2011 行動分析学特論(7) 対人援助における プロアクティブな対応の具体的内容  「自己決定」を援助する状況.

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2011 行動分析学特論(7) 対人援助における プロアクティブな対応の具体的内容  「自己決定」を援助する状況

この単元の目標 プロアクティブ(前進的)な対応の意味を表明できる 対人援助におけるコミュニケーションの方向性を区別し、   「当事者から周囲に向けての回路」を、具体的設定として確保できる   ・ 「他立的自律」: 自律と自立を区別した上で、自己決定(自律)を、援助つき(他立)で成立させることが可能であることを、以下の2つの場面で実現できる   1)最重度の障害を持つ個人が、自分で行動を選択する 2)「要求言語行動(mand)を成立させるための条件設定ができる。

被援助者の「自己決定」を実現するための支援はどのようにすればよいか? 「自己決定」とはどういうことか? 被援助者の「自己決定」を実現するための支援はどのようにすればよいか? http://www.psy.ritsumei.ac.jp/~mochi/14-Mochizuki(1998-1999).pdf 上記の連載の、⑥~⑩に当授業の詳細あり。

自己決定? 「やあ、いらっしゃい。 飲み物は何にしますか?」 ロビンソン・クルーソーが、晩飯に 蟹かタコかを選ぶ場合と同じか?

援助つきでも自己決定あり 立 単独遂行 援助つき遂行 律 自己決定 (選択) 自立的自律 他立的自律 自立的他律 他立的他律 他者指示 単独遂行   援助つき遂行 律 自己決定 (選択) 自立的自律  他立的自律 自立的他律  他立的他律 他者指示 事例:最重度の身体・知的障害のある生徒の 電動車椅子の運転の

http://www2. asahi. com/olympic2008/gallery/view_photo. html http://www2.asahi.com/olympic2008/gallery/view_photo.html?paralympic/TKY200809170113.jpg

「他立的自律」という目標設定 Lim Hyunjong・坂明恵・丹生卓也・中鹿直樹・望月昭(2009) 「重複障害児における電動車椅子の操作スキル獲得によるQOLの向上に関する考察」.  日本対人援助学会第1回大会  発表ポスターセッションWEB論文.15. http://humanservices.jp/pdf/15imu.pdf 目的:進行性の障害のある生徒に、電動車椅子での移動によるridingの楽しみを実現したい

自立=自律 ではない。 援助つきの自律(他立的自律:援助がありながら好きなところに移動)による「できる」(行動)の成立を。 ●先生: この子が、ひとりで電動車椅子を使えるようになったら、どこへ行ってしまうか。そんな危ないことの指導を依頼した覚えはない ●学生: え!! 自立=自律 ではない。 援助つきの自律(他立的自律:援助がありながら好きなところに移動)による「できる」(行動)の成立を。 望月昭 他(編著:2010):「対人援助学の可能性」福村書店、第1章参照

自己決定への支援とは 1)障害のある個人に対して、選択機会と選択肢を用意する(援助設定) 2)そこでの選択行動の成立について過不足ない援助をする (援助設定+教授) 3)本人によって選択された内容の    実現について援助・援護をする

対人援助のキモですな。 Service 本人(ご主人様の)好きな方向へ打てるように

「自己決定」:指定者や援助者など,他者の存在や,その指定によって選択するのではなく,あくまでも選択肢の内容によって選択している事態(Goldiamond, 1970) 「自己決定ができない」という場合 ・他者の「指定無し」で選択肢を選択した場合,あるいは「指定とは違う」選択肢を選択した場合には,選択後に当該行動が十分に成立しなかったり,罰を受ける経験が多いという経験を経た結果である可能性はないか?

