セラミックス 第4回目 5月 7日(水) 担当教員:永山 勝久
材料の性質を規定する 化学結合 [ 物性を規定する基礎的因子 ] ① 金属結合 ② イオン結合 ③ 共有結合 ④ ファンデル・ワールス結合 ( 気体 分子間結合 ) 化学結合 セラミックスの結合様式 (4つの形式) 表1 化学結合の種類と主な特徴 融点 電気伝導性 透明度 水溶性 イオン結合 高い 比較的良い 透明 可溶 共有結合 悪い 普通は透明 難溶 金属結合 比較的高い 極めて良い 不透明 普通は不溶 分子結合 低い ― 金属光沢 ◎化学結合=材料の性質(物性)を支配 材料 現象論的特徴 (1)金属 ①金属光沢を示す,②電気,熱の良導体 ③塑性加工が可能(展延性に富む) (2)無機 ①絶縁性に富む,②断熱性が大 (セラミックス) ③塑性加工が困難(脆性) (3)高分子 ①絶縁性,断熱性が大 (繊維,プラスチック) ②加工が容易 [金属結合] [イオン結合,共有結合] [共有結合,分子間結合]
② 自由電子・・・光により励起 [ 光 (=電磁波) エネルギーにより遷移 ] (1) 金属結合 <・・・金属の特徴の起源> [定義] ; 原子の最外殻の価電子が原子核 ( 陽子=正電荷 ) の拘束を 離れ [ ・・・『金属原子の自由電子放出に伴う陽イオン化』 ], 自由電子 として,結晶全体の金属陽イオン ( 原子 ) に共有され て,これを媒介として原子どうしを結合する化学結合様式 ① 自由電子・・・熱や電気の伝導媒体 金属は熱や電気の良導体 『金属の特徴』 自由電子に依存 = ② 自由電子・・・光により励起 [ 光 (=電磁波) エネルギーにより遷移 ] 金属特有の光沢 ( 金属光沢 ) ③ 自由電子・・・金属陽イオン間における結合に自由度を寄与 <結合の手が無数存在するために破壊は生じにくい> 金属結晶 の概念図 金属の塑性変形 ( 展延特性 ) + + + 自由電子 金属陽イオン
(2) 無機材料 [半金属(B,Si,C・・・),酸化物,窒化物,ホウ化物,塩化物] (単一元素) (2) 無機材料 [半金属(B,Si,C・・・),酸化物,窒化物,ホウ化物,塩化物] の結合形式 “セラミックス” [ 定義 ] ◎ 「イオン結合」 → 陽(+)イオンと陰(-)イオン間の電気的引力に起因 2つの 結合形式 代表例):NaCl = Na+-Cl- (静電引力 = クーロン力) する化学結合様式 ◎ 「共有結合」 11Na:1s22s22p63s1 e- ※ [Ne] 17Cl:1s22s22p63s1 3p5 [Ar] ○ イオン間に働く力 1) 陽イオン-陰イオン ; 引力 2) 陽イオン-陽イオン ; 斥力 ( 反発力 ) 3) 陰イオン-陰イオン ; 斥力 ( 反発力 ) ◎3つのクーロン力・・・ 同種イオン間 イオン性結晶 ・・・ 全体として引力が斥力よりも大きくなる ; +,-イオン間のクーロン引力 ( 静電引力 ) により,結晶を形成する ( 図1,図2参照 ) 結晶を構成 ( 引力=斥力 )
(同種イオン間のポテンシャルエネルギー) 引力≧斥力 100 -100 -200 2 4 6 8 10 12 ∞ Clの電子 親和力 (核外電子全て) NaCl結晶のイオン間距離 Naのイオン化 ポテンシャル イオン間距離が極端に近くな ると,両原子 (両イオン) が 有する電子と原子核の陽電 荷間におけるクーロン引力が 増大し,ポテンシャルエネル ギーは急激に増大する 最適距離 ( イオン間距離 ) ポテンシャルエネルギー kcal/mol クーロン引力: e : 電荷 r : イオン間距離 結合力=引力 -e2/r 弱い ポテンシャルエネルギー : (両イオン間の 距離が遠い) 図1 Na+とCl-との クーロン引力によるポテンシャルエネルギー 引力と斥力の 合成 ポテンシャル エネルギー 斥力 (同種イオン間のポテンシャルエネルギー) ・最も安定な位置 = イオン間距離 陽イオン,陰イオンの電子雲が重なり合う r 合成ポテンシャルエネルギーの 極小値 ポテンシャルエネルギー (:イオン間距離) 陽イオン,陰イオンが離れている = 引力 ・斥力+引力の最小値= “イオン間距離” 陽イオン,陰イオンがひっついている ・・・引力と斥力の最適距離 (安定) 図2 イオン間距離と 引力 , 斥力 の関係 (引力と斥力の平衡関係)
イオン結合の特徴(:熱伝導機構) (高熱伝導性セラミックスと非熱伝導性セラミックス) ◎イオン結合性結晶 (セラミックス) の熱伝導機構 cf. 金属材料 熱伝導媒体 ・・・ 『フォノン(phonon)』 自由電子が 熱の伝導体 ○結晶中で規則配列する原子を “格子” と考え,格子位置での 原子の振動エネルギーを 「フォノン」 と定義 ( フォノン ・・・ “格子の振動” をエネルギーを持った 粒子 と仮定) = (振動子) 『量子』 熱伝導機構 ・・・ 「アインシュタイン・モデル(バネ・モデル)」 (図 参照) ① 物体を端面 (片側) 加熱 ② 加熱面での原子振動の増大 (軽元素ほど大きい) ③ 隣接正負イオン間でのイオン結合を介して,格子振動が 伝播 (フォノンの伝播) ・・・“格子振動による伝播” ◎ 軽元素ほど格子振動は大きく、その伝播は容易 熱伝導率 ; Al2O3 (約20W/m・k,Al原子量 : 27 ) ZrO2 (約 4W/m・k,Zr原子量 : 91 ) 5分の1
アインシュタイン・モデル (a) (b) 熱伝導は容易 <熱伝導率 : 小> バネ 端面 バネ 加熱 加熱 軽元素 ・・・ 格子振動は大 重元素 ・・・ 格子振動は小 <熱伝導率 : 小> 図3 熱伝導のモデル (アインシュタイン・モデル) : 結晶の左端から右端への 加熱に伴う格子振動に伴う熱伝導現象の説明 (a) 軽元素 (振動大,高熱伝導性) , (b) 重元素 (振動小)