「継続的な関心・意欲」と 「自己学習力」の育成を目指した 天文カリキュラム試案 縣秀彦(国立天文台天文情報公開センター) 山縣朋彦(文部科学省初等中等教育局) 田中義洋(東京学芸大学附属高校) 五島正光(巣鴨中高校)、松本直記(慶應高校) 高橋典嗣(明星大学)
目的 = 次期学習指導要領 への提言 ○基礎・基本事項については, 順次性と系統性をふまえた学習を成立させる 目的 = 次期学習指導要領 への提言 ○基礎・基本事項については, 順次性と系統性をふまえた学習を成立させる ○探究的な学習を大幅に導入することで 「継続的な関心・意欲」と 「自己学習力」の育成を目指す
天文分野における調査・研究 「関心・意欲」と「知識・理解」について調査 広島市内公立小学校4校 265名 2001年6月 広島市内公立小学校4校 265名 2001年6月 北海道上富良野西小学校 30名 2004年2月 長野市城山小学校 85名 2004年2月東京学芸大学附属世田谷中学校 80名 2001年11月ほか
広島調査
教科の好き嫌い
理科学習内容の好き嫌い
性差
天文分野の知識・理解
自然体験の有無
調査結果まとめ 必ずしも小・中学生が興味・関心を示す内容とはなっていない 学習内容の「知識・理解」の定着率が低い 一般的に児童の自然体験が乏しく,こ のことが学力形成に影響を与えている
補足事項1 身近主義の誤り 具体的な事例 野球を学ぶ A 身近主義 宇宙を学ぶ 草野球・少年野球 B 反身近主義 暦・時刻・ 自転・公転 補足事項1 身近主義の誤り 具体的な事例 野球を学ぶ A 身近主義 草野球・少年野球 B 反身近主義 松井秀喜・イチロー 宇宙を学ぶ 暦・時刻・ 自転・公転 宇宙論・銀河・ BH・宇宙人 「心理的距離の近さ」がカギ (上田ほか)
(仮説)真正資源を用いた探究的な学習は, 学習者の「内容関与的動機」を満たすのでは? 補足事項2 探究的な学習 の必要性 (仮説)真正資源を用いた探究的な学習は, 学習者の「内容関与的動機」を満たすのでは?
現学習指導要領における小・中学校での天文教育の問題点(1) ○ 時(地球の自転)と暦(地球の公転と季節変化)といった実学の理解に力点が置かれている しかし,地球の自転と公転によって生じる太陽や恒星の運動についての理解は, 傾いた球面座標上での運動である点 視点移動能力が要求される点 運動の原因が複合的である点 などの理由により, 必ずしも本質がみえやすい典型的な教材とはなっていない
現学習指導要領における小・中学校での天文教育の問題点(2) ○観察が長時間必要であったり,夜間であったりと小・中学校の通常の授業時間では実質上困難である. ○児童・生徒の天文・宇宙への興味・関心の方向性とは異なっている. 以上の観点から, 義務教育における天文教育の目的を実学的な視点から宇宙像の理解・科学的世界観の育成に重心をずらすことを検討すべきである (本研究の結論)
〔中学校〕 第2分野 (第3学年) 地球と宇宙 (ア) 身近な天体 月・太陽・惑星・明るい恒星など身近な天体を実際に観察し、 科学的な手法でその天体の特徴を理解すること。 (イ) 太陽系と宇宙 地球のより一層の理解のため、地球環境と他の天体(特に 金星・火星)の環境との比較から地球生命の存在できる環境に ついて理解すること。 (ウ) 宇宙と人間 正しい宇宙像を認識し、個々の宇宙観の形成を援助すること。 「私たちは、いま、どこに存在し、どの時代に生きているのか」 の理解、すなわち生徒個人の「自分探しの旅」を援助する。
まとめ 理科教育の課題のうち,児童・生徒の学習に対する内発的動機付けを高めることと,自らが主体的に学習し問題を解決する能力(自己学習力)を育成することの重要性を考察し,天文単元の学習における現学習指導要領の問題点と具体的な改善の方向を提案した. 本提案が,次期学習指導要領の反映されることを願ってやまない.