めまい診療の極意教えます! それも初めのスライドで!!
めまい診療の極意とは? めまい診療に極意なし!
なぜ、極意を求めるのか? 困難な問題ほど神の降臨を要求する いつも悩んでいる なのに、どこにも極意が見つからない いつまでたってもわかった気になれない どこかにいる達人に自分が出会えない? 自分の頭が悪い? 困難な問題ほど神の降臨を要求する
めまい診療の真実 こんなに一生懸命でもわからないのは 達人も神様もいないから 今時、山奥に名人が住んでいるわけない みんな「わからない」 どんな本を読んでも どんなにネットで勉強しても 誰の話を聴いても
大切だと思っている ↓ 勉強したいと思っている 得意になりたいと思っている 苦手を自慢していい理由 大切だと思っている ↓ 勉強したいと思っている 得意になりたいと思っている
あの人もめまいが苦手だった Never write on nystagmus, it will lead you nowhere. Robert Wartenberg (1887 - 1956) Robert Wartenberg has been called the Stormy Petrel of Neurology and the Rebel of Book Reviewers. He graduated from the University of Rostock in 1919. He worked with Max Nonne (1861-1959) in Hamburg and Otfrid Foerster (1873-1941) in Breslau (Wroclaw, Poland). In 1933 he became head of the nerve clinic at Freiburg and Privatdozent in neurology. However, he was persecuted by the Nazis, and in 1935 he left Germany and settled in San Francisco. In 1952 he was appointed clinical professor of neurology at the University of California.
どうして,めまいが,“苦手”なんでしょうか? ところで・・・・ どうして,めまいが,“苦手”なんでしょうか?
めまいがする こういうのを見ると
また出てきた 吐気までしてくる
もう勘弁して
糖尿病と高血圧の既往のある79歳の女性が,急にめまいがするようになったと救急外来を受診した さあ,どうしましょう 糖尿病と高血圧の既往のある79歳の女性が,急にめまいがするようになったと救急外来を受診した 糖尿病と高血圧の既往のある79歳の女性が,急に体がふらふらするようになったと救急外来を受診した.吐気は少しするが,吐いてはいない.診察すると,意識は清明だが,ふらつきがひどくて立っているのが精一杯で歩けない.耳鳴りはない.頭は痛くない.首の痛みもない.血圧は臥位で160/70 mmHg,脈拍は80,立位で148/60,脈拍は80.瞼結膜に貧血はない.注視方向性の水平眼振がある.四肢の協調運動障害は明らかなものはない.
結局は,これなの?
日本以外の多くの国々で,MRIがない状況でめまいの診療が立派に行なわれているのだから,MRIがなくたってめまいの診療はできるし,また実際に我々日本人もめまいの診療を立派にやってきた.CTであろうとMRIであろうと,画像診断は,病歴,診察によって,どこに病変があるかを十分な検査前確率をもって判断できて,初めて意義がある.
急性脳梗塞に対するMRIの感度 Lancet 2007;369:293 発症3時間以内で7割,12時間以内でも8割! 脳幹・小脳ではもっと感度が悪化する!
今日のお約束
道徳にこだわるからではない 実利にこだわるから なぜ病歴にこだわるのか? 道徳にこだわるからではない 実利にこだわるから
病歴の感度 Lou Gehrigの場合 Kasarskis EJ, Winslow M. When did Lou Gehrig's personal illness begin? Neurology 39:1243-1245.
