第10章 失業と自然失業率 失業率はマクロ経済学においてGDP(5章)、インフレ率(6章)と並び重要な指標 各国の失業率(2012年、%) 10.失業と自然失業率.pptx
1.失業の識別=失業とは? 15歳以上人口は必ず以下の3つのカテゴリーに分けられる 就業者(雇用者、職がある人) 失業者(働く意思があるが、職がない人) 非労働力(働く意思がない人) 労働力(働く意思がある人) =就業者+失業者 =15歳以上人口-非労働力 失業率=失業者/労働力 で定義する 10.失業と自然失業率.pptx
日本の失業率(時系列) 10.失業と自然失業率.pptx
景気循環と失業率 一般的に景気(経済活動の活発さ)に対して失業率は逆サイクルを描く 失業率が高い≒不景気 失業率が低い≒好景気 景気中立的な失業率の水準を自然失業率、自然失業率からの失業の乖離のことを循環的失業という 10.失業と自然失業率.pptx
失業まつわる疑問(1) Q.失業率はわれわれの知りたいことを測定しているのか? A.失業している期間が長く、職を得る意欲を失った意欲喪失労働者は、失業者ではなく非労働力に分類される。 失業率=失業者/労働力、なので意欲喪失労働者は、失業率の計算から全く除外される。 したがって、意欲喪失労働者の存在を考慮すると、失業率は、「仕事のなさの指標」として不十分な面もある。(一般に、「潜在的な失業率」は、公表されている失業率よりも高いと考えるべき) 10.失業と自然失業率.pptx
失業まつわる疑問(2) Q.なぜ失業している人々は常に存在するのか? A.摩擦的失業が必ず存在するためである。 しかし、最低賃金(後述)などのため、構造的失業が存在する場合もある。 摩擦的失業・・・転職者の職探し中の失業 構造的失業・・・何らかの原因により労働市場における労働需要が恒常的に労働供給よりも少ない(労働の余剰が生じている)ために生じる失業 10.失業と自然失業率.pptx
2.職探し Q.なぜ摩擦的失業は避けられないのか? A.部門間シフトが存在するためである 例えば、原油価格上昇により原油生産企業は生産量と雇用量を増やそうとするが、自動車生産企業は生産量と雇用量を減らそうとする。原油生産企業から自動車生産企業へ雇用が移動する際に、摩擦的失業が生じる 短期的な部門シフトだけでなく、経済において需要される財・サービスが常に変化していることに起因する部門間シフトもある 長期的に見ると、農業→製造業→サービス業に雇用がシフトしており、その際に摩擦的失業が生じる 10.失業と自然失業率.pptx
職探しの公的支援 公共政策と職探し 失業保険 政府が職探しを支援(例えば公共職業安定所=ハローワークの運営)することには賛否両論 民間の職業紹介サービス(例えばリクルート社のリクナビNEXT)もよく機能している 失業保険 失業者に対して公的な失業保険(保険料は雇用者から徴収)から支払われる失業手当は、働かなくとも所得が得られるため職探しの努力を減退させる →失業手当は、自分にあった職を探すのに役立つが、手厚すぎる失業手当は失業者を増やしてしまうおそれがある 10.失業と自然失業率.pptx
3.最低賃金法 余剰 ③ 賃金 労働供給(家計) ① 最低賃金 ② 均衡賃金 労働需要(企業) 0 雇用量 労働の余剰=失業 が発生する 均衡水準より高い水準に最低賃金が設定されると 最低賃金 ② 雇用量が減少して、 均衡賃金 労働需要(企業) 0 雇用量 10.失業と自然失業率.pptx
4.労働組合と労働交渉 労働組合とは、賃金や労働条件に関して雇用主と交渉をする労働者の団体のこと 労働組合が、組合員のために団体交渉により均衡水準を上回る賃金を実現すると、アウトサイダー(主として求職者)にしわ寄せが行く可能性がある ちょうど最低賃金が均衡水準を上回る水準に設定されるのと同じ効果がある 労働組合が経済にとって役に立つか、あるいは害をなすかは、ケースバイケース 10.失業と自然失業率.pptx