2.2 地震の基礎.

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2.2 地震の基礎

2.2.1 地震とは何か 応力のもと,歪みが蓄積し,(弾性)限界を超えた時に岩石は破壊される =その時の岩体のズレを断層とよぶ →衝撃波は近接する岩石に応力を伝え,弾性波(地震波)として周辺に伝わってゆく=地上で地震が生じる 下敷きの実験。

図2.18 地震波とP波の初動

実際のP波初動極性 http://www.cpdnp.jp/pdf/002-05-005.pdf 日本気象協会,2010.9.9. 地震波からみた地震と爆発の識別について.

2.2.2 地震波 実体波 表面波:伝播中の減衰が少ない。 P波(縦波):1.7*S波 S波(横波) P-S間の震動:初期微動 (下敷きの例) P-S間の震動:初期微動 P-S時間:初期微動継続時間=震源からの距離に応じて長くなる←気象庁緊急地震速報システム 表面波:伝播中の減衰が少ない。

大森(房吉)公式 T=L/Vs - L/Vp L=7.5T←上式より ただし,T:初期微動継続時間(s),Vs:S波速度(3km/s), Vp:P波速度(5km/s),L: 観測点から震源までの距離 利用可能条件:震源が浅く,震央距離100〜600km L=7.5T←上式より (大森の係数は7.8km/s)。

2.2.3 発震機構 2.2.3.1 初動極性とビーチボール 初動極性: P波が観測点に到達する際の押し(up ●)引き(down ○) 2.2.3 発震機構 2.2.3.1 初動極性とビーチボール 初動極性: P波が観測点に到達する際の押し(up ●)引き(down ○) 発震機構解=ビーチボール→応力場と断層のセンスの復元。

図2.19 鳥取県西部地震のP波の初動極性の分布 ×: 震央 押し,上向き,● 引き,下向き,○

図2.20 発震機構解

2.2.3.2 震源球とビーチボール 地震波は最短時間の経路を進む 岩体の密度は深いほど大きい →下に凸の弧状経路を描く 震源近傍(点震源モデル)から出射する地震波の方向と観測点の関係を得る。

図2.21 a.地震の伝達経路と出射方向, b.震源球下半球,c. 等積投影面 r = √(1-cos θ)

2.2.3.3 断層と押し・引き

2.2.3.4 地震と断層の関係, そしてビーチボール

断層の種類←応力に対応 正断層 逆断層 横ずれ断層 Animationを見る。

図2.24 震源断層での断層活動と震源球との関係

図2.25  震源球の基礎

地震の観測結果からビーチボールを作成する手順 p.108右下 1. 押し引きの観測データを震源球の下半球にプロットし,シュミットネット上に投影→図2.21 2. 押し引きの分布領域を分ける一つの大円(節面)を引き,もう一つの大円をはじめの大円の極を通るように引く。

ビーチボールの押し引き分布と断層型

2.2.3.5 発震機構解の例:鳥取 図20 鳥取県西部地震 NP1→断層走向128゜→傾斜75゜ P(Azm,Plg)=(85゜, 16゜)

2.2.3.5 発震機構解の例:中越地震 西北西ー東南東方向の圧縮軸をもつ逆断層型 : この地域の活断層の走向に直交

震度とマグニチュード マグニチュード: 地震そのものの強度 eg. お寺の梵鐘の震動の強さ @1996年以来,新しい(計測)震度階。

B.グーテンベルクと 和達清夫,C.F.リヒター

マグニチュード C.F.リヒターが最初:震幅が10倍増えればMが1増える モーメントマグニチュード(物理学的意味がある):断層の面積とすべり量の積 実際的なものは,地動変位マグニチュードと,地動速度マグニチュード(小規模地震に対して,高感度地震計)。

気象庁現行使用マグニチュードの妥当性 両Mの整合性の向上,Mmとの系統的ズレの補正

2.2.4.3 計算式からマグニチュードを 2.2.4.3.1 表面波マグニチュード 2.2.4.3.1 表面波マグニチュード 坪井の式:M=log10A + 1.73log10Δ -0.83 リヒターの式同様,振幅が10倍になるとMが1増える 2.2.4.3.2 地震規模とエネルギー Gutenberg と Richter:log10Es=4.8 + 1.5Ms  ただし,sはs波の振幅に基づいた計算を意味するが現在ではMmを使用。Eの単位はジュールJ。 Mが1増えるとエネルギーは32倍になる。 Mが2増えると?

補:対数は難しくない 32=9 の両辺にlog3を付けると, log332 =  log39 となる。左辺を変形すると, 2log33 = 2 となる。つまり,対数とは3を何回掛ければ,9になるのかを表現する関数。 106 = 1,000,000の両辺にlog10を付けると,1,000,000が6になる。100→0, 101→1,..., 106→6となる。標本値の差が大きいものを表現するのに適している。

エネルギーの計算例 log10Es=4.8 + 1.5Ms を指数関数の形に変えると, Es=10 4.8 + 1.5Ms となる。マグニチュードが一つ大きい方をEs’とすると, Es’/Es=10 4.8 + 1.5(Ms+1)/10 4.8 + 1.5Ms =104.8 + 1.5(Ms+1) – (4.8 + 1.5Ms) =101.5=10√10 =31.6≒ 32 それでは,マグニチュードが2増えると,エネルギーは何倍になるでしょう?

2.2.4.3.3地震規模と回数の関係 グーテンベルグ・リヒターの式:logN=a-bM (b≒ 1)  Mが1増えると頻度は1/10に。

2.2.5 前震と余震 前震foreshockー本震main shockー余震aftershock 群発地震eq swarm

前震と余震の例 log10L=0.5M-1.8 ただし,Mは本震のもの,Lは余震域の長径