になるためのパワポ Vol.② 信州大学総合診療科 田村謙太郎 ペニシリン大好き! になるためのパワポ Vol.② 信州大学総合診療科 田村謙太郎
ここから本題です(笑) ペニシリン大好き! になるためのパワポ(本編)
ペニシリン系 4つに分類 1) ペニシリンG: 天然ペニシリン 2) アミノペニシリン:アミノ基をつけたペニシリン 1) ペニシリンG: 天然ペニシリン 2) アミノペニシリン:アミノ基をつけたペニシリン グラム陽性菌に加えて、一部のグラム陰性菌にも効く 消化管からの吸収率(bioavailability)がアップ! 3) 抗緑膿菌用ペニシリン 4) 抗MSSA用ペニシリン: 日本にはない涙 [ 5) βラクタマーゼ阻害剤の合剤 ]
ペニシリン系 ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム、(経口:バイシリンG®:経口吸収不安定) ② アミノペニシリン: ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム、(経口:バイシリンG®:経口吸収不安定) ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®):経口吸収良好 AMPC/CVA アモキシシリン/クラブラン酸 (オーグメンチン®) 点滴 ABPCアンピシリン (ビクシリン®) ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム (ユナシン®) ③ 抗緑膿菌用ペニシリン 点滴 PIPC ピペラシリン (ペントシリン®) PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン) ④ 抗MSSA用ペニシリン:日本にはない ナフシリン、オキサシリンなど
ペニシリン系 ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®) ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®) AMPC/CVA アモキシシリン/クラブラン酸 (オーグメンチン®) 点滴 ABPCアンピシリン (ビクシリン®) ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム (ユナシン®) ③ 抗緑膿菌用ペニシリン 点滴 PIPC ピペラシリン (ペントシリン®) PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン) ④ 抗MSSA用ペニシリン:日本にはない ナフシリン、オキサシリンなど
ペニシリンG:天然ペニシリン ペニシリン系の基本スペクトラムはペニシリンG ⇒ GPC + Anaerobes 細胞壁阻害剤 : 時間依存性なので頻回投与 *GPC: Gram Positive Coccus :グラム陽性球菌 *Anaerobes: 嫌気性菌
スペクトラム図 (Dr.忽那提供)
ペニシリンG:グラム陽性、嫌気性菌 ペニシリンGがカバーするのは、 ⇒ GPC(グラム陽性球菌)と ⇒ GPC(グラム陽性球菌)と ⇒ Anaerobes(横隔膜より上、口腔内の嫌気性菌)
ペニシリンG ⇒ GPC と 嫌気性菌 PCG: 今でもStreptococcus属の感染症治療の第1選択薬 ・肺炎球菌性肺炎 ⇒ GPC と 嫌気性菌 PCG: 今でもStreptococcus属の感染症治療の第1選択薬 ・肺炎球菌性肺炎 ・Streptococcus IE (感染性心内膜炎) ・スピロヘータ感染症 (梅毒と言えばPCG!)
ペニシリン開発の歴史 ↓ ↓ 天然ペニシリン(ペニシリンG)の実用化1940年代 ↓ アミノ基をつけてグラム陰性菌にも少し効くようになったアミノペニシリン(“広域ペニシリン”) 大腸菌、クレブシエラ、インフルエンザ桿菌、モラキセラ・ カタラーリス βラクタマーゼで耐性化 βラクタマーゼ阻害薬入りペニシリンの開発 ↓ ペニシリナーゼ蔓延 ペニシリナーゼに分解されない ペニシリンを半合成(メチシリン) MRSAの出現 → βラクタマーゼ以外の機序での耐性化 インフルエンザ桿菌:BLNARなど
①ペニシリンGカリウム BPCGベンジルペニシリンベンザシン ⇒ グラム陽性菌、梅毒治療に バイシリン® 100万単位!? ⇒ グラム陽性菌、梅毒治療に バイシリン® 100万単位!? =約0.6g (ペニシリン600万単位=アンピシリン4g相当) 肺炎球菌性“肺炎”に 100~200万単位を1日に4時間おき(~6時間おき) 感受性があれば髄膜炎治療に (*髄液移行性良好!) 300~400万単位を4時間おき 筋注製剤のカリウム (注:海外では点滴製剤はPCGナトリウム) ⇒① 高カリウム血症に注意 (100万単位にカリウム1.7mEq) ⇒② 血管痛に注意
ペニシリンG ⇒ GPC と 嫌気性菌 PCG: 今でもStreptococcus属の感染症治療の第1選択薬 ・肺炎球菌性肺炎 ⇒ GPC と 嫌気性菌 PCG: 今でもStreptococcus属の感染症治療の第1選択薬 ・肺炎球菌性肺炎 ・Streptococcus IE (感染性心内膜炎) ・スピロヘータ感染症 (梅毒と言えばPCG!)
