STAS-Jを1年半使用してみて 2006/11/05 聖ヶ丘病院ホスピス 挨拶: 聖ヶ丘病院ホスピスで看護師をしている小池と申します。 2006/11/05 聖ヶ丘病院ホスピス 挨拶: 聖ヶ丘病院ホスピスで看護師をしている小池と申します。 私達がSTASを導入してから約1年半経ちます。 本日は、STASで評価を続けてきて、どうなのか、というところを聴いて頂きたいと思います★
昨年4月よりSTAS-J導入 ・ 導入のきっかけ・・・医師より紹介 ・ 院内勉強会(医師が講師となり実施) ・ 評価方法を決定。 ・ 導入のきっかけ・・・医師より紹介 ・ 院内勉強会(医師が講師となり実施) ・ 評価方法を決定。 ・ 対象患者1名で評価開始。 (その後、入院患者があれば対象に加え 除々に対象患者を増やしていった) ★STAS導入するきっかけは、当ホスピスのDr.が行った勉強会 ★院内勉強会を導入前2回、(1回目は「STASとは」、2回目はケーススタディで評価の練習)を実施し、★ 評価方法を決め、★ 対象患者1名で開始し、その後の入院患者は自動的に対象に加え、除々に対象患者を増やしていった。現在は全患者を評価している ★
評価を続けるために・・・ ☆評価を続ける しくみ作り☆ ・対象患者:1名で開始、最終的には全員。 ・評価日: 週1回(プライマリーNsの評価+ カンファレンスでの評価) ・“スコアリングマニュアル”を見ながら。 ・用紙: どうしてその評価になったのか、 コメント欄に記入。 情報不足があれば、伝わるように。 実は、以前に導入したけれど、続かなかったことがあった (対象患者1人で始めてその患者が退院した後が続かなかった・・。) だから、その時の反省をふまえて、★今回はしくみを決めた★ ・対象患者、まずは1名から導入するけれど、入院があれば自動的に評価対象にしていき、最終的には全員を評価する★ ・評価日、患者1人につき週1回。プライマリーNsの評価と、カンファでの評価をする。 (※この理由→ ・項目が9つあり、覚え切れないので、スコアリングマニュアルをお手本にしながら、 行っている★ ・用紙は当院独自のものを作った★
ホワイトボードの写真。 日勤のカンファレンスでの評価日が、誰が見ても一目瞭然なように、ホワイトボードに記入してある。 Drが不在の火曜・日曜以外を評価日としている。 当ホスピスは11床なので、1日2~3人評価すれば全患者の評価ができる。 症状が落ち着いているなど、プライマリーNsが“週1で評価する必要はない”と判断した場合は2週に1度の評価にすることもあり。 昨年死の臨床で私達のやり方を発表した際、“うちは床数が多いから無理”と言われたことがある。 そういう場合どうしたらいいか、うちのスタッフの意見を募ったところ、 ・慣れるまでは、患者をピックアップする(症状コントロールが困難、家族関係が複雑、など) STASの評価が必要かどうかというところにのみ、ふれてもいいかも) 評価の時間をどう時間を捻出するか、というところにつきる= 日勤のカンファだけでなく、朝夕の申し送りの際に1人ずつ評価するなど工夫をしていくことは可能では?★
スコアリングマニュアルは、当ホスピスに1冊しかない。 ので、評価ページのコピーを、何冊か用意して、それをパラパラ見ながら評価している。 たとえば、不安 ★
コップの水を不安に見立てている絵があり、不安があふれそうになっているかどうか、具体的にイメージしやすい ★
評価用紙。独自に作成したもの。 ★プライマリーNsの評価と ★カンファレンスでの評価を記入する欄と ★コメント欄 を設けてある。 コメント欄には“なぜその評価をしたのか”特に理由があれば記入する。 このコメントにより、プライマリーNsとカンファレンスでの評価のずれがあった場合の理由が明確になる★
評価しづらい・・・ 不安 “うつ”は不安とは違う 病状認識 余後は認識していない・・・ 患者-家族のコミュニケーション “うつ”は不安とは違う 病状認識 余後は認識していない・・・ 患者-家族のコミュニケーション いつも来てる家族でも・・・ 患者によっては評価しづらい時あり 評価していって、ひっかかることが多い項目がある。 ★不安(患者の不安・家族の不安) ★病状認識(患者の病状認識、家族の病状認識) ★患者-家族のコミュニケーション うちでは、なるべく、情報を取りやすいよう、入院時アンケート(これは、入院したときに、ご本人とご家族にお願いしているもの) そこに 不安、病状認識、コミュニケーションを問う質問を追加している。 例えば 患者-家族のコミュニケーションに関る質問で、 患者さん本人へは、 ・ご自分の思いを十分に伝えることのできる方はいらっしゃいますか? ・その方と、病気のことや今後の生活について、話し合われていますか? という問いになる。 その他★ 項目ではなく、患者によっては評価しづらいことがある、という意見もあり。これは、 各スコアの表現方法が難しく感じることがあるということだった。 ☆スコアリングマニュアル、第二版は注釈が増え、わかりやすくなっている印象がある。これからも、どんどん分かりやすいものになっていくと期待している。★
