輸血過誤と防止対策 長崎大学輸血部 長井一浩.

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輸血過誤と防止対策 長崎大学輸血部 長井一浩

Major Mismatch Minor Mismatch 輸血用血液中の赤血球と患者の抗体との反応。輸血する赤血球が溶血する(=重篤な副作用)可能性がある 輸血血液 患 者 A型 → O型,B型 B型 → O型,A型 AB型 → O型,A型,B型 Minor Mismatch 輸血用血液中の抗体と患者の赤血球との反応。輸血用血液中の抗体は患者の血液で希釈され溶血反応が起こる可能性は低い。 輸血用血液 患 者 O型 → A型,B型,AB型 A型 → AB型 B型 → AB型 ABO型不一致だが不適合でない  輸血血液  患 者   Rh(-) →Rh(+)  血小板製剤(赤血球は含まない)の輸血において   AB型  →A型,O型,B型   A型,B型→O型,

3.AB0型不適合輸血の件数 166件(115病院) 赤血球 Major Mismatch 51 30.7% ABO型不適合輸血実態調査 3.AB0型不適合輸血の件数 166件(115病院) 赤血球 Major Mismatch 51 30.7% Minor Mismatch 40 24.1% 不明 4 2.4% 凍結血漿 71 42.8%

輸血過誤と防止対策 ABO不適合輸血全国調査の結果 ABO型不適合輸血の件数 166件 対象病院:300床以上で血液製剤を年間3000単位以上使用している施設(1995~1999年) ABO型不適合輸血の件数 166件 時間外輸血の割合:100/166件(60.2%) 緊急輸血の割合 : 78/166件(47.0%) 輸血依頼伝票の血液型確認ミス2件(1.2%) 不明11件(6.6%) 添付ラベルへの血液型の誤記2件(1.2%) その他5件(3.0%) 患者検体の取り違え4件(2.4%) バッグの取り違え71件(42.8%) カルテに血液型の誤記録5件(3.0%) カルテの血液型の確認ミス8件         (4.8%) 輸血依頼伝票への誤記14件 (8.4%) 患者の取り違え19件(11.5%) 血液型判定ミス25件(15.1%)

・知識不足 ・不注意・思い込み ・システム不備 ダブル・チェック  複数のスタッフ、タイミング、方法 適正な輸血医療に関する教育・研修 ・知識不足 ・不注意・思い込み ・システム不備 輸血マニュアルの整備 コンピューター・システムによる情報管理

5.過誤の当事者(発端者) 看護婦 78人(44.6%) 医師 72人(41.1%) 検査技師 18人(10.3%) ABO型不適合輸血実態調査 5.過誤の当事者(発端者) 複数回答あり 合計175人 看護婦 78人(44.6%)       医師 72人(41.1%)            検査技師 18人(10.3%)       事務員 3人( 1.8%)            薬剤師 2人( 1.1%)             不明  2人( 1.1%) 44.6% 41.1% 10.3% 1.8% 1.1%

輸血過誤と防止対策 診療部門 輸血部 ABO不適合輸血は、輸血による有害事象のうち最も重篤なもののひとつであり、 必ず防がなければならない医療過誤である。 ① 血液型検査結果が判明したら、患者  本人に伝え確認すること。本人の申告  と違っていたら再検査等によって確認  すること。 ② 採血ラベルの患者氏名を、リストバ  ンドや本人にフルネームで確認する。   採血は、1回に1人ずつ実施する。   緊急時に血液型用検体と交差適合試  験用検体を1回で採血する場合にも,  他の患者からの採血を同時に行わない。 ③ 輸血検査申込用紙と検体ラベルを照  合し、検体入れ違いに注意する。血液  型についてはスライド法と試験管法で  二回検査を行い、検査結果台帳と検査  結果報告用紙で二人で読み合わせを行  い、確認をする。 ① 検査オーダー入力   と検査結果照会 診療部門 医師 ② 検体採取 輸血部 ③ 検体検査実施

診療部門 輸血部 ④ 主治医は輸血オーダー入力時に患者 氏名、 ID番号、血液型を必ず診療録で 確認する。 ④ 輸血製剤オーダー入力 ④ 主治医は輸血オーダー入力時に患者  氏名、 ID番号、血液型を必ず診療録で  確認する。 ⑤ 交差適合試験用検体は血液型判定用  検体とは別の時に採血し、赤血球輸血  申し込み毎に輸血部へ提出する。 ⑥ 血液製剤の輸血部からの搬出は、原  則として当日使用分のみである。   血液製剤出庫時、病棟および手術室  搬入時には受け渡しの2人で患者名、  血液型、製剤ロット番号の読み合わせ  を必ず行う。 ⑦ 病棟、手術室等で受け取り後、速や  かに使用すること。それ以外の余分な  血液製剤を病棟に保管しない。 医師 診療部門 ⑤ 交差適合試験用     検体採取    交差適合試験実施 輸血部 ⑥ 払い出し ⑦ 診療部門へ到着

診療部門 ⑧ 輸血は1回1患者毎に準備する。 主治医あるいは医療スタッフ2人で、 血液製剤バッグ、診療録、製剤出庫帳票 ⑧ 輸血は1回1患者毎に準備する。   主治医あるいは医療スタッフ2人で、  血液製剤バッグ、診療録、製剤出庫帳票  に記載してある、患者氏名、血液型、製  剤名、製造番号、有効期限、交差適合試  験の判定結果、放射線照射の有無、外観  の異常の有無を、読み合わせて確認を行  う。 ⑨ 輸血は1回1患者毎に完結するように実  施する。   病室や手術室で、患者氏名をフルネー  ムで確認。ベッドのネームプレートやリ  ストバンドと血液製剤バッグとの間で、  患者氏名、血液型の合致を再度医療スタ  ッフ2名で確認する。 ⑩ すべての照合が完了したら、帳票にサ  インして輸血を開始する。   輸血開始後15分間は1ml/kg/hr以下  の速度で輸血し、慎重に患者の状態を観  察し、早期発見・対応に努める。 ⑪ 輸血実施記録を、診療録に記載する。  副作用の有無について観察・確認する。 ⑧ 輸血実施準備 診療部門 ⑨ 輸血実施直前の確認 ⑩ 輸血実施直後の観察 ⑪ 輸血実施記録・副作用発生時の  報告と対応