中国における天然ガス安定供給のためのパイプライン敷設に関する研究 平成19年度 卒業論文発表資料 中国における天然ガス安定供給のためのパイプライン敷設に関する研究 流通情報工学科 0423056 朴哲 みなさん、こんにちは。流通情報工学科の朴哲です。 それでは発表を始めます。研究テーマは、「中国における天然ガス安定供給のためのパイプライン敷設に関する研究」です。
天然ガス エネルギー安定供給 3.6倍 環境安全 出典:「World Energy Outlook 2007」より作成 64% 66% まず研究の背景からみますと、中国では、経済発展と生活水準の向上を背景に、今後もエネルギー需要の拡大が続いています。IEAの見通しによれば、2020年になると中国の一次エネルギーの総供給量は1990年の3.6倍になるそうです。 そのためにエネルギー安定供給方策の確立が急務となっています。 他方、中国では、ご覧のようにエネルギー需要の多くを石炭が賄っているため、環境問題の深刻化が懸念されます。 そこでクリーンでエネルギー効率のよい天然ガスの開発・利用は必要だと考えています。 63% 61% 出典:「World Energy Outlook 2007」より作成
中国の地域別天然ガス需要見通し 西気東輸(西部の天然ガスを東部へ) ガス資源をいかに需要の集中地域に送るか →輸送コストが鍵 単位: BCM 西気東輸(西部の天然ガスを東部へ) 4.94倍 4.33倍 2.65倍 ガス資源をいかに需要の集中地域に送るか →輸送コストが鍵 2.17倍 1.87倍 中国の天然ガス需要見通しについてみますと、全国合計で2020年には210.71BCMになり、2005年比で3.31倍になると予測しています。BCMは10億㎥です。また地域別にみますと、環渤海地域、長三角地域、東南沿海地域など経済発展が進んでいる地域はいずれも全国平均を大きく上回る増加ペースを示しています。またガス資源が多く埋蔵されている中部地域、西北地域、西南地域の対2005年増加比はいずれも全国平均を大きく下回っています。 そのために今後中国における天然ガス資源開発の構図としては西部の天然ガスを東部に輸送するということが間違いないですが、ガス資源をいかに需要の集中地域に送るかが問題であり、輸送コストこそが鍵を握ると考えています。 3.34倍 3.31倍 出典:「Northeast Asian Gas & Pipeline Forum September 2007」より作成
研究目的 1.線形計画法で、将来中国においてどのような天然ガスパイプラインネットワークを構築すれば総輸送費用が最小になるかを分析する。 2.分析結果と政府の計画を比較することにより、将来の計画についての見直し点を明らかにする。 増加し続ける天然ガス需要を満たすために中国政府は大規模な天然ガスパイプラインの整備を計画し、幾つかのパイプラインの敷設が行われています。しかし、急激な経済成長により、当初の計画では供給不足となることが懸念されています。 そのため私は本研究で線形計画法を用いて、将来中国においてどのような天然ガスパイプラインネットワークを構築すれば総輸送費用が最小になるかを分析し、さらにこの分析結果と中国政府の計画を比較することで将来の計画についての見直し点を明らかにすることを目的としています。
2020年までに政府が計画している天然ガスパイプライン ロシア極東 東シベリア 西シベリア 対象時期:2020年 松遼盆地 撫遠 満州里 アルタイ 対象地域:中国全土 中央アジア諸国 大慶 ホルゴス ジュンカル盆地 ハルビン 長春 ウルムチ ハミ 瀋陽 膳善 柳園 豪州Barrow島 タリム盆地 フホホト 北京 唐山LNG 大連 張掖 オルドス盆地 楡林 大連新港LNG 銀川 天津 渤海盆地 カタールRas Laffan 甘塘 威海 太原 石家庄 煙台 龍口 武威 イランヤダバラン油田 ノード 靖辺 濮陽 済南 青島 青島LNG ツァイダム盆地 豪州北西部 西寧 鄭州 南通LNG パイプライン供給地 蘭州 平湖ガス田 四川盆地 西安 上海 合肥 春暁ガス田 南京 小洋山LNG LNG供給地 成都 潜江 杭州 武漢 寧波 天外天ガス田 寧波LNG 通過都市 重慶 温州 マレーシアBintulu 長沙 南昌 それでは今回モデルで設定したいくつかの項目について説明します。