わかる できる 自信がつく 手術看護 平成27年1月29日 研修 講義者 日本医科大学武蔵小杉病院 麻酔科部長 わかる できる 自信がつく 手術看護 平成27年1月29日 研修 講義者 日本医科大学武蔵小杉病院 麻酔科部長 日本医科大学武蔵小杉病院 手術看護認定看護師 外来(手術室) 〇井 〇子
麻酔の目的とは? 麻酔科医とは? (1)手術を可能とする生体環境をつくる 無痛 睡眠 筋弛緩 (2)手術侵襲に対し抑制・防御する 麻酔学は侵襲防御学である (1)手術室をマネージメントする (2)手術室の安全管理をする (3)手術中の患者の生命保時を行う:麻酔管理という (呼吸、循環、体液、体温・代謝) その他:ICU管理 疼痛管理 緩和医療
麻酔の分類 全身麻酔 吸入麻酔 静脈麻酔 区域(局所)麻酔 表面麻酔 局所麻酔 硬膜外麻酔 脊椎麻酔 伝達麻酔(神経ブロック)
全身麻酔とは 全身麻酔の目的(4要素) ①鎮静:意識消失、健忘 ②鎮痛:痛みを感じない ③不動:動かない、十分な筋弛緩を得る ④有害反射の抑制:咳嗽反射、迷走神経反射など ・全身麻酔薬のターゲットは中枢神経である。 ・中枢神経に麻酔薬を作用させ、麻酔の目的を満たす状態で肉体的、精神的苦痛を取り除くことである。
→1つの薬剤で4要素全てを満たすものはないため、 複数の薬剤を使用しバランス麻酔を行う。 →1つの薬剤で4要素全てを満たすものはないため、 複数の薬剤を使用しバランス麻酔を行う。 ①鎮静 全身麻酔薬:吸入麻酔薬 静脈麻酔薬 ②鎮痛 区域麻酔:硬膜外麻酔 伝達麻酔 麻薬:フェンタニル レミフェンタニル モルヒネ アルチバ ③不動・筋弛緩 区域麻酔 筋弛緩薬:ベクロニウム ロクロニウム ④有害反射の抑制 筋弛緩薬 全身麻酔薬 麻薬
吸入麻酔薬 常温で液体 常温で気体 揮発的吸入麻酔薬 ガス麻酔薬:使用減少傾向にある 作用メカニズムは不明な所が多い 吸入麻酔薬 揮発的吸入麻酔薬 常温で液体 作用メカニズムは不明な所が多い セボフルラン(セボフレン) など ガス麻酔薬:使用減少傾向にある 常温で気体 鎮痛作用は強いが、鎮静作用は弱い 亜酸化窒素(N2O 笑気)
吸入麻酔薬の生体への影響 (1)中枢神経 脳血管拡張:脳血流増加 頭蓋内圧上昇 など (2)心血管系 血圧低下:心筋収縮力低下、血管拡張 アドレナリン感受性不整脈 など (3)呼吸器系 換気応答抑制 気管支拡張作用 など (4)子宮筋弛緩作用
揮発性吸入麻酔薬の特徴 ・刺激臭は少ない セボフルラン ・気道刺激性は低い ・導入覚醒が早い ・刺激臭は少ない ・気道刺激性は低い ・導入覚醒が早い ・生体内代謝率は高い臨床使用量では肝機能障害、腎機能障害の問題はない ・麻酔導入にも用いられる:小児緩徐導入 成人高濃度導入
静脈麻酔薬 (3)ドロレプタン(ドロペリドール) (1)プロポフォール(ディプリバン):導入 維持 (1)プロポフォール(ディプリバン):導入 維持 基材に脂肪乳剤を使用 肝臓で抱合され尿中に排泄 分布半減期 30~60分 排泄半減期 4~7時間 蓄積性低く持続投与できる 呼吸抑制強い 低血圧(血管拡張)注入痛 喘息にも比較的安全 脳保護作用 抗けいれん作用 (2)ベンゾジアゼピン(ジアゼパム:セルシン ミタゾラム:ドルミカム):導入 鎮静 前投薬 心血管系への影響少ない 抗不安作用 健忘作用 抗けいれん作用 呼吸抑制 拮抗薬:フルマゼニル (3)ドロレプタン(ドロペリドール) 外界から遮断された状態で意識を残す 血圧低下(血管拡張)
