薬の 正しい使い方
わたしは薬剤師です 薬剤師の国家資格をもち、みなさんが安全に正しくお薬を飲むお手伝いをします。 医薬品の供給 (OTC、医療用医薬品) 適正使用の推進 健康相談、 禁煙補助など
「お薬」 とは、 何ですか? Q1 みなさんが普段飲んでいるお薬がありますか? 思い出してみましょう。 考えてみよう 3 【学習のねらい:】 何ですか? 考えてみよう みなさんが普段飲んでいるお薬がありますか? 思い出してみましょう。 【学習のねらい:】 薬の定義と薬の歴史について説明している。 「薬とは何か」を理解し、人はかなり古くから薬を利用してきたことや薬がもたらした恩恵について理解できるようにする。 3
お薬とは… 病気の診断や治療、または予防することを目的に使われるもののことで、「薬機法」という法律で医薬品として定められています。 4
Q2 「お薬」は、何のために あるのですか? ●転んで怪我をしたとき ●熱が出たとき ●お腹が痛くなったとき 「お薬」は、何のために あるのですか? 考えてみよう こんなとき、どうしましたか? ●転んで怪我をしたとき ●熱が出たとき ●お腹が痛くなったとき 【学習のねらい:】 薬と自然治癒力の関係について説明している。 人間には自然治癒力があることを理解した上で、病気やけがなどの時に、健康を回復するための補助や病気の進行をおさえる働きをするのが薬であることが理解できるようにする。 ここでは、けがや病気の経験から自然治癒力によってなおった経験、つまり薬なしでなおった経験を引き出し、自然治癒力の概念を認識させる。 5
自然治癒力 病気やけがを乗り切るために、本来人間が持っている力。病気やけがから回復する時に働きます。 年齢とともに 低下します 6 ここで生徒から「免疫」という言葉が出る場合もあるが、「免疫」は狭義では抗原抗体反応だが自然治癒力の重要な一部であり、間違いではない。 年齢とともに 低下します 6
「自然治癒力」を助け、病気やけがが早く治るようにしたり、重くならないようにしたりします。 「自然治癒力」だけでは回復出来ない時もあります。 そこで、薬は病気の原因を取り除いたり、 「自然治癒力」を助け、病気やけがが早く治るようにしたり、重くならないようにしたりします。 元気な時 体が弱った時 自然治癒力 自然治癒力 薬の力 + 7
Q3 「お薬」には、どのような種類が あるのですか? 今までどのようなお薬の形をみたことがありますか? 考えてみよう 8 【学習のねらい:】 「お薬」には、どのような種類が あるのですか? 考えてみよう 今までどのようなお薬の形をみたことがありますか? 【学習のねらい:】 さまざまな薬について説明している。 ここでは、中学生にも分かりやすいように、薬をその使い方から分類している。薬の形にも意味があることを知り、薬の正しい使い方への理解へ発展させていく。 8
薬の種類は大きく 3つに分類されます 内服薬 外用剤 注射剤 口からのむ薬 皮膚、目、鼻などの 粘膜に使用する薬 皮膚や筋肉、 薬の種類は大きく 3つに分類されます 内服薬 口からのむ薬 外用剤 皮膚、目、鼻などの 粘膜に使用する薬 注射剤 皮膚や筋肉、 あるいは血管内に 直接入れる薬 錠剤 カプセル 軟膏・貼付剤 ここでは、生徒の使用経験を聞いて興味を引き出す。 また様々な形の薬があることを理解させ、どうしてそんなに形が異なるのかを考えさせるきっかけとする。 トローチ 消毒薬 シロップ剤 散剤 (粉ぐすり) 点眼剤
なぜ錠剤やカプセルにしてあるのでしょう ・苦い味を隠すため ・長時間、効くようにするため ・光から薬を保護するため ・散剤(粉薬)が飲みづらい人のため ・胃の中で溶けないで腸で溶けるようにするため など このような理由によって錠剤やカプセルは作られています。錠剤をかみ砕いてのんだり、カプセルの中身を出してのんだりしてはいけません。 薬が効かなかったり、逆に効きすぎて危険な場合があります。
