コンクリートの強度 (構造材料学の復習も兼ねて) コンクリート工学研究室 岩城 一郎
強度の種類 圧縮強度 引張強度 曲げ強度 せん断強度 付着強度 疲労強度等々
圧縮強度 コンクリートの強度の中で最も重要 コンクリートは圧縮に強く,引張に弱い(引張強度は圧縮強度の1/10程度) →コンクリートは一般に圧縮部材(圧縮力に対して抵抗する部材)として利用(引張力に対する抵抗は無視) 圧縮強度の測定が一番簡単であり,ばらつきも少ない.
圧縮強度に影響を及ぼす要因 供試体の形状 コンクリートの配合(W/C) 養生条件 材齢 載荷方法等 →一定の試験方法が必要(JIS)
供試体形状 圧縮強度試験用供試体(JIS A 1132):(我が国では)直径の2倍の高さをもつ円柱(例えば,φ15×30cm,φ10×20cm) 立方体(英,独他:一辺150mm)>円柱供試体(米,仏,日他)(約25%増):拘束による影響 三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
水セメント比(セメント水比) コンクリートの圧縮強度f’cは水セメント比W/Cが小さいほど(セメント水比C/Wが大きいほど)大きくなる. f’cとC/Wの関係:f’c=A+B・C/W(あるC/Wの範囲において直線関係).
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社 養生の影響 コンクリート強度に及ぼす養生の影響:大. 湿潤養生(水中養生)≒封かん養生>>気中養生 温度が高いほど早く強度が出る.長期の伸びは乏しい. 三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社 コンクリート便覧,技報堂出版
試験方法の影響 供試体の高さと直径との比(h/d) 大→強度 小 供試体の寸法 大(h/d=2.0:const)→強度 小(弱点の存在する確率,φ600mm以上で頭打ち) 載荷速度 大→強度 大 含水状態 高→強度 小 試験条件を一定としないと 圧縮強度の値に様々な要因 による影響を含むため,正しい 判断ができない! →規格に従うことが重要!! 三浦尚著:土木材料学(改訂版), コロナ社
その他の影響 モルタルと粗骨材との付着強度:砕石(フレッシュ性状 劣)>川砂利 モルタルと粗骨材との付着強度:砕石(フレッシュ性状 劣)>川砂利 空気量 多→強度 低,AEコンクリート(ワーカビリティーが改善されることにより相殺) 骨材最大寸法 大→強度 小(表面積,付着と関係):ワーカビリティーの改善効果と相殺
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社 設計基準強度とは? 設計基準強度f’ck:設計の基準となる強度, 標準養生(20℃水中養生)を行ったコンクリート円柱供試体の材齢28日における圧縮強度. 適切な養生が行なわれれば, 標準養生を行なった材齢28日の圧縮強度f’ck ≒構造体の最終的な圧縮強度 三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社
設計基準強度の概念 f'ck:試験値のばらつきを考慮したうえで,大部分の試験値がその値を下回ることのないことが保証される値 コンクリートの圧縮強度のヒストグラム:正規分布で近似可能→圧縮強度試験値の平均値(平均値:添字のm):f'cm f’cm=f’ckとすると,確率50%でその値を下回る.→危険!圧縮強度試験値の最小値をf’ckとすると,その値を下回る確率は0%に近い.→不経済! 設計基準強度を下回る確率を5%とする.分布形を正規分布とする. f'ck=f'cm-kσ=f’cm(1-kδ) ここで,k:正規分布表から求まる値,5%の場合k=1.64,σ:試験値の標準偏差,δ:試験値の変動係数,δ=σ/f’cm 例えばδ=0.1(10%)とすると,f’ck=f’cm(1-1.64*0.1)=0.836*f’cm
設計基準強度と配合強度 多くの測定結果(例えばN=100)より表した圧縮強度のヒストグラム:平均値をピークとし,左右対称に両裾に広がる分布 正規分布により表現可能 設計基準強度f’ck:コンクリート構造物の設計において基準とする強度.構造物の設計時に,コンクリートが保有していると仮定される強度(一般に圧縮強度で表される) 配合強度f’cr:コンクリートの配合設計において目標とするコンクリートの平均強度(一般には材齢28日における圧縮強度の平均値f’cm).一般に,強度試験の試験値が設計基準強度を下回る確率が5%以下となるように決定される.
三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社 引張強度 弾性体の円板に直角方向の集中荷重を載荷→割裂引張強度(≒直接引張強度) 引張強度ft=0.27√f’c,f’c=30MPaのときのft? 三浦尚著:土木材料学(改訂版),コロナ社