麻薬 共通作用:徐脈 鎮静・鎮痛 縮瞳 悪心嘔吐 呼吸抑制 鎭咳 麻薬 共通作用:徐脈 鎮静・鎮痛 縮瞳 悪心嘔吐 呼吸抑制 鎭咳 (1)フェンタニル(フェンタネスト) 短時間作用性(約15~20分) 鉛管現象(胸腹部骨格筋の筋硬直) 静注、硬膜下、くも膜下投与 (2)アルチバ(レミフェンタニル) 超短時間作用性 半減期3分 持続静注のみ:硬膜外、くも膜下投与は禁忌 鉛管現象 覚醒後シバリング 鎮痛作用の消失も早い 5~10分:術後鎮痛が必要
筋弛緩薬 意義:導入時の円滑な気管挿管を行う為 神経筋接合部に作用する 作用機序により2種類に分けられる 筋弛緩薬 意義:導入時の円滑な気管挿管を行う為 神経筋接合部に作用する 作用機序により2種類に分けられる (1)脱分極性筋弛緩薬: サクシニルコリン(サクシン) (2)非脱分極性筋弛緩薬: ベクロニウム(マスキュラックス) ロクロニウム(エスラックス) ・アセチルコリンと受容体を競合→筋弛緩 ・作用発現、消失遅い ・拮抗薬あり(ネオスチグミン スガマデックス ブリディオン)
全身麻酔の導入 麻酔薬を用いて覚醒状態から深い麻酔状態に移行させる事 自律神経、呼吸、循環に大きな変動を生じる時期 (1)急速導入 静脈麻酔薬(プロポフォール)の静注により急速に深麻酔状態を得る方法 補助的にフェンタニルを投与する 急激な呼吸抑制 血圧低下 (2)緩徐導入 吸入麻酔薬(笑気 セボフルラン)をマスクで投与してゆっくり深麻酔状態を得る方法 (3)迅速導入 胃内容物逆流しやすい患者の誤嚥を防ぐ目的 意識消失してから気管挿管して気道確保するまでの時間を最短にする方法 ※どの方法も導入完了までは不必要な刺激は避ける (呼吸状態が落ち着くまでが麻酔行為である)
全身麻酔中の気道確保方法 もっとも確実な気道確保・呼吸管理法 気道刺激が少ない:喘息患者にも用いやすい (1)気管挿管 もっとも確実な気道確保・呼吸管理法 誤嚥を確実に防ぐ (2)ラリンゲル(ラリンジアル)マスク 気道刺激が少ない:喘息患者にも用いやすい 挿入に筋弛緩薬を必要としない 自発呼吸を残せる 挿管困難時の気道確保
区域麻酔(局所麻酔) 定義 ・局所麻酔薬(局麻薬)を用いる ・脊髄神経より末梢(顔面、頭部は一部脳神経)の神経に作用させ、部分的な除痛を得る ・意識消失を伴わない
局所麻酔薬 <エステル型> <アミド型> 肝臓でゆっくり分解 血漿コリンエステラーゼで分解 腎排泄 腎排泄 アレルギー反応多い <アミド型> 血漿コリンエステラーゼで分解 肝臓でゆっくり分解 腎排泄 腎排泄 アレルギー反応多い メピバカイン(カルボカイン) コカイン リドカイン(キシロカイン) プロカイン ブピバカイン(マーカイン) テトラカイン ロピバカイン(アナペイン)
局麻薬の作用機序 (1)交感神経 早い (2)知覚神経 冷温覚 痛覚 触覚 新部知覚 (3)運動神経 (4)位置覚 遅い
局麻麻酔薬中毒 血中濃度上昇による副作用 血流の多い部分で起こりやすい 顔面、頭頚部、鼻腔など (1)中枢神経刺激症状 顔面、頭頚部、鼻腔など (1)中枢神経刺激症状 興奮、多弁、眩暈、不安、悪心嘔吐 頻脈、呼吸促迫、血圧上昇 次いで 四肢・顔面震せんから全身痙攣 (2)中枢神経抑制症状 意識消失、反射消失、血圧低下 末期には 循環虚脱、呼吸停止
