公共サービス論(2014.12.1) 第八回 指定管理者制度と 図書館.

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公共サービス論(2014.12.1) 第八回 指定管理者制度と 図書館

1.制度導入経緯と概要 平成15年 地方自治法改正により導入 <地方自治法改正前> 管理委託制度 平成15年 地方自治法改正により導入 <地方自治法改正前>    管理委託制度      地方公共団体の管理権限の下で、公の施設の具体的      な管理の事務・事業を以下の管理受託者が執行         ・公共団体(土地改良区など)         ・公共的団体(農協、生協、自治会など)         ・地方公共団体の出資法人のうち、一定要件を          満たすもの(1/2以上出資等) 管理委託制度では、地方公共団体は、公の施設の管理を、土地改良区(農業水利施設(ダム、水路など)の建設、管理、農地の整備などいわゆる土地改良事業を実施することを目的とし て土地改良法に基づいて設立される農業者の組織である。土地改良事業の中核的な実施主体として位置付けられている。)などの公共団体や、農業協同組合等の公共的団体などに限って行わせることができるものとされていましたが、

地方公共団体の指定を受けた「指定管理者」が、 <地方自治法改正後>  指定管理者制度(平成15年9月2日施行)   地方公共団体の指定を受けた「指定管理者」が、      公の施設の管理を行う。管理の主体に制約はなく、    株式会社などの民間事業者も可。   →地方公共団体が、地域の実情を踏まえ、自主的     な判断と責任により制度を活用 →指定管理者制度においては、株式会社などの民間事業社を含む指定管理者に、公の施設の管理を行わせることができるようになりました。 地方自治法第244条の2 3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。

図表出典:(株)三菱総合研究所. 図書館・博物館等への指定管理者制度導入に関する調査研究報告書. 2010年3月, p.3 法的性質・・・指定管理者は、「管理代行」指定という行政処分の一種により、公の施設の管理権限を指定を受けた者に委任するもの。 旧制度の管理委託は、「公法上の契約関係」法的性格条例を根拠として締結される契約に基づく具体的な管理の事務又は業務の執行の委託。 管理主体は、表のとおり。出資法人(1/2以上出資等)。施設の管理権限は、指定管理者の場合は、指定管理者が有する(「管理の基準」、「業務の範囲」は条例で定める)が、管理委託制度の場合は、設置者たる地方公共団体が有している。指定管理者は施設の使用許可等を行うことができる。この他、利用料金制度(使用者が支払う使用料金を指定管理者(管理受託者)の収入とできる)はいずれも採ることができる。指定管理者は、毎年度終了後に、管理する公の施設の管理業務に関する事業報告書を作成し、その施設の設置者である地方公共団体に提出しなければならないこととされています。これは、地方公共団体が、施設の管理状況や住民の利用状況など、指定管理者による管理の実態について把握するために行います。 図表出典:(株)三菱総合研究所. 図書館・博物館等への指定管理者制度導入に関する調査研究報告書. 2010年3月, p.3

(参考)管理形態の多様化 -PFI、市場化テスト等ー ①PFI(Private Finance Initiative)  ・公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間   の資金、経営能力及び技術的能力を 活用して   行う手法。  ・「民間資金等の活用による公共施設等の整備等     の促進に関する法律」(PFI法)に基づき実施。  ―2011年法改正 民間事業者による提案制度導入                      内閣府HP PFIは1992年イギリスのメージャー政権下で発足した制度で、公共サービスに民間事業者の資金や経営能力、技術力を活用して税金の投入を減少させること、国や地方公共団体の事業コストを減少させること、質の高い公共サービスの提供を目的としている。建設から、含むので事業費が少なくても5億円規模、事業期間が長いという特徴がある。また、施設を 小泉政権下で官から民への動きに後押しされる形で1999年にPFI法が制定、施行された。PFI事業としては、老人福祉施設、廃棄物処理施設、プール、斎場の建設・運営、公園、下水道等多くみられる。教育文化施設にも適用され、平成22年時で約120件。実施後も全国の地方自治体のうち約1割程度しかPFI事業を実施したことがない、必ずしも幅広い行政主体がPFIを活用しているわけではなく、また入札参加者がいない事業もあるなど、民間の参入意欲が高いとはいえないので、法律を2011年に改正。それまでは行政が実施方針案を検討・策定していたが、これを民間事業者ができるようにし、民間のアイデアに基づく事業の増加が期待されているところ。

