2012/9/7 公共サービス論(2014.10.20) ※2014.10.13休講 第二回 社会教育法の概要
社会教育法の概要 1.社会教育法等の改正について 社会教育法等の一部改正 2.社会教育法の構成 3.主な規定の内容(総則部分) 2012/9/7 社会教育法の概要 1.社会教育法等の改正について 社会教育法等の一部改正 2.社会教育法の構成 3.主な規定の内容(総則部分) 〇社会教育法の概要についてお話します。 はじめに社会教育法は先ほど説明した改正されました。はじめに改正の内容、次に法の構成、総則を中心とする主な規定の内容について概要を見ていきます。
1.社会教育法等の一部改正 改正の概要(配付資料参照) 国会で議論になったこと 附帯決議 人材確保、適切な管理運営体制構築、地域間 格差解消 2018/11/7 1.社会教育法等の一部改正 改正の概要(配付資料参照) 国会で議論になったこと 附帯決議 人材確保、適切な管理運営体制構築、地域間 格差解消 運営状況の評価は、可能な限り外部の視点を入れる。評価結果の公表 司書等の専門的能力・知識等の習得への配慮、有資格者の活用方策の検討 ほか 〇答申や、教育基本法改正を踏まえ、具体的にどのような法改正が行われたか見ていく。図書館法については、今後別の機会に詳しく解説する。 ・改正の概要(次スライドで説明)、国会で議論になったこと(後述) ・附帯決議 〇国会で議決された法律案などに関して、施行に当たっての意見や希望などを表明する決議。法的拘束力は有しない。 〇衆議院、参議院の両方で、付帯決議がなされた。 ・社会教育施設における人材確保とその在り方について検討すること、適切な管理運営体制の構築(指定管理者制度導入の弊害にも配慮。例・継続性等)、地方公共団体の取組における地域間格差を解消し、円滑な運営を行うことができるよう様々な支援に努めることとしている。 ・本改正で盛り込まれた評価実施、改善措置の努力義務に関して評価に可能な限り外部の視点を入れる。評価結果の公表 等に努めることが指摘された。評価のガイドラインを国が示すこと、なども。 ・司書等の専門的能力・知識等の習得への配慮、有資格者の活用方策の検討 など 〇これらに留意しつつ、新しい法律に則り、施策を進めているところ。
2012/9/7 ・改正の概要 ○(一つ目)教育基本法改正を踏まえた改正としては、教育基本法で、生涯学習の理念が新たに規定されたことを踏まえて第三条「国及び地方公共団体の任務に関する規定」の第2項に、生涯学習の振興に寄与することとなるよう努めることが定められた。 ○教育委員会の事務として、学習成果を活用して学校等において行う教育活動の機会を提供する事業や、放課後に学校等において児童及び生徒に対し学習活動の機会を提供する事業、家庭教育に関する情報提供に関する事務を追加した。 ○図書館及び博物館が行う事業にも、学習の成果を活用して行う教育活動の機会を提供 する事業等が追加された(図書館法第3条第8号 ほか)
2012/9/7 〇「Ⅱ.社会教育施設の運営能力の向上」を趣旨とした改正としては、運営の状況に関する評価等や情報提供に関する努力義務規定が設けられた。 〇また、図書館法について、旧図書館法では「公立図書館の設置及び運営上望ましい基準」を定めることが規定されていて、それまでは公立の図書館のみ対象としていたものを、本法改正によって、私立も含めた図書館の基準を作ることが規定された。 Ⅲ 専門職員の資質の向上と資格要件の見直し ○文部科学大臣及び都道府県教育委員会は、司書及び学芸員等の研修を行うことが努力規定として盛り込まれた。 ○中教審の答申を踏まえ、多様な人材を確保する観点から、司書の資格取得要件の見直しが行われ、社会教育施設における実務経験として認められる条件を増やしたり、司書資格を得るために大学において履修すべき図書館に関する科目を定めることを盛り込んだりした(これまでは、盛り込まれていなかった。司書講習の規定を準用していた)。
2018/11/7 国会で議論になったこと(図書館法関係) 司書の配置増 過疎地や町村部での図書館整備の促進 館長の司書資格について 公の出版物の収集(第9条)について 司書養成科目の改正について 指定管理者制度の導入について 等 ○法改正の際に、国会でどのような議論が行われたかについて触れておく。 国会議員がどのような点に関心を持っているか。 ・司書の配置増・・・数値を盛り込んだガイドラインで示したら?という議員の指摘(答弁:地方の判断の尊重、財政負担の観点から慎重に検討する必要がある議題) ・館長の司書資格・・・2割程度の司書率だが(答弁:望ましい基準で定めている。