検査を上回る問診の特異度 問診によって検査前確率が高めることができれば,パスポートという検査が不要になる. 「韓国の第2の都市は?」「韓国の大統領の名前を書きなさい」 韓国の小学校の試験問題ではない。今月20日、ロシアとフィンランド国境にあるフィンランド国境検問所、国境守備隊員たちが、ロシアから列車や自動車の便で到着した入国者たちのパスポート審査に乗り出した。入国者のほとんどはロシア人だが、韓国人も何人かいた。 国境守備隊員たちが、ロシア人のパスポートをまとめて回収した後、韓国パスポート所持者たちを対象に突然A4判の紙を配った。紙は「漢拏山はどこに位置するか」「朴贊浩(パク・チャンホ)は何の選手か」など、ハングルで書かれた20の質問項目が書かれたテスト用紙だった。 全て一問一答式。いわゆる韓国人確認テストだ。列車に乗って入国する場合は客室でテストを受けさせ、バスに乗って入国する場合は別途に呼ばれてテストを受けさせる。テストは比較的に自由に受けるように配慮する。 フィンランドが、国境の検問所で実施する韓国人確認テストは、偽造パスポート所持者を摘発するためだ。中国人を含む東洋人たちが、偽造韓国パスポートを使って入国するケースが増え、これらの不法滞在がヨーロッパ連合(EU)に拡大したため、昨年から導入した。中国人などが偽造韓国パスポートを好む理由は、韓国人の場合EU加盟国への出入国手続きも簡単であり、ヨーロッパ全域を自由に移動することができるためだ。 フィンランドがEU加盟国であるだけでなく、韓国と無ビザ協定を締結している国であるため、パスポートさえ提示すれば入国が可能だろうと考えていた韓国人旅行客は、まったく予想できない雰囲気に戸惑いを覚えるしかない。 国境守備隊員は、「ハングルを書けなかったり、1問題も当てることができない場合、現場で身分照会をする」とし、「ここで摘発される者のうち偽造韓国パスポートの所持者がもっとも多い」と述べた。 ロシアと国境を面している国家での韓国人確認テストは、かつてソ連連邦の国であり、バルト海沿岸3国の一つであるエストニアで最初に導入された。エストニアもロシアと国境を接しているうえ、ロシア観光地であるサンクトペテルブルクから自動車や列車でわずか3~4時間で到着できる位置にあり、韓国人観光客たちがヨーロッパに立ち寄る最適のコースだ。 エストニアは2002年からA4判の大きさのテスト用紙を配って、韓国人確認テストを行なうことにした。エストニアの韓国人確認試験は、通常4つの問題からなり、1問題当たりに4つの選択肢がある。 「次の中で韓国に位置しない山を選びなさい。 太白山、小白山、漢拏山、長白山」「インスニが活動する分野は? 歌手、タレント、映画俳優、コメディアン」「宣銅烈(ソン・ドンヨル)の職業は野球、サッカー、バスケットボール、バレーボール」といった問題が提出された。 モスクワとフィンランドの韓国大使館は、「エストニアやフィンランドから、パスポートが本物かどうかを質問する確認電話が頻繁にかかってくる」とし、「偽造韓国パスポートを所有する中国人は、東南アジアや中国で違法取り引きされている韓国のパスポートを購入し、写真を取り替えて使うケースが多い」と明らかにした。 朝鮮日報 【質問の答え】 ①釜山 ②盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領 ③済州島 ④韓国人初のメジャーリーガー
東京逓信病院耳鼻科 室伏利久部長によるチェックシート:なかなかいいところを突いている.これをもっと系統的にやっていこうということ
全身疾患 末梢・中枢 本日のお話 末梢性が半分近くを占める,中でも多いのがBPPV.ということは,末梢性をしっかり診断できれば,半分は勝てる.また,原因不明と心因性を合わせて3割ということは,どの分野の専門家でも診断が難しいということ.1/4の非前庭性,非心因性はプライマリケア医の得意とするところだろう.中枢性,それも脳血管障害性は案外少ない.
