南アルプス地域・糸魚川-静岡構造線断層帯付近の地震活動と地殻構造 SEISMICITY AND CRUSTALL STRUCTURE ALONG THE SOUTHERN JAPANESE ALPS SEGMENT OF THE ITOIGAWA-SHIZUOKA TECTONIC LINE ヤニス パナヨトプロス[1]・平田 直[1] ・佐藤 比呂志[1] ・加藤 愛太郎[1] ・今西 和俊[2] ・長 郁夫[2] ・桑原 保人[2] Yannis PANAYOTOPOULOS [1], Naoshi HIRATA [1], Hiroshi SATO [1], Aitaro KATO [1], Kazutoshi IMANISHI [2], Ikuo CHO [2], Yasuto KUWAHARA [2] [1] 東大・地震研; [2] 産総研; [1] ERI, Univ. Tokyo; [2] GSJ, AIST; 発表者:ヤニス パナヨトプロス Speaker: Yannis Panayotopoulos S1:ごらんのようなタイトルで発表します
・地質構造 Miocene rocks Paleozoic-Mesozoic rocks I.S.T.L M.T.L Yatsugatake volcano Mt. Fuji Crataceous-Tertiary rocks Izu-Bonin M.T.L 糸魚川-静岡構造線(ISTL)付近の地質 北部ISTL: 第三紀のrift basin の西縁、東傾斜 南部ISTL:古い伊豆小笠原弧で形成された地殻と本州側の地殻の境 S2:まず、糸魚川-静岡構造線の付近の地質構造を簡単(かんたん)に説明します 北部では第三紀のrift basin の西縁になる東傾斜(けいしゃ)逆(ぎゃく)断層です。 南部では古い伊豆小笠原弧(こ)で形成された地殻と本州側の地殻の境界です。
・目的 ISTL周辺の微小地震活動、速度構造、地質・地形の関係を求めて、ISTLの活動を理解する そのために 地震波速度の3次元分布を求めて地質構造との比較 ISTL周辺の地震活動と活断層の活動との関係を調べる (本研究は「糸魚川-静岡構造線断層帯における重点的な調査観測」(文部科学省受託研究)、及び、そのパイロット的調査観測の一環として実施した「断層帯周辺における自然地震観測(稠密アレー観測による自然地震活動及び地殻不均質構造の解明)の成果の一部である) S3:本研究の目標(もくひょう)は ISTL周辺の微小地震活動、速度構造、地質・地形の関係を求めて、さらにISTLの活動を理解することです。 そのために中南部ISTL付近で、稠密(ちゅうみつ)自然地震観測を行い、 地震波速度の3次元分布を求めて地質構造との比較して、 さらにISTL周辺の地震活動と活断層の活動との関係を調べます。
・観測 2003年8月25日-10月16日 2005年9月16日-12月22日 周辺の定常観測点(JMA, NIED, 大学の100点) DAT58点からになる地震計アレイ。 2005年9月16日-12月22日 DAT 26点または30点の観測点からなる2本の地震計アレイ。 産総研との共同で14観測点。 周辺の定常観測点(JMA, NIED, 大学の100点) S4:まず研究に用いた観測点について説明します。 本研究では、二つの地震計アレイを用いました、2003年度のアレイと2005年度のアレイ。 2003年度のアレイはDAT58点からなる地震計アレイを設置しました。 2005年度は26点または30点の観測点からなる2本の地震計アレイを設置しました。観測点の間隔(かんかく)は約1.5kmです。 さらにさんそうけんとの共同で14観測点を設置しました。 臨時(りんじ)観測点以外に周辺の定常観測点100地点のデータも用いました。
・データ 2003/08/25から2003/10/16まで2003年度臨時観測に記録された89地震 2003/08/25~10/16 または 2005/09/01~12/31 2003/08/25から2003/10/16まで2003年度臨時観測に記録された89地震 南アルプス周辺2005/09/01から2005/12/31までに気象庁から報告されたM>0.5以上の348地震 同時期に行われた13の発破 再読み取った読み取り数は83,053個 S5:本研究ではJMAから2003/08/25~10/16 または 2005/09/01~12/31まで報告されたM>0.5以上の429個の地震を用いました。 我々(われわれ)は以上の地震のP波とS波の到着時刻を読み取りました。定常店のデータも再読み取りしました。読み取った数は83,053個でした。 さらに同時期に行われた13の発破を加え(くわえ)トモグラフィ解析(かいせき)を行いました。
・解析 x 方法:Double-difference tomography 法 (Zhang and Thurber 2003) 格子配置: 格子配置: x軸:5km間隔で60km、その外側は、15kmまたは20km間隔 y軸:8km間隔で9本の測線 深さ方向:0、3, 6, 9, 12,16, 20, 30, 35, 100, 200 km S6:次に解析方法について述べます。 本研究では(Zhang and Thurber)のDDトモグラフィ法を用いました。 この図は用いた格子(こうし)点を示して(しめして)います。 X方向に5km間隔(かんかく)で、Y方向に8km間隔(かんかく)で格子(こうし)点を配置(はいち)しました。 また深さ方向に12kmまで3km間隔(かんかく)で格子(こうし)点を配置(はいち)しました。
