看護におけるe-Learningの可能性

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看護におけるe-Learningの可能性 聖路加看護大学 中山和弘 これは第11回兵庫県立大学看護学部国際セミナー(2004.9.18)で「看護教育におけるICTの活用」という講演をしたときの資料で、タイトルだけ変更したものです。

従来の対面授業のデメリット 授業をある一定のレベルに統一する必要があるため、受講生がそのレベルに合っていないと学習効果がほとんどない 聴講形式が中心になるため、受け身になりやすい 授業に出席できなかった場合、モチベーションが低下し、その遅れを取り戻すことが困難 時間の拘束、スケジュールが学校や教員主体で学習者のペースではない 仕事を持つ社会人! 出席だけで満足しやすく、学習成果に差 アイコンタクト、ボディランゲージは・・・

教育のICT化の流れ CAI(Computer-Aided Instruction)、    CBT(Computer-Based Training) の登場  →伸び悩み 高性能で安価なPC、Web、ブロードバンドの普及、 教材設計理論(Instructional Design、ID)   教育工学ー教育の学際領域ー認知心理学、学習心理学、教育学、工学、社会学、文化人類学 Webコンテンツ化、学習履歴管理、コミュニケーションツールによるWBT(Web-Based Training)、WBL(Web-Based Learning) 標準規格化、品質評価で加速 米大企業、大学で普及

e-Learningとは? CBT WBT,WBL DL (Distance Learning) 遠隔教育 MBL PDA CD-ROM DVD MBL PDA 携帯 WBT,WBL 狭義のe-Learning  Mail, WWW,      Database  CAI DL (Distance Learning) 遠隔教育 広義の e-Learning TV会議

e-Learningの種類 IBM 4-tier Learning Model

4層(段階)の学習で高い学習効果 4 Learn through Collocation 集まる、コミュニティ・関係づくり、生かす、実践する 実習(Experience Based Learning) ケーススタディ、ロールプレイング、「ヒューマンタッチ」 3 Learn from Collaboration 議論、練習する コラボレーティブ・ラーニング(Collaborative Learning) ライブバーチャルクラスルーム、ライブカンファレンス 2 Learn through Interaction 調べる、試す、遊ぶ インタラクティブ・ラーニング(Interactive Learning) CBT、WBT、シミュレーション、インタラクティブなゲーム 1 Learn from Information 読む、見る、聞く 情報提供(Performance Support, Reference Materials) Web講義、 Webページ、ビデオ

情報化の4特性と合わせると Collocation ○ Collaborative △ Interactive Information 電子化 非同期性 双方向性 多報性(1対n) Collocation ○ Collaborative △ Interactive Information 従来の講義

e-Learningの特徴・メリット コンピュータとネットワークを利用した教育・学習 Web環境があればいつでも、どこでも 理解度を確認しつつ(即時フィードバック、進捗把握)、学習者のペースで、わかるまで、個別的、主体的、効率的に One to One 更新(update)された最新教材にアクセス可能  学習情報共有し学習コミュニティ形成が容易 教材を公開し学びたいことを自由に検索が可能 興味や関心のあることを誰でも学習できるボーダーレス学習社会へ

教育プロセスモデル(IBM)で行く コラボレーションの程度 高い学習効果(cf.PBL) 学習の変容 研究対象 学習目標 スキル適用  スキル適用  スキル獲得  情報伝達 配信技術 インタラクティブ技術 コラボレーティブ技術 教育者中心  学習者中心  学習チーム中心

