泌尿器科:診断へのアプローチ 北里大学医学部 泌尿器科学
講義内容 尿路、後腹膜臓器の解剖 発生 症候学 泌尿器科学的検査
尿路、後腹膜臓器の解剖(1) 副腎 右三角、左半月 5グラム 右三角、左半月 5グラム 皮質 zona glomerulosa, fasciculata, reticularis 髄質 chromaffin cells 動脈 下横隔動脈、大動脈、腎動脈 静脈 下横隔静脈、右:下大静脈、左:腎静脈
尿路、後腹膜臓器の解剖(2) 腎 右は左より低位、150グラム 腎周囲脂肪織とGerota’s fascia(腎筋膜)に被われる。 皮質 髄質 腎静脈、腎動脈、腎盂の順
尿路、後腹膜臓器の解剖(3) 腎杯、腎盂 個体差があるが左右対象が原則 腎盂は腎内腎盂と腎外腎盂とに区別 移行上皮細胞で被われる。 ときに重複腎盂がみられる。
尿路、後腹膜臓器の解剖(4) 尿管 腎盂尿管移行部から膀胱まで 約25cm 生理的狭窄部位:腎盂尿管移行部、総腸骨動脈交叉部、膀胱壁内部 筋層の収縮で尿をかたまりとして輸送 膀胱内部で三角部を形成する。
尿路、後腹膜臓器の解剖(5) 膀胱 小児膀胱容量=(年齢+2)x30ml 成人膀胱容量=359ー450ml 空の状態では恥骨結合の裏 蓄尿期では下腹部前側に触知 頂部はurachus(尿膜管)に接続 頂部と後面は腹膜を介して小腸、S字状結腸と接する。 移行上皮細胞で被われている。
尿路、後腹膜臓器の解剖(6) 前立腺 後部尿道周囲の腺、線維、筋組織からなる臓器 長さ2.5cm、重量20グラム 精阜に射精管が貫通開口 McNeal:peripheral,central,transitional, anterior zones 後面は直腸とDenonvilliers’ fasciaを介して接する。 前立腺のリンパは内腸骨静脈、閉鎖腔へ流入。
尿路、後腹膜臓器の解剖(7) 精巣 精巣白膜に覆われ、前側面はtunica vaginalisに接する。 動脈:腎門部の下の腹部大動脈、内腸骨動脈から。 静脈:右側は下大静脈、左側は左腎静脈へ流入。 精細管:Sertoli cell, spermatogenic cell 間質: Leydig cell
腎の発生 後腎組織:mesodermとmesonephric duct由来 Mesonephric duct:尿管、腎盂、尿細管 腎組織は胎生36週で完成 腎の発生過程で位置は回転しながら上昇する。 後腎組織が左右癒合すると馬蹄腎となる。 Weigert-Meyer law 尿管組織は総排泄腔に吸収され膀胱三角部となる。
精巣の発生 胎生7週で原始性腺から分化 Mesonephric duct(wolfian duct)は精巣上体、精管と精嚢に分化する。 胎生7ヵ月で鼠径管の入り口まで下降。 その後、鼠径管を通過して陰嚢内に固定される。
疼痛 臓器固有局所疼痛と関連痛 腎:costovertebral angle tenderness 上部尿管結石:関連痛として精巣部の疼痛 膀胱炎:関連痛として尿道に沿った疼痛 尿路臓器に隣接する腹腔内臓器の関連痛 Renointestinal reflex: pylospasm Acute scrotum:精巣捻転、急性副睾丸炎
血尿 排尿終末時血尿:膀胱頚部もしくは前立腺 排尿初期血尿:多くは前部尿道疾患 全血尿(total hematuria):膀胱以上の尿路疾患 無症候性血尿:尿路の悪性疾患の可能性
発熱 急性腎盂腎炎 急性前立腺炎 急性副睾丸炎 ときに腎細胞癌 単純性膀胱炎では発熱しない。
排尿困難に伴う症状 頻尿;残尿、膀胱容量の減少、心因性 夜間尿:腎濃縮力低下、利尿剤 切迫感:膀胱炎、膀胱刺激症状、神経因性膀胱 Dysuria:排尿時の疼痛 遺尿症:睡眠時尿失禁 苒延性排尿 尿線細小、尿閉 残尿感
尿閉と無尿の相違 尿閉とは膀胱以下の疾患により排尿できない状態をさし、放置すれば腎後性腎不全をきたす。 無尿とは上部尿路疾患により膀胱まで尿が到達しないか、もしくは尿が分泌されない状態を示す。
前立腺肥大症治療における 各種治療法の位置づけ 治療は無治療経過観察,薬物療法,外科的治療に分類する事ができます 100 ・新プローブ式TURP ・前立腺電気蒸散術 従来式 TURP 開腹手術 臨 床 効 果 ・レーザー療法 ・TUNA 50 HIFU 前立腺肥大症治療における各種治療法の占める位置として、 北里大学の内田助教授は、臨床効果とその療法による合併症のリスクの関係を示されました。 前立腺肥大症の治療は、臨床効果が高くなるにつれ、術中出血量や合併症率も高くなる。現在治療法は数多くの選択肢があるが、それぞれ患者さんの希望に最もあった方法を選択することが、希望する項目が多くなれば、当然選択できる方法も限られ、かつその臨床効果は低く、短くなるものとなる。 患者さんの希望に沿い、かつ最も安全な治療法を第一として選択すべきであるとのことです。 (バックを変更、尿道ステントに変更しました) 温熱・高温度療法 尿道ステント拡張術 薬物療法 50 100 合併症リスク 内田 豊昭:今月の治療 7(11), 1999
国際前立腺症状スコア (I-PSS) 国際前立腺症状スコア (I-PSS : International Prostate Symptom Score) 過去1カ月間に な し 5回に 1回未満 2回に 1回未満 2回に 1回位 2回に 1回以上 ほとんど いつも 1. 排尿後に尿がまだ残っている感じがあり ましたか。 1 2 3 4 5 2. 排尿後2時間以内にもう一度行なければ ならないことがありましたか。 1 2 3 4 5 3. 排尿途中に尿が途切れることがありましたか。 1 2 3 4 5 4. 排尿を我慢するのがつらいことが ありましたか。 1 2 3 4 5 5. 尿の勢いが弱いことがありましたか。 1 2 3 4 5 6. 排尿開始時にいきむ必要がありましたか。 1 2 3 4 5 基本評価の項目にありました、国際前立腺症状スコアー(IPSS)は、ここに示します項目を、最近1カ月の平均的な状態を問診時、あるいは診察の前に患者さんに自らチェックして頂くことも可能なスコアーです。 また、自覚症状の訴えから治療が開始される前立腺肥大症では、排尿症状のQOLが重要な診断及び治療評価のポイントとなります。 0回 1回 2回 3回 4回 5回以上 7. 床に就いてから朝起きるまで普通何回 排尿に起きましたか。 1 2 3 4 5 排尿症状のQOL (クオリティー オブ ライフ) I-PSS 得点合計 S= 大変満足 満 足 だいたい 満足 満足・不満足 どちらでもない やや不満 不 満 大変不満 1. 現在の排尿状態が一生続く としたらどう感じますか。 1 2 3 4 5 6
泌尿器科学領域の理学検査 視診:gynecomastia、外耳奇形、陰嚢腫大 触診:双手診、直腸診、仙骨奇形の有無 打診:水腎症、尿閉膀胱 透過光検査:陰嚢腫大、小児腹部腫瘤 鼠径管検査:触診、Valsalva maneuver 前立腺マッサージ:前立腺分泌液の採取 神経学的検査:球海綿体反射