物理化学III F 原道寛.

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今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
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物理化学III F 原道寛

10章 酸と塩基 10-1 酸と塩基 10-2 酸、塩基、塩の水溶液pH 10-3 酸ー塩基滴定 10-4 緩衝液 10章 酸と塩基 10-1 酸と塩基 10-1-1 酸と塩基の定義 10-1-2 酸および塩基の強さと解離定数 10-2 酸、塩基、塩の水溶液pH 10-2-1 水のイオン積と水溶液のpH 10-2-2 強酸、強塩基の水溶液のpH 10-2-3 弱酸、弱塩基の水溶液のpH 10-2-4 塩の水溶液のpH 10-3 酸ー塩基滴定  10-3-1 強酸と強塩基の滴定 10-3-2 弱酸と弱塩基の滴定 10-4 緩衝液

酸性雨・酸性食品・アルカリ性食品など,酸性,アルカリ性(塩基性)という言葉は私たちになじみ深い。 10章 酸と塩基 酸性雨・酸性食品・アルカリ性食品など,酸性,アルカリ性(塩基性)という言葉は私たちになじみ深い。 この章では酸・塩基の種類や性質について学ぼう。

10章 酸と塩基 10-1 酸と塩基 10-2 酸、塩基、塩の水溶液pH 10-3 酸ー塩基滴定 10-4 緩衝液 10章 酸と塩基 10-1 酸と塩基 10-1-1 酸と塩基の定義 10-1-2 酸および塩基の強さと解離定数 10-2 酸、塩基、塩の水溶液pH 10-2-1 水のイオン積と水溶液のpH 10-2-2 強酸、強塩基の水溶液のpH 10-2-3 弱酸、弱塩基の水溶液のpH 10-2-4 塩の水溶液のpH 10-3 酸ー塩基滴定  10-3-1 強酸と強塩基の滴定 10-3-2 弱酸と弱塩基の滴定 10-4 緩衝液

10-1 酸と塩基 酸性 アルカリ性(塩基性) まず,酸・塩基を科学的な言葉で記述することから始めよう。 10-1 酸と塩基 酸性 食酢やレモンの果汁を口にふくむと    味 青色リトマス紙につけると . 食酢には . レモン: が含まれる アルカリ性(塩基性) 赤色リトマス紙を 性質 . の水溶液 まず,酸・塩基を科学的な言葉で記述することから始めよう。 A B C D E F G

アレニウスの定義 10-1-1 酸と塩基の定義 A

アレニウスの定義 (10-1) (10-2) (10-3) 10-1-1 酸と塩基の定義ーアレニウスの定義ー 10-1-1 酸と塩基の定義ーアレニウスの定義ー アレニウスの定義 塩化水素は水溶液中で(10-1)式のように を生じるので酸。 H+は,水中で、 として存在できず, さらに水と配位結合して H3O+ (oxoniumu ion: ヒドロニウムイオンは古い名称)                     (10-1)                     (10-2) (10-1)と(10-2)を併せて                     (10-3) A B C D E F

水酸化ナトリウム 水に溶けるとOH を生じるので 。 アンモニアNH3は分子内に を持っていない 10-1-1 酸と塩基の定義ーアレニウスの定義ー 水酸化ナトリウム 水に溶けるとOH を生じるので 。 アンモニアNH3は分子内に を持っていない しかし、水に溶けると一部が水と反応して を生じるため . A B C D E F

10-1-1 酸と塩基の定義 ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー 10-1-1 酸と塩基の定義 ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー 1923年BrønstedとLowry それぞれ独立に,酸と塩基の新しい定義を発表 彼らは だけに注目 例:酢酸 水溶液中で解離し水にH+を与え と になる。 ⇒H+を与えるCH3COOHは であり,H+を受けとるH2Oは 。 A B C D E F

10-1-1 酸と塩基の定義ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー 10-1-1 酸と塩基の定義ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー                     (10-4) (10-4)式で右から左への逆反応では, H3O+はCH3COO ーにH+を , CH3COOー は と考える。 そこで, H3O+はもとの . CH3COOーはもとの . C D A B E F G H I J

10-1-1 酸と塩基の定義ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー 10-1-1 酸と塩基の定義ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー アンモニア 水溶液中で になる。 ここでアンモニアは水からH+を受け取っているので , 水はH+を与えているので . NH4十;                        (10-5) したがって, の定義によれば, H2Oは相手により あるいは となる。 A B C A E D F G H

