医療・介護・年金等に関する国会等の動きについて 日本退職者連合「政策・制度要求実現に向けた2・16院内集会」/2017.2.16 医療・介護・年金等に関する国会等の動きについて 日本労働組合総連合会 生活福祉局
本日の内容 1.2017年度政府予算案と「地域包括ケア構築推進法案」 2.医療保険における負担の見直し 3.介護保険における負担の見直し 4.2016年年金改正法
1.2017年度政府予算案と 「地域包括ケア構築推進法案」
◆社会保障費に関する財政上の制約の要請 ○財務省は、社会保障関係費の伸びを2016〜18年度の3カ年で1.5兆円に抑える「経済・財政再生計画」に掲げられた「目安」の厳守を求めている。そのため、今回の介護保険制度の見直しの内容を小規模なものにとどめることができたとしても、2018年度に同時改定が行われる診療報酬・介護報酬の抑制圧力につながるという構造となっている。 ○ 29年度予算は「経済・財政再生計画」における集中改革期間の2年目。社会保障関係費の「目安」を確実に達成す るため、「改革工程表」等に掲げられる検討項目について、できる限り前倒しして改革を実現すべき。(29年度に講 じる改革が不十分な場合、「目安」の達成に向け、30年度予算において更なる歳出抑制策を講ずる必要がある。) (参考) 経済・財政再生計画 (経済財政運営と改革の基本方針2015) 安倍内閣のこれまでの3年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び (1.5兆円程度)となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度(平成30年度)まで継続していくことを目安とし、効率化、 予防等や制度改革に取り組む。 出所:財務省財政制度等審議会財政制度分科会(2016.10.4)資料
◆2017年度予算案における社会保障関係費の伸びの「目安」への対応 政府は、社会保障関係費を2017年度概算要求段階から1,400億円絞り込んだ予算案を国会に提出。さまざまな国民負担増が行われる見通しとなっている。 出典:厚生労働省資料に連合が加工
◆地域包括ケアシステム構築推進法案(介護保険法等改正法案) 政府は、介護保険の3割負担区分の創設などを行うための法案(予算関連法案)を国会に提出。
2017年度 重点政策実現の取り組み方針(補強)(第16回中執確認(2017.1.19)抜粋) ◆地域包括ケアシステム構築推進法案と連合の取り組み ○政府は2月7日、「地域包括ケアシステム構築推進法案」を閣議決定し、国会に提出。予算関連法案として3月中の成立を期している。 ○連合は、社会保障審議会介護保険部会に委員として参画。高齢者の生活、現役世代の仕事と介護の両立などの観点から、「軽度切り」(要介護者に対する生活援助サービスを介護保険から切り離すこと)など給付抑制と大幅な負担増に反対する立場から意見反映をしてきた。 ○その結果、賃金の高い現役労働者の保険料負担増などの財源により、「軽度切り」は見送られたが、介護保険3割負担の導入、自己負担上限の引き上げなど高齢者の負担増については、2017年度政府予算案と法案に盛り込まれている。 ○このほか、予算制約下で行われる2018年度診療報酬・介護報酬同時改定も視野に、安心と信頼の医療・介護の確保に向けた国会審議や世論喚起が重要。 ・利用者負担については、高齢者の生活や現役世代の介護と仕事の両立に深刻な影響を及ぼさないよう、検証しながら段階的に実施していくよう求める。 ・総報酬割化は、健保組合の運営が困難とならないよう措置を講ずるとともに、これにより捻出される財源を介護人材のさらなる処遇改善に充てることを強く求める。 ・介護療養病床の廃止後の新たな施設は「生活施設」であることを明確にし、積極的な移行の推進を求める。 ・市町村等へのインセンティブ付与については、保険者の運営と必要なサービス利用を阻害するものとならないよう求める。 介護保険を必要とする人が将来にわたって確実に利用し続けられる制度となるよう、法案審議について傍聴行動を行うとともに、チラシや動画の作成、街宣などを通じて世論喚起を行う。 2017年度 重点政策実現の取り組み方針(補強)(第16回中執確認(2017.1.19)抜粋)
2.医療保険における負担の見直し
◆高額療養費制度の見直しについて 高額療養費制度の見直しにより、医療費の自己負担の上限が引き上げられる。<政令改正> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
参考 出典:厚生労働省社会保障審議会医療保険部会(2016年9月29日)資料に連合が加工
◆後期高齢者の保険料軽減特例の見直し 後期高齢者の保険料軽減措置が段階的に廃止される。<予算措置> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
◆入院時の居住費の見直し 65歳以上の医療療養病床に入院する患者の居住費が引き上げられる。<予算措置> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
