BSE問題の正しい理解 平成17年度「鹿児島市食生活改善推進委員」研修会 平成17年6月2日

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BSE問題の正しい理解 平成17年度「鹿児島市食生活改善推進委員」研修会 平成17年6月2日 安全は、国民生活総体を見渡したものでなくてはならない 鹿児島大学教授 岡本嘉六  食品は動物や植物などの生き物であり、「命をいただく」感謝の気持ちを忘れてはならない。  命を粗末にする一方で「安心」を求めても、神仏は応えないだろう。

● 精密検査は、牛肉の安全性を確保するための方法ではなく、牛における流行を調べる手段である。 パート1 ●  精密検査は、牛肉の安全性を確保するための方法ではなく、牛における流行を調べる手段である。 ●  牛肉の安全性は、特定危険部位の除去によって達成される。 ●  「全頭検査」は、税金の無駄使いである。 ●  現在店頭に並んでいる輸入牛肉も「全頭検査」されていないが、安全上の問題は生じていない。ダブル・スタンダードの解消を急ぐべきである。

445万頭の検査で14頭が摘発され、30ヶ月未満は非定型例を含めて2頭だった。 日本におけるBSE検査結果(食肉検査) 疑陽性 頭数 30ヶ月 未満 年度 検査頭数 確定頭数 病畜 2001 2002 2003 2004 2005 計 523,591 1,253,811 1,252,630 1,265,817 145,449 4,441,298 59 44 13 30 4 150 3 5 2 1 14 3 1 4 2 * *: 非定型的なBSEと判断された21ヶ月齢の1頭を含む。 445万頭の検査で14頭が摘発され、30ヶ月未満は非定型例を含めて2頭だった。 この外に、農場における死亡牛検査で4頭が確認されている。

英国におけるBSE頭数とvCJD患者数の推移 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 BSE頭数 BSEのピーク 37,280頭 解体処理工程で微量の汚染があったところで、それによって感染は起きない! vCJDのピーク 28人 8年 vCJD患者数 特定危険部位の 食用禁止 30 12年 25 20 15 検査法の 確立 2004年 338頭 9人 10 初発85年 10年 5 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 英国におけるBSE頭数とvCJD患者数の推移

こうした情況でも、「30ヶ月以下も検査しろ」、「全頭検査しろ」と英国民が騒がない訳は? 21世紀に入ってから生まれた牛も、BSEと診断されている。 30ヶ月の基準を下回るが、それでも安全性は確保されてきた。 超高齢牛が、現在まで搾乳され、牛乳として販売されてきた。 年 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 最若齢 (月) 30 24 21 24(2頭) 20 29 30(2頭) 37(7頭) 34 39(2頭) 40 48 50 49 38 2番目に若齢 (月) 31 27 24(4頭) 26 26(3頭) 30(3頭) 31(2頭) 32 30 38(3頭) 36 41 42 49 51 52 53 71 2番目に高齢 (年.月) 10 11.01(2頭) 15.04 14 17.05 16.02 18.1 16.07 15.05 17.02 15.01 13.1 19.09 16.09 22.07(2頭) 20.06 17.01 13.08 最高齢 (年.月) 10 11.01(2頭) 15.04 14 17.05 16.02 18.1 16.07 15.05 17.02 15.01 13.1 19.09 16.09 22.07(2頭) 20.06 22.07 16 英国におけるBSE発生の若齢牛と高齢牛 (動物衛生研究所HPより) こうした情況でも、「30ヶ月以下も検査しろ」、「全頭検査しろ」と英国民が騒がない訳は? 2005年 4月1日

Transmission of BSE ( BSEの伝達) DEFRA BSE information: Last updated: 30 Apr 2001 Infectivity in tissues(各組織の感染性) The aim of the tissue assays was to identify which, if any, of the tissues that might be consumed by humans contained detectable quantities of infectivity. This would of course be of significance in determining the pathogenesis of BSE too. A large number of tissues were inoculated into mice, usually by a combination of intracerebral and intraperitoneal routes 各組織を検査する目的は、ヒトが食べた際に感染する量を含んでいるか否かを確認するためである。このことは、 BSE の発病機序を解明する上でも意義がある。 The initial assays identified infectivity only in brain, spinal cord and retina of the clinically affected cattle. We are aware of no experiments which have detected BSE infectivity in blood using the mouse bioassay. Transmission studies based on intracerebral injection into mice of blood from clinical BSE cases have shown no detectable infectivity. 最初の検査では、発症している牛の脳、脊髄および網膜のみに感染性が確認された。マウス試験法を用いて血液の感染性を調べる実験には気が回らなかった。その後、発症牛の血液をマウスの脳内に接種する伝達試験を実施したが、感染性は認められなかった。 ヒトが食べた際に感染する量を含んでいる か否かを確認するためである。 発症している牛の脳、脊髄および網膜のみに感染 性が確認された。

