ワイヤレス通信におけるMIMO伝送技術
無線通信伝搬路の考え方の変遷 1990年以前(2G) ・低品質 できれば一様フェージングチャネル(狭帯域伝送) ・低速 音声(電話)中心+低速データ(9.6 kbps) 伝搬路特性に対して受身的対応 1990~2000年(3G) 周波数選択性フェージング対応 伝送品質の改善(パスダイバーシチ) ブロードバンド化(マルチメディア) 伝搬路の影響を低減 送信電力制御 適応変調 2000年以降(3.9G, 4G) 伝搬路特性を活用した高速・高品質伝送 空間多重(MIMO, SDMA) 伝搬路そのものの制御(アンテナの指向性制御) ・低品質 ・低速 ユビキタス社会へ ・高品質 ・高速 ・柔軟
MIMO伝送の原理(1) h11 c1 h21 x1 c2 h31 x2 c3 h41 データ データ x3 c4 x4 雑音
MIMO伝送の原理(2) 伝搬路が自由空間伝搬路の場合 c1 x1 c2 d x2 c3 データ データ x3 c4 x4 rank = 1
MIMO伝送の原理(3) フェージングチャネルの場合 h11 c1 h21 x1 c2 h31 x2 c3 h41 データ データ x3 c4 x4 フェージングチャネル:Hの係数はランダムかつ独立⇒方程式が独立 rank = 4 逆行列が存在
擬似逆行列を用いる方法(1) Hが正方行列でないとH-1は存在しない 雑音強調が発生 擬似逆行列を用いる方法の特徴 ・構成は簡単 ・雑音強調の発生 ・ダイバーシチ効果が不十分
擬似逆行列を用いる方法(2) どのような場合を想定しているか? h11 h21 x1 h31 c1 x2 h41 データ データ c2 x3 x4
雑音強調の原因 (擬似)逆行列の意義 伝送特性の視点から 直交化の工夫 ストリーム間の干渉をゼロへ(直交化) 直交化においては雑音への影響の考慮は全くなし 伝送特性の視点から 伝送特性は(干渉+雑音)で決定される (干渉+雑音)が小さければよい 直交化の工夫 キャンセラ+直交化(V-BLAST)
硬判定ベースのキャンセラーを用いる方式 -VBLAST- Gの行ベクトルのノルムが最小→SNR(信頼性)が最大 SNRが最大の信号成分から判定し,キャンセル 擬似逆行列を適用 雑音強調は存在するが低減
QR分解を用いる方式(1) -QR分解の意味- 互いに直交する単位ベクトル Q1 Q3 Q4 Q2 =[R11Q1, R12Q1+ R22Q2, R13Q1+ R23Q2+ R33Q3, R14Q1+ R24Q2+ R34Q3+ R44Q4] Hの列ベクトルをGram-Shmidtの直交展開していることに相当 ユニタリ行列
QR分解を用いる方式(2) Gram-Shmidtの直交化 =[R11Q1, R12Q1+ R22Q2, R13Q1+ R23Q2+ R33Q3, R14Q1+ R24Q2+ R34Q3+ R44Q4] R22Q2 = h2 – R12Q1 h2 h3 R33Q3 R23Q2 q2 Q2 Q1 Q1 R13q1 R33Q3 = h3 – R13Q1 – R23Q2
QR分解を用いる方式(3) -雑音強調について- 単位行列 雑音強調なし
QR分解を用いる方式(4) -受信信号分離アルゴリズム- 判定誤りが発生すると 他のビットの判定に影響 ⇒c4を判定 誤りに対する耐性 c4 > c3 > c2 > c1 が望ましい ⇒c3を判定 キャンセル
QR分解を用いる方式(5) -Sorted QR分解- 誤りに対する耐性をc4 > c3 > c2 > c1とするためには R44>R33>R22>R11となるように操作すればよい QR分解の操作の中でHの列ベクトルと 対応する信号の入れ替えを行う 所詮硬判定なので判定誤りの影響はある