口の中をみる 常に口腔の健康管理を! 口腔ケアの充実 歯科 歯科疾患予防+誤嚥性肺炎予防+食支援 最期まで「口から食べること」を支えるために

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介護支援サービス(ケアマネジメント) 要援護者やその家族がもつ複数のニーズと社会資源 を結びつけること。 要援護者の生活の質を高めること。 保健,医療,福祉,住宅等の各種公的サービスだけ でなく,家族、ボランティア,近隣等の支援とも調整 し,在宅生活を支えていくもの.
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健診時血圧 160/100 以上 ⑨ 市町村主催の 健康教室等へ の勧誘 健診時血圧 160/100 以上 健診時血圧 160/100 以上 健診時血圧 160/100 未満 かつ未治療 のもの 汎用性の高い行動変容プログラ ム 高血圧対策(案)
実践編 次のような処方箋と簡単な患者情報とともに在宅訪問依頼が来 た。 さて、何を準備し、何をチェックし、どのように多職種と連携 をとることが求められるか。 ワークシートを参考に考えてみましょう。
肺炎高リスク者への口腔ケアの重要性と 技術向上を目指して
特別養護老人ホームさくら園 副施設長 金谷 龍太郎
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平成26年度 診療報酬改定への要望 (精神科専門領域) 【資料】
体重増加 短期間で 急に太った いつもと同じ食生活をしているのに… 定期的に運動をしているのに…
経管栄養の技術      及び関連するケア.
第3回はままつCDE研究会 アンケート集計結果
平成25年6月7日(金) 医療保健政策区市町村包括補助事業 台東区 口腔ケア連携推進事業 台東区健康部健康課.
歯の健康と歯科健診の受診について 〈6月4日は「虫歯予防デー」です〉 2012年6月 出光興産健康保険組合.
今回は、食育の一つである食欲についてお話します。
第228回灘区民健康講座   平成17年6月24日 義歯の管理について 灘区歯科医師会 谷岡 望.
疫学概論 診療ガイドライン Lesson 22. 健康政策への応用 §B. 診療ガイドライン S.Harano, MD,PhD,MPH.
退院後を支えてこそ 医療連携から地域連携へ
脳血管障害 診断・治療の流れ 診断と治療の流れ 問診・身体診察 緊急処置 一般検査 画像検査 治療 診断
高齢者の食事援助 高齢者の心身の特徴と食事.
喫煙と口腔の健康について 三重県・三重県歯科医師会.
汎用性の高い行動変容プログラム 特定健診の場を利用した糖尿病対策(非肥満を含む)
病院ならびに老健と外部医療機関との連携の実態と課題
高齢者の肺炎による死亡率. 高齢者の肺炎による死亡率 誤嚥のメカニズム 誤嚥は、脳卒中や全身麻痺、あるいは麻痺などの症状のない脳梗塞で、神経伝達物質の欠乏によって、咳(せき)反射や、物を飲み下す嚥下(えんげ)反射の神経活動が低下して起こる。
健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン(概要)
   世にも恐ろしい歯周病 11年2組1番 春名 暢.
汎用性の高い行動変容プログラム 特定健診の場を利用した糖尿病対策(非肥満を含む)
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1年目(28年度)の取り組みから そこで2年目(29年度)は 要介護状態が悪化している方の再発予防は難しい
こける(転倒) よろめく (バランス能力の低下) 入れ歯の問題 噛む力が落ちる 食いしばれない 歯がぐらぐらする 入れ歯を使用しない
高齢透析患者における口腔機能と栄養について
第2回 福祉の現在・現在 厚生労働省(2018) 障害者白書 厚生労働省(2016) これからの精神保健福祉のあり方に          関する検討会資料.
一般財団法人 仁風会 嵯峨野病院 在宅事業部長 川添チエミ
4.生活習慣病と日常の生活行動 PET/CT検査の画像 素材集-生活習慣病 「がん治療の総合情報センターAMIY」 PET/CT検査の画像
バイオフィルムを効率よく落とす方法として
医療法人社団 白木会 地域栄養サポート自由が丘 訪問管理栄養士 米山 久美子
『噛むこと・食べること の 重要性 』 八代歯科医師会理事  高野歯科クリニック院長   高野 明夫.
歯科健診で、 健康寿命を延ばそう! (健診概要)
各論1A【症例2】 訪問看護 1 痛みは緩和できているが寝たきり →本人の希望?ポート、カテーテルによる?