(マウスの脳内接種によって感染性がなかった発症牛の組織)  このような実験成績を理解した英国民は、「もはやBSEに感染することはない」と安全性に自信を持っている。 他方、不安でしょうがない某国民は、他者をイジメル。 Tissues from clinically affected cattle with no detectable infectivity by parenteral inoculation of mice (マウスの脳内接種によって感染性がなかった発症牛の組織) 脳脊髄液、心臓、肺、気管、膵臓、脾臓、腎臓、扁桃腺、皮膚、脂肪 脳脊髄液、心臓、肺、気管、膵臓、脾臓、腎臓、扁桃腺、皮膚、脂肪 血液:バフィーコート(白血球と血小板)、凝固血、胎児血液、血清 消化管:食道、第一胃、第三胃、第四胃(食道溝、筋柱)、小腸(遠位、近位)、直腸、結腸(遠位、近位) リンパ節:腸管膜リンパ節、大腿、咽頭リンパ節 筋肉:半腱様筋(モモ肉の一部)、横隔膜、最長筋(ロース)、咬筋(頬肉) 神経:馬尾(下半身の脊髄神経根繊維)、末梢神経(座骨神経、内臓神経、頸骨神経) 生殖器  雄:精巣上体、前立腺、精液、貯精嚢、精巣    雌:乳、 卵巣、 胎盤分葉、 胎水(羊水、尿膜腔液)、乳腺、子宮小丘 遠位 子牛への投与試験で 感染性が確認された 筋肉 乳 乳腺 小腸遠位部は、マウスの脳内接種でも感染しなかったが、子牛に食べさせたら発症した。 異種間では、少量で感染しない証明 !

感染発症菌数 (閾値;いきち) 特定危険部位 BSE(狂牛病)は、 「いきち」があるタイプ 筋肉、心臓、血液、脂肪など日本人が普段食べる部位 回腸末端部  << 眼、脊髄、脳 回腸末端部 眼、脊髄、脳 感染発症菌数 (閾値;いきち) 納先生が紹介したアイゲン博士とノバック博士によれば、異常プリオンでは10万個 BSE(狂牛病)は、  「いきち」があるタイプ

化学物質の用量・反応関係 閾値がない 化学物質 栄養素 ▲ 閾値がある 化学物質 健康への悪影響 ● ● NOAEL LOAEL 無有害作用濃度 LOAEL 最小有害作用濃度 用量(摂取量) 化学物質の用量・反応関係 WHO: Hazardous chemicals in human and environmental health - A resource book for school, college and university students. 2000

厚生労働省予算案の主要事項 単位: 億円 億円 2001 125 ー 6.4 2002 149 52 34.9 6.6 ー 2003 130 厚生労働省予算案の主要事項 単位: 億円 億円 2001 125 ー 6.4 2002 149 52 34.9 6.6 ー 2003 130 40 30.8 10 7.3 2004 160 33 20.6 19 12 6 食品の安全性等の確保 食肉 (%) 輸入食品 食品添加物 農薬等 「不安」の代償として、福祉行政などの予算が圧迫され、次世代に多額の借金を背負わせている。それでも、あなたは親か? 石川五右衛門か?  検査キットだけで年間31億円が消えており、これに検査員の給与分(地方自治体負担)を入れると膨大な金額に達する。これが財政赤字として、次世代の肩にのしかかっていく。  国際基準の30ヶ月齢以上とし、サーベーランスのための抜取り検査とすれば、・・・・・ 食品安全 委員会資料

特に牛海綿状脳症と鳥インフルエンザについて 鹿児島の食の安全と安心 特に牛海綿状脳症と鳥インフルエンザについて 7月10日(土) 会場からの新聞記事についての質問について、納 光弘教授は私と同意見だった

