家畜疾病の診断(病性鑑定).

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第 2 章 : DNA 研究法 2.2DNA クローニング クローニングベクター 大腸菌以外のベクター ゲノム分子生物学 年 5 月 7 日 担当 : 中東.
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家畜疾病の診断(病性鑑定)

病性鑑定指針の設定 設定の目的: 都道府県における病性鑑定を迅速かつ的確に実施し、家畜防疫の円滑な推進に資する 検査材料採取法、保存法の標準化による検査精度を向上させる

病性鑑定材料採材時の留意点 - 採材前の調査 畜種: 種類,品種,名号,性,年齢,血統,特徴,産地,飼養地 飼養管理状況: 飼料,(特に自家配合飼料を使用している場合は配合の内容と方法)、飼料添加剤の有無,畜舎・放牧場の衛生状態 繁殖・泌乳の状況: 産歴,生殖疾患の既往歴 死亡家畜の病歴: 発病年月日,症状および推移,治療の有無とその内容,死亡年月日,死後の経過時間,臨床診断名,過去における類似疾病の有無,同居家畜の臨床症状 周辺地域の状況: 常在疾病の有無,類似疾病の発生状況および発生地域の人、家畜および機材等の接点 ワクチン接種の有無: 接種時期,ワクチンの種類 最近の家畜の移動状況: 導入先とその衛生状態,導入時期,出荷先,出荷時期 放牧場: 開設年次,草地の状態,入牧後の日数,放牧家畜の発育状態,衛生状態

病性鑑定検査時の留意点 決められた試薬を用い,決められた手順で検査する。 適切な対照の設定は検査結果の信憑性を確保するために必要不可欠である。 検査法の原理ならびに限界を熟知しておく。 外部からの不測の汚染に注意する。 検査記録を残す。 適切な検査材料を使用する。 検査材料や分離微生物を保存する。 内部精度管理と外部精度管理。

病性鑑定で実施される検査とその検査材料 検査 材料 病原体検査: 抗体(血清学的)検査: 病理学検査: 病原体の分離培養 臓器•組織乳剤、血液 糞便、ぬぐい液、 飼料等 病原体、あるいはその構成成分の検出 直接塗抹標本、組織スタンプ、 凝集反応、沈降反応、 標識抗体法、遺伝子検査法 等 抗体(血清学的)検査: 患畜の血清中に存在する抗体の検出 沈降反応、凝集反応 標識抗体法、CF反応 HI反応、中和テスト ELISA、ウェスタンブロット 等 血清 病理学検査: 剖検->肉眼的病理所見の観察 病理組織切片の作成 組織片

各材料の適用範囲と材料採取時、採取後の注意点 臓器•組織 その後の検査•作業 採取時の注意 採取後の扱い 病原体の分離 (乳剤の作製) 無菌的に採取 速やかな分離作業の開始* 滅菌器具の使用 深部から採取 病理組織切片 標識抗体法 10~20%ホルマリン溶液による固定 (抗体の特異性によっては凍結切片を作製) 直接塗抹標本 臓器スタンプ 塗抹•スタンプに 用いる部分を触らない 標本をメタノールで固定 氷•ドライアイス• 4℃ or -80℃で保存 遺伝子検査 雑菌の混入に注意 *開始までに時間がかかる50%グリセリン加生理食塩水中に保存、氷•ドライアイス•4℃ or -80℃での保存 **真菌•寄生虫の疑いあり凍結厳禁

各材料の適用範囲と材料採取時、採取後の注意点 糞便 その後の検査•作業 採取時の注意 採取後の扱い 病原体の分離 新鮮便•直腸便を採取 空気を遮断 速やかな分離作業の開始 低速遠心で組織細片、細胞残渣を除去 選択培地、抗生物質の使用 空気を遮断 速やかな分離作業の開始 氷•ドライアイス•4℃ or -80℃で保存 遺伝子検査 新鮮便•直腸便を採取 ぬぐい液 その後の検査•作業 採取時の注意 採取後の扱い 病原体の分離 滅菌した採取棒の使用 正確な採取部位 空気を遮断 速やかな分離作業の開始 低速遠心で組織細片、細胞残渣を除去 選択培地、抗生物質の使用 遺伝子検査 同上 糞便サンプルの扱いに準じる 塗抹標本 同上 速やかに塗抹作製し、メタノール固定

各材料の適用範囲と材料採取時、採取後の注意点 飼料 その後の検査•作業 採取時の注意 採取後の扱い 病原体の分離 遺伝子検査 飼料内での偏りを考慮 複数箇所から採取 直ちに氷冷 (乾燥飼料はそのままでOK) 血液 その後の検査•作業 必要要素 採取時の注意 採取後の扱い 病原体の分離 遺伝子検査 血液成分検査 生化学検査 全血 抗凝固剤入り 直ちに氷冷 速やかに塗抹作製、 メタノール固定 塗抹標本 全血 抗凝固剤入り 室温にて静置、 凝固後血清回収 血清診断 血清 抗凝固剤なし

遺伝子検査の標準化 遺伝子診断の種類 PCR Nested PCR Multiplex PCR PCR-Restriction Fragment Length Polymorphism RT-PCR Real-time PCR Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP) in situ PCR etc

遺伝子検査の標準化 遺伝子診断の種類 PCRの結果、精度に影響を及ぼす因子 PCR Nested PCR Multiplex PCR PCR-Restriction Fragment Length Polymorphism RT-PCR Real-time PCR Loop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP) in situ PCR etc PCRの結果、精度に影響を及ぼす因子 試薬 (DNA/RNA抽出用、PCR反応用特にプライマー、プローブ) 反応条件 (特にPCRの条件)

遺伝子検査の標準化 PCRの原理 変性 温度はプライマーを構成する塩基配列によって決定される プライマーアニーリング 伸長反応 温度は酵素によって決定 反応時間は標的配列の長さによる

遺伝子検査の標準化 Real-time PCRの原理 プローブ法 サイバーグリーン法 2本鎖に挟まれた時、 蛍光を発する この蛍光を検出

遺伝子検査の標準化 Real-time PCRの原理 プローブ法 サイバーグリーン法 アニーリング箇所の複雑化 2本鎖に挟まれた時、 蛍光を発する この蛍光を検出

遺伝子検査の標準化 SOP (Standard Operational Protocol)の設定

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