環境中のポリ塩化ナフタレンの分析手法開発に関する検討

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環境中のポリ塩化ナフタレンの分析手法開発に関する検討 ○高橋ゆかり、中島信行(㈱東レリサーチセンター)、 松村千里、中野武(兵庫県立健康環境科学研究センター )

ポリ塩化ナフタレン(PCN)分析の重要性 PCNは過去に工業的に生産されたため、PCBほどではないが、環境中に広く分布している。 燃焼などにより、非意図的に生成する ↓ 環境中のPCNの存在実態を正確に把握することは、重要である

環境試料中のPCN分析フロー 図1 水質試料中のPCNの前処理方法 図2 底質試料中のPCNの前処理方法

試料の前処理 ①sample ②n-Hexane 100mL 20% DCM/n-Hexane 60mL 10wt% AgNO3 silica 1 g Toluene 80mL silica 0.2 g 44wt% H2SO4 silica 3 g silica 0.2 g 活性炭 0.1 g (Caboxen 1000 ;Supelco) 濃縮 HRGC/HRMS

PCNのGC/MS分析条件 GC条件 装置:HP6800シリーズ (Hewlett Packard) カラム BPX-5:0.22mmID, 25m, film thickness 0.25μm(SGE) 昇温条件 90℃(2min)→5.5℃/min→320℃(10min) 注入方法 スプリットレス (パージまでの時間2分) 注入 注入量:1μl , 注入口温度:280℃ キャリアガス ヘリウム 1.0 L/min MS条件 装置:AutoSpec Ultima (micromass) 測定方法:SIM法 測定時の分解能 分解能:10,000 イオン化   イオン加速電圧:8 kV 方法:EI法 電子加速電圧:38 eV 電流:600μA イオン源温度:280℃ モニタリングイオン PCN(m/z/m/z ) 内標準物質 13C-PCN(m/z/m/z) 定量用 確認用 測定条件1 Mono-CN 162.0236 164.0208 ― Di-CN 194.9847 197.9818 Tri-CN 229.9457 231.9428 Tetra-CN 273.9403 275.9373 13C-PCB(#118) * 337.9207 339.9177 測定条件2 263.9067 265.9038 Penta-CN 299.8648 301.8619 309.8983 311.8954 Hexa-CN 333.8258 335.8229 343.8594 345.8564 Hepta-CN 367.7869 369.7839  377.8204  379.8174 Octa-CN 401.7479 403.7450 411.7814 413.7785

PCNの検量線 ピーク面積比 重量比 60 1塩化物 2塩化物 50 3塩化物 4塩化物 5塩化物 40 6塩化物 7塩化物 30 8塩化物 線形 (1塩化物) 線形 (2塩化物) 20 線形 (3塩化物) 線形 (4塩化物) 10 線形 (5塩化物) 線形 (6塩化物) 線形 (7塩化物) 線形 (8塩化物) 10 20 30 40 50 重量比

標準溶液を繰り返し5回測定 したときの再現性 変動係数(%)  Mono-CN 3.0  Di-CN 5.2  Tri-CN 2.0  Tetra-CN 2.8  Penta-CN 4.7  Hexa-CN 3.8  Hepta-CN 4.5  Octa-CN 5.8

クリーンアップスパイクの平均回収率 水質試料 (n=5) 底質試料 (n=5) 回収率(%) 標準偏差 変動係数(%) 13C-Tetra-CN 52 0.12 23 34 0.046 14 13C-Penta-CN 72 0.11 15 57 0.038 6.7 13C-Hexa-CN 76 0.041 5.4 83 0.008 0.93 13C-Hepta-CN 94 0.064 6.8 100 0.062 5.9 13C-Octa-CN 110 0.094 8.4 0.137 13

水質試料を繰り返し分析したときの 平均定量値と再現性 (pg/L) 標準偏差 変動係数(%) Mono-CN N.D. ― Di-CN 15 16 109 Tri-CN 110 82 73 Tetra-CN 170 21 12 Penta-CN Hexa-CN 1.6 0.16 10 Hepta-CN Octa-CN Total PCN 68 41

底質試料を繰り返し分析したときの 平均定量値と再現性 (pg/g) 標準偏差 変動係数(%) Mono-CN 13 3.7 27 Di-CN 300 59 20 Tri-CN 630 180 29 Tetra-CN 710 57 8.1 Penta-CN 360 10 2.9 Hexa-CN 83 2.8 3.3 Hepta-CN 12 0.81 6.8 Octa-CN 1.6 0.42 26 Total PCN 2100 258

PCNの定量下限値 装置(pg) 水質 (pg/L) 底質 (pg/g) Mono-CN 0.06 0.2 6 20 10 30 Di-CN 検出下限 定量下限 Mono-CN 0.06 0.2 6 20 10 30 Di-CN 0.01 0.05 1 5 2 8 Tri-CN 0.03 3 Tetra-CN 0.07 7 40 Penta-CN 0.02 0.1 4 Hexa-CN 9 Hepta-CN Octa-CN

PCNのGC/MS-SIMクロマトグラムの一例 (底質試料)

ま と め 底質試料・・・高速溶媒抽出、多層シリカゲルカラム処理、活性炭カ ラム処理を組み合わせて抽出・前処理    底質試料・・・高速溶媒抽出、多層シリカゲルカラム処理、活性炭カ        ラム処理を組み合わせて抽出・前処理    水質試料・・・固相抽出、硫酸処理を組み合わせて抽出・前処理 ↓ HRGC/HRMSにより測定 Tetra~Octa体については、良好な再現性が得られた。 本分析手法を用いて環境試料中のPCNを分析した結果、GCカラムでは分離しないピークがあったものの、51種以上のPCNが検出された。 Mono,Di,Tri体については、定量値・回収率の変動が大きかった。このため、定量用の内標準物質については、今後の検討の必要がある。