第3回 コロイド実用技術講座 分散凝集のすべて 分散・凝集をゼータ電位及びDLVO理論により解釈すること

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第3回 コロイド実用技術講座 分散凝集のすべて 分散・凝集をゼータ電位及びDLVO理論により解釈すること ~その理論構築と実証~ 東京理科大学薬学部 大島広行 平成27年10月26日 日本化学会館

目次 粒子間のvan der Waals 相互作用 粒子間の静電相互作用 DLVO理論:2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線 柔らかい粒子の場合 電気泳動法によるゼータ電位の求め方

 エネルギーおよび電位の尺度 熱エネルギーの大きさ(室温)    kT = (1.38  10-23J/K)  300 K = 4  10-21 J 電位で表した熱エネルギー 電位 y   無次元化した電位 (例 y = 25 mV  y = 1, y = 50 mV  y = 2)

Derjaguin-Landau-Verwey-Overbeek (DLVO)理論 微粒子間のvan der Waals引力(分子間力の総和)と 静電斥力(拡散電気二重層の重なり) のバランス 分散系の安定性を予測 van der Waals引力 拡散電気二重層 静電斥力

粒子間のvan der Waals 相互作用

分子間引力の総和 微粒子間引力 分子密度N1 分子密度N2 体積V1 体積V2 分子間van der Waalsエネルギーu 分子間引力の総和   微粒子間引力 分子密度N1 体積V1 分子密度N2 体積V2 分子間van der Waalsエネルギーu 粒子間van der Waalsエネルギー

aiとni は分子i (i = 1, 2) の分極率とゆらぎの固有振動数, hはプランク定数, eoは真空の誘電率 分子間van der Waalsエネルギー r 分子1 分子2 ここで は London-van der Waals定数 aiとni は分子i (i = 1, 2) の分極率とゆらぎの固有振動数, hはプランク定数, eoは真空の誘電率 n1とn2の調和平均2n1n2/(n1 +n2) を相乗平均 (n1n2)1/2で近似するとC12 = (C1C2)1/2 が得られる。 ただし, C1, C2はそれぞれ真空中において分子1同士および分子2同士の相互作用に関する London-van der Waals定数である。

平板間van der Waals相互作用エネルギー d1 h d2 (単位面積当たり) A12 = p2C12N1N2 = p2(C1C2)1/2N1N2 = (A1A2)1/2は 異種の物質1と2の相互作用に対するHamaker定数 (Ai = 物質i (i = 1, 2) 同士の相互作用に対するHamaker定数)

J.N. イスラエルアチヴィリ, 分子間力と表面力第3版, 大島広行訳, 朝倉書店, 2013

Derjaguin近似 2個の球および2本の円柱間相互作用の簡単な計算法 半径 a の2球間または2円柱間の相互作用エネルギー 半無限平板間相互作用エネルギー       の積分     半径 a の2球間または2円柱間の相互作用エネルギー

2個の球に対するDerjaguin近似 h a1 a2 x H dx B.V. Derjaguin, Kolloid Z., 69, 155 (1934).

2本の平行円柱に対するDerjaguin近似 x dx H a1 h Cylinder 2 Cylinder 1 M.J. Sparnaay, Recueil, 78, 680 (1959). H. Ohshima and A. Hyono, J Colloid Interface Sci., 333, 202 (2009).

dx dy 交差する2本の円柱に対するDerjaguin近似 Cylinder 2 Cylinder 1 a2 y h a1 x H M.J. Sparnaay, Recueil, 78, 680 (1959). H. Ohshima and A. Hyono, J Colloid Interface Sci., 333, 202 (2009).

Derjaguin近似 2球 平行2円柱 交差2円柱 (per unit length) Sphere 1 Sphere 2 Cylinder 1 Cylinder 2 Cylinder 1 Cylinder 2

Derjaguin近似による微粒子間 van der Waals 相互作用エネルギーの計算 2枚の 半無限平板 a2 H a1 h (単位面積当たり) a1 a2 H a1 a2 H (単位長さ当たり)

2個のトーラス粒子間の van der Waals エネルギー b R H Torus 1 Torus 2 a 赤血球間相互作用の モデル 2本の平行な円柱(半径a, 長さ2pb)の相互作用エネルギーV(R)に等しい(パップスーギュルダンの定理) H. Ohshima and A. Hyono, J. Colloid Interface Sci., 332, 251 (2009).