患者さんの訴えで鑑別するというよりも,それぞれの病態を鑑別するための目安と考えるとよい
急性めまいの診断 確診 自信がない 末梢性 詰め 中枢性 誤った印象 正しい理解
急性めまいの基本戦略 危険なめまいを選り分ける 頻度が多い末梢性のRule in→ 頻度が少ない中枢性のRule out の両面から攻めるのが効率的
急性めまい診断ロードマップ 危険なめまいを選り分ける 蝸牛症状(耳鳴り,難聴,耳閉塞感) ↓ →内耳疾患 頭,首の痛み ↓ →小脳出血・梗塞,椎骨動脈解離 神経症状の病歴 ↓ →中枢病変 頭位の影響・発作性 ↓ → BPPV (R/O MPPV) よくわからない(前庭神経炎?椎骨脳底動脈潅流不全?R/O 小脳梗塞・出血) →あり ↓なし
蝸牛症状の有無が第一分岐 蝸牛症状あり:耳鳴り,難聴を伴う 突発性難聴,メニエル,他の内耳疾患 (前下小脳動脈梗塞):まれ,鑑別簡単 蝸牛症状なし:Solo Vertigo
突発性難聴とメニエール メニエール 突発性難聴 耳鳴りとともに急激に難聴になる 耳鳴,耳閉感を伴うめまい発作を反復 回転性めまいは初期のみ 日単位で持続 50~60歳代ピーク 男女差なし 30人/人口10万人 メニエール 耳鳴,耳閉感を伴うめまい発作を反復 持続時間は1時間以上,24時間未満 30歳台後半から40歳台前半にピーク 女性に多い 20人/人口10万人 30歳台後半から40歳台前半にピークを持つ山型
(一つの山は24時間未満) 植村研一.頭痛・めまい・しびれの臨床.医学書院 より引用
蝸牛症状の有無が第一分岐 蝸牛症状あり:耳鳴り,難聴を伴う 突発性難聴,メニエル,他の内耳疾患 (前下小脳動脈梗塞):まれ,鑑別簡単 蝸牛症状なし:Solo Vertigo
前下小脳動脈梗塞 ー蝸牛症状を伴う稀な梗塞ー 急性めまい 耳鳴,難聴(分枝である迷路動脈の閉塞) 病巣側の顔面神経麻痺 病巣側の小脳性運動失調(中小脳脚) 病巣側のHorner症候群 交代性の温痛覚障害 高松和弘,大田泰正.前下小脳動脈潅流梗塞の検討.臨床神経 1995;35:621-625 迷路動脈が顔面神経と内耳神経と共に、内耳道を通って内耳へ行っている。この動脈は多くの場合前下小脳動脈から出る。 http://web.sc.itc.keio.ac.jp/anatomy/angio(nerve)/av-10.html 前下小脳動脈梗塞: 臨床症状: 内耳障害による患側の難聴・耳鳴、めまい。患側の顔面神経麻痺、顔面の温痛覚障害、ホルネル症候、小脳症状、反対側の頚部以下の半身の温痛覚障害等の症状がみられます。 本症はめまい、難聴、耳鳴で発症する例があり、これらの発生時の症状は末梢性疾患である突発性難聴、メニエール病として治療開始されます。 前下小脳動脈は約80~90%は脳底動脈から分岐します。 内耳動脈は多くは前下小脳動脈から分岐します。前下小脳動脈は橋下外側部、中小脳脚、小脳片葉、および内耳を支配しています。 http://www6.ocn.ne.jp/~n-ent/tokusyu/04_5.html
病歴で中枢病変を感度良く除外 脳血管障害の危険因子(年齢も含めて) 頭痛・頸部痛 複視 顔,口の周りのしびれ 構音障害,嚥下障害 半身のしびれ,脱力 オプション:瞳孔不同と上肢の小脳症状 意識状態,バイタルサイン
67歳男性 朝食後外出しようとしたが,玄関先で突然歩行不能となり,這って家の中に戻った.同時に呂律が回りにくくなり,めまい,嘔吐もあった.救急車で来院した. この病歴を見て,みなさんまず考えるのは脳卒中という病気でしょう.脳卒中というと,病変がどこかという話になります.そこですぐ診察に移るでしょうか?それともすぐCTをとるでしょうか?しかし,この病歴からだけでも,脳卒中の局在診断ができるのです.