(特徴) ・契約期間が長い(15~30年) ・VFM評価:Value For Money ・多様な運営方法 ・・・サービス購入型、独立採算型、混合型 ・建て替え時でなければ導入しにくい、企業に とって見通しが立てづらい等の問題点 <導入事例> 三重県桑名市立中央図書館 東京都府中市立中央図書館 等 特徴としては、建設から担うということで、事業規模が少なくても5億円といわれる。契約期間が長い。一連の業務を一括で行うことにより、また性能主義であり細かい手法は問わないので民間のノウハウを活かして低コストで良いサービスを挙げることができるといわれる。 VFM評価により効果を測定する(Value for Money というもので評価する)はPFI事業における最も重要な概念の一つで、支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方のことです。従来の方式と比べてPFIの方が総事業費をどれだけ削減できるかを示す割合。桑名市立図書館は22%とされている。多様な運営形態、費用を民間で負担し、毎年自治体はサービスを購入するという形で経費を払う、あるいは使用料等で独立採算を取る、又は混合型。運営方法も様々で、例えば1 基本は各自治体の直営であるが委託会社や人材派遣会社に業務の一部分を委ねる、館長は公務員。2 館長業務などを自治体職員が行い、その他多くの業務はPFI事業者、3 PFI事業者ではない別の指定管理者を採用し運営を遂行という3パターンがある。 問題点として、新築や建て替え時でなければ導入しにくい、30年後はあまりに先で企業にとって見通しがたてづらく参入しづらい等の問題点が挙げられている。例えば桑名市立中央図書館では、 導入事例としては三重県桑名市立中央図書館が有名であるが、ここは、最初にPFI入れた。鹿島グループで畝委はTRC。図書館の運営をPFIに組み込むことにより、30年間の図書購入費の確保と30年間の人材、人員確保を狙った。比較して、蔵書、面積、開館時間、日数の増大による人員確保が行政で困難、メディアの変革に行政判断がついていかない、リスク分担の明確化等を決定権以外の全てをPFI事業とした。評判は非常によい、夜7~9時の利用者が1割に上る。ICチップ導入による貸出作業の迅速化や職員対応なども。

②市場化テスト ・ 「官」が独占してきた「公共サービス」について、「官」と「民」が対等な立場で競争入札に参加し、価格、質の両面で最も優れた者がそのサービスの提供を担っていくこととする制度。 ・根拠法令:「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」。「公共サービス改革基本方針」に対象として選定される公共サービスの内容等が定められる(毎年度閣議決定)。                  規制改革・民間開放推進会議HP <導入事例>   ・JETRO アジア経済研究所 専門図書館 スライドのような内容であるが、民間委託の場合はあらかじめ民に委ねるサービスの範囲・責任を官が決定するが、市場化テストは官民対等の立場で競争入札。入札の実施について定める実施要項を作成し、確保すべきサービスの質等。官民競争入札等監理委員会の議を経る。 独立行政法人日本貿易振興機構。市場化テストの対象業務・・独立行政法人の業務。アジア経済研究所図書館とビジネスライブラリーが対象業務。図書の装備、配架、雷管利用者対応、貸出・返却、複写など入札対象業務。結局自ら落札者となった。 なお、平成22年1月、内閣府の官民競争入札等監理委員会において、国立大学法人の事務のうち、施設管理・運営業務と並んで図書館業務についても、市場化テスト手法を含めた民間委託の一層の適用も視野に入れた業務の改善について検討が行われ、「図書館運営も民間委託すべき業務を切り分けて民間委託すべき。」と指摘されているところである。大学図書館においては、かねてより図書館業務へのコンピュータシステムの導入や共同分担目録作業等により業務の平準化・効率化を推進してきた。さらに、製本や受付・閲覧などの一部の可能な業務については外部委託を活用するなど、業務の改善に努めているところである。このほか、大阪府立図書館では、法律に基づくものではないが自主的に、大阪版民間提案型で実施している。TRC。