Hamaker定数に対する媒質の影響 媒質3中における物質1と2 の相互作用に対するHamaker定数 1 2 3 Ai = 真空中における物質i (i = 1, 2) 同士の相互作用に対するHamaker定数

表面層で覆われた2枚の平行な半無限平板 1 2 3 2 1 半無限平板 半無限平板 表面層間の相互作用 平板間の相互作用 d h d 1  2 3 2 1 半無限平板 半無限平板 d h d Core Surface layer Surface layer Core (単位面積当たり) (h « dの場合) 表面層間の相互作用 (h » d の場合) 平板間の相互作用

粒子間の静電相互作用

粒子は裸ではなく拡散電気二重層に囲まれている 対イオン 平衡イオン分布 副イオン 電気二重層の厚さ (Debye長) 電位分布  (r) o 表面電位 平衡 電位分布 粒子は主として対イオンからなる イオン雲(平衡イオン分布) の衣を着たままBrown運動をする a r 1/k

電位y(r) に対するPoisson-Boltzmannの式 + Poissonの式 Boltzmannの式 Poisson-Boltzmannの式

低電位の場合:電位の分布 Debyeの長さ + + 粒子表面 表面電荷密度 s + 電解質溶液 + + + + x (x) 表面電位 - + + - 粒子表面 表面電荷密度 s + - - 電解質溶液 + - - + - + - - + + + - + + + x (x) 表面電位 電位分布  o x 1/ Debyeの長さ

k2 Poisson-Boltzmann方程式の線形化とDebye-Hückelのパラメタk 小さい量 «1 小さい量   «1 « 25mV 実際には 50mV 線形近似:exp(小さい量)  1 + (小さい量) k2 電気的中性条件よりゼロ Debye-Hückelの式

表面電位yo と表面電荷密度s の関係(低電位の場合) 表面から出る電気力線の数(表面電場) 電位に対する境界条件 を代入 表面電位 電位の傾き×電場の減衰距離   (表面電場)(電気二重層の厚さ)

厳密解: z-z 型対称電解質 1次元の場合 電位分布y (x) ただし 表面電位yoと表面電荷密度s の関係

表面電位 50 mV以下でDebye-Hückel近似は 十分よい近似である(1:1電解質) 帯電表面周囲の電位分布y(x) . 厳密解(実線)とDebye-Hückel近似(点線)の比較 (1:1電解質) y(x) yo = 100 mV 50 mV (25 mV) 表面電位 50 mV以下でDebye-Hückel近似は 十分よい近似である(1:1電解質)

拡散電気二重層の厚さ1/ 25゚C, 濃度C(M)のz:z型電解質溶液 z=1の場合(KCl, NaCl) 濃度 1/ 濃度    1/ 0.1M    1 nm 0.01M    3 nm 0.001M 10 nm z=1の場合(KCl, NaCl)

電気二重層の厚さ1/k の意味 イオンの熱運動のエネルギー 1個のイオンの占める平均体積 n-1 平均イオン間距離 n-1/3 イオン間の平均静電エネルギー イオンの熱運動のエネルギー ×平均イオン間距離 イオン間の平均静電エネルギー

1/k 長い 低電解質濃度 1/k 短い 高電解質濃度

低い 電解質濃度 高い 1/k 長い 短い 厚い電気二重層 薄い電気二重層 a 1/k

球粒子の表面電位yoと表面電荷密度 s a a »1の場合( a »1/) a « 1の場合 ( a « 1/ ) a a 1/k a a »1の場合( a »1/)   a « 1の場合 ( a « 1/ ) 1/k a (クーロン電位) ただし、総電荷量 1/k a 任意のaの場合 a 1/k

有効表面電位yeff 表面から十分離れた場所(x » k-1)で ここで 平板を遠方から眺めると 表面電位がyeff のように見える。 ( ) ここで 平板を遠方から眺めると 表面電位がyeff のように見える。