この図は政府が発表した各種資料に基づいて作成した2020年までに敷設すると計画しているパイプライン図です。もちろん現在稼動中のものも含まれています。 対象時期・・・2020年 対象地域・・・中国全土 ノード・・・供給地、消費地、通過都市 リンク・・・リンクはパイプラインとLNG船2種類、矢印が付いているものに設定しました。 消費地 福州 大理 貴陽 湄洲湾LNG リンク 昆明 厦門 イランNorth Parsガス田 南寧 広州 景洪 大鵬湾LNG 香港 パイプライン輸送経路 湛江 インドネシアTangguh ミャンマー近海 東方 海口 LNG船輸送経路 三亜 豪州NWS 鶯歌海盆地
輸送手段別輸送費用分析 傾きa 切片b 傾きa 切片b 今回顧慮した輸送手段にはパイプラインとLNG船があり、この図は両輸送手段の輸送費用について分析した図です。横軸が輸送距離で縦軸が単位輸送量あたりの輸送費用です。実線の部分がLNG船で、点線の部分がパイプラインを示しています。 ここで一次回帰直線の傾きをa、切片をbとします。 そこで単位輸送量あたりの輸送費用をこのように表します。dは輸送距離です。
定式化の説明(1) 【目的関数】 総輸送費用=単位輸送量あたりの輸送費×年間輸送量 総輸送費用を最小化する 【記号の説明】 それで今回行った定式化について説明します。目的関数はパイプラインを流れる天然ガスの総輸送費用を最小化する式です。総輸送費用は単位輸送量あたりの輸送費用に年間輸送量を掛けて求めます。記号はご覧のとおりです。
定式化の説明(2) 【制約条件】 【記号の説明】 最大供給量は輸送量より大きい ノードへの流入量-ノードからの流出量=需要量 輸送量は0より大きい 【記号の説明】 制約条件は3つあります。制約式の説明を順番にしますと、はじめは最大供給量は輸送量より大きいという制約です。次はノードへの流入量からノードからの流出量を引いたものが需要量になるという制約です。最後は輸送量の非負条件です。記号はご覧のとおりです。
検討内容 政府の計画供給量と計算上最適供給量を比較する。 政府が計画している今後の主要パイプラインの敷設経路について検討する。 2020年までのLNG受入基地の建設について検討する。 そして今回検討した内容について話します。検討内容は三つあります。
国内陸上、海底パイプラインの輸送 能力は大幅な増強が必要。 計画供給量と計算上最適供給量 まずはじめに政府が計画している計画供給量と計算から得られた最適供給量をみますと、国内陸上パイプラインと海底パイプラインの最適供給量は計画供給量を大幅に上回っていることがわかり、政府の計画では供給が不足することが分かります。これはそもそも政府の計画供給量の設定が少なすぎることに原因があります。 国外陸上パイプラインは政府の計画供給量で十分将来の需要を満たせるという結果になりました。またLNGの最適供給量は政府の計画供給量を大幅に下回る結果になりました。 そのために国内の陸上と海底パイプラインの輸送能力は大幅な増強が必要です。
輸送コスト面ではタリムー北京ライン と四川ー広東ラインの新規追加を提案。 主要パイプラインの敷設経路 西 気 東 輸 2 線 西 3 気 線 西シベリア ハルビン 中央アジア諸国 長春 ウルムチ 西 気 東 輸 2 線 西 3 気 線 東 輸 瀋陽 膳善 フホホト 北京 輸送コスト面ではタリムー北京ライン と四川ー広東ラインの新規追加を提案。 タリム盆地 西 気 東 輸 1 線 川 送 楡林 天津 太原 甘塘 済南 靖辺 西寧 蘭州 合肥 鄭州 四川盆地 西安 上海 武漢 杭州 重慶 長沙 南昌 政府計画している今後の主要パイプラインの敷設経路について検討します。まず一つは政府が計画しているタリムー上海ライン(西気東輸1線)と四川ー上海ライン(川気東送)この二つの輸送経路に対して今回計算した結果はタリムー北京ラインと四川ー広東ラインになりました。 また中央アジアからの天然ガス(西気東輸2線)は政府が計画しているとおり上海、広東両方面に送ることと一致しました。 そして敷設経路はまだ決まっていませんが、西シベリアからの天然ガス(西気東輸3線)は計算結果からみますと基本的に上海などの東部地域に送るという結果になりました。 そのために輸送コスト面ではタリムー北京ラインと四川ー広東ラインの新規追加を提案。 昆明 南寧 広州 香港 西 気 東 輸 2 線