区域麻酔の種類 硬膜外腔内に局麻薬を注入し、末梢から脊髄への伝達を脊髄周辺で遮断する (1)硬膜外麻酔(硬麻) 硬膜外腔内に局麻薬を注入し、末梢から脊髄への伝達を脊髄周辺で遮断する (2)脊髄くも膜下麻酔(脊麻、ルンバール) くも膜下腔の脳脊髄液内に局麻薬を注入し、脊髄神経、馬尾神経を遮断する (3)伝達麻酔(神経ブロック) 末梢神経、交感神経、脳神経の特定の神経伝達を遮断する。手術麻酔では神経叢に作用させる
硬膜外麻酔 特徴 (1)作用部位 硬膜外腔を通る神経根に作用 一部硬膜を透過して脊髄神経に作用 (1)作用部位 硬膜外腔を通る神経根に作用 一部硬膜を透過して脊髄神経に作用 (2)仙椎~頸椎まで穿刺可能 上腹部手術、開胸手術で良好な術後鎮痛が得られる (3)カテーテル留置により長時間麻酔が可能 術後鎮痛も可能 (4)分離麻酔が可能 低濃度局麻薬を用い、交感神経、知覚神経だけを遮断 運動神経は残す (5)分節麻酔が可能 目的とする区域のみに限定して除痛可能 (6)局麻薬の濃度が高いほど 効果発現早く 持続時間も長い
硬膜外麻酔の合併症① (1)硬膜外血腫 ・カテーテル挿入時に次いで抜去時に起きやすい ・重症肝硬変、抗凝固療法中は禁忌 術前の休薬、ヘパリン管理 ・カテーテル挿入時、薬液注入時に強い疼痛がある ・術後注意深い観察が必要(下肢の運動麻痺の回復) ・運動麻痺が半日以上継続する時はMRIで確定診断 (2)神経損傷 ・機械的:穿刺針 カテーテル 操作時の注意深い観察 異常感覚(しびれ感、電撃痛)の有無 ・薬剤(局麻、消毒薬):神経毒性によるもの
硬膜外麻酔の合併症② (3)局麻中毒 ・カテーテル血管内迷入 ・長時間麻酔 ・妊婦、腹圧更新患者:硬膜外腔が狭く静脈叢が発達 硬膜外麻酔の合併症② (3)局麻中毒 ・カテーテル血管内迷入 ・長時間麻酔 ・妊婦、腹圧更新患者:硬膜外腔が狭く静脈叢が発達 (4)硬膜穿刺後頭痛 ・低髄液圧症状 ・立位で吐き気 ・ブラッドパッチ
脊髄くも膜下麻酔 (1)穿刺部 L2/3またはL3/4で穿刺 脳脊髄液の流出で確認する L1/2以上は脊髄穿刺の危険性 (2)作用部位 くも膜下腔に薬剤を注入し、脊髄前根、後根をブロックする (3)麻酔作用 少量で強力な効果 胸髄から仙髄まで広い効果 (4)適応 下腹部以下の手術 比較的短時間の手術(2~3時間) (5)術後鎮痛 少量の麻薬の混注(フェンタニルなど)
(6)合併症) ①低血圧:血管拡張に伴う静脈還流の減少 エフェドリン:もっとも一般的 ネオシネジン:頻脈の時 輸液負荷 ①低血圧:血管拡張に伴う静脈還流の減少 エフェドリン:もっとも一般的 ネオシネジン:頻脈の時 輸液負荷 ②高位脊麻の徐脈:アトロピン ③呼吸筋抑制 ④脊麻後頭痛:脳脊髄液流出による低髄液圧が原因 安静臥床と輸液 難治性の時はブラッドパッチ ⑤脊髄神経・馬尾神経損傷 針による機械的損傷:電撃痛がある 局麻薬の神経毒性:馬尾症候群、一過性神経兆候
(7)禁忌 ①高度脱水、出血など循環血液量減少状態 ②ショック状態 ③穿刺部の感染:髄膜炎 ④凝固障害、出血傾向 ⑤脳圧更新状態:脳ヘルニア (8)局麻薬の違い ①高比重マーカイン ・効果発現が早い ・重力により低い方に広がる:体位による麻酔高調節 片側性に効かせられる ②等比重マーカイン ・効果発現は緩徐、長時間作用:高齢者など ・片効きは少ない:下肢骨折など患側を上にしたまま 穿刺可能
