女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造

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女子大学生におけるHIV感染症のイメージと偏見の構造 飯田敏晴1,2 山本茉樹1 伊藤武彦3 井上孝代4 1) 明治学院大学大学院心理学研究科  2)国立国際医療センター 精神科  3) 和光大学現代人間学部  4)明治学院大学心理学部 問題と目的 結果と考察 1 HIV感染/AIDSの報告件数の増加 増加 (エイズ動向委員会, 2008) 日本は、先進国で唯一増加傾向(2005) 2 HIVと共に生きる人たちの受ける偏見・差別 【周囲の態度】 HIV陽性者が感じていることと一致(Berger他, 2001)  【変化・喪失】・・・・服薬遵守、医学管理下による母子感染2%以下       ⇒適切な知識提供による心理教育=過剰な予測の低減 【気遣い】・・・・適応的な社会生活を過ごしていく上で必要        ⇒治療に対する負担と、病気について開示するという負担 【周囲の態度】・・・・偏見や差別が内面化=他者の反応を怖れ、             【回避行動】の生起を予測 ? 【孤独】 受療行動やAIDS発症との相関(Swedeman他, 2006)、       対人関係が豊かな人ほど、免疫状態が良好( )     家族、恋人、友人との関わりにおいてよい経験=高いQOL   ⇒予防行動や治療継続に対する意欲を高めるための取り組み 【落胆】・・・・気分障害をはじめとした精神疾患の罹患率2倍    ⇒1次予防における検討の必要性 【HIVとの距離感】・・・・HIV感染=身近な問題? 以上のように、HIV感染に対して、身体的な変化のみならず、心理  社会的な多様な変化を予測していることがわかった。今後は、こうした予測が、感染予防に対する行動や態度、HIVに対する偏見とどのように関連しているのかについて検討していきたい。 (女性の)HIV感染に対する心理社会的問題   ※不就労、心理的影響、周囲との関係性) 3. 予防教育 ○Lewisら(2003)のコミュニティカウンセリングの4     領域にうち、直接的コミュニティサービスとして重視 ○HIV感染/AIDSに対する偏見・差別・スティグマの低減が、疫学的な重要課題という指摘(Parkerら,2003)   1. 本邦で心理学的観点からの研究は乏しい 2. 実態把握の必要性 方法 対象: 首都圏内A大学の女子大学生125名 実施方法: 2007年11月に,A大学の一般 教養科目(ジェンダー論』)『HIVとAIDSについて』 の際、授業教材として配布した。 アンケート用紙 記入は、無記名、任意とし配布され回収。 またパワーポイントをHIV感染/AIDSに関する 知識提供を目的とした授業後、抗体検査の受 検可能な地域の保健所、および拠点病院を紹介。 質問内容: HIV/AIDS感染後の「自分または周囲の変化」 について自由記述にて回答を求めた。 回収後大学院生1名と筆者により, K-J法により分類した(Table1 参照) (有効回答:100名(80%))。     図2 K-J法による仮説モデル 周囲の態度 孤独 HIVとの距離感 回避行動 変化・喪失 気遣い 落胆