タバコ・アルコールの害 学校薬剤師 ○○○○ 薬物乱用防止教室 タバコ・アルコールの害 学校薬剤師 ○○○○ 皆さん、こんにちは、学校薬剤師の○○です。 普段は、薬局でお薬を調剤したり、一般の薬の販売の仕事をしています。学校では、飲料水やプールの水質検査、教室の明るさを調べる照度検査など環境衛生の仕事をしています。見かけた人もいるかもしれませんね。 今日は、薬物乱用防止教室ということでお話をしに来ました。大事な話ですから、しっかり聞いて下さいね。 では、今日のテーマに入る前に、少しお薬の話をしたいと思います。 今までに薬を使ったことのない人はいますか?(いないようですね。)では、どんなときに使いましたか? さて、薬とは何でしょう?(手を挙げて答えて貰っても良い) そう、病気やケガをしたときに使いますね。じゃぁ、飲み薬や塗り薬の他に、どんなものがあるでしょう?
目薬や注射・吸入・坐薬・貼付、使ったことがある人も多いと思います。どんな形にしても、薬の成分は血液に入り(これを吸収と言います)、体の色々な場所に運ばれて薬としての働きをして、その後、主に尿や便から体の外に排泄されます。 薬には、副作用というものがあります。ニュースなどで聞いたことありますか? 副作用と言うのは、病気を治したり症状を軽くしたりする効果ではなくて期待していない作用・有害な作用のことです。副作用を避けるためには、お薬は正しく使うことがとても大事です。自分の勝手な判断で、家族の人の薬を使ったり、使う量を増やしたりしてはいけません。 では、今日のテーマに移りましょう。
児童に恐ろしい薬物 お酒(アルコール) タバコ(ニコチン) シンナー等の有機溶剤 覚せい剤 大麻 その他 シンナー、覚せい剤、大麻、麻薬など危険な薬物は沢山ありますが、今日はまず身近なもの、タバコやお酒が成長期の皆さんにとってどんな害を及ぼすのかについて勉強しましょう。 まず、アルコールについて。お正月のお屠蘇や、お祝いの席での乾杯、忘年会や新年会など、日本の社会ではお酒を飲む機会は沢山あります。気持ちをリラックスさせて会話が弾み、和やかになることがある一方で、飲み過ぎれば頭痛や吐き気がしたり、長い間飲み続ければ体に色々な害がでてきます。
アルコールが体に与える影響-1 アルコールと胃 きついお酒を飲むと胃をあらす。 飲みすぎると胃炎や出血を起こす。 アルコールは胃で80%が吸収され、全身に回ります。アルコールの影響としては、まず、胃を荒らします。次の写真を見て下さい
ぎょうこさよう み じっけん アルコールのたんぱく凝固作用を見る実験 ぎょうこさよう み じっけん アルコールのたんぱく凝固作用を見る実験 用意したもの まぐろの赤身 エタノール純度99.5% 表面がすぐ白くなりました 表面のたんぱく質が凝固して 破壊された証拠です 強いお酒を一気に飲むと胃の中で同じような事が起こります 赤いのはマグロの切り身で、アルコールに浸しています。アルコールにはタンパク質を凝固させる働きがあるので、マグロの切り身がお酒の中のアルコール(エタノール)で白く固まっています。アルコール濃度が高い、強いお酒を飲むと、胃の粘膜ではこれと同じことが起こります まぐろを切って開きました エタノールに触れていない中の 組織は変性していません
Internet Medical Adviser より アルコールのゆくえ アルコールは胃や小腸で吸収された後、肝臓でアセトアルデヒドという物質に分解されます。 Internet Medical Adviser より
アルコールが体に与える影響-2 アルコールと肝臓 アルコールは肝臓でほとんどが分解される。 飲みすぎると肝臓の負担が大きくなり肝臓 を悪くする。 飲酒→脂肪肝→アルコール性肝炎→肝硬変 その時に肝臓の負担が大きくなり、長い間には脂肪肝や、肝硬変という病気になります。 正常な肝臓と脂肪肝、肝硬変の写真を見て下さい。
