総合基礎薬学特別講義 I 平成26年6月7日.

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1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
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物理科3回 尾尻礼菜 ブラウン運動 ブラウン運動のシミュレーション。黒色の媒質粒子の衝 突により、黄色の微粒子が不規則に運動している。
医薬品素材学 I 月日講義内容担当者 4/12 1 物質の状態 I 【総論、気体の性質】 安藝 4/19 2 物質の状態 I 【エネルギー、自発的な変 化】 安藝 4/26 3 物質の状態 II 【物理平衡】安藝 5/10 4 物質の状態 II 【溶液の化学】池田 5/17 5 物質の状態 II 【電気化学】池田.
1 今後の予定 8 日目 11 月 17 日(金) 1 回目口頭報告課題答あわせ, 第 5 章 9 日目 12 月 1 日(金) 第 5 章の続き,第 6 章 10 日目 12 月 8 日(金) 第 6 章の続き 11 日目 12 月 15 日(金), 16 日(土) 2 回目口頭報告 12 日目 12.
第2章 機械の強度と材料 機械の必要条件 ★壊れない ★安全である ★正しく機能する そのためには・・・ ★適切な材料を使う
FUT 原 道寛 名列___ 氏名_______
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
微粒子合成化学・講義 村松淳司 村松淳司.
環境表面科学講義 村松淳司 村松淳司.
医薬品素材学 I 1 物理量と単位 2 気体の性質 1-1 物理量と単位 1-2 SI 誘導単位の成り立ち 1-3 エネルギーの単位
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
医薬品素材学 I 3 熱力学 3-1 エネルギー 3-2 熱化学 3-3 エントロピー 3-4 ギブズエネルギー 平成28年5月13日.
6.粉体の粒度分布 炭酸カルシウム(CaCO3)   粉(粒子) アンドレアゼンピペット.
分散と凝集のレオロジー 四方俊幸 東京農工大学大学院農学研究院 第3回コロイド実用技術講座 2015/10/26日本化学会館 
2015/10/26-27 第3回コロイド実用技術講座 化粧品エマルションのレオロジー特性 日本メナード化粧品㈱ 総合研究所 山田 隆幸.
医薬品素材学 I 4 物質の状態 4-1 溶液の蒸気圧 4-2 溶液の束一的性質 平成28年5月20日.
薬学物理化学Ⅲ 平成28年 4月15日~.
課題 1 P. 188 解答 ΔvapS = ΔvapH / T より、 T = ΔvapH / ΔvapS 解答
相対論的輻射流体力学における 速度依存変動エディントン因子 Velocity-Dependent Eddington Factor in Relativistic Photohydrodynamics 福江 純@大阪教育大学.
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
固体電解コンデンサの耐電圧と漏れ電流 -アノード酸化皮膜の表面欠陥とカソード材料の接触界面-
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
(b) 定常状態の近似 ◎ 反応機構が2ステップを越える ⇒ 数学的な複雑さが相当程度 ◎ 多数のステップを含む反応機構
科学的方法 1) 実験と観察を重ね多くの事実を知る 2) これらの事実に共通の事柄を記述する→法則 体積と圧力が反比例→ボイルの法則
生物機能工学基礎実験 2.ナイロン66の合成・糖の性質 から 木村 悟隆
6-1.レオロジー 固体・液体 フック固体(完全弾性体) ニュートン液体(理想液体) 応力ひずみ曲線が直線
◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
微粒子合成化学・講義 村松淳司
緩衝液-buffer solution-.
2 物質の膜透過機構  吸収・分布・代謝・排泄の過程は、生体膜を透過することが基本.
6.粉体の粒度分布 炭酸カルシウム(CaCO3)   粉(粒子) アンドレアゼンピペット.
計測工学15.
今後の予定 4日目 10月22日(木) 班編成の確認 講義(2章の続き,3章) 5日目 10月29日(木) 小テスト 4日目までの内容
燃焼の流体力学 4/22 燃焼の熱力学 5/13 燃焼流れの数値解析 5/22
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
原子で書いた文字「PEACE ’91 HCRL」.白い丸はMoS2結晶上の硫黄原子.走査型トンネル顕微鏡写真.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
レポートの書き方 ホチキス (ノリ付け不可) レポート(宿題): 鉛筆不可 演習、ミニテスト: 鉛筆可 左右上下に 25mmの マージン
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
化学工学基礎 −後半の後半− 第1回目講義 (2009年7月10日) 1 担当 二又裕之 物質工学1号館別館253ー3号室
応力(stress, s, t ) 自由物体図(free-body diagram)において、外力として負荷荷重P が作用したとき、任意の切断面で力の釣り合いを考慮すると、面における単位面積あたりの内力が存在する、それを応力といい、単位は、Pa(N/m2) で表す。面に垂直に働く垂直応力、s と平行に働くせん断応力、
Diffusion coefficient (拡散係数)
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
微粒子合成化学・講義 村松淳司 村松淳司.
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
Chapter 26 Steady-State Molecular Diffusion
移動現象論II(担当 金原) 一般目標: 諸現象の定式化 定式化した結果の活用法 実装置、実現象への適用 個別目標: 物質移動現象の理解
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
◎ 本章  化学ポテンシャルの概念の拡張           ⇒ 化学反応の平衡組成の説明に応用   ・平衡組成       ギブズエネルギーを反応進行度に対してプロットしたときの極小に対応      この極小の位置の確定         ⇒ 平衡定数と標準反応ギブズエネルギーとの関係   ・熱力学的な式による記述.
建築環境工学・建築設備工学入門 <空気調和設備編> <換気設備> 自然換気の仕組みと基礎
今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
モル(mol)は、原子・分子の世界と 日常世界(daily life)をむすぶ秤(はかり)
ニュートン力学(高校レベル) バージョン.2 担当教員:綴木 馴.
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
宿題を提出し,宿題用解答用紙を 1人2枚まで必要に応じてとってください 配布物:ノート 2枚 (p.85~89), 小テスト用解答用紙 1枚
イミダゾリウム系イオン液体(3)ー分子性液体(2)混合溶液の二酸化炭素溶解度(1)
・Bernoulli(ベルヌーイ)の定理
第35回応用物理学科セミナー Speaker:田中良巳氏 Affiliation: 横浜国立大学 准教授
化学1 第11回講義 ・吸光度、ランベルト-ベールの法則 ・振動スペクトル ・核磁気共鳴スペクトル.
相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
電解質を添加したときの溶解度モデル – モル分率とモル濃度
外部条件に対する平衡の応答 ◎ 平衡 圧力、温度、反応物と生成物の濃度に応じて変化する
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
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総合基礎薬学特別講義 I 平成26年6月7日