過去の補助金要件削除した経緯) ・公の出版物・・・無料で提供できるはずなのに購入しているところが多いという指摘(答弁:趣旨の徹底に努力する) ・指定管理者制度の導入・・・経費削減が人件費カットにつながっている、契約する会社が安定した長期雇用が保障されていないために短期で人が入れ替わる弊害、実態把握しているのか?(答弁:当時は導入率が1.8%だったので、難しいのかなと答弁していますが・・・。懸念が生じないようにしてもらいたい) ○法改正にあたって、他の施設や事業に比較して、図書館に関する質問の比率が高かった。国民の関心が高いといえる。 ○地方議会でも同じだと思うが、関心を持ってもらうためには、日ごろから施策について、 議員にこまめに説明に行くことが必要。図書館法については、日本図書館協会が 議員に意見書を配布する(改正内容の問題点の指摘ではあったが)など、 文科省とは別のところからのアプローチがあったこともあり 社会教育における重要な施設として注目してもらえた。 図書館協議会や、利用者団体などと連携して、市民の声を議員へ届けることが大切。
2012/9/7 2.社会教育法の構成 第一章 総則 第二章 社会教育主事及び社会教育主事補 第三章 社会教育関係団体 第四章 社会教育委員 第五章 公民館 第六章 学校施設の利用 第七章 通信教育 〇社会教育法は、7章立てで構成されています。 〇第1章「総則」では、この法律で規定する社会教育の定義、国と地方公共団体の任務、教育委員会の所掌事務、教育委員会と地方公共団体の首長との関係、図書館、博物館の位置づけなどについて規定しています。 〇第2章は「社会教育主事及び社会教育主事補」について 〇第3章は「社会教育関係団体」の活動を、 〇第4章の「社会教育委員」では、その職務等を明確にしています。 〇第5章は、「公民館」についてです。地域において公民館が果たす役割や活動などを規定しています。 〇第6章は、社会教育活動のための「学校施設の利用」 〇第7章は、「通信教育」などについての原則が示されています。
2012/9/7 3.主な規定の内容(総則部分) 第一章 総則 第一条 法律の目的 第二条 社会教育の定義 第三条 国及び地方公共団体の任務 第四条 国の地方公共団体に対する援助 第五条 市町村の教育委員会の事務 第六条 都道府県の教育委員会の事務 第七条 教育委員会と地方公共団体の長との関係 第八条 必要な資料の提供その他の協力 第九条 図書館及び博物館 ○本講義では、図書館に関連する部分として、総則を中心にお話していきます。総則は具体的にこのような内容になっている。
2012/9/7 (この法律の目的) 第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年 法律第百二十号)の精神に則り、社会教育に 関する国及び地方公共団体の任務を明らか にすることを目的とする。 「教育基本法の精神」教育基本法は、教育の根本、目標を示すものであり学校教育と源を同じくするということ。教育基本法12条で定める、国、地方自治体が任務として行う奨励の範囲を定めることを目的としている。
(参考)教育基本法第12条 国や地方公共団体により社会教育が奨励されなければならない旨を明記。 (社会教育) 第12条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会に おいて行われる教育は、国及び地方公共団体 によって奨励されなければならない。 教育基本法ではこのように定めています。
2012/9/7 「社会において行われる教育」 単に公の機関の行う活動のみを指すのではなく、広く社会一般において行われる教育的活動をも指称する概念 ↓ 社会一般において行われる教育的活動は、内容も方法も多種多様で、これを一律に法律でとらえることは困難。しかし社会教育は国家的関心事。 この社会において広く行われる教育とは、単に公の機関の行う活動のみを指すのではなく、広く社会一般において行われる教育的活動をも指称する概念です。 ↓ 社会一般において行われる教育的活動は、その内容においても方法においても多種多様で、これを一律に法律でとらえることは少なからず困難。しかし社会教育は国家的関心事。
2012/9/7 社会教育法とは 「民間において行われる多種多様の社会教育については、各人の自主性と創意・工夫に委ねることとし法の枠外の問題とし、」 「国家的関心事としては、社会教育について、国・地方公共団体の機関はどのようにしてその振興を図るべきか」 「民間の社会教育活動についてはどのような態度で臨むべきか或いは助成すべきかその任務について明らかにすることを目的とする」 社会教育法の基本的立場というのは、(スライド読む)。つまり民間の社会教育にまで規制をかけるものではない。二つ目、三つ目に法の立場をとっている。 宮地茂(1959)