メリット(スタッフへのアンケートより) 昨年の死の臨床で 「STASの導入を試みて」という発表をした。 昨年の死の臨床で 「STASの導入を試みて」という発表をした。 STASを5ケ月間実施してみてどうか、スタッフにアンケートし、まとめたものを発表した。 その時でメリットとして多かった意見は2つ。 ・不足している情報・問題点が明確になる。80%(10人中8人) ・共通認識によりケアの視点がスタッフ間で統一できる・連携が計れる20%(10人中2人) 今回、このワークショップに参加するにあたって、同じ問いかけをスタッフにした。 この2つの意見があがることには変わりないが、 1年半後の今回は、グラフで黄色の、「共通認識により・・・・・」の意見が昨年より増えている。 ただ評価することだけでなく、それをスタッフ間で共通の認識としてもつことによるメリットに、多くの人が気づき始めた、ということだと思う ★
デメリット(スタッフへのアンケートより) じゃあ、デメリットは?去年は導入2ケ月目、5ケ月目の2回意見を募っているのだが 導入2ケ月の時点で1番多かった=カンファレンスの時間が長くなった 導入5ケ月の時点で1番多かった=せっかく評価しても伝達がスムーズでない 理由→2ケ月では、評価にまだ慣れないので、カンファレンスの時間が長くなる、からそれが気になる。 しかし、5ケ月も評価していると、評価自体に慣れ、短時間で評価できるようになるので、デメリットとして考えるスタッフは減る・・・が、かわりに、せっかく評価しても伝達がスムーズでないということが気になりだすため、ではないか、と思う。 よって、去年の時点での課題=「いかに伝達するか?」 それから、伝達方法を、改善するよう努め (評価したことに対し、看護計画に上げられるようなことは、計画にあげる、あげられ ない細かなことは、申し送るorメモ書きなどで、目に付くようにしておくといったこと) ・・・今年のアンケートでは、デメリットとしてその2つの意見を上げたスタッフは12% (9人中1人)でかなり少なくなっている。他にデメリットとして多かった意見もない。 ということは、=STASの評価をして悪いことはない!良いじゃない!と皆が感じていることの現れだと考える ★ (※ただし、「課題だった伝達はどうか?」という問いかけ方をすると、できている・できていない・どちらでもないの答えががほぼ同数。~ ~まだ、今後の課題の1つといえる。)
自己評価(スタッフへのアンケートより) スタッフへのアンケートでは、自己評価をしてもらう問いもした。 STASの9つの評価項目にそった形の質問で 例えば 問い(1)は、痛みに関しての問いで、「痛みに関して情報収集できていますか?」 答えは、できている~できていない、までの5段階のうち、どこにあたるか選んでもらい、点数化して集計した平均点がこのグラフ。 スタッフが3人入れ替わっているので、途中で終わっている折れ線、途中から始まっている折れ線がある。 前半2回のアンケートは10人の平均、後半は9人の平均。 ほとんどのスタッフの自己評点は上昇している。家族や患者と家族の関係についての問いの答えで、自己評価が良くなっている人が多いからだと思う。STASを評価する前にはあまり注目しなかった、それらの項目へ目がいくようになったことの現れではないか。 中には、評価が下がるスタッフもいる。(もう退職したベテランスタッフ。) 評価が下がった理由は、「今までとれていたと思っていた情報が、実は取れていなかったということに気づいたから。」ベテランスタッフにとっても、STASを評価することで気づきがあるのだと思う。 スタッフが入れ替わっていることや、評価が下がったスタッフがいるためか、全体平均の上昇はほんの少しにとどまっていて、少し残念。★
結論: STASーJは良い! →ケアの質の向上につながる。 情報不足、問題点が明確になる。 ケアの視点がスタッフ間で統一でき、連携がはかれる。 →ケアの質の向上につながる。 慣れるまで評価に時間がかかるが、 慣れてくれば1人5分位(4分39秒±23秒S.E.) で評価が可能。 いままでのことから、STASを1年半使用してみての結論は、STASは時間をかけて評価するに値する、良い、ということになる。 メリットとしてでた意見の繰り返しになるが、 ★情報不足、問題点が明確になる=特に、家族や、患者と家族の関係に対して注意がいくようになったという実感がある。 ★評価した情報を共有することにより、ケアの視点がスタッフ間で統一でき、連携がはかれる。 →このことは★ケアの質の向上につながると思う。 ★評価に掛かる時間が問題となると思うが、慣れてくれば短縮可能。 ここ1ケ月ほど、私達の評価にかかる時間を計測してみたが、一人平均5分くらい(正確にいうと、33回測った平均で4分39秒±23秒S.E.)で評価が可能だった。
ご清聴、ありがとうございました