研究の背景:大質量星と形成メカニズム 太陽の8倍以上の質量の恒星 星風、紫外線、超新星爆発により 莫大なエネルギーを放出

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分子雲衝突による大質量星形成 ○ 鳥居 和史 (名大理) 福井康雄, 長谷川敬亮, 服部有祐(名大理) ○ 鳥居 和史 (名大理) 福井康雄, 長谷川敬亮, 服部有祐(名大理) 水野範和, 大橋聡史, 桑原翔(東大/国立天文台) 大西利和, 切通僚介(大阪府立大) 羽部朝男, E. Tasker, 島和宏(北海道大学) 井上剛志(国立天文台)

研究の背景:大質量星と形成メカニズム 太陽の8倍以上の質量の恒星 星風、紫外線、超新星爆発により 莫大なエネルギーを放出 星風、紫外線、超新星爆発により   莫大なエネルギーを放出 銀河の進化にも強い影響 形成メカニズムは大きな謎 観測的困難 数が少ない, 距離が遠い, 破壊的活動性 高い質量降着率の達成が鍵 小質量星の100倍近くの質量降着率 ~ 10-4 – 10-3 Mo/yrが必要 外的なトリガリングが作用?? Wolfire & Cassinelli (1986)

分子雲同士の衝突が大質量星形成をトリガー 2つの分子雲の大きな速度差(10–20km/s)が観測的特徴 分子雲衝突による大質量星形成 分子雲同士の衝突が大質量星形成をトリガー 高い質量降着率で短時間(~0.1Myr)に形成 2つの分子雲の大きな速度差(10–20km/s)が観測的特徴 重力的束縛で解釈できない 超新星爆発、星風、紫外線でも解釈できない 一点集中型の大質量星 巨大星団, Spitzerバブル 広がった分布の大質量星形成領域 NGC6334+NGC6357, W43

Cloud-cloud collision Habe & Ohta 1992 Takahira+2014 Anathpindika+2012

Inoue & Fukui (2013) 6 cores are formed in the fiducial model. 238, 59, 5.3, 3.6, 2.7, 1.0 Msun 238 Msun z [ pc ] Closeup view of the most massive core y [ pc ] Inoue & Fukui 2013 Large effective Jeans mass is due to strong magnetic field and turbulence.  Large mass accretion rate: dM/dt = 4 × 10-3 Msun/yr for 238 Msun core = 5 × 10-4 Msun/yr for 59 Msun core

巨大星団での分子雲衝突 巨大星団 Westerlund2, NGC3603 (Furukawa et al. 2009; Ohama et al. 2010; Fukui et al. 2014) 104Moの星が1pc3に集中 2つのGMCが視線速度差~20 km/sで衝突 衝突のタイムスケール ~ 0.1Myr

巨大星団での分子雲衝突 NGC3603星団メンバーの年齢分散 ~ 0.1Myr (Kudryavtseva+2012)

巨大星団での分子雲衝突 大質量星が星団中央に集中 重力的緩和で理解するには時間が足りない (NGC3603の年齢~2Myrs) NGC3603 Ks band stellar mass function ISAAC Ks-band Harayama et al. 2008 大質量星が星団中央に集中 重力的緩和で理解するには時間が足りない   (NGC3603の年齢~2Myrs)

巨大星団での分子雲衝突 銀河系の既知の若い巨大星団は8例 うち星雲が付随する星団4例の全てで2個の分子雲が付随 大質量星一般では? Westerlund2 NGC3603 RCW38 [DBS2003]179 cluster Age [Myr] LogM*  [Msun] Size [pc] 分子雲 NGC3603 2.0 4.1 0.7 ○ Westerlund2 4.2 0.8 [DBS2003]179 2-4 3.8 0.5 Westerlund1 3.5 4.0 1.0 × Trumpler 14 4.5 -- Arches 4.3 0.4 Quintuplet RCW38 <1.0 銀河系の既知の若い巨大星団は8例 うち星雲が付随する星団4例の全てで2個の分子雲が付随 大質量星一般では?

三裂星雲(M20) Torii et al. 2011 The Trifid Nebula(M20) D ~ 1.7 kpc (Lynds & Oneil 85) Open cluster with M* ~ 500 Mo Very young: ~ 0.3 Myrs (Cernicharo+98) an exciting O7.5 star (~20 Mo) Low mass star formation is on-going Spitzer young stellar objects (Rho+06) Cold dust cores(Cernicharo+98; Lefloch+08) Previous molecular line studies are focused on the low mass star formation. (Cernicharo+98; Lefloch+08)

三裂星雲(M20) Torii et al. 2011 The Trifid Nebula(M20) D ~ 1.7 kpc (Lynds & Oneil 85) Open cluster with M* ~ 500 Mo Very young: ~ 0.3 Myrs (Cernicharo+98) an exciting O7.5 star (~20 Mo) Low mass star formation is on-going Spitzer young stellar objects (Rho+06) Cold dust cores(Cernicharo+98; Lefloch+08) Previous molecular line studies are focused on the low mass star formation. (Cernicharo+98; Lefloch+08) (Rho+08)

