本邦における「障害」の射程と 身体障害者手帳をめぐる問題 本邦における「障害」の射程と 身体障害者手帳をめぐる問題 立命館大学先端総合学術研究科 日本学術振興会特別研究員 大野 真由子 ja004977@ed.ritsumei.ac.jp
Ⅰ.はじめに 障害者福祉サービスを受けるためには、障害者手帳の取得が必要 Ⅰ.はじめに 障害者福祉サービスを受けるためには、障害者手帳の取得が必要 目的 :複合性局所疼痛症候群(CRPS)という病気を例に、「障害」の定義と身体障害者手帳をめぐる問題について考える
Ⅱ.CRPSとは何か 1.CRPSとは 骨折、組織傷害や神経損傷などを契機とし、感覚神経、運動神経、自律神経、免疫系等の病的変化によって発症する慢性疼痛症候群 主症状は「激しく」「持続する」「灼熱の」「深く疼く」「原因となった外傷からは予想される程度を超える」痛み (国際RSD/CRPS研究財団,2003)
2. 患者数 米国…CRPSタイプⅠの発症率は10万人に 5.46人(0.00546%) 罹患率は10万人につき20.57(0.02%) 2. 患者数 米国…CRPSタイプⅠの発症率は10万人に 5.46人(0.00546%) 罹患率は10万人につき20.57(0.02%) 韓国…推定1万5000人弱 日本…発症率は10万人に約5人(0.005%) =推定6500人 潜在的患者を含めると4万人?
3.難病だが「難病」ではない 治療法が確立されておらず、難病であるが、政府が難病対策の対象としている「難病」(130疾患)や「特定疾患」 (56疾患)認定は受けていない *「難病」とは ① 原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を 残す恐れが少なくない疾病で、 ② 経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介 護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、 また精神的にも負担の大きい疾病 (難病対策要綱)
Ⅲ.CRPS患者の困難 激しい疼痛が持続 軽微な刺激が激痛として知覚 (アロディニア) ex. 睡眠・着衣・入浴・移動・社会的孤立 → 離職 → 経済的困窮
しかし、支援を受けられない患者が存在 障害者手帳の取得をめぐる3つの問題 ① 障害認定の問題 ② 等級認定の問題 ③ 法令上の問題
Ⅳ.身体障害者手帳の取得を めぐる問題 1. 障害認定の問題 症状固定の問題 機能障害の有無
2. 等級認定の問題 障害程度等級表解説(2003) CRPSの場合も客観的評価が可能な部分はある ☆ 客観的に測定される症状からは想定でき ex.患部の温度変化、神経伝達の速度、皮膚の 変化、腫脹、骨萎縮、筋委縮など ☆ 客観的に測定される症状からは想定でき ないほどの生活上の困難が現実に生じ、 その主たる原因が測定方法のない「痛 み」であることが問題
3. 法令上の問題 障害者基本法の「障害者」の定義 身体障害者福祉法の「身体障害者」の定義 「身体障害者」= 手帳取得者 3. 法令上の問題 障害者基本法の「障害者」の定義 身体障害者福祉法の「身体障害者」の定義 「身体障害者」= 手帳取得者 心身障害者対策基本法の「心身障害者」の定義
(上位法) (下位法) ☆身体障害者福祉法の「障害」の定義が 障害者基本法の射程を狭めている 障害者基本法 身体障害者福祉法
Ⅴ.おわりに 制度の谷間に落ちるCRPS Not身体障害、Not知的障害、Not精神障害 Not介護保険制度の対象 Not難病・特定疾患 Ⅴ.おわりに 制度の谷間に落ちるCRPS Not身体障害、Not知的障害、Not精神障害 Not介護保険制度の対象 Not難病・特定疾患 今後の課題
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