2012/9/7 社会教育法とは ①積極的に国・地方公共団体が自ら社会教育振興のために遂行すべき活動 ②民間の社会教育活動の助成にあたって国・地方公共団体がとるべき措置 について規定。 =社会教育に関して最小限、国家的関心事となる 範囲においてのみ規定する。 (スライド読む)つまり、教育基本法でいうところの、「国・地方公共団体によって奨励されなければならない」とするその行政的な範囲を規定しているのがこの社会教育法。
2012/9/7 (社会教育の定義) 第二条 この法律で「社会教育」とは、学校 教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に 基づき、学校の教育課程として行われる 教育活動を除き、主として青少年及び成人 に対して行われる組織的な教育活動 (体育及びレクレーションの活動を含む。)を いう。 〇そして第2条では、社会教育を定義しています。
国や地方公共団体が社会教育活動に行政としてかかわる限度において、その内容と範囲を示したもの 2012/9/7 本法における「社会教育」の定義(第2条) 国や地方公共団体が社会教育活動に行政としてかかわる限度において、その内容と範囲を示したもの 学校の教育課程として行われる教育活動 を除く ②主として青少年及び成人を対象 ③組織的な教育活動 ④体育及びレクリエーションの活動を含む ○①点目として、学校の教育課程として行われる学校教育活動を除外 するということ ②点目として、主として青少年及び成人に対するもの ③点目として、組織的な教育活動であること。従って、偶発的なものではなく、日常生活の中で、ある程度、計画的、継続的な組織的な教育活動と言うことになります。 ④点目として、体育及びレクリエーションの活動も含むこと ○この法律でいう「社会教育」を以上のように定義しています。 この「社会教育」の定義は、法の目的と先述の説明のとおり、世の中の全ての社会教育活動を定義するものではなく、国や地方公共団体が社会教育活動に行政としてかかわる限度において、その内容と範囲を示したもの。
厳密な年齢区分を指すものではなく、社会に 2012/9/7 ②「青少年及び成人」 厳密な年齢区分を指すものではなく、社会に あるすべての人を対象とすることを表明する と解される ③「組織的な教育活動」 日常生活の中である程度、意図的、計画的、 継続的な組織的な教育活動 「組織的な」(≠ 偶発的なもの) ②青少年については、本法上の年齢区分を指すものではないと解されている(宮地)。学齢児童であっても、学校教育の分野外において社会教育の対象となりうる。 ちなみに少年の定義は、少年法で20歳未満、児童福祉法では18歳未満は児童と定義されている。青少年育成施策大綱では「青少年」をおおむね30歳未満を対象としていたり、法令上の定義も一様ではない。 ③組織的な教育活動とは、日常生活の中である程度、意図的、計画的、継続的な組織的な教育活動と解される。偶発的なものなどはここでの定義には含まれない。「組織的」の言葉の意味は「共通の目的の下に全体が一定の秩序を持っていることと」等と一般に理解される。(この法律でいうところの定義、という意味。教育基本法に見ると本来もっと広いもの) (参考) 民法第三条成人満20歳、少年法第二条20歳未満「少年」 児童福祉法第四条満18歳未満「児童」 第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。 一 乳児 満一歳に満たない者 二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者 三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者 「青少年育成施策大綱」(平成15年12月9日 青少年育成推進本部決定)「青少年」おおむね30歳未満の者を対象 「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」「青少年」18歳に満たないもの。青少年健全育成条例などでもさまざまのようです。
国及び地方公共団体の任務(第3条) 第三条 国及び地方公共団体は、この法律及び他の 法令の定めるところにより、社会教育の奨励に必要な 2012/9/7 国及び地方公共団体の任務(第3条) 第三条 国及び地方公共団体は、この法律及び他の 法令の定めるところにより、社会教育の奨励に必要な 施設の設置及び運営、集会の開催、資料の作製、頒布 その他の方法により、すべての国民があらゆる機会、 あらゆる場所を利用して、自ら実際生活に即する文化的 教養を高め得るような環境を醸成するように努めなけれ ばならない。 ○第3条は、 ・国及び地方公共団体の任務を包括的に示した、いわば、この法律の要点とも言うべきなのが第1項です。 ○第1項ですが、前半では任務を果たすための方法・手段が示されています。