函館障害学シンポジウム ITACOシステム:ユビキタス社会と情報保障

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函館障害学シンポジウム ITACOシステム:ユビキタス社会と情報保障 2008年 8月29日 小野哲雄 公立はこだて未来大学

簡単な自己紹介 名前:小野哲雄 職業:公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科 教授 職業:公立はこだて未来大学         情報アーキテクチャ学科 教授 私の研究の専門分野:ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)、認知情報科学 インタラクティブシステム:人と相互作用(インタラクション)をするコンピュータシステムに関する研究 ヒューマンロボットインタラクション:人とロボットの相互作用に関する研究 ヒューマンエージェントインタラクション:人とエージェント(キャラクタ)の相互作用に関する研究 感情の計算モデル:人の感情をコンピュータ上に実現するための研究 共通言語の進化:我々の言葉(自然言語)はどのように出来たのかをコンピュータシミュレーションによって解明する研究

最近の研究の紹介 ヒューマンエージェントインタラクションに関する研究 ヒューマンロボットインタラクションに関する研究 ITACOシステムに関する研究です(後で詳しく説明します) ヒューマンロボットインタラクションに関する研究 人間社会にロボットが参加し、人を支援することが夢です 直感的な空間認識装置に関する研究 視覚障害者の方を支援することも目的の一つです(岡本先生、伊藤先生、秋田先生と共同研究です) ITACO プロジェクト Robovie プロジェクト CyARM プロジェクト

障害学とのかかわり 私は「福祉工学」の専門家ではありません ⇒ ですから、何か間違いがあったらご指摘ください 国際会議 ICCHP (International Conference on Computers Helping People with Special Needs)で一度だけ発表したことがありますが、障害学に関して十分な知識を持っていません    ⇒ ですから、何か間違いがあったらご指摘ください なぜ函館障害学シンポジウムで話すことになったのか? 昨年、兼平さんの研究会(聴覚障害者研究会)で研究発表をさせていただきました 聴覚障害者の方々に興味を持っていただきました 「音の視覚化」に関する共同研究をスタートさせました(今年の7月頃から) ⇒ まだ始まったばかりです!

今日の講演の概要 まず、昨年、聴覚障害者研究会で発表した内容を簡潔に紹介します 次に、ユビキタス社会と情報保障について簡単に説明します タイトル:「ITACOプロジェクト:メディア間を移動可能なエージェントによるユーザ支援システムの実現」 次に、ユビキタス社会と情報保障について簡単に説明します 基本的な考え方:「いつでも、どこでも、だれでも」、必要な情報を得ることができる 最後に、現在、取り組み始めた共同研究の概要をお話しします 共同研究の概要 システムの構成 コンセプトムービー

 ITACO プロジェクト

ITACO プロジェクト (1) ITACOプロジェクトとは? 目的: 人と人工物(モノ)の円滑な相互作用(インタラクション)をデザインしたい ⇒ 使いやすい人工物を作りたい 人と人工物の間に、信頼感や親近感のような感情をともなう関係を構築したい ⇒ 安心感の持てる人工物を作りたい

ITACO プロジェクト (2) コンセプト ユーザの選好、趣味、価値観を理解しているエージェントが環境内にあるさまざまなメディアに移動(migration)することにより、ユーザに対して文脈に応じた適切な支援を行う たとえば?

ITACO プロジェクト (3) [ビデオ] ユーザはエージェントと、音声とタッチペンでインタラクションをすることができる(例:スイカ割りゲームを楽しむ) 外出するとき、エージェントは胸のウェアラブルPCへ移動して、一緒に外出する(例(ビデオなし):道案内をする、電車の出発時刻を教える) ユーザが暗い部屋にいるとき、エージェントは部屋の明るさを感知して、スタンドライトへ乗り移り、部屋を明るくする(ユーザの趣味や嗜好に合うように環境をカスタマイズする) エージェントは必要なときに、物理世界にある(実体のある)ロボットへ移動し、ユーザを支援することができる(例(ビデオなし):将来的には物理的支援(物の運搬、歩行補助)

