わが国の信託の新たな展開 -商事信託とは?-
1 SPCと信託の相似 SPC法 1998年9月、「特定目的会社の証券発行による特定資産流動化に関する法律」成立(2000年5月「資産の流動化に関する法律」に改称) SPC法に基づく流動化スキームは、特定資産を原資産保有者(オリジネーター)がSPCに売却し、SPCがその資産から得られるキャッシュフローや資産価値を裏付けとして証券を発行することによって、資金調達を容易・活発にすることを目指す。 →オリジネーターの「資金調達」が目的。
不動産の証券化の一般的な仕組み 設立 不動産売却 資産対応証券購入 特定目的会社 (SPC) 不動産代金の支払 資産対応証券発行 不動産賃貸 不動産の証券化の一般的な仕組み 設立 不動産売却 資産対応証券購入 特定目的会社 (SPC) 不動産代金の支払 資産対応証券発行 不動産賃貸 賃料支払 利息・配当
転換型信託 設立 信託契約 特定目的会社 (SPC) 受益権 不動産賃貸 賃料支払 受益者
運用型信託 投信委託会社 信託契約 設立 信託契約 特定目的会社 (SPC) 不動産賃貸 賃料支払 受益者 受益権
REIT(Real Estate Investment Trust) 投資信託法の改正 そもそも証券投資信託法は「不特定多数の投資家から集めた資金をいったんプールしてファンドとし、それを不特定複数の資産に投資して資金運用し、投資家は運用益の分配を受け、事業者は投資家の資金運用の支援を行うことによるフィー収入を得る」、いわゆる資産運用型スキームのための法制度
従来は、ファンドの運用対象が「主として有価証券」に限定されていたが、2000年5月の法改正(施行は同年11月)により、不動産その他の資産にまで対象が拡大した。改正に伴い、法律名も「証券投資信託および証券投資法人に関する法律」から証券という言葉が取れ、「投資信託および投資法人に関する法律」に改められた。 →SPCとの組み合わせ・調和を目指した!
2 「集団投資スキーム」の認識 金融審議会平成11年7月6日の『中間報告』 ☆わが国における包括的金融システム改革論議に発端がある 2 「集団投資スキーム」の認識 金融審議会平成11年7月6日の『中間報告』 ☆わが国における包括的金融システム改革論議に発端がある *実は、信託法は独自の改革ではない!
集団投資スキームとは? -その機能による分類:商事信託の2類型- ①「投資者の資金をプールして運用する点に重点が置かれ、したがって運用に伴って資産の組替が行われるもの」 ②「特定の資産によって資金調達を行う点に重点が置かれ、単なる資金のパイプとしての導管の性格が強調されるもの」
いずれにせよ… 一方には、大勢の「投資者」が存在する。 「…集団投資スキームが、わが国の社会経済のなかで、今後重要な役割を果たすためには、金融サービスのイノベーションを促進しつつ、権利義務の内容を定めるルールの透明性を高め、投資者が十分な情報の下で、自らの判断にもとづいて、リスクを引き受けリターンを期待することを内容とする取引を行うことができることとなる法的な環境を整備する必要がある。」
そして… 「…投資家に対して法的に安定した仕組み、高度な運用能力、実効性のある投資家保護装置を持った投資商品を提供することであろう。そのような二一世紀のマーケットの要望に十分応え得る投資商品の仕組みと考えられるのが信託である。」
3 商事信託の特徴 ◎ 財産の「受動的な管理・処分」と「積極的な運用・増殖」 3 商事信託の特徴 ◎ 財産の「受動的な管理・処分」と「積極的な運用・増殖」 ▼ 「財産の存在は商事信託にとって不可欠でないのみならず、財産の存在を無批判に前提すると商事信託の本質を見誤るおそれがある」(神田) →重要なのは、「アレンジメント」 *旧信託法1条:「…財産権の移転その他の処分を為し…」 → そうなると、信託「契約」そのものもたいして重要ではない!?
「管理・処分」と「運用・増殖」(イメージ) 受託財産 受託財産
◎ マーケットの意思 ▼「委託者の意思は商事信託では重要ではない」(神田) →重要なのは、「マーケットの意思」 ◎ マーケットの意思 ▼「委託者の意思は商事信託では重要ではない」(神田) →重要なのは、「マーケットの意思」 *誰が「委託者」となるかは相対的に決定される。換言すれば、受益者(と受託者)が先に決まる!
マーケットの意思 何が売れる? 誰が買っている? どのようなアレンジメントにする? コストは?
◎ 受益権の保護 証券化によるメリット ○ 独立性の確保 ○ 流通の自由化(受益権の譲渡) どうやって現実の受益権保護を達成する? ◎ 受益権の保護 証券化によるメリット ○ 独立性の確保 ○ 流通の自由化(受益権の譲渡) どうやって現実の受益権保護を達成する? ○開示の徹底(投資家自己責任の原則) ○受託者責任の厳格化(運用責任)
金銭債権、動産、不動産地上権・土地賃借権 4 2004年信託業法改正 知的財産権、担保権etc 金銭、有価証券 金銭債権、動産、不動産地上権・土地賃借権
参入! けんえい 兼営法による信託銀行 提携・分業
5 2006年信託法改正 受益権 受託財産自体との強い関連性 様々な形
受益権は、受益債権と監督的権能から構成される(2条7項)。受益権の法的性質は、指名債権もしくは指名債権に類するものとされ、分割することができ、その種類ごとに優先劣後構造をとることができる。委託者は財産を受託者に移転 (信託譲渡)することで、受益権を取得する。 受益権は原則として譲渡可能であり、受益者は受託者の承諾を要することなく、受益権を譲渡することができる(93条1項)。信託行為で受益権の譲渡を制限することもできるが、その特約を善意の第三者に対抗することはできない(93条2項)。
受益権の譲渡性は… 市場型間接金融にとっては核心的要素!! とくに受託者の承認を不要とするのは必須 市場型間接金融にとっては核心的要素!! とくに受託者の承認を不要とするのは必須 受益権の証券化により、「譲渡」から「流通」へ…
自己信託について 3条:信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。 二… 一… 二… 三 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録…で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法
企業財産の一部の独立 新プロジェクト もし本体がなくなっても… 企業内企業?? 従業員の出向やリストラを軽減…
企業財産の一部の実質的処分 管理・運営利益 受益証券の発行とそれに群がる投資家 独立「事業」ではあるが…
6 終わりに 受託者責任の明確化 金融商品取引法との関わり ベースとしての投資信託の考え方 6 終わりに 受託者責任の明確化 金融商品取引法との関わり ベースとしての投資信託の考え方 長年にわたる兼営法による信託銀行の独占的業界(信用力、ノウハウ…)