食料自給率 日本の食糧自給率を考える ~自給率が低くて何が悪い~ 南山大学 経済学部           太田代ゼミ.

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食料自給率 日本の食糧自給率を考える ~自給率が低くて何が悪い~ 南山大学 経済学部           太田代ゼミ

目次 1 テーマを選んだ理由 2 現状分析 3 要因分析 4 戦後の農業問題と 工業の発展 5 工業と農業の関連性 1 テーマを選んだ理由 2 現状分析 3 要因分析 4 戦後の農業問題と   工業の発展 5 工業と農業の関連性 6 高度経済成長期の   日本 7 GDPからみる農業 8 自給率の単回帰分析 9 自給率の重回帰分析 10 まとめ

大まかな流れ 歴史的背景からみる データからみる 食料自給率と GDPの関係 食料自給率低下の 要因② 食料自給率低下の 要因 ① 4 戦後の農業問題と   工業の発展 5 工業と農業の関連性 6 高度経済成長期の   日本 7 GDPからみる農業 食料自給率と GDPの関係 データからみる 食料自給率低下の 要因 ① 歴史的背景からみる 食料自給率低下の 要因② 8 自給率の単回帰分析 9 自給率の重回帰分析 10 まとめ 1 テーマを選んだ理由 2 現状分析 3 要因分析

食料自給率低下の要因1 数値データからみる4カ国の比較、分析

目次 1.テーマを選んだ理由 2. 現状分析 3.要因分析

TPP参加などにより、更なる自給率の低下が 1.テーマを選んだ理由 TPP参加などにより、更なる自給率の低下が 予測され注目されている。 自給率の低下は本当に ネガティブな事柄なのだろうか? しかし

2.現状分析 食料自給率とは? ①定義   国内の食料消費が、国内の農業生産で   どの程度まかなえているかを示す指標

2.現状分析 食料自給率とは? ②いろいろな食料自給率 ►品目別食料自給率 =国内生産量/国内消費仕向量×100  ►品目別食料自給率     =国内生産量/国内消費仕向量×100  ►総合食料自給率 *カロリーベースの食料自給率   =1人1日当たり国産供給熱量/1人1日当たり供給熱量×100   *生産額ベースの食料自給率   =食料の国内生産額/食料の国内消費仕向額×100 国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(減少量) これを中心に扱う

2.現状分析 4カ国の比較 日本 イギリス ドイツ フランス 食料自給率 (%) 40 65 93 121 国土面積 (1000ha) 37780 24361 35713 54919 総人口 (千人) 126497 62655 82163 63126 ※食料自給率は2009年、その他は2011年のデータ。   農林水産省HP , FAOSTAT HP より作成

2.現状分析 自給率推移 (%) フランス ドイツ イギリス 日本 ※農林水産省HPより作成

2.現状分析 日本 【農業従事人口】 (千人) 農業従事人口 比率 非農業従事人口 ※FAOSTAT HPより作成

2.現状分析 農業従事人口比率推移 ドイツ イギリス ※FAOSTAT HPより作成

2.現状分析 農業従事人口のグラフからわかること 日本の農業従事人口は ほかの3カ国に比べ、急激に減少している

2.現状分析 日本 【農地面積】 (1000ha) 2000年 農地法改正 比率 農地面積

2.現状分析 農地面積比率推移 ※FAOSTAT HPより作成

2.現状分析 農地面積のグラフからわかること 日本の総面積に占める農地面積の割合は ほかの3カ国に比べ、大幅に低い水準で推移している

3.要因分析 回帰分析とは? ◎回帰分析 ①単回帰 ②重回帰 どの程度説明できるかを定量的に分析すること 被説明変数が、説明変数によって  被説明変数が、説明変数によって  どの程度説明できるかを定量的に分析すること  ①単回帰    説明変数が1つの回帰分析  ②重回帰    説明変数が2つ以上の回帰分析

3.要因分析 回帰分析とは? ►被説明変数 ►説明変数 → カロリーベース食料自給率 → 一人あたり耕地面積、農業従事人口       → カロリーベース食料自給率 ►説明変数       → 一人あたり耕地面積、農業従事人口         実質GDP指数、農産物物価指数       