末期がん 【症例2】 ・口腔衛生不足 ・歯科疾患(う蝕・歯周病) ・口腔乾燥、口内炎、出血、 味覚異常など ・摂食嚥下機能低下
【「患者のための薬局ビジョン」における薬剤師・薬局の機能概要】
平成23年度 身体拘束廃止施設見学資料.
3DSセラピー + すずかけの木新聞 7月号 口腔内除菌療法 保健指導 当院では
天理市第1号訪問事業 (短期集中予防サービスC)について
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諌早市在宅ケアサークル口から食べる分科会 例会
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避難生活でも、お口の清潔を保ちましょう!
重症心身障害児者等 支援者育成研修テキスト 5 ライフステージにおける支援④ 学齢期における支援
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高齢慢性血液透析患者の 主観的幸福感について
フレイルとは すずかけの木通信H30.3月号 お口の健康の維持は 全身の健康に影響します。 健康な状態と日常生活で
肺の構造. 肺の構造 肺の間質とは? IPF(特発性肺線維症)とは? IPF患者さんの肺の画像(胸部X線)
子どもに対する 生活習慣病予防の 取り組み           健康情報分析学            三輪 夕起.
我が国の自殺死亡の推移 率を実数で見ると: 出典:警察庁「自殺の概要」
     【症例1:80歳女性】  独居、認知症、全盲 #生来による重度の視力障害(全盲) #アルツハイマー型認知症 #気管支喘息 20XX年 5月: ・同居していた兄を亡くし、その後は独居 ・療養環境は悪い(床にネコの餌が散乱、ハエ・ ゴキブリがいる) ・公的なサービスなど申請手続きができなくなり、
     【症例2:91歳女性】  認知症、胆管がん 20XX年 1月(90歳): ・アルツハイマー型認知症の疑い、骨粗鬆症、変形性膝関節症で近医にて加療 ・黄疸のため近隣の病院にて入院加療。胆管ステント留置し退院 ⇒加療が奏功し、全身状態は比較的安定 ・サービス付き高齢者向け住宅に入所し療養 ・廃用により体幹・下肢筋力低下。ほぼベッド上での生活。移動はストレッチャ型車いす.
細菌カウンタを使用した 自立支援に向けた個別口腔ケア
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先進予防医学共同専攻臨床疫学 臨床疫学とは 現在の取り組みと成果 研究材料・手法 未来のあるべき医療を見つめて改革の手法を研究します。 特徴
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在宅医療施策の取組状況と今後の展開(案)
模擬退院カンファレンス 退院後の療養計画立案を目指した模擬退院カンファレスを行いました。
糖尿病と口の中の健康 ★歯周病って何? ・歯を支えている周りの組織(歯ぐき)の病気です。歯周ポケットに細菌が入り込む慢性の感染症です。
南魚沼市民病院 リハビリテーション科 大西康史
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在宅 役割・準備・訪問   在宅における薬剤師の役割
個別に対応する口腔ケアシステムの ガイドライン作成 原 巖1)、喜久田利弘2) 1)医療法人恵光会 原病院 歯科・口腔外科
在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
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口の中をみる 常に口腔の健康管理を! 口腔ケアの充実 歯科 歯科疾患予防+誤嚥性肺炎予防+食支援 最期まで「口から食べること」を支えるために 口腔衛生管理 歯科 口腔ケアの充実 自立度の低下、全身的疾患の増加、加齢による口腔の変化・歯の喪失のリスク増加、治療の難度・リスクの増加(高齢者の歯科治療の内容の変化)に対応しなければならない。つまり、歯の形態の回復だけでなく、口腔機能の回復を中心とした歯科医療を通じて、食べる機能の回復や口腔衛生の維持に努めることで、基礎疾患の重症化予防および質の高い生活を支援することが求められる。その中で、歯科疾患予防・誤嚥性肺炎予防・食支援において、口腔健康管理という大きな枠組みの中で歯科専門職が行う、口腔機能管理、口腔衛生管理、また、日常ケアとして多職種と協働して行うことは不可欠である。 口腔機能管理 歯科疾患予防+誤嚥性肺炎予防+食支援 最期まで「口から食べること」を支えるために