粒子周囲の電気二重層は粒子に過剰浸透圧とMaxwellの張力を及ぼす DLVO 理論 粒子周囲の電気二重層 過剰浸透圧 Maxwellの張力 粒子周囲の電気二重層は粒子に過剰浸透圧とMaxwellの張力を及ぼす

DLVO (Derjaguin-Landau-Verwey-Overbeek) 理論 電気二重層 電気二重層 電気二重層の重畳 → 浸透圧の上昇 → 粒子間静電斥力

Maxwellの応力とイオンの過剰浸透圧を積分 二つの微粒子間の静電斥力の計算 いずれか一方の粒子を囲む閉曲面上で Maxwellの応力とイオンの過剰浸透圧を積分 Maxwell 応力 過剰浸透圧 粒子 2 粒子 1

相互作用力の2つの等価な計算法 2枚の板の中点における浸透圧-無限遠に 板の両側におけるMaxwell張力差を計算 おける浸透圧を計算 浸透圧差ゼロ(両側の電位が等しいので) 2枚の板の中点における浸透圧-無限遠に おける浸透圧を計算 中点と無限遠におけるMaxwell張力 = 0 (中点と無限遠における電位勾配すなわち  電場=0なので)

一定表面電位モデル 一定表面電荷密度モデル 2平板が接近するとき 平板の表面電位一定 (表面電荷密度は変化) 2平板が接近するとき 平板の表面電荷密度一定 (表面電位は変化)

イオンの浸透圧とMaxwell張力による平板間の静電力 (-) = 2nkT Maxwell 張力 T(-) = 0 x - xʹ Plate 2 Plate 1

一定表面電位モデル o = 一定 表面電位が低い場合 相互作用力(単位面積当たり) 相互作用エネルギー(単位面積当たり) 2平板が接近しても 平板の表面電位一定 (表面電荷密度は変化) 表面電位が低い場合 相互作用力(単位面積当たり) 相互作用エネルギー(単位面積当たり)

一定表面電荷密度モデル s = 一定 表面電位が低い場合 相互作用力(単位面積当たり) 相互作用力(単位面積当たり) ただし 2平板が接近する とき平板の表面 電荷密度一定 (表面電位は変化) 表面電位が低い場合 相互作用力(単位面積当たり) 相互作用力(単位面積当たり) ただし

平行平板 二つの球 Plate 1 Plate 2 Sphere 1 Sphere 2 添え字 y : 一定表面電位モデル (per unit area) (per unit area) (per unit area) 二つの球 Sphere 1 Sphere 2 添え字 y : 一定表面電位モデル s: 一定表面電荷密度モデル y-s: 混合系

平行2円柱 交差2円柱 Cylinder 1 Cylinder 2 (per unit length) (per unit length) (per unit length) (Lis(z) = the polylogarithm function) 交差2円柱 Cylinder 1 Cylinder 2 添え字 y : 一定表面電位モデル s: 一定表面電荷密度モデル y-s: 混合系

相互作用の近似計算に便利な漸近解と有効表面電位 表面電位が任意の大きさの場合 相互作用の近似計算に便利な漸近解と有効表面電位 表面電位 yo = 5 (yo  125 mV) の場合 厳密解 有効表面電位 yeff = 4g (g = tanh(yo/4)) 漸近解 kx  1 でほぼ一致 線形解 yo = 2 (yo  50 mV) の場合: 3曲線ほぼ一致 kx 漸近解と厳密解はほぼ一致

y(x) y(x)  y1(x) + y2(x) y1(x) = 4ge-kx y2(x) = 4gek(h-x) 線形重畳近似: Linear Superposition Approximation (LSA) 一定表面電位モデル 相互作用をしていないときの 電位y1, y2 の和y1+y2で 平板間の電位yを近似する. y(x) y(x)  y1(x) + y2(x) 平板間の中点の電位は ym = y(h/2) = 8g で与えられる. ym y1(x) = 4ge-kx y2(x) = 4gek(h-x)

y(x) y(x)  y1(x) + y2(x) y2(x) = 4ge-kx y1(x) = 4gek(h-x) 線形重畳近似: Linear Superposition Approximation (LSA) 一定表面電荷密度モデル 相互作用をしていないときの 電位y1, y2 の和y1+y2で 平板間の電位yを近似する. y(x) y(x)  y1(x) + y2(x) 平板間の中点の電位は ym = y(h/2) = 8g で与えられる. ym y2(x) = 4ge-kx y1(x) = 4gek(h-x) 線形重畳近似は一定表面電荷密度モデルと一定表面電荷密度モデルの 両方に適用できる→モデルに依存しない