蝸牛症状の有無が第一分岐 蝸牛症状あり:耳鳴り,難聴を伴う 突発性難聴,メニエル,他の内耳疾患 (前下小脳動脈梗塞):まれ,鑑別簡単 蝸牛症状なし:Solo Vertigo
Solo Vertigoという前に,本当に “Solo?” 頭痛・頸部痛は? 頭痛・頸部痛を伴う急性めまい ↓ 偏頭痛,椎骨動脈解離,小脳出血・梗塞 危険!,迷わず脳外科・神経内科へ
椎骨動脈解離 若年者の脳血管障害,男:女=1:3 誘発行為:ゴルフなどの運動,美容院,カイロプラクティック,天井を相手にする作業 受傷より発症まで潜時(時間~日)あり
Solo Vertigoの原因 頭位誘発性 良性発作性頭位めまいBPPV 悪性持続性頭位めまいMPPV(脳血管障害) 非誘発性 前庭神経炎 上記のいずれでもない
BPPVは病歴で診断:床の中! 耳鳴り,難聴,耳閉塞感はない 頭位変換時にだけ起きる 30秒以内に消失 繰り返すと減弱してくる(habituation) ベッドの中でめまいが酷くなることが特徴.With respect to history, the key observation is that dizziness is triggered by lying down, or on rolling over in bed. Most other conditions that have positional dizziness get worse on standing rather than lying down (e.g. orthostatic hypotension). 植村研一.頭痛・めまい・しびれの臨床.医学書院 より引用
BPPVの原因:耳石の迷入
Dix-Hallpke 試験 懸垂頭位で眼球の回転方向が患側
Dix-Hallpke 試験の留意点 フレンツェル眼鏡装着が望ましい 眼振が出現するまで数秒の潜時がある 素早く倒す 眼振が見やすい Visual Supressionが避けられる 眼振が出現するまで数秒の潜時がある 素早く倒す 眼振は持続しない(30秒以内に減弱) 禁忌:頚椎・頚髄疾患 Humphriss RL, Baguley DM, Sparkes V, Peerman SE, Moffat DA. Contraindications to the Dix-Hallpike manoeuvre: a multidisciplinary review.Int J Audiol. 2003 Apr;42(3):166-73. The Dix-Hallpike manoeuvre is widely used in the diagnosis of positional vertigo and is regarded as safe. The manoeuvre involves a degree of neck rotation and extension, and consequently one might expect there to be some patients, particularly those with neck problems in whom the manoeuvre is contraindicated. The term 'neck problem', however, encompasses a whole range of conditions, including soft tissue disorders, cervical spondylosis, prolapsed intervertebral disk, and severe rheumatoid arthritis with cervical instability. These in turn will give rise to a variety of symptoms, which will vary from minimal pain or stiffness to severe pain or complete immobility, and, in some cases, neurological deficit. Clarification is therefore needed to establish the point at which any neck pain or stiffness ceases to be a minor problem and becomes a contraindication to performing the Dix Hallpike manoeuvre. This paper clarifies this issue by discussing the issue of absolute contraindications and proposing a simple functional assessment of neck mobility which can be performed prior to performing the Dix Hallpike manoeuvre. Relative contraindications such as back pathology, vertebrobasilar ischaemia (posterior circulation ischaemic disease), nerve root compression and medical fitness are also discussed.
Epley法
BPPVの治療 Epley法 他の方法 :とくにDix-Hallpike陰性の場合 一回での奏効率8割(44%~90%) RCTでも,実治療群で89%,無治療で23% 他の方法 :とくにDix-Hallpike陰性の場合 Brandt-Daroff exercises: (Arch Otolaryngol 1980;106:484-5) repetitive side-to-side head movements:再発(1年後までに15%の率で)例で,もう医者に行きたくない人にも有効 朝,昼,晩,5回繰り返す(1回2分で合計10分) Physical therapy for benign paroxysmal positional vertigo. Brandt T, Daroff RB. We treated 67 patients with the symptoms of benign paroxysmal positional vertigo (BPPV) by challenging them with the precipitating head positions on a repeated and serial basis. Sixty-six of the patients experienced complete relief of the vertigo within three to 14 days; in two patients, the vertigo recurred but responded to a second course of therapy. The one patient whose condition did not respond was found to have a perilymphatic fistula that mimicked BPPV. The presumed mechanism for this therapy is the loosening and ultimate dispersion of degenerated otolithic particles from the cupula of the posterior semicircular canal.