3.介護保険における負担の見直し
◆高額介護サービス費の見直し 高額介護サービス費の見直しにより、「一般」区分において介護保険の自己負担の上限額が引き上げられる。<政令改正> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
◆高額介護合算療養費制度の見直し 高額療養費の見直しにより、70歳以上の高額介護合算療養費についても70歳未満と同じルールが適用され、自己負担の上限額が引き上げられる。<政令改正> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
◆介護保険の3割負担の創設① 介護保険の自己負担3割の所得区分が新設される。<介護保険法等改正法案> 出典:厚生労働省資料
◆介護納付金における総報酬割の導入 現役世代の介護保険料について、加入者の賃金水準の高い被用者保険の負担を増やす総報酬割の段階的導入が行われる。<介護保険法等改正法案> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
◆介護人材の処遇改善 2017年度から介護職員1人当たり月額平均1万円相当の介護報酬の引き上げが行われる。 <介護報酬の臨時改定> 出典:厚生労働省資料に連合が加工
(医療・介護保険制度の見直し案などに対する談話(2016.12.22)抜粋) ◆医療・介護保険制度の見直しに対する連合の見解 (医療・介護保険制度の見直し案などに対する談話(2016.12.22)抜粋) ○消費税率の引き上げが見送られる中、医療・介護ともに、高齢者を中心に患者・利用者の自己負担や保険料の負担増を求める内容となっており、高齢者の生活や現役世代の介護と仕事の両立に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。また、介護報酬改定については、人材確保に向けてさらなる処遇改善の実行が不可欠である。 ○医療・介護保険制度の見直しについては、高齢者の高額療養費(医療)、高額介護サービス費、高額介護合算療養費の負担上限額の引き上げや、介護保険の自己負担3割の導入など、高齢者に負担を求める内容が多くなっている。連合が審議会で主張した年単位による高額療養費の負担上限額の新設は盛り込まれたが、負担増となる患者・利用者が今後も必要な医療・介護を受けられるよう、見直しの影響を丁寧に検証しながら、段階的に実施していくべきである。 ○政府は既に、2016~2018年度の3カ年で社会保障関係費の伸びを1.5兆円に抑えることを掲げている。2018年度診療報酬・介護報酬同時改定をはじめ、今後も給付抑制の圧力が高まることが予想される。連合は、誰もが住みなれた地域で安心して必要な医療や介護を受けることができ、また介護離職のない社会の実現をめざし、次期通常国会での2017年度政府予算案審議や介護保険法改正法案への対応を含め、世論喚起や政府・政党に対する働きかけを強化していく。
4.2016年年金改正法
◆2016年に成立した年金関連法
年金額改定ルールの見直し
◆年金額改定ルール①(65歳以降の賃金スライド停止2000年~) ■年金額改定ルールは幾度の変遷を経て、2000年改定以降、新規裁定者については現役世代の賃金、既裁定者については物価に応じて、毎年度改定される(ルール1)。 ■特例的なルールにより、賃金・物価がともにマイナスで、賃金の下落率が物価の下落率より大きい場合、新規裁定者も下落率の小さい物価下落率を反映させた年金額改定とし、また、物価がプラスで賃金がマイナスの場合には、年金額改定を行わないこととされている。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年10月15日)資料に連合が加工
◆年金額改定ルールの見直し① ■法案では、賃金下落局面において、物価が上昇する、または、物価が賃金ほど下落していない場合であっても、新規裁定者、既裁定者とも賃金下落率の分までマイナス改定することとされた。政府は、財政検証の前提条件に賃金・物価の下落局面を想定していないため、本制度改正の財政効果は示されていない。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2015年12月8日)資料に連合が加工
◆「2004年年金制度改革」以後の財政フレーム ■2004年改正により、基礎年金国庫負担割合が2分の1となり、将来の保険料率が固定され、この財源の範囲内で給付水準を自動的に調整することで給付と負担の均衡が図られる財政方式に変わった。 ■年金積立金が毀損した場合、マクロ経済スライドによる調整等により、現役世代及び将来世代の給付水準が低下することとなる。 出典:厚生労働省HP
◆年金額改定ルール②ー1(マクロ経済スライド 2004年~) ◆年金額改定ルール②ー1(マクロ経済スライド 2004年~) ■賃金と物価に応じた年金額改定に加え、2004年改正により、現役人口の減少や平均余命の伸びを年金額に反映させ、減額調整することとされた(マクロ経済スライド)。(ルール2) ■マクロ経済スライドは、将来の年金財政の均衡が見込まれるまで続けられるため、長期にわたり給付減額が行われる。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年10月15日)資料に連合が加工