援助者が「指定」する選択肢を選んだ場合の方が 強化を受ける率が高まる →「指定」が弁別刺激 選択肢A,B,C 援助者 「Aが良いよ」 選択  A 選択後に も援助あり 選択肢A,B,C 援助者 「・・・・」 選択  B 選択後に 援助なし 「自己責任」 もしこのような事態が多ければ・・ 援助者が「指定」する選択肢を選んだ場合の方が 強化を受ける率が高まる →「指定」が弁別刺激

「自己決定」で、もうひとつ忘れてはいけないこと。 対人援助の大前提:正の強化で維持される行動の選択肢が拡大していくための援助作業の一環である そのような前提の上で,「援助者」は,本人の決定について,過不足ない援助をする必要がある。 *単に「選べればいい」というものではないのだ!

産地直送の(過不足ない)自己決定の援助 The proposal is to develop our sensitivity to the various forms of communication used by people with severe disabilities so that we may do more of what they want and impose on them less of what we assume they want or want them to want. Baer, D. M. (1998): Commentary: Problems in Imposing Self-Determination. JASH, 23(1), 50 - 52.  

産地直送の(過不足ない)自己決定の援助 The proposal is to develop our sensitivity to the various forms of communication used by people with severe disabilities so that we may 彼らが望むことをするand彼らが望むと推測されることや、望むことそのものを押しつけないようにする。 Baer, D. M. (1998): Commentary: Problems in Imposing Self-Determination. JASH, 23(1), 50 - 52.  

従来の「心理学」などのアプローチとの違い 「知る」から「聴く」 ●従来はある個人の行動を法則を見つけ予測しようとする。つまり、本人が何が好きかを予測(推測し)与える のではなく(less of what we assume they want)            ●ある個人が、その時点で何を要求するかを聞き取ろうとする( do more of what they want )。 → 「予測を目的とせず」その時点,時点で  行動選択(選択行動)の機会を保証する

選択肢を押しつけない選択機会は、具体的にはどのように設定すればよいか? impose 選択肢を押しつけない選択機会は、具体的にはどのように設定すればよいか? 否定選択肢設定の導入について

選択肢提供者の予想を「裏切れる」選択肢 Choice option 1 Choice option 2 Rejection

「選択肢否定」は要求言語行動の機能の 条件でもある。(要求していないものが供給された場合に,「違います」という 否定の反応が出るか) Choice option 3 Choice option 4 Rejection

…..less of we want them to want 既存選択肢(選択機会自体)からの離脱 …..less of we want them to want 長期にわたる施設生活 聴覚障害の疑いあり JASH(1995) Nozaki & Mochizuki 食事・水分制限あり

Option 1 Option 2 Option 3 Rejection Nozaki & Mochizuki (1995)

      この研究で示されたこと 1)最重度の知的障害のある個人でも、その個人に   合わせた選択設定を準備すれば選択表明を行える 2)既存選択肢を「おだやかに」拒否する選択肢の   設定を行うことも可能 3)設定のみではなく、教授機会ももちろん必要 4)「本人の好きなものを」のではなく   「選択機会を常に提供すること」が重要        そして、さらに 5)本人に選択を任せても過剰(逸脱的)にはならない   (ウーロン茶の例)  過剰・逸脱:選択機会や選択肢内容の貧困から(?) 6)本人の属性的な障害性(聴覚障害/無力症状)も   選択できる「やりたい行動」の経験によって軽減  

応用行動分析学のから自己決定を考える 1.「自己決定」は、単独で行う行動ではない 2.何より選択後のフォローが大切 3.好きな物を見つけようとするのではなく「自由に」選択できる機会の設定とは違う。 4.自由:今出来ることは、選択肢の拒否の選択肢設定

選択肢の拒否とは これは、「要求言語行動」(mand)の機能をチェックする手続きとも共通する(Yamamoto and Mochizuki, 1988) 当授業での「その6」参照 さらに、ルーティーンの選択の中で、自らが新しい環境の選択肢拡大について提案するというのは、まさに「行動的発達」ともいえないか? 行動の選択肢の拡大=「発達」(生涯発達もあるよ) 社会共同的な行動である。

要求言語行動(マンド:mand) 確立操作 「みず!」 水の提供 弁別刺激 先行状況 反応 後続事象 強化 (激しい運動) (ポットを持つ人) 反応:強化内容を「聞き手」に特定