三裂星雲(M20) Torii et al. 2011 Image:HST(Hα,[SII],[OIII])

2個の分子雲の偶発的衝突 によるO型星の形成 三裂星雲(M20) NANTEN2観測結果 NANTEN2とMopraによる CO観測 (Torii et al. 2011) 7km/sの速度差を持つ2 つの分子雲を同定 分子雲は両者ともM20に 物理的に付随 分子雲の質量~103Mo 2個の分子雲の偶発的衝突 によるO型星の形成

RCW120 (Spizter bubble S7) 距離 ~ 1.3 kpc (Rodgers+1960) 典型的なSpitzerバブル 綺麗な8μmリング構造 内部にO8型星とHII領域 リング上にYSOが集中 Green : 8um Red : 24um Blue : Hα × : exciting star ○ : Class Ⅰ △: Class Ⅱ

RCW120 (Torii et al. 2015 in press, arXiv:1503.00070) NANTEN2, Mopra, ASTE による分子雲観測    (Torii et al. 2015) 20 km/sの速度差を持つ 2つの分子雲 2つの分子雲が共に電 離ガスに沿った分布 – 2つの分子雲が共に RCW120に付随 2個の分子雲の偶発的衝突によるO型星の形成

CO 3-2/1-0 ratio distributions CO J=3–2/J=1–0分布(ASTE/Mopra) 2つの分子雲共に8μmリング付近で比の上昇 (>0.8) – LVG解析:温度 > 30K RCW120のO starに起因する加熱 → 2つの分子雲のRCW120への付随

Expanding HII region?? 膨張する中性ガスの球殻でSpitzerバブルを説明 Deharveng+10 膨張する中性ガスの球殻でSpitzerバブルを説明 膨張するHII領域が周囲の中性ガスを掃き集める シェル内部での誘発的星形成(Collect & Collapse)

Expanding HII region?? 等方的に膨張する球殻 位置-速度図で楕円構造 膨張中心=励起星の方向で速度分散が最大&エッジで最小

No expanding motion is seen in RCW120 Longitude-velocity map second moment map 2つの分子雲は共に8μmリングの広がりを超えて一様な速度分布 → 楕円構造が見られない 8μmリングのリム方向で速度分散最大 分子雲は膨張構造を持たない(速度分解能0.6km/s)

膨張モデルの理論計算(1次元計算:一様密度) Zavagno et al. 2007 RCW120の再現 1D numerical calculations (Hosokawa & Inutsuka 2005; 2006) Collect & Collapse (Elmegreen & Lada 1977) RCW120(r~1.7pc)の形成タイムスケール = 0.4 Myr (Zavagno+2007) 膨張速度Vexp ~ 4 km/s Zavagno et al. (2007)

膨張モデルの理論計算(3次元計算:非一様密度) Walch+2011, 2012 RCW120の再現 フラクタル的な初期密度分布(速度無し) 電離ガスは低密度領域を選択的に掃き流す  → 膨張速度は低下 RCW120の形成タイムスケール ~ 1 Myr 膨張速度Vexp ~ 2 km/s Walch et al. 2011, 2012

膨張モデルの理論計算(3次元計算:turbulent cloud) -10 -5 0 5 10 Velocity [km/s] Dale et al. 2013, Hawoth, Torii et al. 2015 乱流雲での星形成+UV (図は電離開始から~3Myr) 非一様な膨張 P-V図では、HII領域は局所的(~1pc)に分子雲を加速

分子雲衝突モデル Habe & Ohta (1992)のモデルを発展 大小2つの分子雲の衝突 衝突により空洞が形成 空洞内部の衝突圧縮層で大質量星が形成され、  空洞の内壁がUVで照らされる

RCW120での分子雲衝突 大きい分子雲 (12pc, 5x104 Mo) と小さい分子雲(~3pc, 103Mo) 空洞形成のタイムスケール ~ 全長5 pc / 平均10km/s ~ 0.5 Myr. 質量降着率= 4×10-5 Mo/yr. 衝突圧縮面の質量 ~ 1000–3000 Mo. 電離ガスの質量 ~ 200 Mo → HII領域による浸食のごく初期段階.

分子雲衝突による大質量星形成の現場を多数特定 さらに多くのサンプルを元に「分子雲衝突による大質量星形成」の一般モデルの構築を目指す まとめと今後 分子雲衝突による大質量星形成の現場を多数特定 さらに多くのサンプルを元に「分子雲衝突による大質量星形成」の一般モデルの構築を目指す 銀河面のCOサーベイデータを活用:    分子雲衝突のバリエーションを網羅                個別領域の詳細研究+統計的研究 物質(化学)面からのアプローチ: 衝撃波トレーサーSiO, CH3OHによる衝突圧縮面のマッピング観測等 理論との共同研究 大質量星の形成過程の直接解明など