線形重畳近似による静電相互作用力の計算 ym に対して低電位の近似. ym = 8gを代入すると次式が得られる. (単位面積当たり) 平板間の中点に おける浸透圧    バルク (x = -) に おける浸透圧 y(x) x = - ym ym に対して低電位の近似. ym = 8gを代入すると次式が得られる. (単位面積当たり) ym に対してのみ低電位の近似を用い、表面電位に対しては低電位の近似をしない.

線形重畳近似による静電相互作用エネルギーの計算 静電相互作用力 (単位面積当たり) y(x) x = - ym 静電相互作用エネルギー (単位面積当たり) ym に対してのみ低電位の近似を用い、表面電位に対しては低電位の近似をしない.

線形重畳近似による静電相互作用力の計算 ym に対して低電位の近似. ym = 8gを代入すると次式が得られる. (単位面積当たり) 平板間の中点に おける浸透圧    バルク (x = -) に おける浸透圧 y(x) ym ym に対して低電位の近似. x = - ym = 8gを代入すると次式が得られる. (単位面積当たり) ym に対してのみ低電位の近似を用い、表面電位に対しては低電位の近似をしない.

線形重畳近似による異種平板間の静電相互作用力 p(h) の計算 y(x)  y1(x) + y2(x) y2(x) = 4gek(h-x) y1(x) = 4gek(h-x) xʹ 浸透圧       Maxwell張力   低電位近似

線形重畳近似による微粒子間相互作用エネルギーの計算 a2 H a1 h (単位面積当たり) a1 a2 H a1 a2 H (単位長さ当たり)

DLVO理論:2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線

2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線 , 2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線 H a 静電相互作用エネルギー van der Waals相互作用エネルギー ただし , 全相互作用エネルギー

g の表面電位yo 依存 g は高い表面電位で1に飽和する

2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線 極大 2次極小 の場合、ポテンシャル 曲線に極大値存在 (       の場合、 極大値は存在しない) 1次極小

2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線の例 (1) yo= 40 mV 極大 2次極小 1次極小 2つの球状粒子間の全相互作用エネルギー:ゼータ電位z 依存

2個の球状粒子間全相互作用のポテンシャル曲線の例 (2) 極大 2次極小 yo= 20 mV 1次極小 2つの球状粒子間の全相互作用エネルギー:電解質濃度C 依存

ポテンシャル曲線の極大値(      の場合) 極大 2次極小 1次極小 極大値: 極大値の位置: ただし、W(z) =ランベルトのW関数

臨界凝集塩濃度の値は条件 “ポテンシャル曲線の極大値 = 0” 臨界凝集塩濃度の値は条件 “ポテンシャル曲線の極大値 = 0” から求められる = 0

臨界凝集塩濃度 (m-3) (M) 表面電位yo が高い場合 g  1 C  1/z6 Schulze-Hardyの経験則に一致 (NA = アボガドロ数) (M) 表面電位yo が高い場合 g  1  C  1/z6 Schulze-Hardyの経験則に一致 (表面電位yo が低い場合  g  zeyo/kT  C  1/z2) 

通常、 VMAX が kT の15倍あるとき、安定な系とみなす. 微粒子分散系が安定である条件 ポテンシャルの極大VMAXを越えて1次極小に至る確率は exp( -VMAX/kT)に比例する 例:VMAX =10kT exp( -10kT /kT) = exp(-10)5×10-5となり、ほとんど凝集しない. 通常、 VMAX が kT の15倍あるとき、安定な系とみなす.