口の観察ポイント 【入れ歯は、必ず外して観察する】 問題がある口腔内! 比較的きれいな口腔内 入れ歯の汚れにも注意! 口の中をみる  口の観察ポイント 口の中をみる 【入れ歯は、必ず外して観察する】 問題がある口腔内! 比較的きれいな口腔内 歯垢の付着部位として、歯と歯の間・歯と歯茎の境目・歯肉の退縮により露出している歯根面・残根の周り・入れ歯のバネがかかっている歯(鈎歯)・入れ歯自体(内面)、舌苔・口腔乾燥を伴う口蓋等を観察する。麻痺側は不潔になりやすいので注意が必要である。 入れ歯の汚れにも注意!

脳梗塞既往 【症例1】 ・口腔衛生不足 ・歯科疾患 (う蝕・歯周病・義歯不適合) ・摂食嚥下機能低下 ・咀嚼機能低下 →誤嚥性肺炎 繰り返す 歯科における予測課題 【症例1】 ・口腔衛生不足 ・歯科疾患  (う蝕・歯周病・義歯不適合) ・摂食嚥下機能低下 ・咀嚼機能低下 身体機能面での 着眼点  脳梗塞既往 →誤嚥性肺炎   繰り返す →体重減少 歯科の役割 ・口腔衛生管理 ・必要な咀嚼改善(咬合回復) ・摂食嚥下機能評価 ・口腔機能管理 ・適切な食事摂取方法への介入 歯科が注目する身体機能面の着眼点は、誤嚥性肺炎の繰り返しと体重の減少である。予測される課題は、口腔衛生不足に伴う歯科疾患及び摂食嚥下・咀嚼機能の低下であり、歯科の役割として口腔衛生管理、歯科疾患に対して咬合の回復を行う。さらに摂食嚥下機能評価に基づいた口腔機能管理・適切な食事摂取方法を指導する。

【症例1】 ・食事提供環境の悪化 ・口腔衛生不足 (口腔乾燥など) ・摂食嚥下機能低下 ・咬合力の低下(運動機能低下) 高齢夫婦 歯科における予測課題 【症例1】 ・食事提供環境の悪化 ・口腔衛生不足  (口腔乾燥など) ・摂食嚥下機能低下 ・咬合力の低下(運動機能低下) 生活環境面での 着眼点  高齢夫婦 →妻の介護力   低下 →多剤服用  残薬が多い →歩行困難 歯科の役割 ・適切な食事環境への介入  (多職種との連携)  ・口腔内残薬の確認(服薬方法の助言) ・口腔衛生管理 ・口腔機能管理 ・必要な咀嚼改善(咬合回復) 生活環境面での着眼点は、妻の介護力の低下、多剤服用、歩行困難である。予測される課題として介護力に低下また摂食嚥下機能の低下にともなう食事提供環境の悪化、口腔衛生不足、服用薬による口腔乾燥、咬合力の低下に伴う運動機能の低下が考えられる。歯科として口腔衛生管理・口腔機能管理を行い、多職種と連携しての適切な食環境への指導、服薬方法の確認、さらに咬合回復による運動機能改善について助言する。