物質の移動 1 拡散 2 沈降現象 3 透過 4 レオロジー SBO 拡散および溶解速度について説明できる。 1 拡散   2 沈降現象 3 透過 4 レオロジー SBO 拡散および溶解速度について説明できる。 SBO 沈降現象について説明できる。 SBO 流動現象および粘度について説明できる。

1 拡散 diffusion F Fr 溶液中の溶質の移動 η : 粘度 v : 移動速度 f : 摩擦係数 駆動力 摩擦力 溶液中の溶質の移動 F ○ 液体や気体中を乱雑な熱運動により,分子やイオンなどの粒子が移動していく過程 Fr ○ 溶液中,溶質分子が濃度の高領域から低領域へと濃度勾配にしたがって広がっていく現象 η : 粘度 f : 摩擦係数 v : 移動速度 ○ 拡散は 駆動力 と 摩擦力が釣り合ったときにおこる 濃度勾配 (拡散速度 vs = 定常状態の移動速度) 駆動力と摩擦力は溶媒と溶質の性質によって左右される

1 拡散 diffusion 1 拡散 diffusion (1) 流束 J (mol m-2 s-1) (2) フィックの第一法則   (定常状態拡散)  流束=-(拡散係数)×(濃度勾配) 拡散係数 D: SI単位 m2∙s-1

