ー冥王星はどこへ行く!?ー 講演者 京都大学理学部4回生 渡邉 皓子 惑星の定義 ー冥王星はどこへ行く!?ー 講演者 京都大学理学部4回生 渡邉 皓子 それでは「惑星の定義-冥王星はどこへ行く?-」の講演を始めます。 私は京都大学理学部4回生で、宇宙物理学を専攻してます、渡邉皓子といいます。 どうぞよろしくお願いします。 それでは始めます。 次 (C)Y.Yamano
太陽系惑星8個に 新しい定義では、冥王星が降格され、惑星は水金地火木土天海の8個に限定される。 NEWS!! 太陽系惑星8個に 2006年8月24日の国際天文学連合(IAU)総会で、「惑星の定義」を決定。 新しい定義では、冥王星が降格され、惑星は水金地火木土天海の8個に限定される。 最近こんなニュースが世間で騒がれました。「太陽系の惑星が8個になる」 みなさんもまだ記憶に新しいニュースなんじゃないかと思います。 今年8月24日の国際天文学連合、略称IAUの総会において、「惑星の定義」に関する決議が行われました。 採択された新しい定義では、今まで惑星だった冥王星が降格し、水金地火木土天海の8個になりました。 クリック ちなみにこれがIAU総会の様子です。IAUの決議は多数決で行われます。この人、国立天文台の元台長の海部さんです。どうやら賛成しているように見えます。この海部さん、実は海部俊樹元総理大臣のいとこなんだそうです。 それではまずは、難しい話は後にして、「冥王星が惑星じゃなくなると一体何が困るのか」 についてお話したいと思います。 次 (C)IAU
冥王星が惑星じゃなく なると何が困る? (ちなみにこの絵は冥王星を発見した時のエピソードを表しています。冥王星にはかなり大きな衛星カロンがあります。 二つの星が近接して存在していたため、観測者にはそれが洋ナシ形の惑星に見えたそうです。) ©KANAYA
何が困る?Part1 教科書の変更 漫画や小説など 語呂が悪い 「すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい」 「すい・きん・ち・か・もく・ど・てん・かい」 英語では・・・? My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas. Mercury Venus Earth Mars Jupiter Saturn Uranus Neptune Pluto まずは教科書を変更しなければなりませんね。今頃教科書会社はてんてこまいなんじゃないでしょうか。 次に漫画や小説や、クラシックの題名など。冥王星は色んな作品に 登場してます。セーラームーンのセーラープルートとか、宇宙戦艦大和、銀河鉄道999にも登場してます。(最前線の戦闘基地) あとミッキーマウスの愛犬プルートは、冥王星の発見にちなんで名づけられたそうです。 あとは順番が覚えづらくなりますね。「すいきんちかもくどてんかい」、慣れていないせいかなんとなく 語呂が悪い気がします。 ちなみにこの惑星の順番の覚え方ですが、英語ではどんな覚え方なんでしょうか? クリック こんな文章で覚えているそうです。 My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas. とても教養のある私の母が、ちょうど私たちにピザを9枚出してくれた。という意味です。 この文章の各単語の頭文字が、惑星の頭文字と一致しています。 Mercury Venus Earth Mars Jupiter Saturn Uranus Neptune Pluto 確かにそうなってますね。 (PlutoがなくなってしまうとMy Very Educated Mother Just Served Us Nine になってしまって、なにをくれるのかわかりません。) 次
何が困る?Part2 ・占星術における支配星 獅子座 太陽 蟹座 月 双子座・乙女座 水星 牡牛座・天秤座 金星 蠍座 冥王星 牡羊座 火星 射手座 木星 山羊座 土星 水瓶座 天王星 魚座 海王星 火星? 何が困る?Part2は占星術についてです。占星術では、それぞれの星座に対して支配星をあてはめています。 みなさんは自分の支配星が何か知っていますか?こんな感じになってます。 クリック 自分の支配星がわかりましたか?ここで注目したいのは蠍座の支配星です。現在は冥王星になってます。 でも冥王星はもう惑星じゃなくなりましたから、果たして蠍座はどうなってしまうのか。 ここからはまだ決まったことではないので推測ですが、冥王星が発見されるまでは蠍座の支配星はもちろん 冥王星ではありませんでした。だからその昔の支配星に戻るのではないかと思われます。昔の支配星は、何だった かというと、火星でした。だから蠍座の人も安心してください。 次