Regression Statistics 3.要因分析 分析結果(日本) Regression Statistics 重相関 R 0.960005446 重決定 Square 0.921610456 補正 R Square 0.909550527 標準誤差 1.642772372 観測数 31 係数 t 値 P-値 Intercept 9.022661527 16.68088934 0.540898111 0.593182229 一人当たり耕地面積 8.349792911 3.332488589 2.505572844 0.018818527 農業従事人口 0.004127382 0.000940415 4.38889549 0.000168604 実質GDP指数 0.247154965 0.12854916 1.9226494 0.065543695 農産物物価指数 -0.201222087 0.075457128 -2.666707479 0.013000963 今回は、5%(両側検定)範囲においてt値の絶対値が2.0423以上ならば有意といえる

3.要因分析 分析結果(日本) この3要素について 有意に影響を受けている! 食料自給率(カロリーベース)は 一人当たり耕地面積 農業従事人口 農産物価格 この3要素について 有意に影響を受けている!

食料自給率低下の要因2 歴史的背景から農業と工業の関連を探る

目次 4.戦後の農業問題と工業の発展 5.工業と農業の関連性 6.高度経済成長期の日本 7.GDPから見る農業

4.戦後の農業問題と工業の発展 戦後の農業問題 工業振興のための農業 1950年:朝鮮戦争 大量の外貨を獲得 1950年:朝鮮戦争  大量の外貨を獲得        高度経済成長につながる基盤を作った。   政府は農業に関して強制的介入を緩和し食料増産を目指した。    しかし実際は、外貨は工業原料・設備の輸入に あてる必要があった。     農産物の輸入額を減らす為に食糧増産が目指された。

4.戦後の農業問題と工業の発展 工業の発展 1930年代頃 (第2次世界大戦前) 生糸、綿花などの繊維産業 1950年代半ば~ 1970年代 エネルギーの転換 高度経済成長の時代 1970年代~ 素材型産業から組立加工型へと変化 1980年代~ 工場の拠点をアジアの国々に移す。 産業の空洞化の問題 2000年代~ 機械工業の発達 自動車、電化製品、電子部品

4.戦後の農業問題と工業の発展

工業と農業の両立以外に、日本の経済活性化の道はない 5.工業と農業の関連性 工業発展のために農業が犠牲になってしまうのか この疑問に対して 諸外国の関税が残っていることにより、日本は不利な競争環境に置かれている 地域の中心になっている大企業が移転すれば、地域の経済や雇用は大きく失われる 工業と農業の両立以外に、日本の経済活性化の道はない

5.工業と農業の関連性 都市 農村 その多くは二度と戻らず、家族農業の後継者が誰もいないという不足を招いた 日本人口の約半分は農村地域に居住し、全世帯の半分が農業を営んでいた 農家は600万戸以上を数えたが、約半分の農家は兼業農家で、閑散期には「出稼ぎ」も 日本経済が回復して高度成長期に入ると、若者は都市で就職のために農村離れした その多くは二度と戻らず、家族農業の後継者が誰もいないという不足を招いた 一方で都市人口は増加し、農地に住宅やマンションが出現、近郊の村は郊外住宅地へ 都市の拡大と電車のスピード化によって、前より多くの農民が都市で働く

6.高度経済成長期の日本 日本の都市・郊外人口の推移 +14 +15

6.高度経済成長期の日本 都道府県別 1人当たりGDP トップ20 資料:内閣府(県民経済計算)1970年

農業部門から工業部門へとシフト ⇒ 農業の衰退 6.高度経済成長期の日本 農業人口の推移 製造、建設業の人口推移 資料:財務省統計局 労働力調査より作成 農業部門から工業部門へとシフト ⇒ 農業の衰退

7.GDPから見る農業 日本 農業GDP(名目) (10億円) 参照:農林水産省

7.GDPから見る農業 日本のGDP(名目) (兆円) (年) 参照:内閣府 国民経済計算(GDP統計)

7.GDPから見る農業 GDPに占める農業の割合の推移 参照:農林水産省、内閣府

ここまでの議論 食料自給率とGDPの関係について分析 自給率低下の要因について・・・ 高度経済成長による 農業人口や耕地面積の減少 データ的側面から分析 農業人口や耕地面積の減少 農産物価格の上昇 データに反映されない 歴史的背景から分析 高度経済成長による 工業の発展 GDPは上昇!? 食料自給率とGDPの関係について分析

食料自給率とGDPの関係 重回帰、単回帰分析による考察

目次 8.単回帰分析 (生産額、カロリーベース自給率とGDP) 9.重回帰分析 10.まとめ

8. 単回帰分析 自給率が低い 日本で自給率が低下した分、 貿易が増加し、 GDPが高くなるのではないか?