③業務委託 ・私法上の契約関係契約に基づく個別の事 務又は業務の執行の委託。 (図書館政策企画委員会)2010年4月現在 416館対象   ・私法上の契約関係契約に基づく個別の事   務又は業務の執行の委託。     「公立図書館の業務委託などに関する調査」      (図書館政策企画委員会)2010年4月現在 416館対象      ・契約形態(回答334館)        業務委託契約 86.2% 労働者派遣契約 2.9%          その他 8.7%(直営・指定管理者・PFI) 

・「業務委託など」を導入した目的・理由(回答304館・複数回答可) ・「業務委託など」を導入した主な目的・理由(回答290館)    人件費が圧縮できる 58.2% 専任職員の定数削減 52.6%  ・「業務委託など」を導入した主な目的・理由(回答290館)    専任職員の負担が時間的に軽減され、専門性の高い業務に    集中できる 20.1% 開館時間や開館日数の拡大によって利用者へのサービス    向上が図れる 18.1% 専任職員の定数削減 15.1%       ⇒行財政改革とサービス向上の二分化 ・業務委託内容(回答304館)    その他(資料装備、移動図書館者の運転、資料搬送)    260館    奉仕業務Ⅰ(貸出・返却、利用者登録等の窓口業務)    258館    資料管理(選書、資料発注、督促、配架)            245館    奉仕業務Ⅱ(レファレンス業務、資料複写、児童サービス) 189館 二分化・・・企業に業務委託している館は利用者へのサービス向上を目的・理由としているのに対して、「公社、財団」は経費削減、財政難を目的・理由としていることが対照的

2.図書館への指定管理者制度 導入状況 平成17年度 2,955 54 1.8% 平成20年度 3,140 203 6.5% 平成23年度 (同種施設含む) 指定管理者 導入施設数 公立の施設数に 占める割合 平成17年度 2,955 54 1.8% 平成20年度 3,140 203 6.5% 平成23年度 3,249 347 10.7% この6年で5倍に増加。 文部科学省 社会教育調査

(参考)制度導入の検討結果について ・都道府県立図書館は2013年までに4館導入済,2015年度までに1館導入予定 都道府県は岩手,山梨,愛知,岡山。導入予定なし32県。9県未回答。 市区町村立図書館は426館が2014年までに導入予定。分母が3249館であれば,導入率は13.1%(H26) ・都道府県立図書館は2013年までに4館導入済,2015年度までに1館導入予定 (出典)日本図書館協会「図書館における指定管理者制度        の導入の検討結果について2014年調査(報告)」

種類別指定管理者別施設数(抜粋) 文部科学省 社会教育調査 他施設に比べて企業の割合が高いのが特徴。平成17年度は、3分の2を財団が占めていた頃と比べ、民間企業の伸びが目立つ。理由の1つは、貸出サービスを中心に構成される図書館の運営・サービスの平準化が進み、地域の特色を活かした独自性を打ち出すよりも全国どこに行っても同じような運営、サービスが行われることによって全国市場をターゲットにした図書館サービス委託企業の参入可能性を広げたこと、そして実際に全国で図書館業務の民間委託が近年大きく進んだことが背景として挙げられるとの指摘がある。 文部科学省 社会教育調査