これからの話の流れ 1.冥王星発見以後の歴史 2.惑星が増える!?ー12惑星案ー 3. 「惑星の定義」の内容ー8惑星案ー 4.冥王星の行き着いた場所 5.「惑星」クイズ それでは本題に入ります。 これからお話しすることの流れはこんな風になります。 まずは冥王星が発見されてからの歴史を振り返ります。 つぎに、IAUで最初に提示された案である12惑星案についてお話します。皆さんも覚えているかと思いますが、 最初のニュースでは惑星は増えるって言われてましたよね。それがこの12惑星案です。 次に、最終的に採用された「惑星の定義」、8惑星案についてお話します。 そして、冥王星は結局今どうなったのか、その行き着いた場所をお話して、最後に今日のお話の中から簡単なクイズを 出したいと思います。
冥王星発見以後の歴史 それではまずは冥王星発見以後の歴史です。
冥王星発見! ⇒第9惑星 1930年 「太陽系最果ての天体」 大きさは地球と同じくらいか? 「太陽系最果ての天体」 冥王星発見! 大きさは地球と同じくらいか? ⇒第9惑星 (C)JAXA だが!! 冥王星は1930年にアメリカ人のトンボーによって発見されました。当時は「太陽系最果ての天体」であり、大きさも地球ぐらいあると見積もられていたので、みんな「新しい惑星が発見された」「人類はまた太陽系の果てに近づいた」ととても盛り上がり、冥王星フィーバーが起きました。 クリック しかしです。 研究が進んでいくにつれて冥王星の大きさはどんどん小さくなっていき、実際はあの月よりも小さいということがわかりました。また、軌道も、他の惑星がほぼ円に近い軌道を運動しているのにくらべて、冥王星はひしゃげた楕円の軌道であり、しかもかなり傾いているということもわかりました。 なんとなく、一部の人からは「冥王星は惑星なのか?」という疑問が挙げられてきました。 次 実際の大きさはもっと小さく、あの月よりも小さい!! 他の惑星に比べて軌道がゆがんでいる
冥王星はもはや 「太陽系最果ての天体」ではない! さらに!! 1992年~ エッジワース・カイパーベルトの発見 冥王星はもはや 「太陽系最果ての天体」ではない! さらに、 クリック 1992年から、エッジワース・カイパーベルトが発見され始めました。エッジワース・カイパーベルトとは、海王星よりも遠くにある、小惑星などの天体が密集した帯状の領域のことです。1992年に小惑星1992QB1が発見されてから、翌年には5個、その翌年からは毎年10個以上のペースでエッジワース・カイパーベルトに天体が発見され、現在までにすでに1000個以上見つかっています。 1930年に「太陽系最果ての天体」として一世を風靡した冥王星ですが、 もはや「太陽系最果ての天体」ではなくなってしまいました。 そして、大きさが月よりも小さいことを考えると、 冥王星もエッジワース・カイパーベルトにある小惑星の一つなのではないか?という声が上がりました。 次 冥王星もエッジワース・カイパーベルトにある 小惑星の一つではないか?
ついに!! 2005年 冥王星より大きい“2003UB313”の発見 冥王星に逆風が吹き荒れる中、ついに2005年 クリック エッジワース・カイパーベルトの中に冥王星よりも大きい天体である“2003UB313”が発見されました。 冥王星より大きいのなら、これも惑星だろうということで2003UB313は第十惑星とも呼ばれました。しかしこの頃になるとみんなが、「このままじゃ惑星はもっと増えるんじゃないか?」とか、「そもそもどこからどこまでが惑星って何なの?」と思うようになりました。 このような世間の流れを受け、天体の命名などを司っているIAU は、惑星の定義についてのちゃんと決めようと動き始めました。 次 (C) Max Planck Institute for Radio Astronomy
惑星が増える!? ー12惑星案ー 最初のころに提示されたのが、この12惑星案です。
12惑星案 ①ほぼ球形である ②恒星(太陽など自分で輝く天体)の周りを巡っていて、かつ恒星でも衛星(月など惑星の周りを回る天体)でもない ③ただし、共通重心が他の天体の内部にないものは、これを衛星とは見なさず、多重惑星として両方を惑星とする これが12惑星案の内容です。 ①ほぼ球形である。 ②太陽など、核融合をおこして自ら輝く天体のことを恒星といいますが、この恒星の回りを巡っていて、かつ恒星でも衛星でもない。 ③ただし、共通重心が他の天体の内部にないものは、これを衛星とは見なさず、多重惑星として両方を惑星とする。 ①はわかりやすいと思います。 ②は、例えば地球は太陽の周りを巡っている太陽系に属していますが、我々の太陽系以外にも惑星系は存在します。それは系外惑星と呼ばれます。つまり、この定義は太陽系惑星だけでなく、別の惑星系に所属する惑星に対しても定義を行おうとするものです。 ③はちょっと分かりにくいですので、少し解説します。 自己重力が分子間力を上回って静水圧平衡の形状(ほぼ球形)をとるのに十分な質量があり、 恒星の周りを巡る軌道にあって、かつ恒星でも衛星でもない 共通重心が他の天体の内部にないものは、これを衛星とは見なさず、多重惑星としてその双方を惑星と認めるとの注記