BPPVの生活指導 発症当日の寝る姿勢 頸部過進展,過屈曲,懸垂頭位を避ける 歯科治療,美容院,上の戸棚 両脇の二つの枕の間に頭を入れる
BRANDT-DAROFF EXERCISES
BPPVの現実 病歴で診断 温度眼振検査で異常なし Dix-Hallpikeの陽性率にこだわらない? Dix-Hallpikeが陰性の場合 病歴で疑っても陽性率は半分未満? (病歴では107/100,000/year,DH陽性はその1/10?) Dix-Hallpikeが陰性の場合 debrisがある程度元の位置に戻った? 水平半規管性?(ごく稀に後頭蓋窩腫瘍) Epley法が効かない場合 やはりdebrisの位置が移動した?
悪性持続性頭位めまいMPPV:まれ 一定の頭位でめまいが持続する 頭位を変えると止まる→学習効果に注意 しばしば座位,立位可能 眼振はしばしば垂直,下向き 前下・後下小脳動脈閉塞→小脳虫部梗塞 植村研一.頭痛・めまい・しびれの臨床.医学書院 より引用
前庭神経炎 頭位置とは無関係の、急性Solo Vertigo 30-60歳に好発し,性差はない(脳梗塞よりも若い世代) 症状は単回性 蝸牛症状はない!! 回転性めまいは1日~数日でおさまる ふらつきは数週間持続 上気道感染の先行はたかだか30% 一部は反復性前庭障害 or BPPVへ移行 温度眼振検査で患側の温度反応高度低下
66歳男性・警備員 主訴:めまい,吐気・嘔吐 2005年5月某日夜勤の仕事を終え,翌日朝帰宅後からめまい,ふらつき,頭重感があり午前中は横になり休んでいた.昼食後に昼寝をした後におき上がろうとすると嘔気・嘔吐が出現し,後頭部痛もともなった.頻回に嘔吐し,頭痛も増悪傾向にあったため,午後1時30分に当院救命センターに搬入された.来院時より胸全体が苦しい,頭がふらふらすると訴え,嘔吐をくりかえしベッド上で苦悶表情でわめくという状態が持続した. 臨床神経の症例 後下小脳動脈内側枝領域の小梗塞で,めまい・嘔吐・胸内苦悶を呈した1例 (臨床神経,47:522-525,2007)
既往歴・生活歴 タバコ1日40本,缶ビール1日1本 高血圧,高尿酸血症,肺気腫 妻とは死別・離別?子供は?とにかく一人暮らし
何を診察しますか? BP126/74, P 70/分・整 頸部部血管雑音なし.両下肺野にfine crackleを聴取.腹部,四肢には異常をみとめず. 覚醒は維持するがややもうろうとしている. 対光反射は両側迅速 左方向の自発性水平性眼振をみとめた 構音障害があるかもしれない 四肢の協調運動検査には協力してくれない
入院時MRI 拡散強調画像 T2 強調画像
外来でカロリックテスト? 適応はどんな場合か? 技術的な問題:救急場面での労力と成果 陰性・陽性の事前確率は? 結果によって診断・治療方針が変わる? 前庭神経炎の診断に有用? 技術的な問題:救急場面での労力と成果 耳垢の除去 鼓膜の穴のチェック
急性めまい診断ロードマップ 危険なめまいを選り分ける 蝸牛症状(耳鳴り,難聴,耳閉塞感) ↓ →内耳疾患 頭,首の痛み ↓ →小脳出血・梗塞,椎骨動脈解離 神経症状の病歴 ↓ →中枢病変 頭位の影響・発作性 ↓ → BPPV (R/O MPPV) よくわからない(前庭神経炎?椎骨脳底動脈潅流不全?R/O 小脳梗塞・出血) →あり ↓なし
おさらい:病歴で中枢病変を除外 脳血管障害の危険因子(年齢も含めて) 頭痛・頸部痛 複視 顔,口の周りのしびれ 構音障害,嚥下障害 半身のしびれ,脱力 オプション:瞳孔不同と上肢の小脳症状 バイタルサイン
Solo Vertigoを呈する脳血管障害 頭痛・頸部痛があったら 偏頭痛 椎骨動脈解離 座位での頸部の屈曲・回旋で誘発 変形性頚椎症による椎骨動脈の圧迫 後下小脳動脈領域の梗塞の一部 偽性迷路症状だけ:前庭神経炎に類似