 司書数の推移 司書の数は年々増加しているが、平成20年度に初めて非常勤職員数が専任・兼任数を上回った。 平成23年度は、非常勤と指定管理者の割合が司書全体の63.3%にのぼった。 (単位:人) ○ 司書の数は年々増加しているが、平成20年度に初めて非常勤職員数が専任・兼任職員数を上回った。 ○ 平成23年度調査からは、これまで非常勤職員としてカウントしていた指定管理者の職員を別途把握。 ○ 平成23年度調査結果では、非常勤と指定管理者の職員の割合が司書全体の63.3%にのぼった。 司書 (指定管理者) *H20年度までは 非常勤職員として カウント 割合逆転 ○割合の推移 平成8年度 平成11年度 平成14年度 平成17年度 平成20年度 平成23年度 専任・兼任 83.5% 76.9% 68.2% 55.7% 47.6% 36.7% 非常勤・指定管理者 16.5% 23.1% 31.8% 44.3% 52.4% 63.3% (出典)社会教育調査

3.制度導入後の国の動向 〇総務省関係通知… ○文部科学省関係通知… 資料1 参照 (略) 資料2 参照(略) 資料1 参照 (略) 資料2 参照(略) ○平成15年に地方自治法が改正されて、指定管理者制度が導入されましたが、その後、国で、指定管理者制度の導入に関して様々な通知が出され、国としてのスタンスが示されてきた(総務省関係通知は野本先生の授業で配布)。 ○(資料)まず、平成15年に地方自治法の一部改正行われた際に発出された通知では、指定管理者制度の趣旨などについて説明がなされています。この中で、指定管理者制度導入の目的として、「住民サービスの向上」とあわせて、「経費の節減を図ること」が並列で明示されています。 (資料)また、平成17年3月に総務省から出された「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」では、指定管理者制度の活用について  ・①現在直営で管理しているものも含め、すべての公の施設について、管理の在り方についての検証を行い、検証結果を公表すること…と義務付けるとともに、  ・③では、公の施設の管理状況について、「管理主体が指定管理者となっていない場合にはその理由等の具体的な状況を公表すること」  とあり、指定管理者制度を導入することを積極的に推進していました。 →つまり、全ての「公の施設」について、指定管理者制度の導入を検討するよう促している。アウトソーシングすることが大前提にあり、そうしないならその理由を述べよというスタンスをとっている。

(参考)「社会教育法等の一部を改正する 法律案に対する附帯決議」 (参考)「社会教育法等の一部を改正する   法律案に対する附帯決議」 平成20年6月 参議院文教科学委員会 指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと。 ⇒「望ましい基準」改正(平成24年) 管理者との緊密な連携 ・事業の継続的かつ安定的な実施の確保 ・事業水準の維持及び向上 ・司書及び司書補の確保,資質・能力の向上等 ○文部科学省関係でも、平成20年に図書館法改正の国会審議が行われているときに、法改正の内容とは直接関係 ないのですが、指定管理者制度についても随分議論がなされました。 ○以前もお話ししましたが、この法改正の時の附帯決議にも、「指定管理者制度の導入による弊害についても十分配慮して、適切な管理運営体制の構築を目指すこと」が含まれまして、文科省としての積極的な対応が求められました。この国会の大臣答弁では、「公立図書館への指定管理者制度の導入は長期的視野に立った運営が難しい、研修機会の確保や後継者育成等の機会が難しくなり、なじまない。図書館に制度を導入することであれば、そういった懸念がおこならいようにしていただくことが大事だと答弁している。(その後、これを踏まえて改正された望ましい基準には、スライドのような点が図られるよう、管理者との緊密な連携の持ちに、基準に定められた事項が確実に実施されるよう努めるものとする、と定められたところです。