マンドの教授の小史 1)タクト(命名)ができれば、欲しい時に、それを使って言えるだろう 2)模倣の能力があれば、そこから教える   マンド・モデル法 3)機会利用型学習法   言語行動の獲得時にも、要求物品や対応(強化刺激)と確立操作(先行状況)との 対応を重視する。

要求言語行動 「教える?」「成立させる?」 1970代から始まる「要求言語行動」(mand)の研究。  ●行動分析(内)キーワード:  般化(generalization),  機会利用型学習法( incidental teaching),  確立操作(establishing operation ) ●「対人援助」の文脈からのキーワード: ノーマリゼーション(Normalization)、 自己決定(self-determination)、生活の質(QOL)、   他立的自律(supported autonomy) 、

要求言語行動を「教える」 ●確立操作(Establishing Operation) ①お使い技法(「**もらってきて」)   ①お使い技法(「**もらってきて」)    ②欠品充足技法(カレーがあるのにスプーンがない)   ③選択肢提示技法(メニューを見せる) ●要求言語行動の「反応形態を作る」   反応形態の種類:音声、手話、シンボル、   選択肢への「指さし」

●獲得した反応形態がマンドの機能を 持っているかの検証方法 ●獲得した反応形態がマンドの機能を   持っているかの検証方法 その反応が特定の強化刺激で強化されているか?   確立操作-反応-強化刺激 上記三者の間の関連が存在しているか?

実践例:「聴覚障害+知的障害」を持つ成人における居住施設における要求言語行動の成立 VTR:1985~1997 1)書字とサインモードを用いたマンドの獲得 2)日常での維持のための環境設定(援助) 3)書字(アイコン)とサインによる複数     モードの表出手段の獲得 4)2つのモードによる言語行動の獲得

障害のある個人に要求言語行動(マンド)を成立させる為のアプローチに含まれる 2つの援助: 1)言語行動を「形態」ではなく「機能」として捉えることで、「援助」すること 2)さらに、要求言語行動(マンド)という「環境変更」を伴う社会行動を 「援助」すること

1)通常の「形態」にこだわらず(障害のある) 個人が、今、できる形態を用いて「機能」 を成立させる。   個人が、今、できる形態を用いて「機能」   を成立させる。 正の強化で維持される行動の選択肢が絶えず 複数存在する状態の実現 本人の得意な物を選択 口話:「みず」 サイン:「ミズ」 書字:「みず」 アイコン選択 確立操作 弁別刺激 強化(水)

2)要求言語行動(マンド)という「環境変更」を伴う社会行動そのものを「援助」するということ ●要求言語行動の機会を設定する   →機会の設定(援助)、機会の    環境への常駐の要請(援護) ●要求内容について実現する   →個人的要求の機会の増大

訓練のダイアグラム

マンドの行動連鎖の訓練過程

訓練のタイムスケジュール

般化促進のための 教授・援助設定 日常→訓練の場へ 教授設定 援助・援護設定 訓練→日常

日常への般化を促進するための援助・援護 1)訓練場面で有効であった弁別刺激の   日常への定着      「**さん、なあに?」 2)職員や他の利用者の手話の獲得

日常での般化の過程

日常での般化の過程(絶対数)

手話の本:環境成員の手話の獲得のために

知的障害のある成人の手話獲得過程(Nozaki, et al. 1991)

どれだけ日常で手話が使われたか? Nozaki, et al., (1991) 野崎(1997)「応用行動分析入門」

誰がどんな「機能」の手話を表出したか? Nozaki, et al., (1991) 野崎(1997)「応用行動分析入門」

  要求言語行動の成立のむずかしさ ●「機能」と「形態」の区別の無理解 ●反応形態の差異に対する周囲の無理解(「能力問題」として捉えられる) ●従来の、援助者と被援助者の伝統的な関係性(措置、指導療育的な態度・伝統) ●個別個人における要求充足に対応する「資源」の配置の限界

課題 「ことば」は、いったん習ったら身につくものか? 障害のある個人に対する「要求言語行動」の成立に関する実践・研究の持つ意味を対人援助の文脈から述べよ。 QOLと要求言語行動の関係について述べよ。