小脳虫部梗塞による偽性迷路障害 高齢者 脳卒中の危険因子 急性のめまい 耳鳴り・聴力障害なし 他の神経症状もなし なのに体幹失調著明 眼振もひどくない なのに体幹失調著明 Amarenco P, Roullet E, Hommel M, Chaine P, Marteau R.Related Articles, Links Infarction in the territory of the medial branch of the posterior inferior cerebellar artery. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1990 Sep;53(9):731-5. Masson C, Sterkers O, Chaigne P, Colombani JM, Masson M. Related Articles, Links [Isolated vertigo disclosing infarction in the area of the posterior and inferior cerebellar arteries] Ann Otolaryngol Chir Cervicofac. 1992;109(2):80-6. Review. French. こういうケースはどんな専門医でも困る.何か特定の検査で異常が出るわけではない.逆に言えば,専門医の知識や技術が何の役も立たないのだから,こういうケースこそプライマリ・ケア医の出番であって,患者さんの年齢,既往歴といった基本情報から,脳血管障害のリスクファクターを割り出す,地道な作業はもちろんのこと,患者さんや家族の希望をよく聞き,不安感を推し量り仕事の予定,忙しさといった社会的な要素も勘案し,専門医への紹介のタイミングや検査予定を組むのがプライマリ・ケア医の持ち味である. ポイントは,基本.好発年齢や,脳血管障害のリスクファクターを考える
実はこんなにきれいに出ない!
急性脳梗塞に対するMRIの感度 Lancet 2007;369:293 発症3時間以内で7割,12時間以内でも8割! 脳幹・小脳ではもっと感度が悪化する!
小脳虫部梗塞による偽性迷路障害 25例のまとめ(Neurology 2006;67:1178) 66歳以上が16例(64%) 脳卒中危険因子(高血圧,糖尿病,喫煙,心房細動,弁膜症)のいずれか:3例(3例とも65歳以上) 自立歩行が可能:6例(うち3例は65歳未満) 塞栓症疑いは10例(心房細動,弁膜症,卵円孔開存,大動脈アテローム) Neurology 2006:67:1778
Head Thrust Test C,D & E A & B Abormal Normal Optimizing the Sensitivity of the Head Thrust Test for Identifying Vestibular Hypofunction PHYS THER Vol. 84, No. 2, February 2004, pp. 151-158 Figure. Normal head thrust test to the left (A and B), abnormal to the right (C–E). Large arrow denotes direction the head will be thrust. (A) Initial starting position places subject's head into cervical flexion; eyes are focused on the target. (B) Upon stopping the head thrust, the eyes are still on target and no corrective saccade is observed. In photographs A and B, the subject's eyes stay fixed on the examiner's nose throughout the test. (C) Initial starting position places subject's head into cervical flexion; eyes are focused on the target. (D) As the head is thrust rapidly to the right, the eyes fall off the target and move with the head. (E) The subject must make a corrective saccade (small arrows) to bring the eyes back to the target of interest.