4.制度と図書館をめぐる論点 (日本図書館協会 松岡 要氏の指摘) ①図書館は収益の生じない事業であること ②民間には、図書館の管理運営のノウハウは希薄である ③指定管理期間の設定は図書館事業の蓄積を困難にさせる ④図書館事業の全面的展開が難しい ⑤図書館協議会はどのように位置づけられているか ⑥指定管理者にゆだねる業務の範囲を限定すること (日本図書館協会の見解) 「公立図書館の指定管理者制度について」 (平成20年12月) http://www.jla.or.jp/portals/0/html/kenkai/200812.pdf では、制度をめぐって何がそんなに問題として挙げられているのか、見ていきます。これは日本図書館協会事務局の松岡要さんがまとめた指摘。協会は平成20年に見解を出しているが、指定管理者制度の基本的な姿勢は、「指定管理者制度は図書館には不向きな制度である」といえる ○「①図書館は収益の生じない事業であること」 ○無料を原則とする図書館は、他の施設とは異なって、指定管理者ががんばったからと言って新しい収入を得ることは基本的にはない。このため「利用者が増えれば増えるほど負担が増えてしまう」という矛盾を抱えている という指摘です。 ○「②民間には、図書館の管理運営のノウハウは希薄である」 ○図書館業務の業務委託は進んでいましたが、管理運営全般にわたって、安定して行う物的能力や人的能力を有している企業はない…ことを指摘しています。 ○「③指定管理機関の設定は図書館事業の蓄積を困難にさせる」 ・指定期間が短期であるため、長期的な視野に立った運営が難しく、図書館にはなじまないこと、 ・また、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しいといった例を挙げ、 ○サービスの蓄積や展開、所蔵資料の構築は計画的に実施することが不可欠であるが、管理者が頻繁に変わる可能性がある指定管理者制度では、適切に行えない…と述べています ○「④図書館事業の全面的展開が難しい」 ○図書館は、他の自治体の図書館や、(大学図書館や学校図書館など)他館種の図書館、さらには幅広く関係機関との連携協力が不可欠でありますが、これは、競争を原理とする企業の論理とは相いれないと指摘しています。 ○具体的には、 ・資料の共同保存や、資料のデータベース化を、図書館間や、自治体内の他の施設と連携して行うことの必要性が国の提言などで指摘されていますが、これを実施することが困難であることを指摘しています。 ・また、子供の読書活動の推進や、文字・活字文化の振興を進める事業の立案や実施は、事実上図書館が担っている自治体が多くあります。例えば、地域で「子どもの読書活動の推進計画」を作成するに当たっては、学校図書館や、教育委員会をはじめとして行政の関係部局、さらに地域で読書活動を推進しているグループの方たちといった、子ども読書推進の関係者を一堂に集めて、協議を行ったり、個別に当たって様々な調整を行うことが必要だが、こういったことを指定管理者が行えるのか・・・行えない・・・ということを指摘しています。 ・さらに、都道府県立図書館の場合は、市町村立図書館への支援として、資料の相互貸借や、研修の実施、業務に関する相談対応(指導)をすること、さらに、県全体を見渡した図書館振興方針を策定し、先導していくという役割もありますが、こういった業務は、指定管理者には委託しにくい機能であることを指摘しています。 ○「⑤図書館協議会はどのように位置づけられているか」 ○図書館法では、館長の諮問機関として、図書館協議会の設置を促しています。指定管理者制度を導入した図書館の場合、館長は民間の社員ということになりますが、この場合に図書館長に対して館長が諮問することができるのか、また、図書館協議会は館長に意見を述べることができるのか。指定管理者にとってみれば、企業の自立的な運営に対して妨げとなるものとしてとらえかねない・・・・と指摘しています。 ○「⑥指定管理者にゆだねる業務の範囲を限定すること」 ○指定管理者を導入するに当たって、指定の範囲を限定していることがありますが、資料の選定やレファレンスなどを「根幹的業務」とみなして、公務員である館長を置き、合わせてその実務を担当する職員も公務員を置くことがあります。このことが、指揮命令の二元化につながることを問題視しています。 ○以上が、日本図書館協会が指摘している主な問題点であります。