ペニシリン系 ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®)、 ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®)、 AMPC/CVA アモキシシリン/クラブラン酸 (オーグメンチン®) 点滴 ABPCアンピシリン (ビクシリン®)、 ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム (ユナシン®) ③ 抗緑膿菌用ペニシリン 点滴 PIPC ピペラシリン (ペントシリン®)、 PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン) ④ 抗MSSA用ペニシリン:日本にはない ナフシリン、オキサシリンなど
②アミノペニシリン アミノペニシリン:アミノ基をつけたペニシリン ⇒ グラム陽性菌に加えて、グラム陰性菌も少しカバー ⇒ グラム陽性菌に加えて、グラム陰性菌も少しカバー ⇒ ① リステリアと腸球菌(E.faecalis)には第1選択! ⇒ ② グラム陰性菌にも少し活性 例、感受性があれば大腸菌やインフルエンザ桿菌に ⇒ ③ 経口吸収が良い(bioavailability良好) 例、A群β溶連菌性扁桃腺炎に AMPCアモキシシリン(サワシリン®)250㎎を 1回2カプセル 1日3回 10日間
アンピシリンのスペクトラム ABPC(アンピシリン)のスペクトラムは PCGのスペクトラム + 腸球菌、リステリア ペニシリンは世代が進むと GNRにも活性を広げていく ABPC(アンピシリン)のスペクトラムは PCGのスペクトラム + 腸球菌、リステリア +大腸菌(βラクタマーゼ非産生) *EB:腸内細菌群 ⇒感受性があれば 大腸菌にも効く
小児の溶連菌性扁桃腺炎 必ず!アモキシシリンで10日間治療!その理由は!? ⇒ 合併症の予防 ⇒ 合併症の予防 リウマチ熱:交差抗体が心臓の弁膜を破壊してしまう ただし、同じ合併症でも糸球体性腎炎は予防できない *熱も痛みも抗生剤を飲んだ翌日には良くなってしまうが、 必ず10日間治療を完遂することを親に説得しておくこと! *最初の抗生剤投与後24時間で感染性はなくなる ⇒ 薬を飲んでから24時間以上たてば登校可
A群β溶連菌性 扁桃腺炎 Center criteria センター基準 ① 扁桃腺の滲出性炎症 ② 前頸部リンパ節腫脹 ③ 発熱 ① 扁桃腺の滲出性炎症 ② 前頸部リンパ節腫脹 ③ 発熱 ④ 咳がない ⇒ 現実には迅速検査が有用 検査が陰性であれば非溶連菌性の扁桃腺炎の可能性を考えてアミノペニシリンは使用を避ける(理由は次のスライドで) ⇒ 抗菌薬を使用するなら、代用として CLDMクリンダマイシン(ダラシン®)150㎎ 2カプセルを1日3回内服
扁桃腺炎でも・・・ 伝染性単核球症IM:infectious mononucleousisに注意! ウイルス性の扁桃腺炎、主にEBV:Ebstein-Barr ウイルス ⇒ ① アミノペニシリンを投与すると全身性に発疹! “ペニシリンアレルギー”と誤認されてしまう その後の人生でペニシリンが使えないのは困る ⇒ ② 肝脾腫に注意! コンタクトスポーツの一時的な禁止 激しいコンタクトで肝臓破裂、脾臓破裂のリスク *急性HIV症候群でもIM様の症状で受診することがある
*βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム、(経口:バイシリンG®:経口吸収不安定) ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム、(経口:バイシリンG®:経口吸収不安定) ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®)、 AMPC/CVA アモキシシリン/クラブラン酸 (オーグメンチン®) 点滴 ABPCアンピシリン (ビクシリン®)、 ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム (ユナシン®) ③ 抗緑膿菌用ペニシリン 点滴 PIPC ピペラシリン (ペントシリン®)、 PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン) ④ 抗MSSA用ペニシリン:日本にはない ナフシリン、オキサシリンなど
*ベータラクタマーゼ阻害剤入り βラクタマーゼ阻害剤との合剤 ⇒ 嫌気性菌カバー、グラム陰性菌カバーがアップ! βラクタマーゼ阻害剤との合剤 ⇒ 嫌気性菌カバー、グラム陰性菌カバーがアップ! ①オーグメンチン®(AMPC/CVAアモキシシリン/クラブラン酸)375㎎錠 AMPC250㎎ + CVA125㎎ 経口のみ。使うときはオグサワで! ⇒ オグ1錠+サワ2錠を2回/日 朝夕食後 (クラブラン酸の量が多いと、腹痛や嘔気が増えるので。) ②ユナシン®(ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム) 注射剤 (経口薬もあるが味が不味いので使わない。) ⇒経口剤にスイッチするときは、オグサワで代用 ③PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン) 注射剤 (緑膿菌を含めた重症のグラム陰性菌による院内感染に使用する) ⇒ 経口剤にスイッチするときはシプロフロキサシン(ニューキノロン)で代用
