国際物理オリンピック実験試験のシラバス 1.標準的な実験器具・装置が使える(マニュアル無しで使える): ノギス、温度計、電流計・電圧計、ポテンショメータ、ダイオード、トランジスタ、 レンズなどの単純な光学機器 2.適切なマニュアルがあれば使える実験装置 2現象オシロスコープ、マルチメータ、ファンクションジェネレータ、 AD変換器、増幅器、(直流・交流)電源など 3.グラフ処理 線形フィットと誤差、 測定値を適当な関数にして線形フィット⇒ (片)対数グラフ、極座標グラフ 4.測定誤差の取り扱い 測定誤差、誤差の伝播、いくつかの測定値から求められる量の誤差 読み取り誤差 アナログ:最小メモリの1/2; デジタル:最小桁の1 例: 長さの測定(最小目盛1mm のものさし) 53.7±0.5 mm デジタル電圧計 12.3±0.1 V 5.有効数字 最終的に求める物理量を誤差つきで適切な有効数字で表現 単位も要注意 eg. 円柱の体積の測定 103.7±0.9 mm3 6.実験の安全
例1:フックの法則:バネ定数の測定 f m (g) f (N) x (mm) (加える力f)=(ばね定数k)・(伸びx) 分銅の質量 10 2.0±0.5 20 7.2±0.5 30 10.3±0.5 40 11.8±0.5 50 13.7±0.5 60 18.2±0.5 70 20.7±0.5 80 23.7±0.5 90 26.3±0.5 100 30.4±0.5 (加える力f)=(ばね定数k)・(伸びx) 分銅の質量をかえて、バネの伸びを ものさしで測定する。 (分銅の質量には誤差が無いとし、 xの測定のみ誤差を考える) f
例1:フックの法則:バネ定数の測定 f m (g) f (N) x (mm) (加える力f)=(ばね定数k)・(伸びx) 分銅の質量 10 0.098 2.0±0.5 20 0.20 7.2±0.5 30 0.29 10.3±0.5 40 0.39 11.8±0.5 50 0.49 13.7±0.5 60 0.59 18.2±0.5 70 0.69 20.7±0.5 80 0.78 23.7±0.5 90 0.88 26.3±0.5 100 0.98 30.4±0.5 (加える力f)=(ばね定数k)・(伸びx) 分銅の質量をかえて、バネの伸びを ものさしで測定する。 (分銅の質量には誤差が無いとし、 xの測定のみ誤差を考える) f
線形フィットで傾きから物理量を求める 加える力 f (N) 伸び x (mm) 1.縦軸・横軸のスケール を決めてデータでをプロ ットする。 を決めてデータでをプロ ットする。 2.誤差棒を記入 3.データのばらつきと誤 差棒を考慮して最適直 線を描く。 4.上限および下限の直線 を描く。(最適直線が上 限と下限の直線の中心に なるように。 拘束条件:原点を通る。 5.3本の直線から傾きを 求める 6.誤差の桁を考えて最終 的な答を誤差を含めて 求める。 N/m 上限 下限 加える力 f (N) 伸び x (mm) N/m
例2:大気圧の測定;y切片から物理量を求める 1m2の面積に はたらく力の大きさ =気圧、圧力 1 Pa (パスカル) =1 N/m2 水圧 気圧
気圧が生じる理由 多数の空気分子(酸素分子、窒素分子など)が 絶え間なく衝突して力を及ぼしている。 これが圧力(気圧)。 上空は空気が希薄なので、分子の数が少ない=気圧が低い
ボイルの法則を利用 ピストン 体積 V 圧力 P 圧力計 (一定値)
大気圧の測定 ピストンを力Fで押す 注射器の内部 体積 大気圧 注射器の外部 大気圧 :注射器の 断面積 ピストンにはたらく力 体積 圧力 ゴム栓 大気圧 :注射器の 断面積 ピストンにはたらく力 ピストンを力Fで押す 力 圧力= 断面積 体積 圧力
大気圧の測定 大気圧 ピストンを力Fで押す y軸を , x軸を 注射器の内部 体積 圧力 注射器の 断面積 ここでボイルの法則 (一定値) 断面積 ここでボイルの法則 (一定値) y軸を , x軸を のグラフを描くと、そのy切片が が求まる