10-1-1 酸と塩基の定義ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー 10-1-1 酸と塩基の定義ーブレンステッドーローリーの定義と共役酸・共役塩基ー ブレンステッドーローリーの定義は 水溶液以外の系にも適用。 塩化水素とアンモニアの気体が反応 白色の が生成。 この反応では,HCIがNH3にH+を与えているので,HCIは NH3はHCIからの を受けとっているので   . A B C D E F G

10-1-1 酸と塩基の定義ールイスの定義ー 1923年Lewisは NH3 H+の移動ではなく, と定義 10-1-1 酸と塩基の定義ールイスの定義ー 1923年Lewisは H+の移動ではなく,                      と定義 NH3 アレニウスの定義,ブレンステッド・ローリーの定義により  と分類 ルイスの定義;N原子がその                 と分類 A B C D E

10-1-1 酸と塩基の定義ールイスの定義ー ルイスの定義 次のようなH+が関与しない物質にも拡張可能。 BF3は                    ,                     。 A B C

ルイス塩基 ルイス酸 10-1-1 酸と塩基の定義ールイスの定義ー 非共有電子対を持つ分子や イオン( など)であり, 10-1-1 酸と塩基の定義ールイスの定義ー ルイス塩基 非共有電子対を持つ分子や イオン(             など)であり, ルイス酸 電子不足の化学種(          )である。 A B C D E F G H

A

10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 酸や塩基の強さとは HAの解離 (10-7) 化学平衡の法則 (10-8) 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 酸や塩基の強さとは 酸HAを水に溶かした場合を考えてみよう。 HAの解離                     (10-7) 化学平衡の法則 過程の平衡定数Keqはそれぞれの化学種のモル濃度(mol dm-3)を用いて                         (10-8) A B

10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 溶媒である H2O (10-9) Ka; . . Kaの値;一般に小さいので対数で表す。 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 溶媒である H2O 溶質HAに比べて     するので, H2Oの一部がオキソニウムイオンに変化しても濃度変化はほとんどなく .                         (10-9) Ka; . . Kaの値;一般に小さいので対数で表す。 pKa = (10-10) A B C D E F G

酢酸が水溶液中でわずかしかH2Oに を与えていない 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 25℃での塩酸と酢酸のKaの値は, それぞれ と であり, 酢酸のKaは塩酸にくらべて極めて 。 すなわち,(10-9)式の分子の値が 分母の値にくらべ極めて 。 酢酸が水溶液中でわずかしかH2Oに を与えていない (10-7)式の平衡はほとんど に偏っていることを意味 このようにKaが小さい(pKaが大きい)酸を 。 表10・1にいくつかの弱酸の の値を示した。 A B C D E F G H

10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数

塩酸や硫酸では(10-7)式の平衡は 例: などがある。 ほどんど に偏っている。 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 塩酸や硫酸では(10-7)式の平衡は ほどんど に偏っている。 ⇒HClを水に溶かすと水に を与え、 ほぼ完全に になっている。 =水溶液中で を 例: などがある。 強酸のKaは大きく は小さな値を持つ。 A B C D E F G H I J K

10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 アンモ二アやアミン これら塩基の強さも酸と同様に(10-13)式を導ける。 水溶液中で を示す。 A 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 アンモ二アやアミン 水溶液中で を示す。 これら塩基の強さも酸と同様に(10-13)式を導ける。 A B C D E

10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 (10-14) Kb: Kbの大きな塩基ほど、=pKbが小さいほど 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数                     (10-14) Kb: Kbの大きな塩基ほど、=pKbが小さいほど  を受け入れやすい。 平衡は に片寄っており   は強い。 大きなpKbを持つほど   が弱い(表10・2) A A A A A A A

10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数

酸の強さと共役塩基の塩基性の強さとの関係は? 10-1-2 酸と塩基の強さと解離定数 酸の強さと共役塩基の塩基性の強さとの関係は? HCIはH+を水に与えやすく  。 Clー はH3O+ からH+をうばってHCIになりにくいので 極めて弱い   酢酸 水にH+を与えにくく    CH3COOー は水から        ,=Clー より    。 つまり, 強酸の共役塩基は   であり, 弱酸の共役塩基は   である。 A B C D E F G

A

H2SO4、H3PO4, Ca(OH)2のように2個以上のH+やOHー 10-1-3 酸と塩基の価数 HCIやNaOHのように, 解離してH+やOHーとなる1個の水素原子 OHーを持つもの=          。 H2SO4、H3PO4, Ca(OH)2のように2個以上のH+やOHー 放出する酸・塩基を       (表10・3)。 多価の酸や塩基は何段にもわたって解離 第1段階の    がもっとも大きい。 リン酸の場合を次のスライドに…。 A A A

10-1-3 酸と塩基の価数 A B C