外国人の参政権・公務就任権 国家・共同体における権利・義務
基本的人権の中の参政権 参政権は人権として二つの意味がある。 参政権は最も重要な権利である。従って最も拡大に慎重であった。 人権のひとつの内容として。 他の全ての権利を規定する権利として。 参政権は最も重要な権利である。従って最も拡大に慎重であった。
日本の選挙権の拡大
普通選挙の拡大(1) イギリス フランス 1832年、67年、84年の選挙法改正で選挙人の数が増加 1918年財産要件撤廃男子21歳、女子30歳 大卒は2票 1948年完全の普通平等選挙権 フランス 1848年財産要件撤廃 女性は戦後
普通選挙権拡大(2) アメリカ 2. 日本 南北戦争後白人の財産要件廃止 黒人は人頭税・識字テストなどで実質排除 1964年の憲法修正24条で廃止 完全な廃止は80年代以降 2. 日本 直接国税15円以上納入の男子 1925年納税要件の廃止(男子のみ) 1945年衆議院議員選挙法改正で20歳以上の男女すべて
選挙権拡大の整理 当初は納税者男子(フランス革命時代の「市民」)に限定されていた。 納税額が次第に下げられ、最終的に納税要件は撤廃されたが、女性の権利は更にあとだった。 現在まで、「国民」以外に国政参政権を与えた国は存在しない。
外国人の地方選挙権導入例(1) 1849 スイスのヌーシャテル州(選挙権のみ) 1963 アイルランド(選挙権のみ ~74) 1849 スイスのヌーシャテル州(選挙権のみ) 1963 アイルランド(選挙権のみ ~74) 1974 アイルランド 1976 スウェーデン、フィンランド(~1991) 1977 ノルウェー(~1981) 1976 デンマーク(~1985) 1980 スイスのジュラ州(選挙権のみ)
外国人の地方選挙権導入例(2) 1981 デンマーク 1982 アイスランド 1985 ノルウェー、オランダ 1981 デンマーク 1982 アイスランド 1985 ノルウェー、オランダ 1989 ポルトガル、スペイン(選挙権のみ ~1992) 1991 フィンランド 1992 スペイン 1993 ドイツ、フランス、イタリア、ブルデー、ルクセンブルク、ギリシャ、オーストリア
定住外国人の参政権(1) 【EU諸国】 国選 国被 地選 地被 イギリス △ △ △(○) △(○) アイルランド △ × ○ ○ 国選 国被 地選 地被 イギリス △ △ △(○) △(○) アイルランド △ × ○ ○ スウェーデン × × ○ ○ 3年以上合法的在住 デンマーク × × ○ ○ 3年以上合法的在住 フィンランド × × ○ ○ 2年以上居住 オランダ × × ○ ○ 5年以上合法的在住
定住外国人の参政権(2) フランス × × ×(○) ×(△) ドイツ × × ×(○) ×(○) イタリア × × ×(○) ×(○) フランス × × ×(○) ×(△) ドイツ × × ×(○) ×(○) イタリア × × ×(○) ×(○) オーストリア × × ×(○) ×(○) ベルギー × × ×(△) ×(不明) ルクセンブルグ × × ×(○) ×(○)
定住外国人の参政権(3) ニュージーランド ○ △ ○ △ オーストラリア △ × △ 不明 カナダ × × △ △ ニュージーランド ○ △ ○ △ オーストラリア △ × △ 不明 カナダ × × △ △ ノルウェー × × ○ ○ 3年以上合法的在住 アイスランド × × △ △ スイス × × △ △
定住外国人の参政権(4) アメリカ × × × × 中国 × × × × 韓国 × × × × 北朝鮮 × × × × アメリカ × × × × 中国 × × × × 韓国 × × × × 北朝鮮 × × × × フィリピン × × × ×
外国人参政権整理 国政レベルでの参政権を認めている国はない 地方レベルでの参政権を認めている国は北欧中心で多くがいわゆる福祉国家である。 認めている国は政治的透明性が高い国である。 EUは加盟国におけるEU議会選挙については認めている。
