建築環境工学・建築設備工学入門 <空気調和設備編> <空気調和設備> 加 湿 [Last Update 2015/04/30] 加湿
加湿方式の原理 蒸気加湿 水加湿 加湿方式は蒸気加湿とを気化熱と水加湿に大別される。 空気 熱交換器 蒸気 ドレンと蒸気 蒸気加湿 .5 蒸気噴射型加湿器 蒸気噴霧 ノズル 蒸発 加熱により蒸気をつくり、その蒸気で加湿する。 ⇒空気の温度変化はない 加湿方式は、大きく蒸気加湿と水加湿がある。 水加湿は、蒸発する場所の違いで水噴射と気化に分かれる。 水加湿 空気 ノズル 蒸気 水滴 水噴霧加湿 ⇒水の中の不純物は 空気中に拡散 空気中で蒸発 水滴 充填材 排水パン 給水 滴下式加湿器 空気 加湿空気 加湿方式は蒸気加湿とを気化熱と水加湿に大別される。 蒸気加湿は加熱により蒸気を作り、その蒸気で加湿するので、空気の温度変化は無いと考える。 水加湿は、空気との接触で空気の熱を気化熱として利用し加湿する。そのため空気の温度は低下する。 さらに、水加湿は、蒸発する場所の違いで水噴霧加湿と気化加湿に分れる。 水噴霧加湿は、空気中で水が蒸発し、水の中の不純物は空気中に拡散する。 気化加湿は、物の表面で蒸発し、水の中の不純物は多孔質の表面に付着する。 空気との接触で、空気の熱を気化熱として蒸発に利用し、加湿する。 ⇒空気の温度は低下する 多孔質材 蒸気 空気 ⇒水の中の不純物は 多孔質の表面に付着 物の表面で蒸発 気化加湿
加湿方式と加湿空気の状態変化 x5 x6 ⑤加熱 t5,x5 h5 ⑥加湿 t6,x6 a.水噴霧加湿: u (水の比エンタルピ) t5,x5 h5 b a c ⑥加湿 t6,x6 a.水噴霧加湿: u (水の比エンタルピ) と平行に変化 b.蒸気加湿 u (蒸気の比エンタル ピ)と平行に変化 c.気化加湿器加湿: u (蒸気の比エンタル ピ)と平行に変化し、 更に水面からの顕に より温度上昇 空気線図上の状態点⑤から⑥に空気の状態 が変化する時、熱水分比 u は定義により、 以下の式となる。 U = Δh/Δx = (h6-h5)/(x6-x5) 空気線図(h-x線図)は斜交軸となっているが、 軸にエンタルピーh と絶対湿度をとってあるので、熱水分比uは、⑤と⑥を結ぶ線分の斜交軸でのこう配を表わす。 したがって熱水分比が与えられると、空気の変化の方向は決まり、この方向が、空気線図の左上の基準点と、熱水分比目盛りとを結ぶ方向として与えられる。 水噴霧加湿の場合、いま、水のエンタルピーhwとすると、⑤加熱空気から,熱水分比u = hwに平行な線を引き、この線とx6=x5+L/G の交点が⑥加湿空気の a点となる。 なおL[kg/h]は媒体の量、G[kg(DA)/h]は供給風量である。 蒸気加湿の場合は、同様に、蒸気のエンタルピーhvとすると、⑤加熱空気から,熱水分比u = hvに平行な線を引き、この線とx6=x5+L/G の交点が⑥加湿空気の b点となる。 パン型加湿器による加湿の場合、 加湿パン内の水を電気ヒータなどで加熱して、水表面から除きを発生させて加湿するで、加湿と同時に高温の水面から顕熱移動によって、空気温度が上昇する。 近似的には、熱水分比u が加湿器内水温での飽和水蒸気のエンタルピーhhvに等しくなるように変化するが、厳密には水面からの加熱の影響でやや空気温度が上昇し加湿空気の c点となる。 状態点⑤から状態⑥に変化する時、熱水分比 u は以下の式となる。 u = Δh/Δx = (h6-h5)/(x6-x5) 軸にエンタルピ h と絶対湿度をとってあるので、熱水分比uは、⑤と⑥を結ぶ線分の斜交軸でのこう配を表わす。 したがって熱水分比が与えられると、空気の 変化の方向は決まり、この方向が、空気線図の 左上の基準点と、熱水分比目盛りとを結ぶ方向 として与えられる。 この線と x6 = x5+L/G の交点が⑥加湿空気の状態点となる。なお L [kg/h] は媒体の量、G [kg(DA)/h] は供給風量である。