特徴:エージェントのマイグレーション ユーザの選好、趣味、価値観を理解しているエージェントが環境内にあるさまざまなメディアに移動(migration)することにより、ユーザに対して文脈に応じた適切な支援を行う タブレットPCからウェアラブルPCへ移動 ウェアラブルPCから家電(ライト)に移動 ウェアラブルPCからロボットへの移動

エージェントの構造の概要 エージェントのソフトウェア構成は以下の3層からなる エージェントパーソナリティ(AP):知識ベースシステム、学習システム、音声認識システムを持ちユーザに関する知識を蓄える エージェントコア(AC):環境からセンシングされた情報に基づき、エージェントの動作系列を生成する エージェントシェル(AS):物理的なリソースを管理し、センシング情報を得る

システムの評価実験 実験の目的:提案システムにおけるエージェントへの感情移入、関係の連続性を調査 実験の手続き 部屋A:被験者がエージェントと事前インタラクション ⇒ エージェントがウェアラブルPCへ移動 ⇒ 部屋Bへ移動 部屋B:被験者が読書 ⇒ エージェントがウェアラブルPCからスタンドライトへ移動 ⇒ 実験協力者がライトを消すように依頼

実験の様子 [ビデオ] エージェントはユーザの胸のウェアラブルPC上にいる(事前のインタラクションで被験者はエージェントに愛着を持っている) 部屋が暗いので、エージェントは先ほどと同様に、スタンドライトへ乗り移り、部屋を明るくする 実験協力者が、スタンドライトのスイッチを切るように、被験者へ依頼する 被験者は仕方なくスタンドライトのスイッチを切る しかし、その後、被験者は、愛着のあるエージェントを取り戻そうと、スイッチを何度も点けたり消したりする 実験後のアンケートでは、被験者は喪失感を持っていた

問題と今後 ITACOプロジェクトの課題 情動を喚起するインタラクションデザイン(D. Norman)の重要性 コンセプト:ユーザの選好、趣味、価値観を理解しているエージェントが環境内にあるさまざまなメディアに移動(migration)することにより、ユーザに対して文脈に応じた適切な支援を行う コンセプトの前半:ある程度可能、後半:いろいろ難しい エージェントを用いる必然性 ⇒ コミュニケーションの指向性 人工物の擬人化(アニミズム)、エージェントの同一性の維持 情動を喚起するインタラクションデザイン(D. Norman)の重要性 障害者の情報保障に利用することができるのか?

ユビキタス社会と情報保障

「ユビキタス社会」とは? 「ユビキタス」:    それが何であるかを意識させず(見えない)、しかも「いつでも、どこでも、だれでも」が恩恵を受けることができるインタフェース、環境、技術のことである 「ユビキタス」は、いろいろな分野に関係するため、「ユビキタスコンピューティング」、「ユビキタスネットワーク」、「ユビキタス社会」のように言葉を連ねることが多い 「ユビキタス社会」: ユビキタスの技術により、人が人らしく支援を受ける社会 ユビキタスネットワーク社会、ユビキタス情報社会と表現する場合もある (Wikipediaより)

「情報保障」とは? 情報保障とは、身体的なハンディキャップにより情報を収集することができない者に対し、代替手段を用いて情報を提供すること 情報保障とは、人間の「知る権利」を保障するもの。いつでも、誰も情報が伝わらない状況に陥る可能性がある。例えば、手話通訳は大切な情報保障の一つ。逆に手話中心のコミュニケーションの場においては、手話がわからない人に情報保障をする必要がある。ハンディキャップを持っている立場というのは流動的なので、障害者に限らない (Wikipediaより)

「情報保障」のための方法:聴覚障害の場合 従来の方法: 視覚による代替、手話、手書き要約筆記、パソコン要約筆記など 新しく用いられている(?)方法: インターネットを用いたリアルタイム情報保障、分散要約筆記環境、地上波デジタル放送による情報保障標準化(字幕付加) 障害者の方に対して、文脈に応じた適切な支援を自然な形で実現できる情報システムとは?