伝達麻酔(神経ブロック) エコーガイドが主流である 凝固障害:出血傾向軽度ならば可能 全身麻酔にも併用される 全身麻酔にも併用される 例: 腕神経叢ブロック:上肢の手術 大腿神経ブロック:下肢の手術 など
手術侵襲・ストレスとは? ①不安・恐怖 ②疼痛 ③臓器環流の低下 ④細胞環境の悪化 ⑤体温変動(高体温、低体温) ⑥栄養器質の供給・利用障害 ⑦炎症反応 など (手術操作だけでなく、麻酔によってもおこりうる) →交感神経過緊張、内分泌器官過剰反応、 サイトカインストーム、免疫抑制 →生体内部環境を破壊する 無麻酔で手術すると死亡することもある
手術侵襲を抑制するには ①麻酔前鎮静 ②麻酔法の選択 ③手術法の選択 ④循環動態の安定 ⑤呼吸機能の維持 ⑥輸血を避ける ⑦体温維持 ⑧栄養基質の補給 ⑨術後鎮痛
麻酔管理は予後に影響するか? 答え:する! →麻酔管理の優劣は手術予後に影響する! 米国での報告では 結腸・直腸癌後肝転移の予後関連因子は 結腸・直腸癌後肝転移の予後関連因子は 年齢、腫瘍部位、腫瘍進展度、腫瘍マーカーの他に、 術中低血圧の頻度と時間が有意に影響した。 とある。 →麻酔管理の優劣は手術予後に影響する!
日本麻酔科学会による 「麻酔関連偶発症例調査」 日本麻酔科学会による 「麻酔関連偶発症例調査」 日本麻酔科学会による「麻酔関連偶発症例調査」での「危機的偶発症」の分類 危機的偶発症とは:原因のなにを問わず麻酔下で生命危機状態になった症例 ①心停止 ②高度低血圧 ③高度低酸素血症 ④その他 1)対象:麻酔科認定病院における麻酔科管理症例 症例数5223174例 2)調査項目:手術室で発生した危機的偶発症について ・発生頻度 ・転機:術中死亡、7日内死亡、植物状態、その他 ・原因:麻酔管理術中発症の病態、術前合併症、手術、その他 ・年齢区分 ・ASA‐PS ・手術部位 ・麻酔法
ASA-PS分類とは ASA-PS分類(American Society of Anesthesiologists-Physical Status)(米国麻酔科学会全身状態分類) ClassⅠ:全身状態が良好な患者 ClassⅡ:日常生活が制限されない程度の軽度の全身疾患をもつ患者 例:軽度糖尿病、高血圧、貧血、高齢者 ClassⅢ:日常生活が制限されるような重度の全身疾患を持つが寝たきりではない患者 例:重度糖尿病、高度肺疾患機能障害 ClassⅣ:日常生活を大きく制限する重度の全身疾患を持ち、常に生命を脅かされている患者 例:重度心不全・心筋症、進行した肝、肺、腎、内分泌疾患 ClassⅤ:手術してもしなくても、24時間以上生存しないと思われる瀕死の患者 ClassⅥ:臓器移植のドナーとなる脳死患者 Classが高いほど周術期心停止発生率、死亡率増加する(特にⅣ以上)