2020年までは3基の建設を提案。 政府の計画を見直し、LNG基地 の建設を再検討する必要がある。 しかし、2020年までは稼働中の広東とまもなく稼動予定の福建、上海を除いて、政府が計画しているほかの5ヶ所は計算上供給の必要がないことが分かります。 つまり、2020年までは3基の建設を提案します。そこで政府の計画を見直し、これらのLNG基地の建設を再検討する必要があると考えています。
まとめ 中国政府の天然ガス供給計画では、国内陸上、海底パイプラインの供給量が足りず、陸上では583.9億㎥、海底では75億㎥の増強が必要なことがわかった。 また、2020年までのLNG基地の建設においては、現在稼働中の基地以外の建設の是非について議論する必要があることが分かった。 最後本研究をまとめますと、中国政府の天然ガス供給計画では、国内陸上、海底パイプラインの供給量が足りず、陸上では583.9億㎥、海底では75億㎥の増強が必要なことがわかりました。また、2020年までのLNG受入基地の建設においては、現在稼働中の基地以外の建設の是非について議論する必要があることが分かりました。
ご清聴ありがとうございました
最適化した中国の天然ガス輸送ネットワーク(2020年) ロシア極東 東シベリア 西シベリア 対象時期:2020年 松遼盆地 撫遠 アルタイ 対象地域:中国全土 満州里 中央アジア諸国 大慶 ホルゴス ジュンカル盆地 ハルビン 長春 ウルムチ ハミ 瀋陽 膳善 柳園 豪州Barrow島 タリム盆地 フホホト 北京 唐山LNG 大連 張掖 オルドス盆地 楡林 大連新港LNG 武威 銀川 天津 渤海盆地 カタールRas Laffan 甘塘 威海 パイプライン供給地 消費地 通過都市 LNG供給地 ノード 太原 石家庄 煙台 靖辺 龍口 イランヤダバラン油田 済南 濮陽 青島 青島LNG 豪州北西部 ツァイダム盆地 西寧 南通LNG 蘭州 鄭州 小洋山LNG 西安 上海 平湖ガス田 四川盆地 合肥 南京 春暁ガス田 潜江 成都 杭州 武漢 寧波 天外天ガス田 寧波LNG 重慶 温州 長沙 南昌 福州 マレーシアBintulu 計画中のパイプライン輸送経路 パイプライン最適輸送経路 計画中のLNG船輸送経路 LNG船最適輸送経路 リンク 大理 貴陽 湄洲湾LNG イランNorth Parsガス田 昆明 広州 厦門 南寧 景洪 大鵬湾LNG 香港 湛江 インドネシアTangguh ミャンマー近海 東方 海口 三亜 豪州NWS 鶯歌海盆地
国外パイプラインの敷設経路 供給地の目標市場 ノード ロシア極東 東シベリア 西シベリア 撫遠 大慶 アルタイ 満州里 中央アジア諸国 ホルゴス ハルビン 長春 ウルムチ ハミ 瀋陽 膳善 柳園 北京 張掖 大連 楡林 甘塘 武威 青島 靖辺 済南 供給地の目標市場 蘭州 合肥 鄭州 西安 上海 中央アジア 成都 武漢 南京 杭州 西シベリア 東シベリア 南昌 福州 貴陽 ロシア極東 大理 ミャンマー近海 南寧 昆明 広州 厦門 景洪 ノード 香港 パイプライン供給地 ミャンマー近海 消費地 通過都市
国内パイプラインの敷設経路 ノード 松遼盆地 大慶 ハルビン ジュンカル盆地 長春 ウルムチ ハミ 瀋陽 膳善 柳園 フホホト 北京 大連 張掖 タリム盆地 オルドス盆地 楡林 天津 渤海盆地 甘塘 龍口 武威 銀川 済南 青島 靖辺 鄭州 供給地の目標市場 ツァイダム盆地 西寧 蘭州 合肥 西安 平湖ガス田 南京 上海 タリム盆地 四川盆地 潜江 武漢 成都 杭州 春暁ガス田 四川盆地 寧波 重慶 天外天ガス田 オルドス盆地 長沙 南昌 温州 その他陸上パイプライン 福州 貴陽 海洋ガス田 昆明 広州 厦門 南寧 ノード 香港 パイプライン供給地 海口 東方 消費地 三亜 通過都市 鶯歌海盆地