そして、後半は、その際の基本的な視点や、有り様を明らかにしています。後半部分、社会教育行政は「すべての国民」に対するサービスであります。また、社会教育は「あらゆる機会、あらゆる場所」とあり、学校、家庭、地域社会それぞれが互いに協力して、総合的に、社会教育を行う環境の醸成に努めていくことが必要とされています。 ○自ら、環境の醸成とありますが、国民自身の自主的活動を助長するということに努めるということ、「実際生活に即する」とは実際の生活に適合したということ、育なり、学問なりが実際生活を基礎とし、そこから出発して行われなければならないし、またその成果も実際の生活に浸透していかなければならない、という意味を示したもの。 ○「文化的教養」とありますが、「文化」とは、人が自然に手を加えてできた物質的なものや精神的なものと広くとらえられていて、衣食住を初めとして、技術、学問、芸術、道徳、宗教、政治など、様々な人間の生活を形作る基本的な教養のことを言っています。個人の余暇的・娯楽的教養に限らず、職業上必要な専門的・技術的な知識や技術など、幅広いものを指します。 ○具体的にはどのような方法で行うのか?これらのように法で例示されています。ここでいう社会教育に必要な施設に図書館が該当します。 前半・・・方法・手段 後半・・・基本的視点、ありよう 「自ら」 「環境の醸成」⇒ 国民自身の自主的活動の助長 「実際生活に即する」⇒ 実際の生活に適合する 「文化的教養」⇒ 人間の活動を支え、培う基本的教養
国及び地方公共団体の任務(第3条) 第1項の任務を行うに当たって、次の点に努めることを規定 (第2項新設、第3項充実) 2012/9/7 国及び地方公共団体の任務(第3条) 第1項の任務を行うに当たって、次の点に努めることを規定 (第2項新設、第3項充実) (第2項)国民の多様な学習に対する需要を踏まえ、必要な 学習機会を提供・奨励を行うことにより、生涯学習の 振興に寄与することとなるよう努める。 そして第三条はさきほどの第一項に加えて、その任務を行うに当たって生涯学習の振興に寄与することとなるよう努めることを規定した第2項、 家庭教育の向上や学校、家庭及び地域住民との連携協力に関する配慮事項を規定した第3項からなります。これらは、教育基本法の改正を受けて追加されたもの ○第2項は、教育基本法の第3条の「生涯学習の理念」の規定を踏まえて新たに加えられた条文であります。 ○なお、「国民の学習に対する多様な需要を踏まえ」とは、学習者の視点から、多様な学習ニーズに配慮することの重要性を特に規定したものであります。 ○第3項は、社会教育が学校教育や家庭教育と密接な関連性を有していることを明示するとともに、学校、家庭、地域社会の連携協力に努めることを規定しています。 ○こちらも改正後の教育基本法で「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」が規定されたことを踏まえて、下線部が新たに加えられて、規定の充実がはかられています。 (第3項)学校教育との連携の確保に努め、及び家庭教育の 向上に資することとなるよう必要な配慮をするとともに、 学校・家庭・地域住民等の連携協力の促進に資する こととなるよう努める。
国(第4条) 市町村教育委員会(第5条) 都道府県教育委員会(第6条) 2012/9/7 役割分担 国(第4条) 市町村教育委員会(第5条) 都道府県教育委員会(第6条)
2012/9/7 社会教育における国の役割 第四条 国は、(中略)地方公共団体に対し、 予算の 範囲内において、 財政的援助並びに物資 の提供及びそのあっせんを行う。 「財政的援助」・・・補助金等 「物資の提供及びそのあっせん」 ・・・臨時物資需要調整法(当時) ・・・社会教育に要する資料、機械、器具の提供等 財政的援助は、具体的には補助金等のことです。「物資の提供及びあっせん」(あっせん・・・ある物や人を求める人に紹介すること) 戦後、「臨時物資需要調整法」により、物資の指定統制が行われていた。文部省の施設部が教育関係の必要物資についてその確保を援助する任務を担っていたので、この規定が実益あるものであったが、既にその法が失効しているので、指定配給物資・・・ゴム靴、地下足袋、炭等 文部省のあっせん物資・・・クレヨン、消しゴム、鉛筆 現在、実体のないものとなっている(削除すればよいのだ)が、その後の解釈として、1952~56年文部省で教育映画を製作・各都道府県へ配布、1957年以降青少年活動事業として、(製作は中止したが)無償配布するような事業を行っており、映写機の貸与等も行っていたこともあり、そういった教材配布等もここに含められると解される。