結果 手術・麻酔のリスクは? ①危機的偶発症は全麻で多く発生し、高度低酸素血症が多い ②麻酔関連死亡(術中と術後1週間以内) 結果 手術・麻酔のリスクは? ①危機的偶発症は全麻で多く発生し、高度低酸素血症が多い →死亡事故に成り易く、生命予後に関しては区域麻酔がより安全と言えるかもしれない ②麻酔関連死亡(術中と術後1週間以内) ・10万例に1例であり、現在の麻酔は安全と言える ・原因は気道トラブル、誤薬などが多い→人的ミス ・新生児、乳児、高齢者に多い ・ASA-PS(術前全身(健康)状態分類)は麻酔リスクを反映している →全身(健康)状態の悪い緊急手術は危険 ・手術部位では心臓、大血管ついで開胸開腹、脊椎が危険 麻酔医は医療ミスが多い →医師自ら処方、用意、投薬することが多い為
手術看護とは 定義 周手術期における患者の安全を守り、手術が円滑に遂行出来るよう、看護を提供すること 「手術を受ける患者に対象に、安全で安心な最良の手術が受けられるように、医療チームの一員として情報を共有し、専門的な知識と技術を持ってその役割を果たすこと」
専門的な知識に裏付けられた技術 ・無菌操作に長けていて安全な感染予防対策が出来る ・医療材料や器具・器材を熟知している ・医療材料や器具・器材の消毒方法を理解している ・ルーチンの手術、緊急手術の手順を理解していて、対応できる 麻酔の方法を理解し、準備介助、管理ができる ・術中の患者の安全・安楽を守ることができる (体位の取り方、低体温の予防方法、局所圧迫予防など) ・手術を受ける患者が安心して手術が受けられるようなコミュニケーション技術がある ・手術に関して使用するMEを熟知していて管理できる (電気メス、レーザー、超音波など) ・行動が沈着冷静で、確実性があり、迅速である
手術室看護師の役割① 術前 (1)手術に対応するための心身のアセスメント 安全な手術の為に必要な情報を医師や病棟看護師、患者、家族から得てアセスメントし、器具・医療材料やケア物品の準備を行う (2)術前患者の準備支援 患者の術前の心理状態を把握し、必要な情報を提供し、不安の軽減に努めつつ、生命を委ねる患者との信頼関係を築く
手術室看護師の役割② 術中 (1)器械出し・外回り看護(業務) 器械出しと外回りが明確に業務文体し、患者の手術を円滑に進行する (1)器械出し・外回り看護(業務) 器械出しと外回りが明確に業務文体し、患者の手術を円滑に進行する (2)患者の心理的支援 手術室という特殊な環境下で治療を受ける患者とのコミュニケーションにおいて、効果的な言葉かけやタッチングなどによって患者の不安を軽減すると共に、患者が状況を理解した上で円滑に手術が進行出来るように協力を得る (3)安全の確保 麻酔下における患者の安全確保のための全身状態のモニタリング、安全な体位の確保、体温の管理、感染予防、ME機器・器具・医療材料の管理を行う (4)チーム医療のマネージメント 器械出し看護師は確実に器械・器具を管理し、冷静かつ的確に場の状況や進行状況を判断しながらチーム医療をマネージメントする
手術室看護師の役割④ (5)急変時の対応 手術による大量出血や麻酔による合併症等の急変に迅速かつ的確に対応する (6)倫理的配慮 (5)急変時の対応 手術による大量出血や麻酔による合併症等の急変に迅速かつ的確に対応する (6)倫理的配慮 医療従事者に委ねられた手術が、患者の意志に沿っているかどうかについて、患者の代弁者としての役割を持つ