◆年金額改定ルール②ー2(マクロ経済スライド 2004年~) ◆年金額改定ルール②ー2(マクロ経済スライド 2004年~) ■マクロ経済スライドは、憲法の財産権との関係などを勘案し、年金額を物価と賃金以外の要素で名目額を下回らないよう、歯止めがかけられている。(名目下限の維持) 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年10月15日)資料に連合が加工
◆年金額改定ルールの見直し②ー1 ■政府は、将来世代の給付水準の確保のため、マクロ経済スライドによる年金減額を強化する必要があるとしている。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2015年12月8日)資料に連合が加工
◆年金額改定ルールの見直し②ー2 ■法案では、賃金・物価が下落または十分に上昇していない局面を含めマクロ経済スライドをかけるため、賃金・物価の上昇局面にまとめて減額調整する仕組みが導入された。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2015年12月8日)資料に連合が加工
◆年金額改定ルールの見直しに対する連合の考え方 <現行の改定ルール> ■賃金・物価がともにマイナスで、賃金の下落率が物価の下落率より大きい場合、新規裁定者も下落率の小さい物価下落率を反映させた年金額改定とする。また、物価がプラスで、賃金がマイナスの場合には、年金額改定を行わない。 ■高齢者の生活の安定に配慮し、マクロ経済スライドによる改定率の調整は名目額を下限とし、調整によって年金額を前年度の額よりも引き下げることはしない <見直し案> ■賃金下落局面において、物価が上昇する、または、物価が賃金ほど下落していない場合であっても、新規裁定者、既裁定者とも賃金下落率の分までマイナス改定する。 ■マクロ経済スライドによる年金の名目下限措置を撤廃。賃金・物価上昇率が小さい場合、または、下落する場合、マクロ経済スライドを繰越し、賃金・物価が十分に上昇する局面に、繰越し分を調整するよう見直し。 【連合の考え方】 生活費の基礎的部分をまかなう給付水準を保持するため、基礎年金部分をマクロ経済スライドの対象から外すとともに低年金者対策を講じることが必要。 財政検証は、公的年金制度に対する信頼を確保するため毎年行い、経済前提(物価上昇率、賃金上昇率、長期金利、運用利回り)の設定にあたっては、時の政権の政策による影響を排除し、透明性、中立性を確保するため、客観的に検証する場とともに、拠出者である労使が参画して議論する場を設けるべき。
GPIFの組織等の見直し
◆年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2016年3月14日)資料に連合が加工 【連合の考え方】 ◆合議制による意思決定の導入には賛成するが、経営委員会(合議制機関)の構成員10名のうち、拠出者である労使の参画が各1名にとどまったことは、被保険者の意思の確実な反映という観点から、全く不十分。 ◆経営委員会の構成員には拠出者の代表を複数入れ、過半数が労使が占めることを基本とすべき。
◆(参考)諸外国の運用機関について 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2016年12月25日)資料に連合が加工
◆年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し ■ 運用のあり方について、①デリバティブ取引の方法を拡大、②コール資金の貸付等の運用方法を追加 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2016年1月28日、3月14日)資料に連合が加工 【連合の考え方】 ◆GPIF自らが株式に対して直接投資を行う、いわゆる株式のインハウス運用やオルタナティブ資産への直接投資の解禁等は見送りとなったが、施行後3年を目途とした検討規定が盛り込まれており、予断を許さない状況。 ◆デリバティブの規制緩和については、法令で利用目的をリスク管理に限定した上で、ガバナンスの強化をはかることが不可欠。さらに情報公開の徹底により、投機的な運用が確実に排除されなければならない。