Hamaker 定数 Aと表面電位yoのMap (1) 安定領域 (Vmax  15kT) を与える Hamaker 定数 Aと表面電位yoのMap (1) 50 100 150 200 y0 (mV) A (J) Unstable Stable a = 0.1 mm C = 0. 1 M 10-19 10-18 10-20 10-21 10-22 50 100 150 200 y0 (mV) A (J) Unstable Stable a = 0.1 mm C = 0. 01 M 10-19 10-18 10-20 10-21 10-22

Hamaker 定数 Aと表面電位yoのMap (2) 安定領域 (Vmax  15kT) を与える Hamaker 定数 Aと表面電位yoのMap (2) 10-19 10-18 10-20 10-21 10-22 10-18 A (J) A (J) Unstable Unstable 10-19 10-20 Stable Stable 10-21 a = 1 mm C = 0. 01 M a = 1 mm C = 0. 1 M 10-22 50 100 150 200 50 100 150 200 y0 (mV) y0 (mV)

安定度比(Stability ratio)W の計算 凝集による一次粒子の濃度nb の減少速度(凝集速度) = , ka = 速度定数 (1) 自由拡散による凝集  (h = 媒質の粘度) (2) 相互作用場における拡散による凝集 3hW 安定度比W = 粒子間相互作用のために凝集速度が遅くなる割合 2a A nb n(R, t) a B O R 1次極小における 不可逆凝集

安定度比 W の表現 (粘性相互作用を考慮しない) , (粘性相互作用を考慮) , (粘性相互作用を表す因子) H. Ohshima, Colloid Polym. Sci., 292, 2269 (2014)

(参考)従来のW 計算法 Vmax の周りに V(H) を展開 放物線で近似 V(H) Vm V(H) H Hm Vmax  10kT のときのみ有効 Vmax  10kT および Vmaxの存在しない場合は無効

安定度比W の計算例

安定度比Wvisc の計算例

2次極小を考慮した凝集 k3 k2 k1 k1 k2 k3 + P S M M 1次極小における不可逆凝集の前に 2次極小における可逆凝集 Maximum Interaction energy k3 1次極小における不可逆凝集の前に 2次極小における可逆凝集 k2 Secondary minimum Primary minimum k1 k1 k2 k3 + P S M M Particle separation 1次極小における不可逆凝集 A.H. Behrens and M. Borkovec J. Colloid Interface Sci., 225, 460 (2000).

2次極小を考慮した凝集 改良解 ここで 初期条件 , 2次極小を考慮した凝集 , 初期条件 A.H. Behrens and M. Borkovec J. Colloid Interface Sci., 225, 460-465 (2000). 改良解 ここで H. Ohshima, Colloid Polym. Sci., 291, 3013-3016 (2013).

厳密解と解析解の比較 H. Ohshima, Colloid Polym. Sci., 291, 3013- (2013).

柔らかい粒子の場合 柔らかい粒子高分子電解質の表面層で覆われた粒子

剛体粒子と柔らかい粒子周囲のイオン分布と電位分布 + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + (0)(r) o DON (0)(r) (0)(b)= o a r a b r 1/k d 剛体粒子 柔らかい粒子

1. 一定表面電位モデル 2. 一定表面電荷密度モデル 柔らかい粒子間の静電相互作用 3. Donnan電位制御モデル  剛体粒子間の静電相互作用 1. 一定表面電位モデル  2. 一定表面電荷密度モデル  柔らかい粒子間の静電相互作用   3. Donnan電位制御モデル

表面電荷層内外の Poisson-Boltzmannの式 + 解離基の価数= Z、数密度= N 表面電荷層内の固定電荷密度 電解質濃度 DON  (r)  (0)= o r (表面電荷層内) (表面電荷層外)

Donnan電位制御モデル 溶液 コア コア 表面層 表面層 (x) yDON1 yDON2 x h + コア 表面層 + 溶液 コア 表面層 (x) yDON1 yDON2 表面層の奥の電位は表面層間の距離に無関係に常にDonnan電位に保たれる x h

Two parallel soft plates (per unit area) Two soft spheres 76

Two parallel soft cylinders (per unit length) Two crossed soft plates Cylinder 1 Cylinder 2 ただし, bi = ai +di (i = 1, 2)