Head Thrust Test (末梢)前庭機能障害の診察手技 被検者に正面を固視するよう指示し 検者が急激に他動的頭部回旋(5-10°) 前庭動眼反射が保たれているかを観察 被検者に正面を固視するよう指示し 検者が急激に他動的頭部回旋(5-10°) 頸部を30度前屈して行うと感度上昇(外側半規管の刺激) 正常では眼球は固視を保持できる 前庭機能障害では固視を保持できず、後から補正する(corrective saccade) Optimizing the Sensitivity of the Head Thrust Test for Identifying Vestibular Hypofunction PHYS THER Vol. 84, No. 2, February 2004, pp. 151-158
Head Thrust Test 感度と特異度 Table 3. Validity of the Data Obtained With the Head Thrust Test (HTT) for Identifying Subjects With Peripheral Vestibular Hypofunction Based on Extent of Lesiona a Incomplete=nystagmus reversal with a change in caloric temperature, complete=no response to ice water irrigation, UVH=unilateral vestibular hypofunction (ipsilesional), BVH=bilateral vestibular hypofunction, PV+=positive predictive value, PV–=negative predictive value, LR+=positive likelihood ratio, LR–=negative likelihood ratio.
糖尿病と高血圧の既往のある79歳の女性が,急にめまいがするようになったと救急外来を受診した 冒頭の症例 糖尿病と高血圧の既往のある79歳の女性が,急にめまいがするようになったと救急外来を受診した 糖尿病と高血圧の既往のある79歳の女性が,急に体がふらふらするようになったと救急外来を受診した.吐気は少しするが,吐いてはいない.診察すると,意識は清明だが,ふらつきがひどくて立っているのが精一杯で歩けない.耳鳴りはない.頭は痛くない.首の痛みもない.血圧は臥位で160/70 mmHg,脈拍は80,立位で148/60,脈拍は80.瞼結膜に貧血はない.注視方向性の水平眼振がある.四肢の協調運動障害は明らかなものはない.
何を聞きますか? 吐気は少しするが,吐いてはいない 耳鳴りはない.耳はもともと遠い 頭は痛くない.首の痛みもない 頭を回してもめまいがひどくなることはない 呂律が少し回りにくい.飲み込みは大丈夫 物が二重に見えることはない 顔も手足もしびれない 手足が力が入りにくいこともない 診察すると,意識は清明だが,ふらつきがひどくて立っているのが精一杯で歩けない.血圧は臥位で160/70 mmHg,脈拍は80,立位で148/60,脈拍は80.瞼結膜に貧血はない.注視方向性の水平眼振がある.四肢の協調運動障害は明らかなものはない
何を診察しますか? 四肢の協調運動障害は明らかでない 意識は清明 ふらつきがひどくて立っているのが精一杯で歩けない 臥位で160/70 mmHg,脈拍は80,立位で148/60,脈拍は80 瞼結膜に貧血はない 注視方向性の水平眼振がある 四肢の協調運動障害は明らかでない 診察すると,意識は清明だが,ふらつきがひどくて立っているのが精一杯で歩けない.血圧は臥位で160/70 mmHg,脈拍は80,立位で148/60,脈拍は80..
判断のポイント 79歳という年齢 糖尿病・高血圧という危険因子 ろれつが少し回りにくい
誰にでも手に入る資料 BPPVを含めためまいの優れた総合サイト 植村研一.頭痛・めまい・しびれの臨床.医学書院 このスライドは,Google→“公演スライド集”で検索 BPPVを含めためまいの優れた総合サイト http://www.dizziness-and-balance.com/ 植村研一.頭痛・めまい・しびれの臨床.医学書院 めまいの診断基準化のための資料 http://memai.jp/shindan/Supp-11.htm Does this dizzy patient have a serious form of vertigo? JAMA 271;1994:385-388 BPPVの総説.NEJM 1999;341:1590