測定データ 初めの体積 F シリンダーの断面積 台秤 S=50 ml/53mm = 9.43 cm2 V(ml) 100±1 90±1 80 70 60 50 44 F(kg) 1.1±0.1 2.5 4.0±0.2 6.3 9.3±0.3 12.0 F(N) 11±1 25 39±2 62 91±3 118 1/V (ml-1) 0.0100 ±0.0002 0.0111 0.013 0.014 0.017 0.020 0.023
データ解析:線形フィットと外挿によるy切片の推定 150 100 50 -50 -100 切片 加えた力 F (N) 拘束条件 100 ml のとき F=0 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 そして上限と下限から誤差も求める 体積の逆数 1/V (mℓ-1)
例3:片対数グラフでのデータ解析 d I0 I 測定器 すりガラス 厚さ d のすりガラスに、 強さ I0 の光を照射する。 ガラスの厚さ d (mm) 2.5±0.5 6±0.5 8±0.5 10.5±0.5 12±0.5 透過光の強度 I (任意単位) 4.34 1.89 0.82 0.36 0.19 測定器 すりガラス 厚さ d のすりガラスに、 強さ I0 の光を照射する。 透過した光の強さ I を測定する。 d と I との関係 厚さ d を変えて I を測定して d0 の値を求めよ。 (減衰長)
ln I= ln I0-ー d ln I 対 d のグラフ: 1 d0 傾き が -1/d0 の直線 d0 = ---- ± ---- d 片対数グラフでのデータ解析 I0 ガラスの厚さ d (mm) 2.5 6 8 10.5 12 透過光の強度 I (任意単位) 4.34 1.89 0.82 0.36 0.19 ln (I) 1.47 0.64 -0.20 -1.0 -1.70 I 測定器 半透明 ガラス d と I との関係 両辺の自然対数をとる ln I= ln I0-ー d d0 1 ln (I) ln I 対 d のグラフ: 傾き が -1/d0 の直線 d0 = ---- ± ----
例4:両対数グラフでべき乗を求める 温度計 ピストン 断面積 S 気体 L T: 温度、V=SL: 体積 γ: 定圧比熱/定積比熱 T L L(mm) 300 275 250 225 200 175 T (℃) 25 36 52 63 83 98 T (K) 298 309 325 336 356 371 log L log T 断面積 S 気体 L 気体を断熱的に(外との間に熱の出入りが 無いようにして)圧縮する。(断熱圧縮) T: 温度、V=SL: 体積 γ: 定圧比熱/定積比熱 Lを変えながら、T を測定することによって、 γの値を求めよ。 T 気柱の長さLは定規で測定する。 定規には1 mm 間隔の目盛がついている。 温度計には1℃間隔の目盛がついている。 L
例4:両対数グラフでべき乗を求める 温度計 ピストン 断面積 S 気体 L T: 温度、V=SL: 体積 γ: 低圧比熱/低積比熱 L(mm) 300 275 250 225 200 175 T (℃) 25 36 52 63 83 98 T (K) 298 309 325 336 356 371 log L 2.48 2.44 2.40 2.35 2.30 2.24 log T 2.47 2.49 2.51 2.53 2.55 2.57 断面積 S 気体 L 気体を断熱的に(外との間に熱の出入りが 無いようにして)圧縮する。(断熱圧縮) T: 温度、V=SL: 体積 γ: 低圧比熱/低積比熱 Lを変えながら、T を測定することによって、 γの値を求めよ。 気柱の長さLは定規で測定する。 定規には1 mm 間隔の目盛がついている。 温度計には1℃間隔の目盛がついている。 ln T + (γ-1)・ln V = 一定値( C ) → ln T = -(γ-1)・ln V + C’ 傾きから γ= ----- ± -----
誤差の伝搬(間接測定値の誤差) d h V ものさしで直径と高さを測定して、円柱の体積V を誤差を含めて求めよ。 円柱の直径 d=5.3±0.5 mm Δd=0.5 mm 高さ h= 212.6±0.5 mm Δh=0.5 mm mm3 h V ある量Wが変数 x, y, z, …の関数 で x, y, z,…の測定誤差がそれぞれΔx, Δy, Δz,…のとき、 Wの誤差は