ABPC/SBT(アンピシリン・スルバクタム) + 嫌気性菌 + βラクタマーゼ産生菌 ・ブドウ球菌(MSSA)に効く ・モラキセラ・カタラーリスに効く ・インフルエンザ桿菌に効く (ただしBLNAR, BLPARは除く) ・大腸菌やクレブシエラといった 腸内細菌に効く ・横隔膜上下の嫌気性菌に効く 腹腔内感染症(胆嚢炎、虫垂炎など) 誤嚥性肺炎に使える
③ 抗緑膿菌用 ペニシリン ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: ③ 抗緑膿菌用 ペニシリン ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®)、 AMPC/CVA アモキシシリン/クラブラン酸 (オーグメンチン®) 点滴 ABPCアンピシリン (ビクシリン®)、 ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム (ユナシン®) ③ 抗緑膿菌用ペニシリン 点滴 PIPC ピペラシリン (ペントシリン®)、 PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン) ④ 抗MSSA用ペニシリン:日本にはない ナフシリン、オキサシリンなど
③ 抗緑膿菌用ペニシリン PIPC ピペラシリン (ペントシリン®) PIPC/TAZ ピペラシリン・タゾバクタム (ゾシン®) ③ 抗緑膿菌用ペニシリン PIPC ピペラシリン (ペントシリン®) PIPC/TAZ ピペラシリン・タゾバクタム (ゾシン®) *緑膿菌を疑った時だけ! ⇒ 好中球減少時の発熱、院内の重症肺炎など *日本のお粗末な保険適応 ピペラシリンの最大投与量は8g/日⇔欧米では12~18g ⇒仕方がないのでトブラマイシンなどのアミノグリコシドを併用 ⇒PIPC/TAZ(ゾシン®)登場! ⇒1バイアルに4gのPIPCで1日3~4回投与可 ⇒PIPC換算で12~16g投与可 しかし本来、緑膿菌にはβラクタマーゼは不要・・・ムダムダ涙
ピペラシリンのスペクトラム PIPCを使うのは 緑膿菌感染症のときだけ! PIPC(ピペラシリン)の スペクトラムは ⇒ ABPCのスペクトラム + 緑膿菌 PIPCを使うのは 緑膿菌感染症のときだけ!
PIPC/TAZ(ピペラシリン・タゾバクタム) + βラクタマーゼ産生菌 または ⇒ABPC/SBTのスペクトラム + SPACE *SPACEとは 院内感染で問題になる グラム陰性桿菌 病院内での重症感染症、 腹腔内感染症など
④ 抗MSSA用ペニシリン(日本にない) ペニシリンG ⇒ ブ菌:ペニシリナーゼ獲得による耐性化 しかし、ブドウ球菌はあっという間にペニシリナーゼ(ペニシリンを分解する酵素)を産生するようになり、この遺伝子がプラスミドによって世界中に 広がってしまいました。 ペニシリンG ⇒ ブ菌:ペニシリナーゼ獲得による耐性化 これに対してペニシリンを半合成し、 ペニシリナーゼに分解されないペニシリンが作られました。 【ペニシリナーゼ耐性ペニシリン】 MSSAに使用 点滴: オキサシリン、ナフシリン 内服: クロキサシリン、ジクロキサシリン (メチシリンは副作用があり、現在は臨床的に使われない) *現在日本にはなく、仕方なくMSSAに第1世代セフェム (セファゾリン)を使っているのが現状。
なぜ抗MSSA用ペニシリンがないと困るのか? 第1世代セフェムはその特徴として、髄膜移行性がありません。 つまり、日本におけるMSSAの治療薬セファゾリンでは MSSAによる脳膿瘍の治療が出来ないのです。 ブドウ球菌が感染性心内膜炎を作った時(MSSAであっても) 脳に疣贅が飛んでいき、脳膿瘍を作ってしまうと・・・ 日本では治療抵抗性の恐ろしい感染症になってしまいます。
お疲れ様でした! ペニシリン大好き!になったかな??? ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: ① ペニシリンG: 注射:PCGカリウム ② アミノペニシリン: 経口 AMPCアモキシシリン (サワシリン®) AMPC/CVA アモキシシリン/クラブラン酸 (オーグメンチン®)* 点滴 ABPCアンピシリン (ビクシリン®) ABPC/SBT アンピシリン/スルバクタム (ユナシン®)* ③ 抗緑膿菌用ペニシリン 点滴 PIPC ピペラシリン (ペントシリン®) PIPC/TAZ ピペラシリン/タゾバクタム (®ゾシン)* ④ 抗MSSA用ペニシリン:日本にはない(涙) [ ⑤ βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン*印 ] ペニシリン大好き!になったかな???
Special thanks to Dr. Kutsuna, DCC 抗菌薬のスペクトラム図は 国立国際医療研究センターの忽那先生のご好意で 使用させて頂きました。 有難う御座います。 【NGCM感染症レビュー】 e-learning で学べる無料の感染症コース。 2015年も開催される(予定)とのこと。