デジタルレファレンスサービスの効果的な運営に向けての諸提案 その1:デジタルレファレンスサービスを 第5章 デジタルレファレンスサービスの効果的な運営に向けての諸提案 その1:デジタルレファレンスサービスを 指向した要員配置に関する考察
デジタル環境下における レファレンスサービス体制の整備 デジタル環境下における レファレンスサービス体制の整備 デジタル環境における利用者の実態に即応したレファレンス体制の整備は喫緊の課題 サービスを支える図書館の要員体制は、 アウトソーシングの進展もあり横ばい・減少傾向 サービスの綿密な分析 効果的な要員配置の視点の重要性
デジタルサービスを指向した レファレンスデスクの要員配置-実際篇 「サービスの階層化」「グレード分け」がキーポイント 専任職員と非専任職員との協調の必要性 専門職の図書館員の援助や従事を必要としないであろうサービスや仕事からの解放 レファレンスライブラリアンのパフォーマンスの向上 電子的情報サービス、レファレンスサービスに専念できる余裕の創出 嘱託職員、アウトソーサーの活用
準専門職・非専門職層の活用 準専門職、嘱託職員 クイックレファレンス・日常的な質問への回答 専門職への質問の選別・回送 準専門職、嘱託職員 クイックレファレンス・日常的な質問への回答 専門職への質問の選別・回送 専門職 込み入った、高度でかつ奥の深い質問への回答 準専門職層の回答状況の把握 アウトソーサー 定型的な国内ILL業務、相互利用サービスなど へ適用
レファレンスライブラリアンの パフォーマンスの向上 レファレンスライブラリアンの パフォーマンスの向上 レファレンスライブラリアンは本来業務に専念 高度なレファレンス質問への回答 Webサイトで提供するサービスの推進 主題専門性の追求 利用者と情報資源を仲介するプロフェッショナルを志向
デジタルレファレンスを円滑に遂行するうえで担当者に求められる4つの機能の分析-理論篇- McClennenとMemmottらが提唱 デジタルレファレンスを運用するうえでの 図書館員が果たすべき4つの機能の分析 非同期型サービスを念頭 中・大規模図書館向けの提案 小規模館では、同一の担当者が複数の機能を兼務 4つの任務・役割に大別 A.フィルタリングとトリアージ機能担当者 B.質問回答者 C.管理者 D.コーディネーター
デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(1)フィルタリングとトリアージ機能 質問のろ過(フィルタリング)機能の必要性 明白でない質問、回答基準からはずれた質問、 繰り返しの質問、全くのスパムメールは回答前に 除去されるべき ノイズ除去後の質問の仕分け(トリアージ) 主題、利用者の属性、質問の難しさの程度によって質問を選別し回答者へ振り分ける 質問の選別。所蔵調査か、事項調査か 回答者が主題専門家向けであるべきかゼネラリスト向けであるか
デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(2) 質問回答機能 デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(2) 質問回答機能 回答業務はレファレンス担当者の定型的な役割 最も時間を消費する仕事であり、サービスの中心 フィルタリングとトリアージ機能がうまく働けば、質問の難易度は高まる 協同デジタルレファレンスへの参画 自館では経験することができそうもない高度で 挑戦的な質問との接点 時間管理の側面(非同期型のデジタルレファレンス) 質問箱の点検頻度、回答処理に要する平均所要 時間、質問への応答時間について規定
デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(3) 管理者機能 デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(3) 管理者機能 管理者は、回答者、フィルタリング&トリアージ担当の仕事に道筋をつける 問題の解決、方針の策定を行い、サービスの 一貫した円滑化を推進 管理者は回答の迅速な処理状況について 確認する任務がある 滞留している質問があれば、一掃する義務がある 監視のタイミング 質問箱の定期点検、回答前後のチェック、 事例データベース格納段階、統計情報収集段階
デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(4) コーディネーター機能 デジタルレファレンスに求められる 4つの機能(4) コーディネーター機能 デジタル環境下におけるレファレンスサービス全体の鳥轍図を手掛けるコーディネーター サービス方針の策定 デジタルレファレンスソフトウェアの選定 作業工程の確定 図書館職員へのフィードバック 新入職員の研修 職員の人事配置に対しての決定責任
非同期型サービスの活用 電子的情報サービスの提供は大学図書館の 中核的なサービスへ Eメール(非同期型)サービスへの誘導 非同期型サービスの活用 電子的情報サービスの提供は大学図書館の 中核的なサービスへ Eメール(非同期型)サービスへの誘導 レファレンスデスクへの要員配置が困難な時間帯・時期・地域への対処 夜間や週末、学期の合間への対応、分館での 高度なレファレンスサービスへの対処
デジタルレファレンスサービスを 指向した要員配置(1) デジタルレファレンスサービスを 指向した要員配置(1) 有限の資源(ヒト・モノ・カネ)にてこ入れ 図書館員の専門知識の向上、情報資源の拡充、サービスの改善を図っている途上 周到な要員の配置計画の必要性 要員配置においては、 「サービスの階層化」の視点が重要 専門職と非専門職との協調 図書館員を軽微なサービス業務から解放、 デジタルサービスに専念できる体制の整備
デジタルレファレンスサービスを 指向した要員配置(2) デジタルレファレンスサービスを 指向した要員配置(2) デジタルレファレンスサービスの 円滑な業務の流れを促進 レファレンス質問を適切に割り振り、 転送する担当者を常置 デジタルレファレンスサービスの展開は、 新しい挑戦の連続 サービスの綿密な分析、効果的な要員配置の実現が必要不可欠