なぜ錠剤やカプセルにしてあるのでしょう カプセルの中の顆粒に、 このような工夫を加えることがあります 例えば・・・ 胃で溶ける顆粒 <実験目的> 薬は効き目や使いやすさを良くするために様々な工夫が施されている。 カプセルの模型を使ってカプセルの中身の粒の工夫を確かめ、カプセルを開けて中の顆粒を別々にのむなどすると、元々の効き目が得られなくなることを理解させる。 <用意するもの> 大型カプセル模型 <手順> ①模型の中身に色々な色の顆粒が入っていることを確認させる。 ②生徒の前でカプセルをあけ、中の顆粒を取り出し、顆粒の成分の違いの例を説明する。 例) 胃で溶ける成分や腸で溶ける成分 すぐ効く成分やゆっくり効く成分 鎮痛成分と解熱成分 (実験参考動画は協議会HPにて公開) 例えば・・・ 胃で溶ける顆粒 はやく効く 腸で溶ける顆粒 ゆっくり効く
「錠剤」にはこんな 「仕掛け」もあります なぜ錠剤やカプセルにしてあるのでしょう 味などを かくす膜 腸で溶ける膜 例えば・・・ <実験目的> 薬は効き目や使いやすさを良くするために様々な工夫が施されている。 錠剤の中は何層にも分かれており、噛んだり砕いたりすると元々の効き目が得られなくなることを理解させる。 <用意するもの> 大型錠剤模型 <手順> ①錠剤模型を開き、錠剤の中が何層にも分かれていてそれぞれ効果が異なることを理解させる。 ②この模型では、胃で溶ける膜と腸で溶ける膜を層にすることによって、胃で効く成分に加えて、腸でも胃の酸に弱い薬を効かせる仕組みとなっている(腸溶錠)。 (実験参考動画は協議会HPにて公開) 胃で溶ける成分 腸で溶ける膜 腸で溶ける成分
錠剤になる薬とカプセルになる薬の違いは? 薬の成分によって、錠剤にしたり、カプセルにしたりするなどして、薬の成分が壊れることのないよう、また、効果が出やすいように形を使い分けています。 粉や顆粒、液体といろいろな状態の薬を中に入れることができます。 カプセル 錠 剤 粉に圧力をかけて固くまとめることができます。
Q4 「お薬」 の使い方には決まりが あるのですか? 今までに 医師や薬剤師からお薬の使い方について指導されたことがありますか? 「お薬」 の使い方には決まりが あるのですか? こんなところに 書いてあります! 考えてみよう 今までに 医師や薬剤師からお薬の使い方について指導されたことがありますか? 【学習のねらい:】 薬を使う時の用法と用量について説明している。 なぜ用法が定められているかを、血中濃度のグラフを用いて説明し、決まりを守らなければ薬の効き目が現れない場合や危険な場合があることに気付くようにすることをねらいとしている。 14
薬の使い方には決まりがあります。 用法(のみ方、のむ回数、のむ時間)・用量(のむ量や数)が 決められています。 薬の使い方には決まりがあります。 用法(のみ方、のむ回数、のむ時間)・用量(のむ量や数)が 決められています。 いつのむか 何回のむか のみ方は 食前 例 コップ1杯程度の水またはぬるま湯でのみます。 食事の30分前 食事が終わってから30分以内 食事が終わってから約2時間後 など・・・・ ・1日3回毎食後 ・1日2回朝食後と夕食後 など・・・ 薬の使い方にはこれらの決まりがあることを、動画や実験で確かめていく。 食後 食間
~薬の決まりを知るために~ 薬の旅 薬は、血液の中に入ってはじめて効果を発揮します。 薬が体の中をどうめぐり、どう出て行くかを知ることで薬の決まりを理解できる。 まずここでは、薬は口からのむと吸収され、血液に入って全身をぐるぐると巡ることを理解させる。 <薬の旅> ・薬は、血液の中に入ってはじめて効果を発揮する。 ・例えばのみ薬は、口から入って、胃や腸で溶け出た成分が小腸で吸収され、血液の中に入る。 そして殆どの成分は、まず肝臓で分解、代謝などされた後に、心臓から血液と一緒に全身に送り出されて身体内 に分布し、患部まで運ばれて効果を発揮する。 ・更に、薬は効果を表し始める一方で徐々に身体外へ排泄される。 ・やがて薬の成分の多くは腎臓から小便の中や大腸から大便として排泄される。 (GIFアニメーションを組み込んであります。うまく動かない場合は、別途動画を立ち上げてください。)