蒸気加湿と水噴霧加湿 u = hv x6 dt/dx = 0.083 dt/dx = 2.44 x5 u = hw dh = dx dh = dx x6 ⑥加湿 t6,x6 もう少し詳しく説明すると、加えられる媒体が持つエンタルピーにより空気の温度は決まってくる。 いま、水のエンタルピーha、蒸気hb、温水hcとすると、⑤加熱からそれぞれ,熱水分比u = ha、u = hb、u = hcの線と平行に通る線を引き、この線とx6=x5+L/G の交点がa、b、c点 となる。なおL[kg/h]は媒体の量、G[kg(DA)/h]は供給風量。 蒸気加湿の場合 加湿される空気に外部から蒸気の持っているエンタルピーが加わることになる。比エンタルピーhkJ/kgの蒸気1kgが空気中に入ると、空気中での水分が1kg増え、またエンタルピーがhkJ増えることになるので、熱水分比dh/dxは加湿蒸気の比エンタルピーhとなる。これを空気線図上に示すと図のようになる。 また、例えば蒸気圧力50kPa(ゲージ)(エンタルピー2 693 kJ/kg、温度111.5℃)の蒸気を温度20℃の空気中に吹き込んで加湿すると、蒸気の温度は20℃まで下がり、そのときの蒸気の比エンタルピーは2609 kJ/kgなので、比エンタルピーの差も分だけ空気を加熱することになる。絶対湿度を1 g/kg(DA)上昇させたことによる空気の温度変化は、 Δt=1×10-3×(2 693-2609)/1.006=0.083 1.006は空気の比熱 kJ/(kg・K) すなわち、絶対湿度を1 g/kg(DA)上昇させたとき、空気の温度は約0.1℃しか上がらず、実質的には空気温度は変化しないと見なすことができる。 水噴霧の場合 ある温度の水を噴霧すると、空気中に気化した水分はその温度の水のエンタルピーを外部から空気中に持込むことになるので、蒸気加湿の場合と同様に空気中の熱水分比dh/dxは水の比エンタルピーになる。例えば10℃の水の蒸発熱は2454 kJ/kgなので、絶対湿度を1 g/kg(DA)上昇させた場合、空気の温度変化は以下の式で求まる。 Δt=1×10-3×2 454/1.006=2.44 (K) すなわち、絶対湿度を1 g/kg(DA)上昇させたとき、空気の温度が2.44℃下がる。 水噴霧加湿では、空気の持っている熱を利用して水を蒸発させているので、断熱変化(等エンタルピー変化)と勘違いされることがしばしばあるが、上で述べたように外部からあるエンタルピーを持った水が空気中に入り込むので、全体としてエンタルピーは増すことになる。熱水分比 u = dh/dx = hwと平行に変化する。 比エンタルピー h とすると、⑤加熱からそれぞれ,熱水分比 u = h の線と平行に通る線を引き、この線と x6 = x5 + L/G の交点が⑥加湿となる。 なお、L kg/h 媒体の量、G kg(DA)/h は風量。 ■蒸気加湿 蒸気圧力50kPa、比エンタルピー2 693 kJ/kg、温度111.5℃の蒸気を温度20℃の空気に吹き込み加湿すると、蒸気は温度20℃、蒸気比エンタルピー2609 kJ/kgとなり、比エンタルピーの差分だけ空気を加熱する。 絶対湿度を 0.001 kg/kg(DA)上昇させた際の空気の温度変化は、 Δt = 0.001×(2 693-2609)/1.006 = 0.083 ℃ 1.006:空気比熱 kJ/(kg・K) となり、0.1℃も上がらず、温度は変化しないと見なせる。 なお、 u = dh/dx = 2693 の傾きでの変化となる。 ■水噴霧加湿 10℃水の蒸発熱 2454 kJ/kgとすると、絶対湿度を0.001 kg/kg(DA)だけ上昇させた場合、空気の温度変化は、 Δt = 0.001×2 454/1.006 = 2.44 ℃] となり、空気の温度は2.44℃下がる。 なおxが変化したが、エンタルビーhは変化しないので、熱水分比 u = dh/dx = 0 と平行の変化となる。 dt/dx = 0.083 0.001 熱水分比 u = dh/dx と平行に変化 dt/dx = 2.44 x5 ⑤加熱 t5,x5 2.44 0.083
発 行 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 伊東 民雄 発 行 公益社団法人 空気調和・衛生工学会 (SHASE: The Society of Heating, Air Conditioning and Sanitary Engineers of Japan) 伊東 民雄