国の教育行政の在り方 中央教育審議会 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(答申)」 2012/9/7 中央教育審議会 「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について(答申)」 国の教育行政の在り方 生涯学習振興行政・社会教育行政における国の役割 ・基本的な方針等の策定 ・取組に係る情報収集及びその提供 ・様々な生涯学習及び社会教育のための機会の整備充実 ・制度の改善 ○実際のところ、現在、社会教育における国の役割は予算の範囲内で財政的援助を行うといっても、第4条だけですと若干わかりにくいかもしれません。昔から残している規定ですが、現在は地方分権という流れがあり、地方でできることは地方でという考え方がある。国の在り方については、財政支援というよりもスライドのようなことが指摘されてきている。 昔は社会教育施設を整備する補助金や活動支援の補助金を国から交付していたが、施設の整備がある程度進んだことや地方分権の流れから、全国全ての図書館を対象にした補助金をばらまき的に交付するということはまずなく、こうした国の役割を踏まえた財政的援助、例えば他の図書館の参考となるような先導的な取組を実証的に行う図書館を支援する事業を行い、その成果を普及するという形で地方自治体等の取組を支援する形となっている。 (指摘事項) 「全国的な観点から今後の方策について基本的な方針等を策定」 「各地方公共団体における取組に係る情報収集及びその提供」 「様々な生涯学習及び社会教育のための機会の整備充実」 「これらを推進するための制度の改善等を図ること」等 生涯学習振興行政・社会教育行政における国の役割は、各地方公共団体における多様な実情を可能な限り踏まえつつ、全国的な観点から今後の方策について基本的な方針等を策定し、地方公共団体における施策の参考となるよう努めること、各地方公共団体における取組に係る情報収集及びその提供、様々な生涯学習及び社会教育のための機会の整備充実やこれらを推進するための制度の改善等を図ること等が考えられる。
(参考)生涯学習・社会教育行政における国の主な役割 (中教審答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」などより) 2012/9/7 (参考)生涯学習・社会教育行政における国の主な役割 (中教審答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」などより) 1.全国的な観点から今後の方策について基本的な方針等の 策定、制度改正 2.基本的なデータの収集、指標の開発 3.地方自治体等における取組の参考となる情報の収集や その提供 4.現代的課題への対応としての先導的な取組みへの支援、 ネットワーキング 5.ナショナルセンターの運営(放送大学、国立科学博物館、 国立女性教育会館 等) 6.学習の質の保障・学習の成果の評価とその場の提供 文部科学省HP(中央教育審議会生涯学習分科会(第60回)配布資料3-2) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/attach/1314917.htm
市町村(特別区)の教育委員会の事務(第5条) 2012/9/7 市町村(特別区)の教育委員会の事務(第5条) 第五条 市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会は、 社会教育に関し、当該地方の必要に応じ、予算の範囲内に おいて、次の事務を行う。 「予算の範囲内において」 ・・・「社会教育施設は義務設置ではないため、財政上の関係から 設置しえない市町村もあるので、これらの事業を財政面から義務づけたのではないという念のための規定。」 (宮地) 「予算がなければ列挙された事務は全部どれもしなくともよい として全くの任意事務のごとく解するのは法の趣旨ではない」 ○第5条 ○この条文では、市町村の教育委員会の行うべき社会教育の仕事を列記しています。法律にありますように、社会教育委員に関すること、社会教育施設に関すること、各種の社会教育の事業に関すること、必要な設備、器材、資料の提供や、情報の交換、調査研究に関すること等で広範にわたっています。 「「予算の範囲内において」 ・・・「社会教育施設は義務設置ではないため、財政上の関係から設置しえない市町村もあるので、これらの事業を財政面から義務づけたのではないという念のための規定。」 (宮地) 「予算がなければ列挙された事務は全部どれもしなくともよいとして全くの任意事務のごとく解するのは法の趣旨ではない」
