ラグランジュ微分と オイラー微分と 移流項の 三者の関係を直感で理解する方法 三重大学・大学院生物資源学研究科 共生環境学専攻 地球環境気候学研究室 教授 立花義裕
移流項とオイラー微分とラグランジュ微分の関係のイメージ 例えば 回転寿司のようなシステムで温度の違う飲み物が 速度uで流れてくるとする。 u 7K さっきより5K冷たい 飲み物が来るはず だったのに 3Kしか冷たくない! 冷たい飲み物が ほしいな… あと少し待てば もう少し冷たい物が くる… 流れてる間に 部屋の温度によって 飲み物が暖められていた。 ラグランジェ微分が効いている! 0K 5K 10K 15K 飲み物の温度 オイラー氏
下の図のような、それぞれが距離δx離れた空気塊を考える。 中心の空気塊の温度はT0で、周りの空気塊の温度はテイラー展開で表されている。 これらの空気塊は速度U=δx/δtで移動している。 t=0 t=δt 速度U=δx/δt このときの温度の 変化率はDT/Dt +0 +δT +0 +δT +δT +0 +δT +0 +0 +δT δx δx δx δx 外部要因によって、δtの間暖められて、温度がδT上がったとすると、このときの温度変化率はDT/Dtである。 今、太陽が出て、地面が温められ、付近の空気塊が暖められるとする。(外部要因) これが空気塊とともに動く視点で見た時の変化率、ラグランジェ微分であり、 DT/Dt=外部要因で表される。
次に、固定点から見たときの変化率、オイラー微分について考える。 t=0 t=δt U=δx/δt ∂T/∂t この時、固定点での温度の変化率は∂T/∂t=(外部要因=0)-U・∇Tとなる事がわかる。 まずは、太陽の出ていない時(外部要因がない→ラグランジェ微分=0であるから、 空気塊自体の温度は変化しない)を考える。 U=δx/δtであるから、δt経つごとに空気塊はδx移動することになる。
次に、太陽が出た時(外部要因がある→DT/Dt≠0)のオイラー微分について考える。 t=δt +δT +0 +δT +0 +0 +δT +δT +δT +0 +δT +0 ∂T=∂t t=0で太陽が出て、暖まりはじめる。 t=δt経つと、空気塊全体はδTだけ温度が上昇し、さらにδx移動する。 よって、外部要因があるときのオイラー微分は ∂T/∂t=DT/Dt(=外部要因)-U・∇Tであることがわかる。
今回は移流の概念を理解するのにイメージしやすいように変数として温度Tを用いたが、温度以外の場の変数(スカラー量でもベクトル量でも)全てについてラグランジュ微分とオイラー微分、移流項の関係は成り立つ。 例えば流体の運動方程式であれば、変数に運動量(速度ベクトルU)を用いればよい。外部要因として、気圧傾度力、重力、摩擦力があるとすると、大気の運動方程式は次のようになる。