<反対論の例> ②コストカットが最大の目的となってしまい、 サービスの水準が低下する。 ③民間企業に公共のものを任せられない <反対論の例>   ①社会教育法(又は図書館法)の理念に反する  ②コストカットが最大の目的となってしまい、   サービスの水準が低下する。  ③民間企業に公共のものを任せられない  ④「市民」の施設という意識を失わせる。  ⑤同じ教育委員会所管のもとで学校教育と   連携ができる このほか、①は価格競争や指定期間といった概念は、地域のニーズに応じて長い期間行われていく社会教育の理念にあわないという趣旨。先ほどの日本図書館協会の指摘にもあったような社会教育法に謳われる学校・家庭・地域の連携や機会均等(第三条)図書館奉仕(図書館法第三条 土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意)あたりと企業倫理が相容れないということか。

⑥地域の独自性が活かせない ⑦3~5年の契約では、事業の継続性が担保できない ⑧企業としての採算性に無理がある   ⑥地域の独自性が活かせない   ⑦3~5年の契約では、事業の継続性が担保できない   ⑧企業としての採算性に無理がある   ⑨指定管理者の指定の公平性・適切性に疑問がある   ⑩職員の身分が不安定になる(パート雇用の増加等)   ⑪民間の独自性・創意工夫を発揮しにくいタイプ     の施設である   ⑫経営努力を引き出すインセンティブがない   (収益・報酬などが見込めない) 反対論は理念的・理論的に制度自体を問題にしているものが多い。ただ、指定管理者制度のみならず業務委託に当てはまるものもあり、また企業を前提にしていて、NPOや財団にあてはまらないものがあったり、⇒ ・指定管理者制度特有のこと?・NPOや財団は?直営施設における学校との連携、地域の独自性、創意工夫?どれだけ現状評価しているのか、公共のものは官のもの?

<賛成論の例> ①サービスの向上 ②効率的運用 ③経費の節減 ・その他、公務員型人事では実現できない高度 な知識・熟練能力を持った専門職確保の可能 性、組織運営の柔軟性 等 ・・・北九州市の事例 司書有資格者は15%増加。平日の開館時間が1時間延長されたが、人員は直営時より23人減り、運営経費は1.1億円削減が可能であった。利用者アンケートでは約90%が指定管理者制度に満足していると回答。あまり多くない。 導入自治体において経費節減効果のアピールが目立つことから、反対論にあるような多くの自治体の図書館への導入目的がコストカットにあることをうかがわせるが、そのことが積極的な賛成論の展開をためらわせているのか。

(参考)導入後の状況に関する調査 「公立図書館経営における指定管理者制度導入に関する 現状調査」(2008.12 安藤 友張氏)  現状調査」(2008.12 安藤 友張氏)      2007 年6月現在 回収率 73.6%      導入自治体59団体 導入館 69館  〇指定管理者制度の導入効果    ・「経費節減」           (自治体 86.4% 指定管理者 78.3%)    ・「利用者サービスの向上」           (自治体 83.1% 指定管理者 75.4%)    ・「意思決定の迅速化」   (自治体のみ 13.6%)    ・「図書館経営の弾力化」(指定管理者のみ 66.7% )    ・「その他」     自治体・・・専門的人材の確保、図書館近隣地域への積極的な宣伝連携 指定管理者・・・司書の資質の向上、司書が司書として働ける 

〇指定管理者制度導入後の問題点 ・「図書館経営の安定性の欠如」 ・「その他」 (自治体 30.5% 指定管理者 49.3% )  ・「図書館経営の安定性の欠如」     (自治体 30.5%  指定管理者 49.3% )  ・「長期的な視点に基づく図書館経営ができない」     (自治体 20.3%  指定管理者 44.9% )  ・「図書館職員の労働条件の悪化」     (自治体 16.9%   指定管理者 36.3% )  ・「その他」    自治体・・・「レファレンスサービスの質」 指定管理者・・・「教育委員会の職員(特に部課長)に図書館を                           理解できる人を養成しないといけない」  等

