日本型市場経済システムの変容 社会システム論 第12回
日本型システムの利点 平等主義的分配 成果を関係者の間で分配 企業内 企業間 比較的平等な社会を形成
日本型システムの利点 長期的・安定的発展 長期戦略 長期的利益の追求 外部環境の変化に対する柔軟な対応 長期的視野に立った研究開発活動 長期戦略 長期的利益の追求 外部環境の変化に対する柔軟な対応 関係者の協調関係に基づく 長期的視野に立った研究開発活動
90年代に起きた 日本型システムに対する批判 外部要因 内部要因 外国(特にアメリカ)からの閉鎖性批判 変化に対する対応の遅れ グローバル経済における競争力のなさ
日本型システムの問題点 外部に対する閉鎖性・不透明性 既得権益の温存 非効率性 個人の生活の貧弱さ
外部に対する閉鎖性・不透明性 市場の閉鎖性 長期的関係を重視する日本的慣行のため新規企業の参入が困難 外資系企業 他分野からの参入
外部に対する不透明性 行政指導 従う法的義務はないが、従わないと監督官庁から不利益を受ける恐れがある。 法令の直接的な行使ではない指導や勧告 従う法的義務はないが、従わないと監督官庁から不利益を受ける恐れがある。 監督官庁と業界との間のなれあいや癒着の原因となる。 新規参入に対する障壁とされる
日米構造協議 日本企業の輸出の好調により、 アメリカの対日貿易赤字の増加 日本の市場の閉鎖性が原因と指摘 非関税障壁 日本企業の輸出の好調により、 アメリカの対日貿易赤字の増加 日本の市場の閉鎖性が原因と指摘 非関税障壁 1989~90 日米構造協議 日本の経済構造の改造と市場の開放を要求
日米構造協議の合意事項 1.公共投資の増額による内需拡大 2. 土地税制の改革 3.流通システムの改善 4.排他的取引慣行の改善 2. 土地税制の改革 3.流通システムの改善 4.排他的取引慣行の改善 5.内外価格差の是正措置
市場開放要求分野 農産物(牛肉・オレンジ) 流通業 トイザらス 金融・保険業 外資系保険 郵政民営化
既得権益の温存 鉄のトライアングル 政治ー官庁ー業界の癒着 既得権益を持つ業界団体が強い圧力団体となり、政策に影響を与える。
非効率性 本来市場から退出すべき非効率な部門が温存されてしまう。 日本経済全体の弱体化 農業分野、建設業、金融業 日本経済全体の弱体化 国内では生き残れても、グローバル化する国際競争において勝ち残れない。
労働分野 過剰な平等指向によって、著しい成果をあげても正当に評価されない。 例)青色発光ダイオードの特許権訴訟 開発した技術者が200億円の対価を要求 最終的には和解(和解額は不明)
個人の生活 国が豊かになっても、個人が豊かにならない。 長時間労働 生活空間、特に住環境の不備
日本社会の変化 企業内の変化 長期的雇用慣行の変化 転職の増加 特に若年層における転職希望者の増加 非正規雇用の増加 成果主義の導入
非正規雇用の増加 非正規雇用者 男性における非正規雇用の増加 企業側 柔軟な労働力の確保 労働者側 自由な労働形態 パート・アルバイト、派遣労働者、契約労働者 男性における非正規雇用の増加 企業側 柔軟な労働力の確保 労働者側 自由な労働形態
労働者派遣法 1986年施行 専門的職種に限定 1999年 派遣業種の拡大 2004年 製造業への派遣の解禁 2006年 派遣受入期間の延長 1986年施行 専門的職種に限定 1999年 派遣業種の拡大 2004年 製造業への派遣の解禁 2006年 派遣受入期間の延長 不況時における派遣切りの増加に対する批判が出ている。
成果主義の導入 1995年以降、人事評価への成果主義の導入が進む 労働意欲の向上 経営の合理化 2000年以降、成果主義の問題点が明らかになるにつれて、廃止や見直しを行う企業がでてきている。
成果主義の問題点 成果の測定の問題 目標の短期化 企業文化との問題 モラール(士気)の低下 個人の成果が計測ができない。 過度に個人主義的になる。 モラール(士気)の低下
企業間長期関係の見直し 株式持合いの解消 メインバンク制度の縮小 株価低下による含み損の発生 資本の流動性の低下 大手金融機関の再編 金融自由化により、直接金融による資金調達が拡大
株主重視の経営 株主を軽視していたとの批判 外資系ファンドの株主比率の上昇 個人投資家の増加 物を言う株主の増加 株主による経営のチェック機能
日本型市場システムはどうなるか 必ずしもうまくいかない アメリカ型市場志向の経済への移行を模索 世界的傾向(ヨーロッパ等) グローバル競争への対応 経済の効率化 必ずしもうまくいかない
アメリカ型市場中心主義 に対する反省 短期的視点 不安定な経済運営 格差の拡大 経済以外の社会の破壊 社会文化との衝突
今後の方向性 市場主義を導入しながらも、日本型の良さをいかに維持していくか。 社会全体の変化とも連動する。 少子高齢化 成熟化 情報化