H. Ohshima & S. Ohki, Biophys. J. 47, 673 (1985)

電気泳動法による  ゼータ電位の求め方

ζ電位を評価する電気泳動移動度の測定 μ=U/E 陰極   電場 E 陽極   外部電場が弱い場合, 電気泳動速度 U は外部電場 E に比例し, 粒子は電気2重層の衣を着たまま泳動する

電気泳動を決める3つの因子 2. 外部電場 E 3. 拡散電気二重層 (対イオン雲の衣) - + + 粒子の電荷、z 電位

表面電位yoとゼータ電位z ゼータ電位 z (すべり面の電位) 表面電位 yo 静電相互作用における表面電位=ゼータ電位

Hückelの理論 粘性抵抗 (Stokes抵抗) 6phaU U 電場からの力 QE E つりあいの式: 6phaU=QE  粘性抵抗 (Stokes抵抗)   6phaU U 電場からの力   QE E  つりあいの式: 6phaU=QE Coulomb電位: Hückelの式 電気二重層を考慮していない!

Smoluchowskiの理論 電場からの力= sE -U 単位面積 粘性抵抗= h(U/k-1) つりあいの式: h(U/k-1)=sE 電気浸透 電場からの力= sE -U 単位面積 粘性抵抗= h(U/k-1) つりあいの式: h(U/k-1)=sE 電気二重層電位: Smoluchowskiの式 粒子表面の曲率を考慮していない!

電気泳動移動度の式 1/k a a 1/k ka » 1 ka « 1 Smoluchowski の式 Hückelの式 2/3の違い

任意のaの場合 a 1/k f(ka) = Henry関数 H. Ohshima, J. Colloid Interface Sci. 168, 269 (1994)

Henry 関数 Smoluchowski Hückel

緩和効果 ゼータ電位が高いと電気二重層が変形 . dn(r) = 0 低いζ dn(r)  0 高いζ

O’Brien-Whiteの数値計算 (1978) 電気泳動移動度に 極大が存在する! O’Brien and White, J. Chem. Soc. Faraday 2, 74, 1607 (1978)

ゼータ電位の3次の項まで求めた式 (Ohshima, J. Colloid Interface Sci. 239, 587 (2001))

1/kaのオーダーまで求めた式 F = Dukhin 数 Ohshima, H., Healy. T.W., and White, L. R., J. Chem. Soc. Faraday Trans.2 79, 1613 (1983). F = Dukhin 数

柔らかい粒子の電気泳動 Debye-Bueche モデル 6apu ap gu = 6apNpu Np segments per unit volume Frictional coefficient  = 6aNp 柔らかさのパラメタ 1/l where l= (g/h)1/2 =(6aNp)1/2

摩擦係数  = 6aNp

柔らかい粒子の電気泳動移動度 r - - - - - - - - - - - - - - - - - d a  - - b - - - - A soft particle in an external applied electric field E. a = radius of the particle core and d = thickness of the polyelectrolyte layer coating the particle core. b = a+d. d a  - - b - - - - - - - - - - - - - - - - E H. Ohshima, JCIS, 163, 474 (1994) where ZN = 固定電荷密度, 1/l = 柔らかさのパラメタ

柔らかい粒子 剛体粒子 電解質溶液 コア 表面 表面層内部で 電位がほぼ一定 (Donnan電位) 表面層内部で流速 がほぼ一定 電解質溶液 m yo x x u(x)/E m 表面 y DON 表面層内部で 電位がほぼ一定 (Donnan電位) 1/ 表面層内部で流速 がほぼ一定 電解質溶液 m m n n 高い電解質濃度 でもゼロにならない 高い電解質濃度で 移動度ゼロになる m

電気泳動移動度 m 剛体粒子 m ¥  柔らかい粒子 高電解質濃度  でも残る項

Theory of Colloid and Interfacial Electric Phenomena       参考文献 Theory of Colloid and Interfacial Electric Phenomena (Elsevier, 2006) Biophysical Chemistry of Biointerfaces (John Wiley and Sons, 2010)            ご静聴ありがとうございました。