手術室看護師の役割⑤ 器械出し看護の役割 外回り看護の役割 ・円滑な手術介助 ・患者の心理的援助 ・術前訪問・看護計画立案 器械出し看護の役割 外回り看護の役割 ・円滑な手術介助 ・患者の心理的援助 ・術前訪問・看護計画立案 ・手術器械の準備・管理 ・患者の安全管理 ・確実な滅菌物の提供 ・患者確認・部位の確認 ・適切な検体の取り扱い ・手術体位の確保 ・針刺し切創防止 ・体温管理 ・手術患者・部位の確認 ・感染管理 ・適切な薬剤の提供 ・術後合併症の予防 ・体内異物遺残防止 ・患者の擁護者・代弁者 ・患者の身体損傷防止 ・手術コーディネーター ・メンバーとのチームワーク
手術室看護師の役割⑥ 術後 (1)術後の継続看護 麻酔からの速やかな回復をはかるとともに、 術後の継続看護のために病棟看護師へ引き 継ぐ (2)セルフケア指導 日帰り手術患者に対して、術後のセルフケアのための指導を行う
手術看護における看護問題と特徴 ・生命にかかわる問題が多い 出血、気道トラブルなど ・手術そのものが侵襲的である ・手術(麻酔)に関連した二次的合併症がある 低体温、DVT、皮膚障害(褥瘡・熱傷・外傷)、神経障害 ・心理的ストレス(個人差が大きい):緊張感 不安など ・問題の優先順位がつけにくい 循環、呼吸、感染、体温、皮膚・神経・栄養、認知・心理的側面、内分泌、水・電解質、排泄、その他・・・
手術看護における看護問題 まとめると、 ほとんどがリスク問題(潜在的)である。 ・術中の体位による、身体損傷のリスク ・手術・麻酔侵襲による、あらゆる身体の循環障害の発生リスク ・周手術期における心理的ストレス問題 ・手術侵襲による、感染のリスク などが挙げられる 従って、看護介入はリスク問題の回避 →看護目標:無事に手術が終了できる(二次障害がない)
以上です ご清聴ありがとうございました
全身麻酔の覚醒・抜管 どのタイミングで筋弛緩薬を使用するか? 当院の場合 麻酔覚醒の基準 ・具体的な呼びかけに応じられる 「目を開けて下さい 口を開いて下さい 手を握って下さい」 ・刺激を加えての体動は覚醒とは言えない。単なる防御反射である。
抜管の条件 ・筋弛緩薬の回復 ・麻酔の覚醒 ・防御反射の回復:咳嗽反射(気管吸引) 嚥下・嘔吐反射(口腔内吸引) ・十分な1回換気量(7~10ml/kg) ・適切な呼吸数(10~15回) 適切な換気パターン(胸腹式) ・ 特に麻薬のよる呼吸抑制に注意(呼吸数の減少) ・体温の回復(36度以上) ・バイタルサインの安定
抜管操作 ①十分な酸素化(純酸素で換気) ②胃管の吸引 ③口腔内吸引 防御反射の回復も ④必要なら気管内吸引 確認
抜管後のチェックポイント ①上気道閉塞はないか? ②興奮、譫妄はないか? 導入覚醒の早い麻酔薬で問題になる 過換気での覚醒 鎮静薬投与の必要性 ③SpO2、血圧等 基本的バイタルサインは保たれているか? ④適切に鎮静されているか?
術前評価と麻酔管理計画 手術患者のリスクを正しく評価し、適切な麻酔管理、周術期理計画の立て方を理解する。 Ⅰ.術前診察・評価の意義・目的 ①手術関連合併症軽減 ②周術期管理の質の向上 ③早期回復 ※麻酔管理中の偶発症例の発生と術前全身状態分類 (ASA-PS)には関連がある。 十分な患者評価が必要 ④手術・麻酔・看護計画策定 ⑤患者への十分なインフォームドコンセント、教育、不安軽減 ⑥主治医、病棟看護師との情報連携
Ⅱ.術前外来(周術期外来)の設置の動き ①術前診察の効率化 ②入院日数の短縮 ③患者リスクの早期発見 ④コントロール可能な合併症に対する十分な患者教育
