気温度の相似性について ●中層大気 地球では中層大気(成層圏、中間圏)とよばれる領域では成層圏オゾンにより温度が高くなっているが、基本的には似た鉛直構造をしている。 ●対流圏 大気の光学的厚さが大きいと下層の温度がおおきくなる、温度傾度もおおきくなる 断熱温度勾配より大きいと対流不安定がおこって、対流がおこるであろう。 太陽 金星 O3のない地球 地球 木星 ー>気象学の概念が使われる

2:もうすこし詳しい情報 (Gierasch et al., 1997, VenusII) 大気粒子を断熱的に変位させたとき、もとに戻るときの振動数の2乗: 観測温度から見積もられた大気の安定性の指標(正が安定大気、負が不安定大気である) 気象学から ー> 不安定大気では、不安定を解消しようとして、対流がたつであろうし、安定大気の場合は復元力により波動が卓越する。

金星大気の高速東西風 (スーパーローテーション) 探査機による観測 (Schubert et al., 1980) 東西風速の鉛直分布 風速は地面付近から高度と共に単調増加 雲頂高度(65km)で100m/sに達する 自転速度の約60倍の速さ →スーパーローテーション V9 & V10 大気が自転を追い越すように回転      HEIGHT (km) スーパーローテーションの形成・維持 メカニズムはわかっていない 東風(金星では自転は地球と逆向き)、地球に対しては西風と呼んだほうがいいかも、我々の計算はそのようにしてある ー>どのようなことが考えられているか

南北に広げてみると(東西には平均): 左図は東西に地球一周平均した温度分布、右図の東西風の評価には旋衡風(cyclostrophic wind)バランスを用いている。赤道域で、約70kmの高度に100m/sを超える東西風が吹いている。また、中緯度付近には140m/sの高速風があることが見える。これは41.5kmの高度で観測の風を仮定して、求めてある。この風が超回転( superrotation)と呼ばれる (Newman et al., 1984, JAS)。 ー> 温度 東西風

比較:北半球冬の平均東西風(地球) 中層大気の東西風は夏冬で逆転する 地球大気の特徴として、回転が早いこと、また中層大気ではオゾンの存在のために、中層大気は対流圏とは風系がことなること。 対流圏では赤道域では東風、中緯度では自転方向の西風が吹いている。 西風 東風 金星では自転方向が逆で、地球に対応させれば、全体的に西風が吹いているimageである 西風(自転の方向) 東風

補足:モデルによる対流圏の平均東西風 大気モデルによる、対流圏の平均東西風:赤道域では東風で観測と類似である。 10m/s 下図は上のモデルにさらに東西に非一様な加熱を加えることで、赤道域上層に金星大気と類似の西風が生成されている。この西風生成に定常的な波動擾乱が重要な役割を果たしている。 10m/s Kraucunas and Hartmann, JAS, 2005、論文中でもsuperrotation と呼ばれている。 9

南北の流れ: 高速東西風 南北風 雲 imageから評価された、東西風と南北風(実線)、南北風は赤道に関して反対称的構造になっている、Belton et al., 1991, Scienceから 10

東西平均場に加わる、東西に非一様な擾乱の1例: 太陽による大気加熱で生成するであろう、潮汐波動の温度シグナルを観測結果から導いている(Schofield and Taylor, 1983, QJRMS)。潮汐波動が東西風の生成に重要な役割を果たしているという話は後でのべる。 高度 z(km) 擾乱にたいして: -2 2 のような表記をする、ωは振動数、k, mは東西鉛直波数と呼ばれる 赤道から30Nまでの平均 東西方向(x) 温度の経度緯度分布:おおざっぱに波の数が東西一回りして2つある、波数 2といういい方をする、また軸が鉛直方向に傾いているところはexp(imz) で想像されるように鉛直方向に波として伝播していることを示す。 11