8.単回帰分析 (生産額ベースとGDP) ▸被説明変数 → GDP ▸説明変数 → 生産額ベースの食料自給率       → 生産額ベースの食料自給率 まず二つの数値の関係を明らかにするため 単回帰分析を行う。

8.単回帰分析 (生産額ベースとGDP) 回帰統計 重相関 R 0.912635 重決定 R2 0.832902 補正 R2 0.828617 標準誤差 55230.07 観測数 41 係数 t P-値 切片 1868362 109418.5 17.07538 1.07E-19 生産額ベース 自給率 -19437 1394.076 -13.9426 9.75E-17 補正R2が 1に近いほど 当てはまりがよい P値が0.05以下である T値の絶対値が2以上である

8.単回帰分析 (生産額ベースとGDP)

8.単回帰分析 (生産額ベースとGDP) 分析結果から… GDPは 生産額ベースの食料自給率 から有意に影響を受けている!

8.単回帰分析 (カロリーベースとGDP) ▸被説明変数 → GDP ▸説明変数 →カロリーベースの食料自給率

8.単回帰分析 (カロリーベースとGDP) 回帰統計 重相関 R 0.955078 重決定 R2 0.912173 補正 R2 0.909922 標準誤差 40040.78 観測数 41 係数 t P-値 切片 1084209 37133.42 29.19765 4.09E-28 カロリーベース 自給率 -14577.1 724.2892 -20.126 3.34E-22

8.単回帰分析 (カロリーベースとGDP)

8.単回帰分析 (カロリーベースとGDP) 分析結果から… GDPは カロリーベースの食料自給率 から有意に影響を受けている!

単回帰分析だけでは データの信憑性が薄いため、 説明変数を複数にし、 重回帰分析も行う。 8.単回帰分析 (カロリーベースとGDP) 単回帰分析だけでは データの信憑性が薄いため、 説明変数を複数にし、 重回帰分析も行う。

9.重回帰分析 ▶被説明変数・・・GDP ▶説明変数・・・カロリーベース、貿易収支、 インフレ率、就業者人口(第一次産業、 第二次産業、第三次産業)、人口成長率

9.重回帰分析 回帰統計 重相関 R 0.997093 重決定 R2 0.994195 補正 R2 0.990131 標準誤差 回帰分析の結果 回帰統計 重相関 R 0.997093 重決定 R2 0.994195 補正 R2 0.990131 標準誤差 5599.605 観測数 18

9.重回帰分析 T値の絶対値が2以上 係数 標準誤差 t P-値 切片 -246618 93269.15 -2.64415 0.024558 カロリーベース 217.1369 767.9936 0.282733 0.783148 貿易収支 -0.17396 0.07436 -2.33943 0.041379 インフレ率  7620.216 1696.677 4.491258 0.001159 第一次産業 4273.873 759.115 5.630074 0.000218 第二次産業 -34.6236 22.76991 -1.52059 0.159332 第三次産業 180.8976 14.39735 12.56465 1.89E-07 人口成長率 -10473.6 26418.97 -0.39644 0.700106

9.重回帰分析 貿易収支、インフレ率、 第一次産業と第三次産業の が、GDPに有意な影響を与えている 就業者人口 重回帰分析の結果 単回帰分析とは異なる結果 重回帰分析の結果 が、GDPに有意な影響を与えている 貿易収支、インフレ率、 第一次産業と第三次産業の 就業者人口

10.まとめ 単回帰分析では 自給率とGDPの関係があると思われた 重回帰分析することで 貿易収支、日本のインフレ率、 第一次産業と第三次産業の就業者人口が GDPに有意に影響を与えているという結果が得られた しかし!

10.まとめ 日本は産業構造の変化、 貿易収支の変化、 物価上昇により GDPを増加させることができている

結論 自給率低下が悪いこととは言い切れない 産業構造の変化によって自給率は低下したが、 それによりGDPは上がり、より豊かな生活になったといえる 自給率低下が悪いこととは言い切れない