「音の視覚化」に関する共同研究

「音の視覚化」について (1) 現在、取り組み始めた共同研究の概要をお話しします 概要: 聴覚障害者への情報提供は手話通訳や要約筆記が主であるが、人の力に頼っている部分がほとんどである。音声を逐次的にテキストデータに変換することでこうした労力を大幅に軽減できると予想されるが、一方で音声情報に含まれている情感や調子、強調の程度といった「表情」をうまく表現できない可能性がある。そこで、情感や調子、強調の程度を手話やテキストデータに付加して、音声による会話をより視覚的に表現する技術を開発することにより、聴覚障害者への情報提供を充実させ、コミュニケーションをより円滑にさせる。また、システムを携帯端末で利用可能にすることにより公共施設や公共交通機関への聴覚障害者のアクセシビリティを高めていくことを目指す。

「音の視覚化」について (2) メンバ:川越、兼平、岡本(学生1名)、小野(板垣、安部) ミーティング:月1回程度の開催 研究資金:未来大学の戦略研究費「聴覚障害者への情報保障技術の開発と応用」(代表:川越敏司)

「音の視覚化」について (3) 最終的なゴール: しかし、技術的な難しさ: 音声を自動的にテキストデータに変換 ⇒ 情感や調子、強調の程度といった「表情」を付加 ⇒ エージェントによる手話動作を自動生成 「いつでも、どこでも、だれにでも」、必要な情報を提供できるようなシステムの構築 障害者、健常者の誰もが暮らしやすい街になるような支援システムの構築 しかし、技術的な難しさ: 音声認識の精度向上 手話動作の自動生成 微妙な情感や調子、強調の認識・表現方法 研究の第一歩として、「ITACOシステムの特徴を活かした情報支援システム」の実現

ITACOシステムの特徴を活かした 情報支援システム 本システムのアプローチ: 現段階で可能な範囲での「音の視覚化」    ⇒ 音声認識システムを用いて、リアルタイムで音声情報(単語)をテキストに変換し、テキスト(もしくは手話)による表示 人と人の「つながり」を支援する    ⇒ エージェントのメディア間のマイグレーション機構を用いた、 支援者との連絡 障害者の方に「安心感」を持ってもらう    ⇒ ユーザの選好、趣味、価値観を理解しているエージェントが身近に存在

システムの構成と開発のレベル 入力 システム開発のレベル 出力 手話動作の自動生成 手話動作をともなう エージェント ノンバーバル情報の付加 手話データベース 手話動作の自動生成 手話動作をともなう エージェント 3次元動作データ 手話アニメーション 対話事例 データベース ノンバーバル情報の付加 音韻 ジェスチャー 感情 「表情」をともなう エージェント 音声データをテキスト変換 テキスト情報のみ 音声 文脈 センサ ネットワーク

兼平さんが日常生活で不便に感じる事例 家の中での生活 家の外での生活 来訪者の呼び鈴 キッチンでお湯が沸いた音 電話の着信音 観光客から道を尋ねられる 交差点でのパトカー、救急車の進入 車のクラクション 災害情報、事故情報、犯罪情報

コンセプトムービー [ビデオ] 「ITACOシステムの特徴を活かした情報支援システム」のコンセプトムービー 不便に思う事例:デパートで災害にあったとき

講演のまとめ まず、聴覚障害者研究会で発表した内容を紹介しました 次に、ユビキタス社会と情報保障について簡単に説明しました タイトル:「ITACOプロジェクト:メディア間を移動可能なエージェントによるユーザ支援システムの実現」 次に、ユビキタス社会と情報保障について簡単に説明しました 基本的な考え方:「いつでも、どこでも、だれでも」、必要な情報を得ることができる 最後に、最近、取り組み始めた共同研究「音の視覚化」の概要をお話ししました 共同研究の概要 システムの構成 コンセプトムービー

おわり