③ただし、共通重心が他の天体の内部にないものは、これを衛星とは見なさず、多重惑星として両方を惑星とする 解説 地球 地球の重さ>>月の重さ だから、共通重心は地球の 内部にある 共通重心 月 共通重心は冥王星の 外側にある。 冥王星 カロン 共通重心とは、二つの物体をてこに載せて、バランスが取れるところのことです。 例えば、地球と月をてこに載せてみましょう。もし地球と月の質量が2:1なら、共通重心は地球と月の間の距離を1:2に分割した点になります。 実際は、地球の重さは月の重さよりも約100倍も大きいので、共通重心は クリック このように、地球の内部にあります。 次に冥王星とカロンの場合は、質量の違いが地球と月ほど大きくないので、共通重心は冥王星の外側にあることになります。 ということは、条件③を見ると、 冥王星とカロンは両方惑星である、ということになります。 地球 6*10^24kg 月7*10^22kg カロン 1.90×10^21 kg 直径1186km 冥王星 1.3×10^22 kg 直径 2,306±20km 共通重心 冥王星とカロンは 両方惑星である
(最大のエッジワース・カイパーベルト天体) もし12惑星案が採用されれば・・・ 水金地火木土天海冥以外にも カロン (冥王星との二重惑星) セレス (最大のメインベルト天体) 2003UB313 (最大のエッジワース・カイパーベルト天体) もし12惑星案が採用されれば、これまでの水金地火木土天海冥以外にも、 クリック 先ほどの説明で冥王星との二重惑星に認められるカロンと、 火星と木星の間の小惑星帯であるメインベルトで最大の天体セレスと、 冥王星よりも大きいエッジワース・カイパーベルト天体である2003UB313 この三つが新たな惑星になります。 の3つが新たに惑星になる。
12惑星案が採択された時の 新惑星候補天体 さらに、もし12惑星案が採用されれば、先ほど述べた12個以外にも、惑星がもっと増えるかもしれません。 この図は「惑星になるかもしれない」と指摘された12個の候補天体です。 しかしこの定義案には反対意見もたくさんありました。今後発見される可能性のある大型の小惑星も惑星にあてはまるとすると、惑星が際限なく増えていくのではないかと危惧されました。 次 (右下3つは、火星と木星の間の軌道を回る小惑星(メインベルト小惑星)で直径が500キロメートル前後の天体です。メインベルト小惑星の中でVesta(ベスタ)が3位、Pallas(パラス)が2位、Hygiea(ヒギエア)が4位の大きさを持ちます。1位のセレスはすでに原案の中で惑星に「昇格」しています。 残りは、すべて冥王星付近またはさらに遠い軌道を回る「エッジワース・カイパーベルト天体」と呼ばれる天体です。 上記以外にも、今後の観測によって惑星の条件を満たす可能性のある小惑星が多数あるとされており、 Dwarf Planet としてメインベルト小惑星のパラス、ベスタ、ヒギエア Plutons としてヴァルナ、イクシオン、クワオアー、2002 AW197、2002 TX300、セドナ、オルクス、2003 EL61、2005 FY9 しかしこの定義案には反対意見も多かった。今後発見される可能性のある大型の小惑星や海王星以遠天体も惑星に分類すると、惑星が際限なく増える可能性があるという指摘がなされた。)
「惑星の定義」の内容 ー8惑星案ー そこで最終的に採用されたのが、8惑星案です。
8惑星案ー惑星の定義ー ①ほぼ球形である ②太陽の周りを巡っていて、かつ恒星(太陽など自分で輝く天体)でも衛星(月など惑星の周りを回る天体)でもない ③その周囲から(衛星を除く)他の天体を排除している 8惑星案の内容は、 ①ほぼ球形である ②太陽の周りを巡っていて、かつ恒星でも衛星でもない ③その周囲から衛星を除く他の天体を排除している 赤くなっている部分が12惑星案と違うところです。恒星の周りを巡るというところが、8惑星案では太陽と限定されました。つまり、我々が所属する太陽系の天体に限っての定義ということです。 また、③も新たに付け加えられた条件です。この③の条件がネックになります。 次 自己重力が分子間力を上回って静水圧平衡の形状(ほぼ球形)をとるのに十分な質量がある。
惑星ではない!! では何に分類される? 冥王星、カロン、セレス、2003UB313は、 ③の条件を満たさない。 ③の条件を満たさない。 惑星ではない!! 冥王星とカロン、2003UB313の3つはエッジワース・カイパーベルトに存在している天体なので、近くに天体はいっぱいあります。またセレスも小惑星帯であるメインベルトに存在しているので、これも周囲から他の天体を排除しきれていません。 よって クリック 惑星ではないということになります。1930年から惑星として慣れ親しんできた冥王星は、ついに今年惑星から降格してしまうこととなりました。 では冥王星たちは一体何になるのでしょうか? 次 では何に分類される?