2012/9/7 (主な内容) ・ 社会教育に必要な援助 ・ 公民館、図書館、博物館、青年の家等の社会 教育施設の設置及び管理 ・ 講座の開設及び討論会、講習会、講演会、展示 会等の集会の開催、奨励 ・ 青少年に対する体験活動の機会提供、奨励 ・ 社会教育に関する情報の収集・整理・提供 ・ 視聴覚教育、体育等に必要な設備、器材、資料の 提供 ○主なものは(全てでは無いので注意) ちなみに、公民館の設置及び管理に関することは、市町村教育委員会のみ。第二十一条 で公民館は、市町村が設置する。市町村が設置するとなっているので。
2012/9/7 ・ 情報化の進展に対応して情報収集・利用を円滑・適正に行うために必要な知識又は技能に関する学習機会を提供するための講座の開設等、奨励 ・ 家庭教育に関する学習機会を提供するための講座の開設、情報提供 ・ 児童生徒を対象に授業終了後、休業日に学校、社会教育施設その他適切な施設を利用して行う学習その他の活動機会の提供、奨励 ・ 社会教育での学習の成果を生かして学校や社会教育施設等で行う教育活動等の機会の提供 ⑧情報化の進展に関すること ⑨家庭教育に関する情報の提供、 ⑩児童生徒を対象に学校で放課後に行う学習機会の提供、 ⑪社会教育での学習の成果を生かして学校や社会教育施設等で行う教育活動等の機会の提供 などが主な事務の内容です。 この最後のスライドの赤字の事務は、平成20年の改正で追加されたことです。 ・一つ目の情報化の進展に対応して、情報通信技術のみではなく、情報及び情報伝達手段を主体的に選択し、活用していくための基礎的な能力や態度等、情報活用能力やモラルを身に付けること、有害情報対策が必要となっているので、地域におけるこれらの学習機会の提供に関する事務を追記した。 ・三つ目は、子どもを巻き込む犯罪や事件が続発する中で、児童生徒が放課後や休業日に、学習等を行うための安全な居場所の確保が必要であることから、学校や社会教育施設等を利用して学習その他の活動提供の事務について規定したもの。学習には、予習、復習、補習、その他の活動は、スポーツや文化芸術活動、大人や異年齢の子どもとの交流活動などある。実際に、国で推進している事業が あり、「放課後子ども教室」事業として、学校等で放課後や休日にこうした活動を地域のボランティアが主体となって提供する事業が全国で展開されている。次週詳しく説明する。 前のスライドやこのスライドで、情報提供の事務が加えられているのは、教育基本法の改正で、第12条の社会教育振興の手段に情報の提供が加えられたことを受けています。 ・四つ目の学習の成果を生かして行う教育活動も、個人が社会教育における学習機会を通じて得た知識や技能等を指すものであるが、これを生かして学校における教育活動等を支援するような事業が想定される。これについて、少し補足します。
・第5条各号(公民館の設置管理除く)の事務 ・公民館及び図書館の設置及び管理に関し、必要な指導及び調査 2012/9/7 都道府県の教育委員会の事務(第6条) ・第5条各号(公民館の設置管理除く)の事務 ・公民館及び図書館の設置及び管理に関し、必要な指導及び調査 ・社会教育を行う者の研修に必要な施設の管理・ 運営、講習会の開催、資料配布等 ・市町村との連絡 等 その他 ・自ら広域的な社会教育施設を設置運営すること (県立図書館など) ・広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの、 規模等において市町村が処理すると適さないもの 等 ○第6条は、都道府県教育委員会の事務について規定しています。 スライドにあるようなことですが、この他にも県立図書館などの設置運営があげられます。また、第6条第5項にその他法令によりその職務権限に属する事項とあるのは、地方自治法第2条で広域にわたるものといった規定に該当することを指しています。公民館は市町村が設置すると定められているのでのぞかれている。
2012/9/7 社会教育行政における都道府県の役割 (参考)生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」(平成10年) 1)都道府県は、市町村事業との重複を避けつつ市町村の社会教育行政の基盤となる中核施設の運営、指導者の養成研修、学習情報の提供、都道府県レベルの社会教育計画の策定、モデル事業の実施を行うこと。 2)広域連携のコーディネイト機能を充実し、各市町村の連携を促進するとともに、市町村と連携して、広域的な学習サービスの提供のための体制を整備すること ○平成10年に出された生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」では、社会が大きく変化し、多様な学習ニーズが生じていることや生活圏域が広域化している実態などを踏まえて、都道府県の社会教育行政について次のように提言をしています。 1)都道府県は、市町村事業との重複を避けつつ市町村の社会教育行政の基盤となる中核施設の運営、指導者の養成研修、学習情報の提供、都道府県レベルの社会教育計画の策定、モデル事業の実施を行うこと。 2)広域連携のコーディネイト機能を充実し、各市町村の連携を促進するとともに、市町村と連携して、広域的な学習サービスの提供のための体制を整備すること 3)~次ページ