政治の透明度調査 03 02 01 00 99 98 97 96 95 平均 Finland 1 1 1 1 2 2 2 4 4 2 Iceland 2 4 4 6 5 5 4.3 Denmark 3 2 2 2 1 1 1 2 2 1.8 New Zealand 3 2 3 3 3 4 4 1 1 2.6 Singapore 5 5 4 6 7 7 9 7 3 5.9 Sweden 6 5 6 3 3 3 3 3 5 4.1 Netherlands 7 7 8 9 8 8 6 9 9 7.9 Australia 8 11 11 15 12 11 8 10 7 10.3 Norway 8 12 10 6 9 8 7 6 10 8.4 Switzerland 8 12 12 11 9 10 11 8 8 9.9
今の論議の状況 公明党のホームページより 日本に永住している外国人は約62万人といわれています。これらの永住外国人に地方自治体の議員・首長選の投票権などを付与する目的で立案されたのが「永住外国人地方選挙権付与法案」です。 永住外国人選挙人名簿の登録は、年齢満20年以上の永住外国人で、その者に係る登録市町村等の区域内に引き続き3箇月以上居住するものをいいます。 法案の対象となっている永住外国人とされる人のほとんどは、日本での納税義務を果たしています。また、国民の約75%に当たる1500以上の地方自治体で、永住外国人への地方参政権付与を求める意見書が採択されています。 ・ 与党である自民党の消極的あるいは否定的な態度で見通しは立っていない。
憲法の規定 第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。 ○3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。 第九十三条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。 ○2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
憲法規定の解釈 公務員の選定は「国民固有の権利」とされている。従って「国民」に限定 しかし、地方自治のところで、「住民」という言葉になっている。これが公明党や在日の主張の根拠となっている。 最高裁判決は、外国人に参政権を認めているわけではないが、否定もしていないと解釈している。立法が決めることという意味
容認の論理 永住している以上、意思を発現できるべき 納税義務を果たしている。(共同体の責任) 能力を活用した方がいい。
反対の論理 国民固有の権利であるから帰化せよ 納税と参政権は無関係(普通選挙権をみよ) 外国のために活動する政治家に議席を与える危険性がある。
国籍の問題(1) フランス国籍法の歴史 1803年:血統権の確立 1889年:生地権の再導入 1927年:現行国籍法の出発点 1940年:ナショナリズムの「純血」主義 1998年:現行国籍法成立 国籍は近代国民国家の産物
国籍の問題(2) 属人主義 すべての国家が採用 親の国籍を受け継ぐ。 属地主義 アメリカ等が合わせて採用 生まれた国の国籍をもつ。 属人主義 すべての国家が採用 親の国籍を受け継ぐ。 属地主義 アメリカ等が合わせて採用 生まれた国の国籍をもつ。 外国人の場合には二重国籍になる。 ・ 在日の場合の特殊性 日本の独立回復のときに、旧植民地の 人々の日本国籍を認めなかった。
外国人の公務就任権 外国人は特別な技能をもっている場合に原則的に労働することができる。(単純労働は不可)(労働ビザの場合 日本の学校を卒業した場合は公務員のみ「法的な制限」 公務員は「公権力の行使」に関わるので不可という政府解釈がかつてあり、今でも一部残っている。 しかし、今では公務員の管理職のみにこの原則は適用され、下級や現業では外国人も認められている。
教師の場合 かつては完全承認と完全不可とが二分 梁さん事件で文部省の方針転換 今ではすべて「常勤講師」のみ許可
東京都の管理職試験受験問題 日本国籍がないことを理由に東京都が管理職昇任試験の受験を拒んだのは法の下の平等や職業選択の自由を定めた憲法に違反するとして、都の保健師で在日韓国人2世の女性、鄭香均(チョン・ヒャンギュン)さん(54)が受験資格の確認と200万円の慰謝料を求めた訴訟の上告審判決が26日、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)であった。大法廷は、都に賠償を命じた二審・東京高裁判決を破棄。一審・東京地裁の「外国籍職員の管理職選考の受験を一律に認めなくても憲法に違反するとは言えない」とした判断を支持し、原告敗訴を言い渡した。 (朝日新聞2005.1.27)