3:東西高速風を維持させる考え a:Gieraschの考えたメカニズム(1975, JAS) 有限の水平拡散係数に拡張、および多重の解(Matsuda, 1980, JMSJ) 流れの不安定性からでてくる波動擾乱による赤道輸送(Rossow and Williams, 1979などから)、式的には 地表面からの角運動量の鉛直輸送 回転がゆっくりしてるので、極の方まで南北循環がのびること。 しかし、地球対流圏のアナロジーからこのままでは極の方はいいが、赤道域では風が自転方向と逆になるので、何か赤道域にもとに戻すような角運動量の輸送が必要ということで; ここで、over barは東西に平均したもの、’は東西平均からのずれである波動擾乱を示す、例えば sin(kx) を2乗して、東西に平均すると、定数が現れる。 金星では全面西風的

b:大気潮汐波動による高速風の生成 風にたいしてうごく波動は波が運動量をになっている。その運動量は簡単な条件では(波動のエネルギー/(c−U)), cは位相速度、のような量である。波が伝播してつぶれるところではその波の運動量をそこに平均東西風の形で東西風に変換される)。式的には下記のような式が解かれる 東西風 潮汐による大気加熱 いま上図の矢羽根ように東西風が存在している。そのような大気に太陽放射による加熱がある。その加熱は117日のゆっくりした加熱である(金星における1太陽日)。前に述べたように、その加熱によって大気の中に潮汐と呼ばれる波動が励起される。その波動は東西風にたいして東に動いている。その潮汐は鉛直方向にも伝播する。   は平均東西風、’は波動にともなう東西風と鉛直流、  は拡散係数をしめす 一方、netでは力は働いていないので、潮汐を生成したところでは、反対方向の運動量がつくられる。 ー>加熱層で高速風が作られる

c:重力波による高速風の生成 Hou and Farrell(1987, JAS)は下層の不安定大気の対流から生成された重力波が上方に伝播して、波の位相速度と平均東西風が同じになる場所(critical level, 臨界層と呼ばれる)で波が潰れやすい状況になるので、その場所で潮汐のところで述べたように、東西風を加速(減速)することを使って、高速風を説明させる重力波の大きさをみつもっている。 加速 波の伝播 <ー 下層におけるエネルギーの流れの大きさ、横軸は波の伝播する位相の速度c 、実線が高速風と同じ方向に、点線は逆向きの方向成分 のような量 位相速度 下層が密度が大きいので、大きなエネルギー量が必要 14

d:対流による高速風の生成 同様の考え方として、鉛直に軸が傾けば対流が運動量を輸送して高速風をつくる可能性があると指摘されている。  しかしながら、図から想像されるように対流らしきモノは非常に複雑な構造をもち、対流が高速風を生成するかは、何も分かっていない。また対流層は限られているらしい(負が不安定層)。 松田、惑星気象学から 北 赤道域に数百キロスケールの対流的な構造が見える。ガリレオimageによる、Belton et al., 1991, Science 15

このように、もろもろの素過程が提案されている。ここで1980年にSchubert等によって書かれたreview論文からschematicな図を引用しておこう。ただし、これが正しいかはまだ分かっていない。 ? 対流 乱流 左図が多重の南北鉛直循環のようす、中図が金星大気中に存在しているであろう擾乱で、○印が対流、波々したものが、波動であり、鉛直方向に伝播し、また赤道域に伝播して高速風をつくる様子を示している。 16

4:大循環モデルによる研究 いくつか素過程について述べたが、まだ高速風のメカニズムは分かっていない。ここでは、現実的な物理プロセスがすべて入っている大気大循環モデルを用いた最近の研究を述べる。 大気の運動については流体力学の方程式が使われる。これにより全球的な運動が陽に表現される。ただし分解能制限のため、大きなスケールの運動のみが表現される 東西方向の運動方程式: 鉛直方向の運動方程式: 連続の式: 熱力学の式: 物理過程として: 大気中の放射伝達および放射による大気加熱冷却 対流過程は分解能のためにパラメータ化して導入 地面との熱、運動量、水の乱流による交換過程 モデルで表現できない乱流などの過程 などが格子点で評価される 地球大気では水蒸気輸送は陽に表現される 物理定数(例えば熱容量)みたいなものは、金星大気に対応して変更する 17

A:放射過程を簡略化した大気大循環モデル 太陽放射による加熱 Qと赤外放射は観測の温度分布を仮定して、それからずれたとき、もとに戻すように緩和する。 ー>どんな運動になるか? 高速風はできるかという問題 熱力学の式で、 のように右辺に熱的強制を与える Yamamoto and Takahashi, 2006, JAS 比較:Crisp(1986)による太陽放射加熱のきちんとした計算結果 18