3)住民の活動範囲の広域化や、学習の内容・レベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等を行うこと 2012/9/7 3)住民の活動範囲の広域化や、学習の内容・レベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等を行うこと 3)住民の活動範囲の広域化や、学習の内容・レベルに対するニーズの多様化に対応し、広域的な学習情報の提供等を行うこと ちなみに、当時のこの答申では、社会教育行政は、生涯学習振興行政の中核として学校教育や首長部局と連携してネットワーク型の仕組みを構築する必要があること、また、生涯学習施設間や広域市町村間の連携に努めることといったことが提言されています。ネットワークを構築するためには、国、地方公共団体、大学・研究機関、民間団体等に存在する人・もの・情報等に関する学習資源を調査、収集し、その学習資源を有効に活用できるようにすることが必要である。このため、国は、学習資源の開発を効率的に進めるため、地方公共団体間のネットワーク化を促進し、また、地方公共団体は、人々に直接学習資源を提供するだけではなく、ネットワーク参加機関、施設、団体等がそれぞれ役割を果たせるような環境を整備していくことが求められる、としている。このネットワーク行政の考え方は、平成20年の答申や昨今の分科会の議論にも受け継がれている。都道府県あるいは市町村の役割として、とらえる必要があることがらといえます。 (参考)ネットワーク行政の必要性 社会教育行政は生涯学習振興行政の中核として、学校教育や首長部局と連携して推進する必要がある。また、生涯学習施設間や広域市町村間の連携等にも努めなければならない。
第九条 図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする。 2012/9/7 (図書館及び博物館) 第九条 図書館及び博物館は、社会教育のための機関とする。 図書館及び博物館に関し必要な事項は、別に法律をもって定める。 ⇒ 図書館法、博物館とも、第一条に「社会教育の 精神に基づき」と規定。 ○第9条では、図書館及び博物館が社会教育施設であることを規定しています。 ○図書館法は昭和25年、博物館法は昭和26年にそれぞれ制定されました。 ○両方とも、それぞれ第1条に「社会教育法の精神に基づき」と規定され、3つの法律が一つの精神によって貫かれていることを求めています。
2012/9/7 2.社会教育法の構成 (再掲) 第一章 総則 第二章 社会教育主事及び社会教育主事補 第三章 社会教育関係団体 第四章 社会教育委員 第五章 公民館 第六章 学校施設の利用 第七章 通信教育 社会教育法については、以上簡単に説明しましたが、第二章以降、社会教育主事、社会教育関係団体、社会教育委員、公民館とそれぞれ規定されています。講義で逐条解説はしませんが、来週、社会教育施設・職員の現状ということで、公民館や博物館がどんな活動をしているのか、社会教育主事とはなど、説明していきたいと思います。
2018/11/7 参考 ○社会教育法等の改正関連資料(概要、法律、新旧対照表 他) http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/kakutei/08040703/shakai.htm ○生涯学習分科会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」(平成10年)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_gakushu_index/toushin/1315178.htm ○井内慶次郎、山本恒夫、浅井経子 『社会教育法解説』財団法人全日本社会教育連合会(2008年) ○宮地茂 『改正社会教育法解説』全日本社会教育連合会(1959年) みやじしげる 社会教育法 昭和34年改正法時の社会教育課長 井内慶次郎 文部省元事務次官、日本視聴覚教育協会会長
2012/9/7 (意見交換) 今後の生涯学習・社会教育 「図書館による地域の課題解決支援の在り方」 「個人の要望」と「社会の要請」 に応える社会教育を担う図書館として, 皆さんの図書館では,地域をどうとらえ, どのような手法で課題解決支援を行っていますか? ①実践事例 ②疑問、必要な視点や課題 等 では、本日の講義は以上です。