~薬の決まりを知るために~ 薬の血中濃度 お薬の効き目は『体の中の薬の量』できまります。 血液にとけている薬の濃度のことを血中濃度といいます。 血中濃度によって薬の効き目の現れ方が決まります。 ●1日3回のむ薬の場合 決められた量より多くのむと 危険なことがあります 薬の血中濃度 高い 朝のむ 昼のむ 夜のむ 危険な範囲 効き目が 現れる範囲 現れない範囲 時間 ここでは、薬の血中濃度の概念を通して、薬はのむ量やのむ時間が決められていることを理解させる。 さらに、飲み忘れたり飲みすぎるとどうなるかを考えさせる。 <薬の血中濃度> ・薬は、血液の中に入ってはじめて効果を発揮するが、更に効果を発揮する要因に重要な「薬の血中濃度」、つまり血液の中の薬の量がある。 ・グラフの縦軸が血中濃度である。3段に色分けしたうち、真ん中の青い部分が血中濃度が適正な「効き目が現れる範囲」、上段の赤い部分が血中濃度が濃すぎて「危険な範囲」、下段の白い部分は血中濃度が低すぎて「効き目が現れない」範囲である。 ・この、「薬の効き目が現れる範囲」を保つために、薬をのむ量とのむ回数が、薬ごとに決められている。 ・このため、薬をあやまって2倍のんだり、飲み忘れてしまうと「効き目が現れない範囲」や「危険な範囲」となってしまう。 「効かないからもう1錠」や「痛みが軽いから半分だけのむ」はダメ!!
ペタペタ実験 ~コップ1杯程度の量の飲み物でのむ理由~ 水 カプセル 2 指に水をつけて・・・ 1 水とカプセルを用意します 2 指に水をつけて・・・ 1 水とカプセルを用意します <実験の目的> カプセルや錠剤が喉や食道に貼り付かず胃まで確実に運ばれるようにコップ一杯の飲み物でのむことが必要なことを理解させる。 <用意するもの> シャーレ2つ、水、カプセル剤(カプセルはゼラチンで出来た「空カプセル」を使用する。薬局で購入可能である。)。 <実験の手順> ①片方のシャーレに水を入れ、もう片方には空カプセルを入れておく。 ②シャーレの水で指を濡らし、カプセルに触る。 ③指にカプセルがくっついて離れないことを実際に経験させることで、もしこの状態が喉や食道で起きたらどうなるかを考えさせ、十分な量の水かぬるま湯でのまないと、薬が確実に嚥下されず、薬本来の効果が期待できないばかりか、有害となることもあることを指導する。 ④最後に指に大量の水を付けてカプセルを触るか、コップ1杯の水の中にカプセルを入れて触らせ、指に付着しないことも経験させる。 (実験参考動画は協議会HPにて公開) 3 カプセルにくっつけると・・・ 水 カプセル 18
カプセルがのどにくっついて溶けてしまう。 指先と同じことがのどで起こると、 カプセルがのどにくっついて溶けてしまう。 19
~水で飲む理由~ (例) お茶 : 薬の効果が弱くなることがあります。 牛乳 : 薬の効果が発揮されるのに時間がかかり過ぎることがあります。 ~水で飲む理由~ (例) お茶 牛乳 コーラ コーヒー ジュース : 薬の効果が弱くなることがあります。 : 薬の効果が発揮されるのに時間がかかり過ぎることがあります。 : カフェインの作用により、眠れなくなることがあります。 : 果物や野菜の成分は目的とする効果を変えてしまうことがあります。
Q5 「お薬」 には、副作用があると聞きますが、 それはどのようなものなのですか? また、なぜ起こるのですか? 考えてみよう 「副作用」について知っていることがありますか? 【学習のねらい:】 薬の副作用について説明している。 中学生は、薬の「副作用」についても、さまざまなところで知識を得ている。その知識を整理し、副作用の危険を減らすためにも、正しい使い方をしなければならないことが理解できるようにする。 21