ブレンデッドラーニングが理想 対面授業 シミュレーション(CBT) WBL 協調学習 遠隔講義 図書・情報・各種メディア  データベース

e-Learningの提供3システム 教材作成 CAI、CBT→Web    Webコンテンツ作成 PowerPoint 音声 ビデオ アニメーション・・・マルチメディア LMS(Learning Management System)  Web+Database コース作成・管理 受講者登録・管理 アクセス記録進捗・成績管理 掲示板・チャット 学習効果測定 テスト作成(自動採点) アンケート(自動集計) レポート提出・管理 ・・・・       上と合体したLCMSも ライブ授業 TV会議→Web Web教材とお互いの顔を見ながら質問、発言、ディスカッション・・・リアルタイムのコミュニケーション

e-Learningによる変化ー学習者 2001年大学設置基準改正、124単位中60単位まで(通信制の場合はすべて)インターネットで履修可能、2003年大学院は修士に加え博士でも 教える(受動的)から学ぶ(自発的)へ  教員中心から学習者中心へ  from teaching(education) to learning 何故?どこがいいの? 学習者の自立促進  生涯学習へ 教員→ファシリテーターへ 学習者への個別対応の必要性拡大 個人化  基礎知識、テストの効率化で時間確保

変化 時代はコラボレーション 学習コミュニティ形成、新しい教育理論の可能性 変化 時代はコラボレーション 学習コミュニティ形成、新しい教育理論の可能性   掲示板等によるコミュニケーションツールの拡大、協調学習Collaborative Learning、共創型学習→Critical Thinking、学習継続に有用 提供側も受講側もより多くの選択肢  キャンパス・学校間の授業・講師の共有 競争と連携→「どこで」より「誰から何を」学ぶか 著名教員・コンテンツを持つ学校(学部、学科)に学生が集中し寡占化?

看護への導入メリットー教育再確認 社会人の学習ニーズ、キャリアの再確認 大学院、継続教育に大きなメリット? 資格、学位、認定、研修、義務、評価、教養?  看護職対象の調査、e-Learning希望者7割、看護診断・計画、リスクマネジメントへの高い要望(どう答える?) 学習目標、課題、方法、効果の一致度確認,研究   コア・カリ、Outcome-based education(OBE)     カークパトリックの4段階評価モデル     【レベル1(Reaction 反応)】学習後の学習者の満足度     【レベル2(Learning 学習)】理解度、知識習得度、スキル獲得度     【レベル3(Behavior 行動)】学習後の行動の変化     【レベル4(Results 成果)】最終的にどのような成果が出たか

看護への導入メリットー看護の質 同内容を同時に大量に提供・効果測定 看護教育・教育者の質、看護の質管理 同内容を同時に大量に提供・効果測定  看護教育・教育者の質、看護の質管理 看護職の学習者としての自立、Critical Thinker  継続した学習コミュニティとしての看護職集団の  確立とアピール 教育機関の競争と連携 コラボレーション推進  既製の市販教材販売開始!生き残り・・・ 看護の役割=他職種との相違の再確認  情報を市民・消費者にわかりやすく提供=  Consumer Health Informatics  EBNとPUS(Public understanding of science)

看護への導入の課題ー組織 ビジネスとして戦略的ゴールの明確化   経営・管理者による全体調整、マーケティング、  e-Learningの研究、コース開発、FD実施、  IT基盤整備、規程整備  損もしないが儲かりもしないビジネス 高コスト! 要員・組織 教育支援センター  バイトや教員のボランティア精神では不可能  企画、コンテンツ、ネットワーク→最低3人必要 教育工学者 Instructional Designer導入  継続性 画面集中限度約16分 パワポだけ?  コンテンツ作成、コース設計のプロフェッショナル

看護への導入の課題ー教員 オンライン教員研修と評価 コンテンツよりも教員  高度なスキル 学習者にも向き不向き 継続的コンタクト 生活スタイル(24時間、プライバシー) 1クラス20人上限 教員の処遇 インセンティブが不可欠  知的所有権、著書と同等評価、新たなサポート 看護情報学者、看護管理・教育学者の養成  ノウハウ、エビデンスなしでは必ず失敗 ネット上の看護系の無料学習コンテンツの不足  情報発信と情報共有 コミュニティ リテラシー

看護への導入の課題ー教育目的 ナレッジマネジメント、コンピテンシーマネジメント 実践、管理、研究、教育の連携 e-HR コスト削減よりも人材育成、離職率低下、サービスの質の向上 新しいテクノロジー  既存のものの本質を問う 情報による意思決定 =生き方支援としての看護 市民向けe-Learningビジネスをリード?