5.課 題 ○(略)制度そのものの是非を一般的に論じるのではなく、当該図書館・博物館について、制度導入によって改善が可能な要因があるのか、むしろ問題解決を困難にする要因となるのか、という観点で個別事項ごとに検討するのが適当である (国立国会図書館 柳氏) 制度をめぐっては、導入ありき、あるいは制度そのものの是非を論じるのではなく、まず、図書館が対応すべき諸課題に取り組むこと。

①自治体行政における図書館行政の意義の明確化、 住民等関係者に対して運営方針を提示 ②方針を実現するためにどれだけの資源配分 (特に予算と人員)ができるか ③住民のニーズに応えた新しいサービスの開発・ 提供を可能にするにはどのような条件が必要か ④どのような種類の専門職員が必要か ⑤コストパフォーマンスの最大化 ⑥目標に見合った活動実績をあげるための指標を どのように設定するか、モニタリングと評価を誰 が行うか ⑦利害関係者との良好な関係の構築と発展 例えば、図書館がこうした課題に取り組む中で、指定管理者制度を採用することのメリット・デメリットを当該自治体ごとに評価・判断することが実際的である。

6.導入後のチェック項目 ○「指定管理者制度を検討する視点 - よりよい図書館 経営のために」(試行版)(JLA図書館政策企画委員会) ○「指定管理者制度を検討する視点 - よりよい図書館   経営のために」(試行版)(JLA図書館政策企画委員会)    ・指定管理者制度適用後、経費の縮減だけでなく図書館      サービスの向上がどのように図られたかを客観的な視点     で評価を行うことが必要     ・評価は当然、議会、住民、利用者に公開されることが重要      ・それぞれからの意見を募ることも必要 →指定管理者制度を導入する図書館は急速に増加しています。 →これまで、図書館関係者の間で指定管理者について議論になるとき、制度導入の是非についての議論が多かったように思いますが、現実に、導入している図書館が増えている現段階では、導入している現場で、実際に起こっている問題について明らかにして、その解決策を検討していくことが必要であると感じています。日本図書館協会では、指定管理者を導入するかどうかの検討にあたってのチェック項目について、また、導入後のチェック項目の検討を進めており、試行版を公表しています。図書館関係者の間で、このような取組を今後進めていくことが必要と考えられます。

チェック項目 (1)サービス目標の達成状況と自治体の総合計画作成への関与 (2)業務日誌などの報告 (3)業務連絡会会議録 (4)業務の執行体制 (5)他機関との連携・協力 (6)利用者要望の受けとめ (7)職員の育成等 (8)職員の待遇、労働条件等 (9)備品等の確認 (10)利用者の安全管理 (11)指定管理者制度適用の解除 (関係動向)   日本図書館協会「図書館事業の公契約基準について」          (平成22年9月)               資料3(略)             

<参考文献> ・松岡要.“公立図書館の管理運営の外部化”.新図書館法と現代の図書館.日本図書館協会, 2009,p.224-246 ・柳 与志夫. 社会教育施設への指定管理者制度導入に関わる問題点と今後の課題―図書館及び博物館を事例として. レファレンス. 国立国会図書館調査及び立法考査局, 2012.2, p.79-91 http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3480644_po_073304.pdf?contentNo=1 ,(参照2013-11-20). ・安藤 友張. 公立図書館経営における指定管理者制度導入に関する現状調査. 日本図書館情報学会誌. 2008.12, Vol. 54, No.4, p.253-269 http://ci.nii.ac.jp/els/110007087494.pdf?id=ART0009020994&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1384931565&cp= , (参照2013-11-20). ・米谷優子他. 大阪府立図書館への市場化テスト適用の過程と課題. 大阪市立大学大学院創造都市研究科 電子紀要, 9巻1号, 2012, p.86-108 ・薬袋秀樹. 指定管理者制度と図書館. 図書館司書専門講座講義レジュメ ・他市における図書館への指定管理者制度導入事例(仙台市図書館協議会 資料)