すべての薬には、「主作用」と 「副作用」があります。 すべての薬には、「主作用」と 「副作用」があります。 主作用 病気を治したり 軽くしたりする働き 副作用 本来の目的以外の 好ましくない働き 熱が下がった! 解熱剤を飲んだら胃が痛い・・ かゆみがとれた アレルギーの薬を飲んだら眠い・・
副作用が起こる主な原因には こんなことがあります。 ① 薬のもっている性質によるもの ② 薬の使い方によるもの ① 薬のもっている性質によるもの ② 薬の使い方によるもの ③ 薬を使う人の体質、年齢によるもの ④ 薬を使った人のその時の体の状態に よるもの ⑤ 一緒に飲んでいる薬の影響 ここでは、複雑で予期できない様々な要因で副作用が起こることがあることを理解させる。 自分にあった薬を正しく使うことで副作用の危険を減らすことができます。殆どの薬では重い副作用がでることはありません。しかし予想出来ない副作用が出ることがあります。
薬を使用して副作用が疑われる時は、 すぐに医師・薬剤師に相談しましょう。 薬を使った時にいつもと違うことがあれば、医師や薬剤師などの専門家、保護者に相談することを理解させる。
Q6 「お薬」 には、飲み合わせが悪い組み合わせあると聞きますが、どのようなものなのですか?また、なぜ起こるのですか? 考えてみよう 「相互作用」について知っていることがありますか? 【学習のねらい:】 薬の副作用について説明している。 中学生は、薬の「副作用」についても、さまざまなところで知識を得ている。その知識を整理し、副作用の危険を減らすためにも、正しい使い方をしなければならないことが理解できるようにする。 25
相互作用とは・・・ お薬と一緒に摂取することで、効果に影響(作用の減弱・増強等)を与える組み合わせがあります。お互いの効果に影響を与えることを相互作用と呼びます。 お薬と食品、お薬と他のお薬、その他健康食品等にも相互作用は存在します。
例) 納豆 と ワルファリン 抗凝固薬と呼ばれ、血液のかたまり(血栓)ができるのを予防したり、治療する薬です。ワルファリンは肝臓でのビタミンKに依存した凝固因子の合成を阻害して抗凝固作用を発揮します。 相互作用 納豆(納豆菌)は小量でも腸の中でビタミンKを作りだします。ワルファリンの効き目が悪くなってしまいます。納豆は食べないようにしてください(他の大豆食品は大丈夫です)。
例) うつの薬 と 肩こりの薬 同時に飲むとテルネリンの血中濃度が33倍に上昇したという報告があります! 例) うつの薬 と 肩こりの薬 うつ病などに使われるルボックス(フルボキサミン)は、特に精神神経科などで処方され年齢を問わず使用されています。 筋肉のこりをほぐすテルネリン(チザニジン)は、主に整形外科や神経内科から処方され、筋肉の硬直の改善や、頭痛の予防などに使用されています。 同時に飲むとテルネリンの血中濃度が33倍に上昇したという報告があります!
お薬手帳やかかりつけ薬局を持ちましょう! このような事態を防ぐために、 お薬手帳やかかりつけ薬局を持ちましょう! 1人1冊持ちましょう。過去、現在のお薬の記録を持ち歩くことで、正しく安全にお薬を受け取ることができます。 あなたの病気や薬について、確実に理解しているかかりつけ薬局を持ちましょう。いろいろな医院や病院でお薬が出されても、1つの薬局で管理してもらえると安心です。
友達からお薬をもらったり、逆に友達にあげたり、また家族が病院からもらったお薬を使ったりするのは良くありません! 薬は、正しく使いましょう! ・薬を自分の判断で勝手に 飲んだり使ったりしてはいけません。 ・薬は一人ひとりの症状などに あわせて使う必要があります。 友達からお薬をもらったり、逆に友達にあげたり、また家族が病院からもらったお薬を使ったりするのは良くありません! 同じ症状のようでも原因が違っていたり、 前回とは身体の状態が異なっていたり することが考えられるので, 残った薬注) は飲んでは駄目です 注)薬には「使用期限」があります。 この点からも、残った薬は使用しないで下さい。