◆GPIFのインハウス運用について ■GPIFの国内市場に占める株の保有割合は7.6%、その額は約32兆円であり、市場に与える影響は極めて大きい 公的年金 職域年金 公的年金の意義 社会連帯で助け合うしくみにより老後(退職後)の生活を支える <機能> 貧困予防・救済 所得再分配 経済安定・成長 社会・政治の安定 昭和60年に、公的年金制度が改正され、新しい年金制度が昭和61年4月からスタートしました。 従来の制度では民間サラリーマンは厚生年金保険、公務員などは共済年金に加入し、それ以外の自営業の人や自由業の人は国民年金に加入するというように、職場や職業によって異なった年金制度に加入するという仕組みになっていました。 それを、すべての国民を対象にする制度に改め、 昭和61年4月から民間サラリーマンや公務員も国民年金に加入することになりました。 その際、全国民に共通の基礎年金が支給されることとなりました。 従来の制度では任意加入だったサラリーマンの奥さんも、この新しい制度で国民年金に加入することになったのです。 これはいわゆる3号被保険者と呼ばれるものでのちほど詳しく説明いたします。 この改正により、民間サラリーマンや公務員は、国民年金に加入するのと同時に、これまで同様厚生年金保険や共済年金にも加入することになり、 国民年金からは基礎年金が、厚生年金保険からは報酬比例の年金が支給され、公的年金制度は今日の2階建て年金のかたちになりました。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2016年1月12日)資料に連合が加工 【連合の考え方】 ◆株式のインハウス運用は、国による民間企業支配につながる懸念大。この懸念が払拭されないなかで、株式のインハウス運用を認めることはできない。 ◆株式のインハウス運用には高度な専門性を有する事務局体制の拡充が不可欠。体制整備の費用を勘案すると、現状に対し大幅なコスト削減効果があるかは疑問
年金財政検証の結果と課題
◆2014年財政検証の諸前提① 2015年の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳で、前提条件を上回る伸びとなっている。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年6月3日)資料に連合が加工
◆2014年財政検証の諸前提② 2024年度以降、8ケースのいずれにおいてもインフレかつ賃金上昇基調を前提条件としている。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年6月3日)資料に連合が加工
◆2023年までの足下の経済前提(2014年財政検証) 足下の前提条件についても、同様にインフレかつ賃金上昇基調の前提条件が置かれている。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年6月3日)資料に連合が加工
【参考】 2005~2014年度の人口、物価、賃金、国内総生産(GDP) 2014年度までの10年間の諸条件の実績は、各前提条件を下回る水準で推移している。 合計 特殊 出生率 2005 年 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 1.26% 1.32% 1.34% 1.37% 1.39% 1.41% 1.43% 1.42% 出典:厚生労働省 2014年「人口動態統計月報年計(概数)の概況」をもとに連合が作成 出典:厚生労働省年金部会(2014年10月15日)資料に連合が加工 GDP 2005 年度 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 名目 1.0% 1.5% 2.2% ▲4.2% ▲4.3% 0.4% ▲1.4% 0.3% 2.7% 実質 2.4% 1.9% 2.0% ▲3.7% ▲2.6% 1.4% 0.3 % 2.5% ▲1.0% 出典:内閣府 平成19~28年度「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」の主要経済指標 をもとに連合が作成
◆2014年財政検証(所得代替率の将来見通し) 財政検証では、2004年「年金制度改革」の約束である所得代替率50%の維持は、現実離れした前提条件の下で達成できるとの結果が示された。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年6月3日)資料に連合が加工
◆2014年財政検証(経済の変動を仮定した場合) 経済変動があるため、物価、賃金の伸びが低い年度は、現行の仕組みではマクロ経済スライドがフルに発動しない状況を仮定。 出典:厚生労働省社会保障審議会年金部会(2014年6月3日)資料に連合が加工
◆年金財政検証の在り方についての連合の考え方 <年金財政検証の課題> ■5年に一度行われている年金財政検証は、前提条件が甘く、検証の役割を十分に果たせていない。 ■積立金運用に過大な期待がかけられる結果となり、ハイリスク・ハイリターン運用へのシフトとあいまって、受給者・被保険者の年金制度への信頼を高めるものとなっていない。 【連合の考え方】 (1) 政府は、財政検証の枠組みを以下のとおり見直す。 ①公的年金制度に対する信頼を確保するため、毎年財政検証を行うとともに、その結果を着実な制度改正につなげる。 ②経済前提(物価上昇率、賃金上昇率、長期金利、運用利回り)の設定にあたっては、時の政権の政策による影響を排除し、透明性、中立性を確保する。そのため、客観的に検証する場とともに、労使が参画して議論する場を設ける。