食品安全委員会資料 吉川座長論点メモ(EU SSC委員会報告を改変)

「全頭検査」は不要であるが、特定危険部位の除去に関する規定が重要である。 SRM:特定危険部位 「全頭検査」は不要であるが、特定危険部位の除去に関する規定が重要である。 食品安全委員会 第22回食品安全委員会プリオン専門調査会 参考資料1

社説にみる全頭検査問題 Yahoo! 「日本のBSE対策」より それから 答申後 答申前 日米BSE協議 国民不安ぬぐう枠組みに  熊本日日新聞 (10月24日) BSE対策 米国にも「安心」求めよ  沖縄タイムス (10月21日) BSE検査見直し 「二枚舌」では戸惑う  中国新聞 (10月20日) BSE対策/落差埋め消費者に安心感を 山陰中央新報 (10月19日) BSE対策 問われる小泉政権の信頼性 熊本日日新聞 (10月18日) 全頭検査補助金/摩擦の火種にならないか 神戸新聞 (10月18日) 全頭検査見直し/補助金支給は筋が通らぬ 神戸新聞 (10月14日) BSE対策 無用な混乱は避けるべきだ 熊本日日新聞 (10月10日) BSE検査見直し/時間をかけ丁寧な説明を 山陰中央新報 (9月17日) BSE確認 正確な情報で混乱回避を 熊本日日新聞 (9月15日) 全頭検査見直し/あくまで科学的結論を基本に 山陰中央新報 (7月25日) BSE対策 米国にも「安心」求めよ  沖縄タイムス (10月21日) それから 全頭検査補助金/摩擦の火種にならないか 神戸新聞 (10月18日) 答申後 答申前 全頭検査見直し/あくまで科学的結論を基本に 山陰中央新報 (7月25日) 牛肉輸入問題/BSE対策を見きわめて - 神戸新聞 (2005年5月25日) BSE検査緩和 食の安全譲れぬ一線 - 中国新聞 (2005年5月15日) 牛肉選択は消費者の自己責任か - 福島民報 (2005年5月14日) 最近のニュース

全頭検査見直し/あくまで科学的結論を基本に 山陰中央新報 (2004年7月25日) 答申前  全頭検査の見直しについてはいま、内閣府の食品安全委員会が専門的な立場から検討を進めている。あくまでこの作業を見守り、結論を待つべきである。その分、時間がかかってもやむを得ない。食の安全・安心はあくまで科学的根拠に基づいて判断すべきものであり、政治の道具に利用されるのは許されない。 政府は日本で初めてBSE感染牛が見つかった直後の2001年10月に全頭検査に踏み切った。国産牛肉への不安が広がって消費が急減、消費者の不安を解消し、牛肉消費を回復させるための、いわば緊急避難措置だった。全頭検査が消費者の信頼回復に役立った。  しかし全頭検査を実施しているのは日本だけである。BSEの発生が多い欧州連合(EU)は30カ月以上を検査対象としている。  BSE対策で最も大切なのは危険部位を完全に取り除くことだ。除去が確実に行われれば牛肉の安全は保たれる。

全頭検査補助金/摩擦の火種にならないか 答申後 神戸新聞 (2004年10月18日)  消費者対策といいながら、実は、解禁される米国などの輸入肉に「非関税障壁」を設けることではないのか。  厚生労働省と農水省が牛海綿状脳症(BSE)対策の見直し案を食品安全委員会に諮問した。  当初は一部補助が伝えられていたが、全額となると、ほとんどの自治体が希望するとみられ、事実上、国産肉の全頭検査は継続される。 これは自己矛盾ではないか。  食品安全委から「生後二十カ月以下の感染牛を現在の検査法で発見するのは困難」という答申を受けて、これから検査対象の緩和を行おうというのに、一方で、それを事実上、否定するようなことをする。  補助金は新たに二重基準を作ることになる。それがまた消費者不安を助長する。 見直し案はBSEの発生した米国などの二十カ月以下の牛肉を検査なしで輸入再開する道を開く。その結果、検査した牛肉とそうでないものと、二種類が国内で同時に出回るからだ。  そうした二重基準の問題は、新たな貿易摩擦の火種になる恐れがある。米国産の牛肉は、二十カ月以下が八割と主力となっている。しかも、日本の業者の差別化戦略が国の補助金によっているとしたら、世界貿易機関(WTO)へ提訴するといった事態にもなりかねない。  委員会がこれにどういう判断を下すか、注目されるところだが、消費者本位で、一から議論をやり直した方がいい。