平均東西風の緯度高度断面図 Mean Zonal Flow (m/s) Abs. Ang. Momen. (kg/m/s) 観測 100m/s をこえる高速の東西風が雲層の上端付近に再現されている。 角運動量の最大の場所は20km高度あたり ー> 観測と類似か

南北と鉛直の循環と角運動量輸送 強い極向きの南北風が75 km近傍に存在する. 角運動量flux V* (m/s) W* (m/s) 強い極向きの南北風が75 km近傍に存在する. 0-80 kmの範囲で赤道域で上昇するHadleyタイプの半球 one-cell 循環

波動による赤道向き方向への輸送をしてしている 角運動量的には下層が大きな輸送を示している 赤道方向への波動による運動量輸送 FEP/ 波動による赤道向き方向への輸送をしてしている 角運動量的には下層が大きな輸送を示している

赤道上での高速回転がどのようなもので維持させているかを具体的に調べる(中層大気のみ) 鉛直移流と波による赤道方向輸送で維持 波動による南北および鉛直方向輸送 このモデル結果では、 Gieraschの考えたメカニズムが働いている。 中層大気では、波動としては潮汐波動が大きな寄与をしている。 ただし、Heatingが下層で大きいことが問題点と指摘されている。

B:放射伝達をきちんと解いてみる Ikeda, 2007 放射過程 雲層の放射過程 水蒸気の鉛直分布 加熱率の分布 気候センターの放射伝達コード 赤外領域のCO2、H2Oの吸収係数 Matsuda and Matsuno(1978)の金星放射対流平衡実験の  吸収係数をバンドごとに設定 雲層の放射過程 硫酸エアロゾルの光学的性質、鉛直分布 硫酸エアロゾルの雲層(45~70km) →太陽光加熱により大循環に大きく影響 Crisp (1986, 1989)を参照 水蒸気の鉛直分布 加熱率の分布

モデルでシミュレートされた東西風 no zonal wind u (m/s) 東西平均した東西風の緯度-高度分布 東西風速の観測(Schubert et al., 1980) 約70kmで70m/s程度に達する超回転 中緯度に80m/sを超えるジェット しかし、下層では東西風が吹いていない 高度と共に単調に増加 65kmで100m/s程度に達する

赤道域の東西風の加速を見積もってみる このモデル結果では、 中層で潮汐波動による東西風生成が働いている。 鉛直流による減速 波動による南北(青)および鉛直方向輸送(赤)による このモデル結果では、 中層で潮汐波動による東西風生成が働いている。  一方、下層大気に東西風が生成されない

重力波を強制した実験 観測によれば地表面付近の成層度は中立に近い →対流が起こっていると考えられる →内部重力波が励起される Hou and Farrell,1987, JASの考えを 観測によれば地表面付近の成層度は中立に近い  →対流が起こっていると考えられる  →内部重力波が励起される T21では内部重力波はちゃんと表現できていない(対流調節は起こっている)  →パラメタリゼーションとして重力波を与える critical level absorption thermal damping 風方向の波はcritical levelを持つ 逆方向の波は上方まで伝播 下層大気で吸収され、西風加速を生み出す Newtonian damping の時定数が短くなる 上層大気で減衰し、減速

平均東西風速分布:観測との比較 下層の維持 ー>重力波による加速 重力波の効果を入れると、観測結果と整合的な東西風が得られている。 モデル 探査機による観測 (Schubert et al.,1980)  モデル u (m/s) V9 & V10 HEIGHT (km) 下層の維持 ー>重力波による加速 重力波の効果を入れると、観測結果と整合的な東西風が得られている。

南北鉛直循環 帯状平均した南北風の緯度-高度分布 帯状平均した鉛直風の緯度-高度分布 中層大気では南北循環は存在、 下層ははっきりしない循環

5:最後に 放射過程を導入したフランスグループの最近の研究によると、子午面循環と波動による角運動量の赤道輸送によるメカニズムで高速風が生成している。 ー> Gieraschメカニズムを支持している、 ただ、加熱の鉛直分布がいいかよくわからない? 我々のグループの研究では重力波が重要ではといったが、陽には表現されていないので、ほんとうなのか、観測的研究にしろモデル的研究にしろ、必要である。 金星大気高速風のメカニズムはいまだ未解明として残っている ー> 近い将来のJAXA, PLANET-Cによる観測 29