8惑星案 ーDwarf Planetの定義ー ①ほぼ球形である ②太陽の周りを巡っていて、かつ恒星でも衛星でもない ③その周囲から(衛星を除く)他の天体を排除しきれていない 8惑星案で、惑星とともにDwarf Planetというものを定義しています。 Dwarfは、小さいという意味です。 Dwarf Planetとは、惑星の定義から③の条件のみが変わり、その周囲から他の天体を排除しきれていないものを言います。さきほどは他の天体を排除しているでしたね。 したがって 次
(最大のエッジワース・カイパーベルト天体) 冥王星 Dwarf Planet セレス (最大のメインベルト天体) 2003UB313 (最大のエッジワース・カイパーベルト天体) 冥王星とケレスと2003UB313は、 クリック Dwarf Planetに分類されることとなりました。 カロンについては、衛星の定義はまだこれからIAUで話し合われる予定なので、どこに分類されるかは未定です。 ここで注意したいのは、Dwarf PlanetはPlanetという名前は入っていますが惑星ではないということです。 また、Dwarf Planetの日本語訳はまだ正式に決まってません。これから日本天文学会などで話し合って決めます。
まとめると、こういう感じになります。 上が惑星で、下がDwarf Planetです。 つぎ
冥王星の 行き着いた場所 以上冥王星が惑星から外れた経緯をお話しました。 それでは現在冥王星はどんなことになっているのでしょうか。 次
冥王星の今 小惑星と共通で使う通し番号がついた。 「134340番」 ちなみにメインベルトで最大の天体 セレスの番号は 1番 Dwarf Planetには、小惑星と共通で使う通し番号がつけられます。冥王星は何番になったのでしょう。 クリック ちなみにメインベルトで最大の天体であるセレスは、小惑星番号1番です。 さて冥王星の番号は? 134340番 こんなに有名な冥王星が?って感じのすごく半端な数字ですね。なんとなくせつないような気がします。 というわけで、冥王星は今年、惑星から降格し、Dwarf Planetとなり、134340番という番号が割り当てられることとなりました。 しかし冥王星が冥王星であることには、過去も未来も変わりません。だからこれからも冥王星を忘れないでいてあげたて下さい。 次 同センターは98~99年に、冥王星に切りのいい小惑星番号1万番を付けようとしたが、米国世論の強い反発で断念したことがある。同じく矮惑星に分類されたセレスは、最初に見つかった小惑星として1番が割り振られている。 エリスの小惑星番号 (136199) ちなみにメインベルトで最大の天体 セレスの番号は 1番
「惑星」クイズ それでは今までにお話したことに関するクイズです。
Q1.冥王星は惑星? Yes No 答.No 冥王星はDwarf Planetである。
Q2.セレスはDwarf Planetである。 Yes No 答.Yes セレスはDwarf Planetに分類されます。
Q3.惑星の定義が決まった のはいつ? 2006年7月24日 2006年8月24日 答.2006年8月24日 答.2006年8月24日 今年の8月24日にIAUで惑星の 定義の採択が行われた。
Q4.冥王星につけられた小惑星番号は何番? 136199番 134340番 答.134340番 136199番は2003UB313につけ られた小惑星番号
Q5.惑星の定義の条件として 間違っているものはどれ? ①球形である ②恒星の周りを巡っている ③その周囲から(衛星を除く)他の天体を排除している 答.② 「恒星」ではなく、「太陽」である
終わり ありがとうございました