デジタルレファレンスサービスの効果的な運営に向けての諸提案 その2:レファレンスライブラリアンの 専門的な能力を高める研修の 必要性について 第5章 デジタルレファレンスサービスの効果的な運営に向けての諸提案 その2:レファレンスライブラリアンの 専門的な能力を高める研修の 必要性について 次に、その2として、デジタルレファレンスサービスを効果的に運営するために、研修の必要性について考えて見たいと思います。
デジタル環境が 図書館員に与える影響 質問回答サービス過程でのインタビュー 特に非同期型レファレンスにおける インタビュー の困難・不十分 デジタル環境が 図書館員に与える影響 質問回答サービス過程でのインタビュー 特に非同期型レファレンスにおける インタビュー の困難・不十分 レファレンス回答作成にかかる時間の公平性 限られた時間内で優先順位、調査・ 回答作成にかかる時間配分の決定 レファレンスサービスにおける今日のデジタル環境は、急速に変化しています。 また人員配置の再編成など組織も多様化し、レファレンスライブラリアンは、これらの環境下で多くの負担感を抱えているとも言えます。 こういった中で、デジタル環境が一因とされるものには、次の例が挙げられます。 一つ目は、質問回答サービスの過程でのインタビューの問題です。デジタルによるレファレンス質問受付では、レファレンスインタヴューが充分にできないという点です。これは特に非同期型に見られますが、レファレンスフォームの問題やデジタル環境におけるやりとりの難しさが原因として考えられます。レファレンスフォームの改善が解決策のひとつとして考えられますが、一方で、改良のためのスキルや対処に要する時間が要求されることになります。 また、レファレンス回答作成の処理時間の問題があります。限られた時間の中では、処理の優先順位を考慮しつつ、調査・回答には最短の時間で処理していかなければなりません。 その他、回答の質と量、回答率の問題なども存在します。 こういった影には、必要とされる能力の問題が潜んでいるのではないでしょうか。 サービス業務のなかで多くの負担感を抱える 専門的能力の向上が必要とされる
レファレンスサービスの変化 デジタル環境下におけるレファレンス →デジタル技術の素地の要求 デジタル環境下におけるレファレンス →デジタル技術の素地の要求 事例データベース・オンラインチュートリアル・ パスファインダーの充実 →利用者自身の情報収集の独立性 即答質問件数の減少 専門的な質問の増加と 対応できる高度な知識の要求 デジタル環境下においては、レファレンスライブラリアンにはデジタル技術の素地が求められます。 また利用者は、事例データベース、オンラインチュートリアル、パスファインダーなど図書館WEBサイトにおける情報サービスの充実により、今後、独立性をもって情報収集活動を行っていくと思われます。 これらの効果により、即答質問件数が減少することが予想されます。一方でより専門的な質問が増え、それに対応できる知識が必要とされるでしょう。
専門性向上のために必要な能力 アクセス能力:適切な情報源へのアクセス 知識:情報源・ツール・情報技術・専門分野など 伝達:利用者への質問回答・同僚との知識の共有 教育:ガイダンス等での利用者教育 評価:ツール・情報源・レファレンスサービス 協働:同僚・他館・その他組織 マーケティング:利用者のニーズの調査 意識:サービス・責任・知識の更新・自己研鑽への意識 このような中で、レファレンスライブラリアンに求められる能力には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。 以下、行動の種類別に分け内容を列挙してみました。 (1.アクセス能力) 利用者から適切な聞き取り調査を行い、情報源へアクセスできる能力。この際には、検索ツールの知識を使い、利用者要求にあった情報源へのアクセスが必要になります。 (2.知識) 情報源、検索ツール、情報技術、専門分野の知識。 (3.伝達) 質問回答を適切に効果的に伝える、また、獲得した知識を同僚に提供し共有化する能力。 (4.教育) デジタル環境を活用できる様、ガイダンス等で利用者に効果的に教える能力。 (5.評価) ツールや情報を評価する、また、レファレンスサービスそのものを評価する能力。 (6.協働) 同僚との協働、また、共同デジタルレファレンスサービスにより、他機関との協力体制に対応する能力が必要となります。 (7.マーケティング) 利用者のニーズを調査し、立案・実行し、それを効果的に運営する。 また、これらの能力を高めるため、 次の意識をもつことが重要となります。 サービスに対し責任を果たそうという意識。また、常に知識を更新し、自発的に自己研鑽に取りくもうとする意識。
専門性向上のための研修活動の 重要性について <伝統的> ・レファレンスインタビュー ・ツール ・蔵書の知識 利用者へ最も効果的な サービスを提供するために ・伝統的レファレンスを基礎 デジタル環境の有効活用 ・自己研鑽 ・分科会活動の意義の再確認 ・専門性向上に責任 + <デジタル時代> ・デジタル技術・情報源 ・コミュニケーション技術 ・マネジメント能力 ・利用者教育 かつては、レファレンスライブラリアンには、レファレンスインタビュー、ツール、蔵書の知識が主に必要とされていました。 これらは、現在もなお、基本的なレファレンススキルとして要求されると考えられます。 デジタル環境下では、それに加え、先ほど述べた能力が必要となり、それを高めるための研修活動が重要となります。 そのためには、まず研修活動が円滑に行える環境が必要です。 またレファレンスライブラリアン自身に、自発的に、また、継続的に自己研鑽に取り組もうとする意識も必要です。 自己研鑽への取り組みも個人単位を越えて、複数の大学図書館員により構成される分科会活動の意義を再確認すべきだと思います。 大学図書館の所属は異なっても共通の問題意識を持った同じレファレンス担当者が集まり、研究活動、研鑽活動に共同して取り組むことの意義は大きいと考えます。 いずれにしましても、 レファレンスライブラリアンは、利用者への最も効果的なサービスを提供するために、その専門性の向上に責任を持つべきでしょう。
レファレンス研究分科会 研究発表 End