「安心」 BSE対策 米国にも「安心」求めよ それから 沖縄タイムス (2004年10月21日) 「安心」 それから  県は引き続き全頭検査を実施する。牛肉への安心、安全を求める「消費者の理解」を得るためだ。多くの自治体が全頭検査を続ける意向という。  国内対策は緩和されるが全頭体制は維持される、という一見ちぐはぐな方針は、「安心」を求める消費者心理を自治体が敏感に感じとったためだろう。  裏を返せば、検査緩和に国民の理解が、まだ十分得られていないということではないか。  諮問された見直し案は、生後二十カ月以下の牛を検査から除外するほか、脳など特定危険部位が適切に除去されているかどうかの定期調査や飼料の規制強化など四項目。  食品安全委が九月に打ち出した「生後二十カ月以下の感染は発見困難で、検査対象から外しても人への感染リスクは増えない」との見解に沿ったものである。  科学的裏づけに基づいた見直しであっても、国民が不安を抱くようでは食品安全行政として万全とは言えない。消費者にデータを提示し、平易な言葉で説明し、地道に意見集約を図る作業が必要だ。  政府案は、国内と国外で二つの基準が存在する「ダブルスタンダード」にもつながる。 米国から輸入が再開されれば、二十カ月以下の米国産牛肉は検査なしで店頭に並ぶことになり、検査済みの国産牛肉と市場で混在する。混乱するのは消費者だ。

食品の安全性の観点からより不安を感じているもの 内閣府食品安全委員会: 平成15年 食品安全モニター・アンケート調査 農薬 輸入食品 添加物 汚染物質 組換え食品 健康食品 微生物 飼料 プリオン  既に半数以上のヒトは、BSEパニックを卒業し、米国でBSEが発生した時点では未検査の「在庫牛」を食べるために行列ができた。  にもかかわらず、「全頭検査問題」によって再び「不安」を増幅する輩が息を吹き返した。 器具・容器包装 カビ毒・自然毒 ウイルス 放射線照射 新開発食品 動物用医薬品 肥料 異物混入 その他 10 20 30 40 50 60 70 80 % 食品の安全性の観点からより不安を感じているもの 内閣府食品安全委員会: 平成15年 食品安全モニター・アンケート調査 「食の安全性に関する意識調査」結果

値段にコダワル男性=47.8% Q:昨年末の米国BSEによる米国産牛輸入規制後、牛丼屋に行く頻度はどうなりましたか? リンク 調査名: 昼食についてのアンケート 調査期間: 2004年2月9日~12日 調査対象: 25~59歳以下の社会人男性 回答数 : 558人 日本で発生した時には、在庫牛を処分したが・・・ 米国のように肉骨粉輸入を法律で禁止しなかった落ち度を責めたが・・・ Q:牛丼に対する気持ちはどれが一番近いですか?   ◇ 国産牛等の安全が保障されているなら、値段が高くなってもかまわない 値段にコダワル男性=47.8% 悲しき者、汝の名はオノコ。 カマビスシキ「安心」など、どこ吹く風。 安くて栄養のある昼飯は何処。 

安全 信頼性 品質・安全性保証 安心 健康障害の発生確率 「安全・安心」がセットで使われるが、科学的には何を意味するか? “Food Safety” とセットされた表現が英語であるか? 安全 信頼性 品質・安全性保証 安心 健康障害の発生確率 科学に基づかない大衆心理は、   古代へのノスタルジアか? それとも、   21世紀のファシズムか? 「消費者の機嫌取り」は、科学に反する! 「ナチュラル=安心」は、フグ、キノコによる死亡事故を生んでいる! Understanding the association between a reduction in hazards that may be associated with a food and the reduction in the risk of adverse health effects to consumers is of particular importance in development of appropriate food safety controls. Unfortunately, there is no such thing as "zero risk" for food (or for anything else). 「食品の品質と安全性システム(FAO、1998)」の付属文書2。 「危害を減らすこととリスクを減らすことの関係を理解することは、適切な食品の安全性制御を発展させる上でとくに重要である。 不幸なことに、食品について『ゼロ・リスク』のような事態はありえない(その他の何についても言えることだが)。」