Ⅲ.周術期リスクには何があるか 1.患者要因リスク ①合併疾患 Ⅲ.周術期リスクには何があるか 1.患者要因リスク ①合併疾患 ・循環器疾患:先天性心疾患、虚血性心疾患、不整脈 ・呼吸器疾患:気管支喘息、COPD ・腎疾患:慢性腎不全 ・消化器・肝疾患:肝炎、肝硬変、消化管出血 ・内分泌疾患:糖尿病、甲状腺 ・神経筋疾患:筋ジストロフィー、重症筋無力症、脊髄損傷 ②身体要因 ・肥満 ・気道:気管偏移・狭窄 上気道以上(扁桃肥大、SAS) ③生活習慣因子 ・喫煙 ・アルコール ・薬剤 ④包括的全身状態評価(ASA-PS分類を用いて)
原因は不適切な気道管理が最多 ①全身麻酔のリスク ・挿管困難症 ・低酸素血症 ・咽頭喉頭痛 ・嗄声 ・歯牙損傷 ・術後悪心嘔吐 2.麻酔関連要因リスク 麻酔管理に起因する心停止発生率は1万症例に0.21件 死亡率は1万症例に0.07件(10万例に1件程度) 原因は不適切な気道管理が最多 ①全身麻酔のリスク ・挿管困難症 ・低酸素血症 ・咽頭喉頭痛 ・嗄声 ・歯牙損傷 ・術後悪心嘔吐 ・悪性高熱症 など
②区域麻酔のリスク 硬膜外麻酔 硬膜穿刺後頭痛(0.5~1.0%) 硬膜外血腫(凝固異常がない場合は稀) 0.1~0.01% 硬膜外膿瘍(穿刺部感染、糖尿病合併)0.01% 脊髄・神経根損傷(穿刺時、カテーテル挿入時) 0.1~0.01% 局所麻酔薬中毒(カテーテル血管内迷入、長時間麻酔) 脊髄くも膜下麻酔 硬膜穿刺後頭痛 2% 一過性神経症状:1~3日の疼痛・知覚異常 1~3% 馬尾症候群:膀胱直腸障害、会陰部下肢知覚運動障害 局所麻酔毒薬性 穿刺時物理的損傷 0.06% 背部痛 10~50% 伝達麻酔 神経損傷 局所麻酔薬中毒
Ⅳ.麻酔計画の立て方① 患者情報:全身状態、合併症、身体所見、検査所見、患者の希望 手術情報:手術部位、術式、手術侵襲度、体位 (1)術前情報の入手 患者情報:全身状態、合併症、身体所見、検査所見、患者の希望 手術情報:手術部位、術式、手術侵襲度、体位 Ⅰ 基本(スクリーニング)術前検査 血算、生化学、尿、出血凝固、血型、感染症、心電図、胸部x-p、血液ガス分析 Ⅱ 追加特殊検査 呼吸・腎・肝・心機能 検査 Ⅲ 術前診察のポイント ・問診・質問表:病歴、手術麻酔歴、アレルギー歴、社会歴、嗜好、家族歴 ・身体所見:バイタルサイン、頭頚部、胸腹部、全身 Ⅳ 基礎疾患に対する評価と管理のポイント 循環器系疾患、呼吸器系疾患、肝疾患について
麻酔計画の立て方② (2)麻酔法の選択 ①全身麻酔:バランス麻酔が主流 ・主麻酔薬の選択:吸入麻酔薬、静脈麻酔薬 ・鎮痛法の選択:麻酔、硬膜外麻酔、脊髄くも膜下麻酔、神経ブロック ・筋弛緩薬の有無、選択 ・気道管理法:マスク、ラリンゲルマスク、気管挿管 ・麻酔導入法も選択(急速導入、緩徐導入、クラッシュ導入) ・麻酔維持法の選択 ②局所麻酔 ・局所浸潤麻酔 ・伝達麻酔(神経ブロック) ・区域麻酔(硬膜外麻酔・くも膜下麻酔) ③術後鎮痛法 ・硬膜外鎮痛 ・脊髄くも膜下オピオイド ・静脈内鎮痛剤投与 (3)術中モニタリングの選択 ①標準モニター:心電図、血圧計、パルスオキシメーター、酸素濃度計、体温 ②呼吸代謝モニター:カプノメ―タ―、麻酔ガスモニター、呼吸機能モニター ③循環系モニター:動脈圧モニター、中心静脈圧、S-Gカテーテル、経食道心エコー ④その他:筋弛緩モニター、脳波モニター