1 拡散 diffusion 水中における拡散係数 D (x 10-9 m-2 s-1) 物質 分子量 拡散係数 水 2.26 (25℃)   2.26   (25℃) グリシン 75   1.05   (25℃) スクロース 342   0.522  (25℃) リゾチーム 14 400   0.112  (20℃) ヒト血清アルブミン 68 500   0.061  (20℃) ヒトフィブリノーゲン 339 700   0.0202  (20℃) ポリメチルメタクリル酸 1 420 000   0.0225  (25℃)

1 拡散 diffusion (3) フィックの第二法則 (3) フィックの第二法則  時間経過とともに,濃度の高いところから,濃度の低いところに物質が移動していく様子を表す式 フィックの第一法則を用いると 溶質濃度の時間変化が,濃度勾配の変化の度合いに比例する。

1 拡散 diffusion (4) 拡散の熱力学的な考え方 ○ 溶質分子1個に働く力 F (濃度勾配によって生じる駆動力) (4) 拡散の熱力学的な考え方  ○ 溶質分子1個に働く力  F     (濃度勾配によって生じる駆動力) kB : ボルツマン定数 エネルギー = 力 × 距離 化学ポテンシャルは1モル当たりのエネルギーである。 ○ 溶質分子は溶媒中を拡散していくとき,摩擦力が駆動力とつりあうまで速度が増加し,それ以後は速度一定となる。    摩擦力 = f∙v

1 拡散 diffusion (4) 拡散の熱力学的な考え方 フィックの第一法則 アインシュタイン-ストークスの式 (4) 拡散の熱力学的な考え方  濃度 c をかけると,溶質粒子の流れ,すなわち流束 J が得られる。 フィックの第一法則 アインシュタイン-ストークスの式 温度 T を上げると,拡散係数 D は増加する。 つまり,温度が高いほど物質は速く移動する。

1 拡散 diffusion ○ 拡散に影響を与える溶媒・溶質の性質 濃度勾配 溶媒の温度 小 → 大 低 → 高 駆動力 F ○ 拡散に影響を与える溶媒・溶質の性質  濃度勾配 溶媒の温度 小 → 大 低 → 高 駆動力 F 拡散速度 vs 溶質の大きさ 溶媒の粘度 小 → 大 低 → 高 摩擦係数 f 拡散速度 D 大 → 小

1 拡散 diffusion (5) 分子の並進運動と拡散 拡散を分子1個に注目すると, ○ 分子同士の衝突による無秩序な並進運動 (5) 分子の並進運動と拡散  拡散を分子1個に注目すると,   ○ 分子同士の衝突による無秩序な並進運動 ランダム歩行 (酔歩) ○ 二乗平均移動距離 d

2 沈降 sedimentaion 重力による自然沈降 g ○ 半径rの球形粒子が粘度  の溶媒中を 自由落下する場合の駆動力 F ○ 摩擦力 Ff = f (摩擦係数) vs(沈降速度)

2 沈降 sedimentaion 重力による自然沈降 駆動力 F が摩擦力 Ff とつりあうところで 沈降速度が一定になる。 ストークスの式 粒子の沈降を抑えるには, ① 粒子径 を小さくする。 ② 粒子と溶媒の密度差を小さくする。 ③ 粒子の粘度を上げる。

2 沈降 sedimentaion (2) 超遠心による沈降 沈降平衡: 拡散速度=沈降速度 溶液をあまり大きくはない回転数で回転 沈降平衡: 拡散速度=沈降速度 溶液をあまり大きくはない回転数で回転 ↓ 沈降効果により溶質分子は管の底部沈降 濃度勾配ができる。 拡散効果が発生する。 沈降平衡に達する。 ↓ 溶質の濃度比, ↓  溶媒の密度, ↓  溶質の部分比容 溶質のモル質量が求まる。 ○コロイド粒子 (粒子径1 mm以下) ○巨大分子 (たんぱく質,核酸,多糖類など分子量が10 ~ 100 kDa)

