高解像度衛星画像を用いた東日本大震災による八戸地区の津波被災状況の評価 遠藤 教昭 岩手大学 人文社会科学部 情報科学研究室 竹原 明秀 岩手大学 人文社会科学部 植物生態学研究室
1.東北地方太平洋沖地震の概要 3月11日14時46分頃に三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生した。 この地震により宮城県栗原市で震度7、宮城県、福島県、茨城県、栃木県で震度6強など広い範囲で強い揺れを観測した。 また、太平洋沿岸を中心に高い津波を観測し、特に東北地方から関東地方の太平洋沿岸では大きな被害があった。 気象庁はこの地震を「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した。
2. 青森県八戸市の被災の状況 東北地方太平洋沖地震による津波の被害は、岩手、宮城、福島の各県において最も甚大であったが、青森県八戸市においてもかなりのものであった。 港湾空港技術研究所などによる現地調査で、八戸港の防波堤内側の地区で5~6メートル、外側の地区で8~9メートルの高さの痕跡が認められた。
八太郎地区の北防波堤は、延長約1.8キロメートルに渡って被災し、多数のケーソンが転倒した。市川海岸では、海岸堤防の被覆ブロックや離岸堤のブロックが約1キロメートルに渡って飛散した。
八戸市の津波浸水区域 http://cgi.daily-tohoku.co.jp/cgi-bin/news/2011/03/19/new1103191101.htm
3. 目的 被災地の住民の関心は、震災当初は、特に近隣の被災地の状況がどうであるか、救援や生活のために移動は可能かなどであると思われる。 またある程度状況が落ち着いたあとは、その震災を後世にどのように伝え、防災にどのように生かしていくかであると思われる。
以上のことを鑑み、本研究では東北地方太平洋沖地震による青森県八戸市の津波被害を地域住民にわかりやすく伝達し、さらに震災記録として後世に伝えるための方法に関して検討した。 特に地域の経済活動や住民の移動のために重要である道路およびその周辺を研究の対象地域とした。
4. 資料 現地撮影のビデオデータ 高解像度衛星画像 著者が撮影したもの(2011/03/30)のほか インターネットで公開されているものを著作権者の許諾を得て使用させていただいた。 高解像度衛星画像 震災前後のIkonos画像を購入し、パンシャープン画像を作成
5. 方法 現地撮影のビデオデータと地図データおよび高解像度衛星画像のリンクによって、津波の被害をブラウズできるようにした 高解像度衛星画像の利用は補助的なものにとどまった。
結果 サンプル1(八戸市白銀町) サンプル2(八戸市鮫町)
サンプル1は、八戸市白銀町付近の地図とビデオの撮影ルート ビデオを見ながら、建物の名称(看板による)により調べた結果、1から7のノードを結んだルートに沿って撮影されていた。 ノード番号をクリックすることによって、そのノードから次のノードまでのビデオが再生されるようにASX ファイルを設定した。
ASX ファイルとは Windows Mediaメタファイルの一種で、WMV の再生をコントロールする仕組みです。 StartTimeタグ、Durationタグを使用することによって、WMV ビデオの再生開始ポイントや、再生時間を指定することが可能になります。 これにより、1本のビデオに複数の再生パターンを設定でき、地理情報(ルート情報)の付与されていないビデオに、簡易的な地理情報を付与したと考えることができます。
Windows Mediaメタファイルとは Web ページから、Windows Media サーバー、または HTTP サーバー上の Windows Media ベースのコンテンツへのリンクとして機能する単純なテキストファイル HTTP ブラウザから Windows Media Player にデータの制御を移し、データのストリーミングを可能に
Windows Media メタファイルは、.wvx、.wax または .asx の拡張子 Web サイトからこれらの拡張子のファイルがダウンロードされると、Windows Media Player が起動し、ファイルに指定してあるコンテンツを再生 http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/dd148561.aspx
まとめ1 作成システムを八戸出身の一般市民(現在のところ1名)に見てもらったところ、いつも通っている場所の被災状況がわかって有用との意見をもらった。 WWWサーバにアップロードして閲覧も可能なはず(今後、検証) 「震災被害を地域住民にわかりやすく伝達」という目的は、ある程度達成。
まとめ2 インターネットで公開されている被災映像には有用なものが多いが玉石混交。 取捨選択のうえ、本研究のような映像にルート情報を付加したシステムを作成すれば、震災アーカイブとして有用と思われる。 「震災記録として後世に伝えるための方法を検討」という目的もある程度達成。
まとめ3 まとめ1で書いた目的をさらに達成するにはケータイ対応が不可欠(今後、実装予定) 【参考】 震災時必須物件: 【参考】 震災時必須物件: ローソクと着火装置(マッチより便利) ペンライト(小さくて明るく、懐中電灯より便利) 水洗トイレ用の風呂水汲み置き 飲料水(ウオータサーバがかなり便利)、食料 ラジオ(ケータイ発電装置付の複合機が便利か) ケータイ(インターネットの報道情報が有用)
2011/3/26 生まれ おなかの中で震災体験 もう6カ月になりましたよ