かんぞう 正常な肝臓 しぼうかん 脂肪肝 かんこうへん 肝硬変 かんぞう 正常な肝臓 しぼうかん 脂肪肝 かんこうへん 肝硬変 随分、違いますね。その他にも、体の色々な部分に影響が出ます。
お酒の飲みすぎによる害 特に大事なのが脳に与える影響ですが、アルコールには神経を麻痺させる作用があります。お酒を飲んでいる人が興奮しているように見えるのは、実は、理性が抑えられてしまうからです。 一気飲みなどで、急に体内のアルコール濃度が高くなったときには、呼吸を司る脳の大事な部分まで麻痺してしまうので死んでしまうこともあります。 アセトアルデヒドを分解する酵素を持っているかどうかでお酒に強い人、弱い人に分かれますが、急性中毒は、急にアルコール濃度が高くなるのでお酒に強い人でも関係ありません。 大学生が一気飲みで病院に運ばれるケースが時々報道されますが、皆さんもいずれお酒を飲む機会が来ると思いますが、そんな飲み方は絶対にしないで下さいね。 また、アルコールには脂肪を溶かす性質があって、脳の細胞を溶かしてしまいます。
正常な脳 ・ アルコールで縮んだ脳 長い間、大量のお酒を飲み続けると脳が縮んで、考える力や記憶力が働かなくなり、痴呆症のような症状がでます。 正常な脳 ・ アルコールで縮んだ脳 長い間、大量のお酒を飲み続けると脳が縮んで、考える力や記憶力が働かなくなり、痴呆症のような症状がでます。 そして、耐性・依存という問題ですが、飲み続けているうちに同じ量では同じ効果が得られなくなってどんどん量が増えてしまい、アルコール中毒、正確にはアルコール依存症と言いますが、お酒を飲まないと精神・身体が働かないような状態になってしまいます。 みんな、転んで怪我をしたことありますね? もしかしたら骨折したことがある人もいるかな? 怪我はどうなりましたか? 時間が立てばかさぶたができて、また新しい皮膚ができて治りますね。骨折した所も、またちゃんとくっついて動かせるようになります。これを「再生」と言います。でも、脳の神経は再生しません。元には戻らないんです。 小学生、中学生や高校生はまだ成長しきっていない無防備な体ですから、大人よりも影響を受けやすく、そんな頃からお酒を飲み始めると、アルコール依存症になる率も高くなります。お酒は20歳になるまで飲んではいけない、というのはそのためなんですね。 それから、アルコールにはお腹の中の赤ちゃんへの影響へもあります。アルコールは胎盤を通って赤ちゃんの体内へ入るので、赤ちゃんが正常に発育できず、障害を持って生まれてくる可能性も高くなります。将来、お母さんになる女の子だけでなく、男の子も、このことはよく覚えておいて下さいね。 次に、タバコについて勉強しましょう。
日本人の健康寿命をもっとも縮めているのはタバコ 日本人の健康寿命短縮年数 0 2 4 6 8 10年 タバコ 高血圧 アルコール 肥満 野菜・果物不足 運動不足 コレステロール ドラッグ 大気汚染 エイズ 6.2 5.9 3.0 1.9 1.9 1.8 最近は、喫煙コーナーでなければ吸えないところが多くなりました。 新幹線も、最初は禁煙車が少なかったけれど今ではほとんどが禁煙車両で、喫煙車両の方が少なくなりました。 建物だけでなくて、歩道でも吸ってはいけないと法律で決められているところもあります。そんな風に、吸ってよい場所と吸ってはいけない場所を区別する「分煙」が進んでいますが、何故でしょう。どんな風に体に悪いのでしょう? 1.6 0.5 原因別健康寿命短縮年数・日本 (2002年世界健康報告書より) 東京大学生産技術研究所安井至教授試算 0.5 0.2
