© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 労働市場の均衡とその応用 内生変数と外生変数 プライステイカーの経済主体にとっては、自分自身の消費や生産、雇用量などを決める際、価格は外生変数である。 一方、市場の需要と供給が一致するような価格決定のモデルにおいては、価格は内生変数である。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
個別経済主体にとっての外生変数と市場での内生変数 プライステイカーである個別企業・個別消費者にとっては、価格は外生変数。 個別の企業や個別消費者の需要や供給を足し合わせた市場の需要曲線・市場の供給曲線で需給を均衡させるように価格が決まるモデルにおいては、価格は内生変数となる。 参考:北坂「マクロ経済学・ベーシック」、有斐閣ブックス、第2章 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 例1:個別経済主体の最適化モデル 労働需要(個別企業の最適化) 企業が労働者を雇うとき、賃金率(たとえば時給)は、市場で決まったものを企業が受け容れる(プライス・テイカー、賃金は外生変数)。雇用量は、企業が最適と考える量を需要する(雇用量は、企業の最適化問題の中での内生変数)。 労働供給(個別労働者の最適化) 時給は市場賃金を受け容れる(自分では変えられない、外生変数)。労働時間(数量)は、自分で自由に決める(個人の最適化問題の中では内生変数)。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 例2:市場均衡のモデル 均衡条件は、需要と供給が等しくなる、というもの 需要と供給を等しくするために、価格が伸縮的に調整する(価格は内生変数)。 価格調整により、需給の調整が生じる。市場の需要量、市場の供給量は、内生変数。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. この章で扱うモデル この章では、価格(賃金)は内生変数である、市場均衡のモデルを考える。しかしその際、個々の経済主体はプライステイカーなので、価格を外生変数として、労働供給量や労働需要量を決めていることに注意。 北坂「マクロ経済学・ベーシック」には、マクロ経済学の基礎的モデルについて、内生変数と外生変数に関する優れたまとめがあり、参考になる。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 需要と供給 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 労働需要の考え方 労働需要・・・企業の利潤最大化から導かれる。 限界生産物の価値=賃金 P×MPL=w P:生産物の価格、MPL:労働の限界生産性、 w:賃金 ・なぜか? これが成立しないときには、企業は雇用量を変化させることによって利潤を増やすことができる。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 労働供給の考え方 労働供給は、個人(消費者)の効用最大化から導かれる。 賃金=労働の限界非効用 これは単純化された扱い。もっと厳密な扱いは、労働供給の議論の際に行う(2財モデルで、予算制約のもとで効用を最大化する個人を考える)。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 効率的な労働力の配分 効率的な配分 ☆限界生産性価値=労働の限界非効用 となる配分(雇用量)が効率的 (なぜか?) ☆競争市場均衡は、上記の配分を達成する。 (賃金がそれぞれと等しくなる) したがって、競争均衡は効率的である。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 社会保険料の転嫁・帰着 社会保険料とは、年金・健康保険・雇用保険などの強制的保険に労働者が加入するときに、企業や労働者が支払う保険料のこと。 加入については、いろんな議論があるので、注意。たとえば、「年金未加入」など。 とりあえずここでは、社会保険料が負担(=税金)であるとして議論を進める。実際には、給付の価値を考える必要がある(が、それはここでは単純化のため、無視する。) 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 社会保険料がかかるということは? 労働に税金が課される。つまり、企業が賃金として支払ったもののうち、一部は労働者の手取りとして渡らず、国庫などに納められる。 労働者の受取額=企業の支払額-税金 このことは、労働市場の均衡にどのような影響を与えるのか? 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 税金と市場均衡 税金のかからない世界では、労働者と企業の受取額は等しい。つまり、企業の支払ったものは、すべて労働者のポケットに入る。 税金がかかると、そこに、「税のくさび」が入る。 日本の社会保険料については、収入の15%というように、割合で課されることに注意(従価税と呼ぶ)。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 均衡の作図 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
企業と労働者の負担割合 (無税の場合の均衡と比較) 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. 前頁の図について (前頁の図は多少矢印の位置がずれているかもしれないので注意。) 負担割合は、弾力性の逆数の比率で決まる。 弾力性の高い主体ほど、負担割合が小さい。 このことを式で示すと?(プリント) 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. プリントの結果のまとめ 負担割合は、弾力性の逆数に依存する。折半とか、労働者負担とか、企業負担とかいう名目の割合には意味はない。 実際には、名目賃金が調整し、弾力性の逆数に応じた負担割合を、均衡で実現するようになっている。 法学者と経済学者の“見解の相違”。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. まとめと復習(1) 外生変数と内生変数の違いを説明しなさい。 労働需要と企業の利潤最大化の関係、労働供給と消費者の効用最大化の関係を説明しなさい。 個別企業の労働需要曲線と市場の労働需要曲線の関連を説明しなさい。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. まとめと復習(2) 需要・供給の価格弾力性の定義を確認しなさい。 課税によって企業の支払い賃金、労働者の受け取り賃金、雇用量がどう変化するかを、式および図の上でそれぞれ確認しなさい。 課税の効果と弾力性の関連を確認しなさい。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.
© Yukiko Abe 2008 All rights reserved. まとめと復習(3) 授業で扱ったケース(従価税)と異なり、1時間の労働に200円の税金が課されるケースを考えよう(従量税)。 (1)この場合の均衡の条件を導出しなさい。 (2)この場合の均衡の図を作図しなさい。 (3)従価税と従量税はどこが異なるかを説明しなさい。 5月1日版 © Yukiko Abe 2008 All rights reserved.