現代の経済学B 伊東光晴「ケインズ」第3回 一般理論の骨組み(ii) 現代資本主義とケインズ経済学 京大 経済学研究科 依田高典
一般理論の骨組み(ii)
利子は何に対する報酬か? 伝統的利子論: 節欲に対する報酬 ケインズの批判: 現金=安全だが利子は付かない 債券=危険だが利子は付く ケインズ利子論: 流動性に対する報酬
利子率=資産を現金で持つか、債券で持つかを判断 債券の価格=配当/利子率 例 100円確定配当付債券 利子率が1%変動することの効果: 利子率の高さはどうして決まるか? 流動性選好利子論: 利子率=資産を現金で持つか、債券で持つかを判断 債券の価格=配当/利子率 例 100円確定配当付債券 利子率が1%変動することの効果: 10%・・・1000円→9%・・・1111円、11%・・・909円 価値変動小さい 5%・・・1000円→4%・・・2500円、6%・・・1667円 価値変動大きい 投資者階級は資産価値の変動の小さい高い利子率を好む
社会の調和は、正反対の予想があってこそ可能 将来の不確実性を重視 利子率の決定をストック=資産に関係付ける ケインズ利子論のビジョン: 社会の調和は、正反対の予想があってこそ可能 将来の不確実性を重視 利子率の決定をストック=資産に関係付ける
新しい投資について企業家が予想した利潤率 資本の限界効率と投資の決定の関係 資本の限界効率: 新しい投資について企業家が予想した利潤率 投資の決定: 資本の限界効率=利子率 所有と経営の分離: 資本の限界効率と利子率の決定の分離
『一般理論』の要約 雇用量←生産量=所得−−消費←所得 (消費性向) ー−投資←資本の限界効率 ←利子率 [乗数理論] [流動性選好理論]
(2)利子率を下げて民間投資を増やすこと。 (3)公共投資を行い、有効需要を作り出すこと。 ケインズの政策とは? (1)消費性向を高めること。 貯蓄性向を低めること。 累進課税による平等化政策。 (2)利子率を下げて民間投資を増やすこと。 (3)公共投資を行い、有効需要を作り出すこと。
マルクス:資本主義は共産主義にとって変わられる ケインズ:資本主義は国家の政策によって支えられなければならない(福祉国家) ケインズの資本主義観: マーシャル:資本主義は発展して行く マルクス:資本主義は共産主義にとって変わられる ケインズ:資本主義は国家の政策によって支えられなければならない(福祉国家)
現代資本主義とケインズ経済学
社会保障の充実、積極的公共投資政策、累進課税の適用 → 不況期の自動的有効需要の創出 ビルト・イン・スタビライザー: 社会保障の充実、積極的公共投資政策、累進課税の適用 → 不況期の自動的有効需要の創出 現代経済の新しい病: (1) 無駄の制度化 投資は有効需要を増すと同時に 生産能力を拡大する → 供給過剰の危険性→軍需産業への傾斜 (2) インフレーションと国際為替制度の不安定化 以上 ここまで