タバコは毒物の缶詰 タバコには沢山の有害な物質が含まれています。毒の缶詰と言われるほどです。 タバコには沢山の有害な物質が含まれています。毒の缶詰と言われるほどです。 一酸化炭素中毒と言う言葉は聞いたことありますか? 酸素の代わりに赤血球にくっついて全身に運ばれるので酸素不足になるのです。 最近はガス湯沸かし器の事故でも随分と問題になりましたね。発ガン物質も何種類も入っています。 そして、ニコチン依存症といって、ニコチンが切れるとイライラしてまた吸ってしまう、悪循環。そうなるとタバコをやめたくてもなかなかやめられません。
周りの人の体に悪い 受動喫煙の害 1.9倍 (平山雄 1983年) 夫が20本以上喫煙する時の妻の 肺がん死亡率 (夫が非喫煙者である場合を1.0とする) 1.9倍 (平山雄 1983年) 受動喫煙によって、非喫煙者はあらゆるタバコ病のリスクを負う 子どもは、気管支炎・喘息・肺炎をおこしやすくなる 乳幼児突然死(SIDS)のリスクも高まる タバコは吸っている本人に害があるだけではありません。周りの人もその煙を吸うことで有害物質が体の中に入ることになります。 吸っている人のそばで周囲の人が煙を吸うことを受動喫煙と言って、タバコの火が付いている先から出る煙のことを副流煙と言います。本人が吸う主流煙より、有害物質がもっと沢山含まれています。 では、どのくらい汚れているか見てみましょう。
けむり おせんど タバコの煙の汚染度 水 煙で汚れた水 実験中 けむり おせんど タバコの煙の汚染度 水 煙で汚れた水 写真は、タバコの煙をフラスコの水に通した実験です。タバコ5分、次に20本分。すごいですね。こんな物が体に入ってくると思うと、どうですか? 次は、肺の写真です。 実験中
きれいな肺 と タバコを吸った肺 きれいな肺とタールが沈着してガンになった肺、よく見て下さい。
タバコを吸うとガンになりやすい 肺だけでなくて、体のあらゆる部分でガンができやすくなります。 肺だけでなくて、体のあらゆる部分でガンができやすくなります。 今日は、ビデオを持ってきました。繰り返しになるところも沢山ありますが、今までお話ししたことを思い出しながら見て下さい。
心身ともに健康で幸せな人生を 私たちは願っています ビデオ視聴 喫煙防止に関するビデオの放映 ビデオ視聴 喫煙防止に関するビデオの放映 例;「今から始める喫煙防止教育 著作;社団法人日本循環器学会、日本循環器学会禁煙推進委員会(代理店 少年写真新聞社)」は、小学校3,4年生用(10分),小学校5,6年生(12分)があるので、これを活用する。 ビデオを見て、どうでしたか? タバコを吸うのがカッコイイと思えますか? とんでもない、スポーツの大敵、美容の大敵ですね。タバコの怖さ、わかって貰えたでしょうか? 今までの話の他に、タバコもアルコールと同じで、赤ちゃんへの影響があります。赤ちゃんがお腹にいるときにお母さんがタバコを吸うと、赤ちゃんも酸素不足になり、発育に悪影響が出ます。
お わ り ありがとうございました 今日は、タバコとアルコールの害についてお話ししました。もし友達や先輩から誘われても、キッパリと断りましょう。そういう仲間に入ると、次にはもっと恐ろしい、シンナーや覚せい剤などの誘惑が近づくことにもなりかねません。 (この後、時間的余裕・教師の協力があれば、誘いを断る方法のロールプレイを入れると、授業が一方通行でなく効果的となります。) シンナー、覚醒剤、MDMAなど、若い人をターゲットにした薬物が皆さんの身近なところまで迫っています。でも、それらについてはまた別に勉強する機会があると思いますので、今日はこれで終わりにします。