3 透過 permiation (1)膜透過 膜内での溶質分子の拡散は フィックの第一法則で表される。 分配係数 ( K = c2/c1 = c3/c4 )を考慮すると, 膜透過係数

3 透過 permiation (1)膜透過 膜透過の指標 ① 膜への分配が高いほど ②分子サイズが小さいほど ③溶液の温度が高いほど 膜透過係数は大きくなる。

3 透過 permiation (2) 溶解 dissolution Nernst – Noyes – Whitney 式 溶質分子の拡散はフィックの第一法則で表される。 A : 固体の表面積 Nernst – Noyes – Whitney 式

3 透過 permiation (2) 溶解 dissolution Nernst – Noyes – Whitney 式 ○ 溶解速度を速くするための条件 ① 溶解度 Cs を高くする。 ② 固体表面積 A を大きくする。 ③ 拡散層の厚さ h を薄くする。 ④ 温度を上昇 → D の増大

a フィックの第一法則 slide 4 b フィックの第二法則 slide 6 c 薬物の移動速度 slide 13 d シンク条件 高濃度側に比べて,低濃度側の溶質濃度が 0 とみなせる条件

4 レオロジー Rheology “rheo” = “flow” 「物質の変形と流動に関する化学」 by E. C. Bingham ○ 応力 stress      S : 外力 F の作用によって生じた内力  ( Pa = N m-2) ○ ひずみ strain     g : 物体の大きさに関係しない相対的な変形量 ○ 弾性 elasticity; 応力がゼロになったとき, 直ちに元の平衡状態に戻る性質 ○ 粘性 viscosity:ごく小さい応力に対しては固体として弾性を示すが,ある限界以上の応力では流動する  (乳液、クリーム) ○ 塑性 plasticity:力を取り除いても元にはもどらない性質             (プラスチック製定規) F S

4 レオロジー Rheology 力(応力)-物質の変形(流動)-時間の関係を定量的に解析 せん断応力  S せん断速度  D

4 レオロジー Rheology (1) 変形および流動 ○ ニュートン流動 純溶媒 粘度  (mPa∙s) 水 1.002 アセトン   ○ ニュートン流動 純溶媒 粘度  (mPa∙s) 水 1.002 アセトン 0.322 エタノール 1.200 ベンゼン 0.652 グリセリン 1412

4 レオロジー Rheology ○ 非ニュートン流動 準粘性流動  アルギン酸ナトリウム,メチルセルロース,カルメロースナトリウムなどの鎖状高分子の1%前後の水溶液 塑性流動 (ビンガム流動)  軟膏,チンク油のような濃厚な懸濁系 擬塑性流動(準塑性流動) アルギン酸ナトリウム,メチルセルロース,カルメロースナトリウムなどの鎖状高分子の濃厚な溶液 ダイラタント流動  でんぷんのような比凝集性の粒子高濃度(50%以上)のサスペンション  

4 レオロジー Rheology (2) 粘度  アンドレードの式 ○ 温度上昇に伴い,粘度は低下する ○ 純液体の粘度         (Pa∙s = N∙s∙m-2 = kg∙m-1∙s-1)   動粘度(動粘性率)    / (m2∙s-1)       密度    流動度(流動性の指標) 1/   

4 レオロジー Rheology (2) 粘度 濃度 c の溶液の粘度  溶媒の粘度 0 ○ 溶液の粘度 相対粘度 rel 溶媒の粘度  0 ○ 溶液の粘度 相対粘度  rel 比粘度   sp 還元粘度 red 固有粘度  [] (L/g)    固有粘度は粘度ではなく、濃度の逆数 マーク – ハウインクの式

4 レオロジー Rheology (3) 粘度測定法 (a) オストワルド粘度計 (b) 回転粘度計 (c) 落球粘度計 ウベローデ型粘度計  ニュートン流体 ニュートン流体 非ニュートン流体 非常に高粘度のもの の測定

卒試・国家試験に向けて 頑張ってください!!!! 平成26年6月7日