・結果(1) DD法で求めた震源分布 2005/09/01~12/31 再決定された震源の深さは、気象庁一元化震源より平均で1.5 km浅い S7:この図はDD法で求めた震源分布です。 比較のために赤い丸でJMA一元化震源を示しています。青い●は再決定された震源、赤い●は元のJMAの震源、黄色い線でDD法の解析からどのぐらい震源が動いたかを示しています。 再決定されて震源の深さはJMAより平均で1.5km浅くなりました。
・結果(2) Vp東西断面 Aoyagi Wakamiya MTL Hakushu Shimotsuburai Hoouzan 発震機構解 今西・他、2006 Aoyagi Wakamiya MTL Hakushu Vp東西断面 Shimotsuburai Hoouzan Ichinose Onajika-toge S8:この図はP波のトモグラフィの結果を示しています。結果は五つの断面に分かれています。 この図は断面の水平分布を示して、その上の図はそれぞれ断面とISTL断層部分の関係を示しています。 青色は速い領域(りょういき)を緑色は遅い領域(りょういき)を示しています。赤丸は再決定された震源を示しています。解像度(かいぞうど)が不十分なところをマスクしています。浅いところには0-10kmの当たりに非常に遅い領域(りょういき)があります。また深さ約15kmまでやや遅い領域があります。さらに約5kmより深いところに6.5km/secを超える(こえる)速い領域があります。特に注意する必要がある断面は8kmの白州断層を切る断面と16km一之瀬断層を切る断面。
・議論(1) 白州断層付近の断面 MTL Hakushu(ISTL) Hakushu MTL 発震機構解 今西・他、2006 S9:まず白州断層を切る断面について述べます(のべます)。 その断面の上の再決定された震源はその辺り(あたり)に並びました。その震源の間に線を引くと、この線は低速度の領域と高速度の領域にほぼ位置します。 遅い領域は本州の付加帯だとしたら、速い領域が古い伊豆・小笠原弧の地殻を示していると考えます。その境界はほぼISTLに位置すると考えています。地震活動はその境界の上でもっとも盛んですので、その地震は白州断層の深部延長の上に発生している可能性が高いです。白州断層の深部は約50度で西傾斜していると考えられます。
・議論(2) 市之瀬断層付近の断面 Onajika-toge Ichinose(ISTL) Chichibu-Shimanto belts Koma block (Tanzawa) Kofu Basin Koma block (Tanzawa) Misaka block (pIc) Chichibu-Shimanto belts Kofu Basin Yamanashi Pref. (2004) Onajika-toge Ichinose(ISTL) S10: 次に一之瀬断層を切る断面について述べます。 断面の上に比較のために地表の地質構造を示しています。 この断面は四つの領域に分かれています。このあたりの低速度領域とこのあたりのやや遅い領域とさらにこのあたりの速い領域。 それぞれの領域に大体の境界を引きますと次のようになります。一番左側の領域は本州側の付加帯を形成する秩父・四万十帯を示していると考えます。 そのとなりの領域は付加された伊豆・小笠原弧のkoma(block)に形成されていると考えます。さらにその隣の領域は伊豆・小笠原弧のみさか(block)だと考えます。
・結論 南アルプス付近のISTL深部延長は低速度と高速度の境界になる可能性がある。低速度は秩父・四万十帯、高速度は伊豆小笠原弧起源の地殻(pIc) に対応していると考えられる。 ISTLは5kmより深部では、約50度で西傾斜する逆断層と考えられる 白州断層付近の地震活動はISTLの深部延長で発生している可能性がある。 地質ISTLの深部は地表の活断層とつながっている可能性がある。 市之瀬断層付近の地殻には、西傾斜構造が存在する。 S11:結論(けつろん)です 南アルプス付近のISTL深部延長は低速度と高速度の境界になる可能性がある。低速度は秩父・四万十帯、高速度は伊豆小笠原弧起源の地殻(pIc) に対応(たいおう)していると考えられる。 ISTLは5kmより深部では、約50度で西傾斜する逆断層と考えられる 白州断層付近の地震活動はISTLの深部延長で発生している可能性がある。 地質ISTLの深部は地表の活断層とつながっている可能性がある。 市之瀬断層付近の地殻には、西傾斜構造が存在する
・議論(2) 市之瀬断層付近の断面 Onajika-toge Ichinose Chichibu-Shimanto belts Tanzawa (Misawa Mt.) Kofu Basin Onajika-toge Ichinose Chichibu-Shimanto belts Tanzawa bloc (Misawa Mt.) Kofu Basin PLc Izu Bonin S10:それでは議論(ぎろん)に入ります 先ほど説明した三箇所(さんかしょ)の境界を断面図に載せ(のせ)ました。MTLと地質ISTLの間の遅いP波速度領域は秩父・四万十帯に対応します。さらに速いP波速度領域はIzu Bonin岩体に対応します。再決定された地震活動は地質ISTLの深部延長と思われ、速い領域と遅い領域の境界付近に集まっています。このことは、かつ断層ISTLの深部が地質ISTLの深部とつながっている可能性を示しています。かつ断層ISTLの深部は約50度で西傾斜していると考えられます。