【図2 入院肺炎症状における誤嚥性肺炎の割合】 肺炎について ○肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者。また、高齢者の肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎。 ○誤嚥性肺炎を引き起こす嚥下障害の原因疾患は脳卒中が約6割を占める、脳卒中の後遺症が誤嚥性肺炎の発生に大きく関係していることが示唆される。 【図1 肺炎患者の年齢構成】 【図3 嚥下障害の原因疾患の割合】  脳梗塞39,1% 75歳以上69,0% (%) 【図2 入院肺炎症状における誤嚥性肺炎の割合】 脳卒中 約6割 肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者である。また、高齢者の肺炎のうち、7割以上が誤嚥性肺炎である。誤嚥性肺炎を引き起こす嚥下障害の原因疾患は脳卒中が約6割を占め、脳卒中の後遺症が誤嚥性肺炎の発症に大きく関係していることが示唆される。(平成28年6月15日 第2回医療計画の見直し等に関する検討会より) 70,0%以上 くも膜下出血5,1% 脳出血12,2% 年齢(歳) 出典 図1:患者調査、図2:Teramoto,2008、図3:Yamawaki,2012 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎以外 平成28年6月15日 第2回 医療計画の見直し等に関する検討会 資料2より

要介護者に対するいわゆる口腔ケアの効果 全国11特養施設の入所者366人を対象に、「口腔ケア群(184名)」には介護者による毎日の食後の歯ブラシ・1%ポピドンヨードの洗口+Dr・DHの周1~2回のPMTCを、「対照群(182名)」には本人介護者による従来の口腔清掃をそれぞれ実施した。2年間調で、肺炎の発症リスクは1,7倍高いことが証明された(2001年:日歯医学会誌)。 本人または介護者による歯ブラシを中心とした口腔清掃が有効であり、口腔清掃の自立に向けた援助、習慣化、巧緻性を踏まえての指導は必要である。それに加えての歯科医師もしくは歯科衛生士の専門的・機械的な口腔清掃を行うことはさらに有効である。

(要介護者に対する義歯治療6か月後の体重と血清アルブミン値の変化) 訪問歯科診療による全身状態への影響 (要介護者に対する義歯治療6か月後の体重と血清アルブミン値の変化) 療養型医療施設入院患者で、アイヒナー分類(咬合支持域の分類)のC群(上下奥歯の接触がなく、咬合が不安定な状態)に該当する85名(平均年齢85.2歳)に対して、義歯治療を行って義歯を使用した者(義歯使用者)と義歯治療を行っていない者(義歯不使用者)の6か月後の体重及び血清アルブミン値を測定  体重の変化 血清アルブミン値の変化 N=85 N=85 (kg) (g/dl) * * * * * * * 中医協資料からは、義歯などで口腔機能を改善することによって、栄養状況も改善するエビデンスが示された。 * :P<0.05 * :P<0.05 C1    C2    C3   計     C1    C2    C3   計 (参考:アイヒナー分類) C1:上下顎に残存歯がある(すれちがい咬合)  C2:上下顎のうち片顎が無歯顎  C3:上下顎とも無歯顎 C群に該当する者のうち、義歯使用者は義歯不使用者に比べて、体重や血清アルブミン値が、それぞれ有意に増加している。 出典:「健康長寿に与える補綴歯科のインパクト(2012日本補綴歯科学会雑誌 397-402)」

食事場面の観察ポイント 姿勢・食形態・食べ方(一口量とペース) 介助方法・むせなどに注意! 食環境 ・食事の雰囲気 ・食事姿勢の確保 食事をみる 食事場面の観察ポイント  姿勢・食形態・食べ方(一口量とペース)  介助方法・むせなどに注意! 食環境   ・食事の雰囲気 ・食事姿勢の確保             ・食具、食器の選択 食事内容   ・食形態 ・とろみ調整の状態など 食事介助方法 一口量、ペース、口からのこぼれ 口腔内の食物の残留 咀嚼運動の状況、義歯の具合 嚥下の状態、むせ、咳き込みの状態 食事時間と摂取量(食物、水分) 疲労度など 摂食嚥下・咀嚼機能などの口腔機能を評価するためには、食べるところをみることから始めることが大切である。昼食の時間などに訪問し食事場面を観察することで、口腔機能や食事にかかわる問題などをチェックする。口から食べることは、重要な生活機能であることから、ICF評価が大切で、残存する摂食嚥下・咀嚼機能に適した食形態や食環境調整、介護力、介護量などの環境因子、そして食べるものの好みや希望などの個人因子が、生活の場での食支援の背景因子として大きく影響する。