語学教育とシャドーイング 東呉大学日本語文学系 李翠芳
シャドーイングの定義と効用 耳から聞こえた語句や文を、すぐにそのまま口頭再生する言語行為である。 プロソディー感覚を養成し、ひいては聴解力や発話力の強化を目指している。
リスニングの二つの段階 (1) 知覚 音のキャッチ ex. どんな音?どうやって発音するの? (2) 理解 (1) 知覚 音のキャッチ ex. どんな音?どうやって発音するの? (2) 理解 語彙・文法構造・意味・文脈・スキーマ ex. どんな意味?何の内容?
門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用 門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用
イメージ表象の形成 例: ふと窓の外を見ると、すっぽりと雪化粧をした富士山が見えました。 目で見て単語を覚えようとするよりも、声を出して読んだり、意味内容を心の中でイメージするほうが、もっと心的エネルギー(認知資源)を消費する。 長期記憶にある既知情報との関連性が強いものほど覚えやすい。(特に自身に関する情報)
門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用 門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用
門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用 門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用
門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用 門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用
シャドーイングの働き 本来は知覚の自動化を目指した音声のリハーサルであった: プロソディー・シャドーイング (日本人の英語教育では特に発音訂正に焦点) しかし、リスニングの最初の音声知覚段階がたとえ不十分でも、ある程度の音声をキャッチできれば、それに基づいてある程度の理解はできる。 日本語教育ではむしろ、コンテンツ・シャドーイングに傾き、 聴解教育に使っている。今回は3年生対象のコンテンツ・シャドーイングについて述べる。
シャドーイングの目指すところ
シャドーイングの種類 マンブリング:小声であるいは無声で テキスト・シャドーイング:テキストを見ながら (少々速い音声も可能。) (少々速い音声も可能。) コンテンツ・シャドーイング:内容理解も注意 ディレイド・シャドーイング:タイムラグを一秒ぐらい入れることで認知負荷の高い課題をこなす。ある程度の自動化を達成するくらい訓練が必要。母語のスピーチでも苦しい。 フレーズ・シャドーイング:リピーティング
シャドーイング指導の一例 門田修平(2007)「シャドーイングと音読の科学」コスモピア より引用
聴解クラスのシャドーイング シラバス(例) 日付 ニュースで学ぶ日本語 (テープ付)平均337文字/分 週刊こどもニュース 語り手の平均 390文字/分 宿題 今週のサイト掲載内容 4/29 L20~22 シャドーイングチェック L23の内容説明 *<人工雪> *<海賊> 単語暗記 L23 シャドーイング *<海賊>単語表 *<海賊>mp3 5/05 単語試験 内容説明 文字起こし *<足跡>単語暗記 *<足跡>単語表 5/12 L24の内容説明 *<足跡> 単語試験、内容説明 L24 *<海賊>スクリプト *<足跡>mp3 (Bクラス後期シラバスより一部抜粋) *はいずれも略称。正式名称は下記の教材リストの表を参照のこと。
会話クラスのシャドーイング例 ー長短2バージョンの実験ー 長短2バージョンの音声テープ (週毎に1テーマ) 全文組 段落組 音声メールの送信日 初日に全文を 送信 毎日段落別に順次送信 毎日の練習量 (1日15分間) 全文 指定された段落 シャドーイング日記の提出日 次回の授業日 内容理解度のテスト 次回の授業日に全員テスト シャドーイングの一斉録音テープ の提出 次回の授業日に一斉録音
素材の使い分け:i+1 、 i-1の意味
シャドーイング効果を挙げるコツ ・シャドーイングはなぜ効果があるか、説明する ・低学年にはi-1を、高学年にはi+1の教材を。 ・シャドーイングさせる前にスクリプトを説明。 ・つっかえた所にアンダーライン、数回音読。 ・事前に単語テストの実施。事後に文字起こし。 ・シャドーイング成果を全クラス一斉に録音する (何らかの形で教師は必ずレスポンスする。) ・スピードのバージョンをいくつか作成する。 ・練習文の長さもいつくかのバージョンを作る。 ・シャドーイング日記をつけさせる。
第___課 速度 理解 你的feeling~感想~ 第一天 第二天 第三天 第四天 第五天 第六天 第七天 4 3 2 1 0 (請敘述感覺感想) 第一天 第二天 第三天 第四天 第五天 第六天 第七天
検討点 スクリプトをあげるタイミングはいつか? スピードが遅いものは見せて回収? 長所:スクリプトが手元にないと本気で練習 長所:スクリプトが手元にないと本気で練習 短所:間違えたままシャドーイングし定着 スピードが速いものはそのままスクリプトを持たせる? 長所:いつでもスクリプトを見て確認できる。 短所:スクリプトに頼りすぎる。
結論 シャドーイングは語学練習法の一つである。 シャドーイングが不得意な学生 ≠日本語不得意 音読やリピーティングと併用すると効果的。 つっかえた所が問題点。そこを放っておかないで原因を探る。スクリプトなしでスラスラになるまで練習する。 効果:発音の改善・語彙や文型の定着 学生は練習に努力。教師は工夫に努力。
ご清聴ありがとうございました!