『チームゲームとしての ハンドボール競技のコーチングについて』 『チームゲームとしての ハンドボール競技のコーチングについて』 日本女子体育大学 亀井良和
今日のキーワード 「ハンドボール競技」 ハンドボール=スポーツの中の一つ 「コーチング」 “スポーツ”が何かについて考える必要が・・・ 「ハンドボール競技」 ハンドボール=スポーツの中の一つ “スポーツ”が何かについて考える必要が・・・ 「コーチング」 →コーチをすること コーチングする人=コーチ コーチと指導者は同じ?? 行くべき方向を指し示し導く者 コーチは??
本日のメニュー 「スポーツ」とは? 「コーチ」とは? 「よいコーチ」とは? 「ハンドボールのコーチング」について まとめ
「スポーツ」とは? ユネスコの「スポーツ宣言」 ⇨「(スポーツを)プレイの特性を持ち,自分自身や 他人との競争,あるいは自然への挑戦を含むあら ゆる身体活動」と定義 現代のスポーツ =プロスポーツ,競技スポーツ,レクリエーション, ニュースポーツなど多様化 すべての根底には 「スポーツとは本来,人々の楽しみのために生まれ た文化である」という共通の考え方が…
スポーツの位置づけ 日常生活・社会 日常の時空間 家族・家事・仕事・友達・学校・勉強 非日常(架空) スポーツ空間 練習とゲーム
非日常においてスポーツができる ということの意味 体力/気力・健康 ⇦ 自分 施設 ⇦ 環境 活動を支える人々 ⇦ 自分以外の人 「日常」にこれらのことが満たされているから スポーツができる!
スポーツの位置が分かっていないと・・・ レオナルド ブラジル代表 1994年W杯優勝/94-96年アントラーズ →日常と同一視 レオナルド ブラジル代表 1994年W杯優勝/94-96年アントラーズ 「日本人の選手は一般に何かミスをすると、まるでそれが世界の終わりであるかのように振る舞うことがある」 →日常と同一視 →勝たなければ意味がない →勝たせた指導者は何をやってもよい 上手い選手は多少横暴であってもいい
「コーチ」とは 「コーチ(Coach)」の語源 「コーチェ(Kocs) 」 その後,この言葉がフランスに渡って「Coche」 最終的に,英国に転じて「Coach」に 当初は,英国でも四輪馬車だけをコーチと呼んでいた ⇨のちに,「家庭教師」「大学教師」も
「コーチ」とは すなわち… 四輪馬車,家庭教師,大学教師 =その共通点は「目的を持った人」を運ぶ(導く)こと 現在でも,英国などでは,長距離バスや観光バス, 列車の客車などを「コーチ」と呼んでいる. ⇨客は自らの行き先(目的)に応じたコーチを選んで 乗車し,コーチは目的地に向かって客を運ぶ
自分はどんなコーチ?
指導目的の設定 自分が重要視しているところは? レクリエーションと競技スポーツの違い 競技スポーツ 楽しむこと 学ぶこと 勝つこと 成績 自分が重要視しているところは? 楽しむこと 学ぶこと すべての人が参加できること 勝つこと 成績 選ばれた人のみ参加できること レクリエーションスポーツ 競技スポーツ レクリエーションと競技スポーツの違い
指導者の目的とスポーツの目的は合っているか? A 不満 B 一致 C D 衝突 レクリエーション的 競技的 レクリエーション的 競技的 指導者の目的とスポーツの目的は合っているか?
「よいコーチ」とは と示すのは不可能! しかし 優れたコーチといわれている人には,5つの 顔があるという・・・ スポーツの多様化により「コーチ」も多様化 ⇨「よいコーチとは○○なコーチである」 と示すのは不可能! しかし 優れたコーチといわれている人には,5つの 顔があるという・・・
コーチが持つべき5つの顔 教育者の顔 教えること,育むこと,そして自立を助けて見守る 科学者の顔 教えること,育むこと,そして自立を助けて見守る 科学者の顔 医・科学サポートの重要さを認識し,その知見をコーチ ングに反映させる 易者の顔 プレーヤーの資質や特徴を的確に把握し,将来を見通し たコーチングを行う 医者の顔 ケガや病気をさせない医学的知識に基づいたコーチング を行う 役者の顔 自分の状況に関係なく,時に明るく,時に冷静に振る舞 うことができる
コーチのタイプ 「専制型コーチ」 選手を支配し、管理し、全ての決断を下す独裁者のようである。 「放任型コーチ」 選手を支配し、管理し、全ての決断を下す独裁者のようである。 「放任型コーチ」 無能なコーチ。こうしたコーチは不十分なトレーニ ングしか受けていない。 もしくはコーチとしての責務を果たせ ないかのどちらかである。 「能力引き出し型」 民主的な、あるいは能力を引き出すコーチは、自分自身および 選手達が好きであり、尊重している。
コーチのタイプ よく言われるのが… 「専制型コーチ」 =スパルタ指導・独裁者 「放任型コーチ」 =無能なコーチ 「能力引き出し型」=優れた指導者 本当にそうなのか? 選手にもいろいろなレベルがいるはず・・・ 現実はそんなに甘くはない!! それができたら苦労はしない・・・ etc. それぞれのタイプに一長一短があるはず!!
3つのタイプの使い分け 「専制型」が必要な場面は・・・ 1.強く言い伝えやらせる。 2.適当、低調なパフォーマンスに対して叱る。 「専制型」が必要な場面は・・・ 1.強く言い伝えやらせる。 2.適当、低調なパフォーマンスに対して叱る。 ※決して一方的や、自分の気分で選手の人格を無視、 否定、罵倒することではなく、愛情を持って叱り、 成長の後押しをする。
3つのタイプの使い分け 「放任型」が必要な場面は・・・ 1.毎回与えていては成長しないから、どう対応するか 見届ける。 「放任型」が必要な場面は・・・ 1.毎回与えていては成長しないから、どう対応するか 見届ける。 2.出来ないから、やらないからと言って毎回手を貸さ ない、注意をしない。 ※興味がなく放置するのではない。選手を見届ける、様子 を見る観察し情報を得ること。
3つのタイプの使い分け 「能力引き出し型」が必要な場面は・・・ 1.協力者として話し合う。 「能力引き出し型」が必要な場面は・・・ 1.協力者として話し合う。 2.客観的なアドバイスを伝え、どうしていくか選 択肢を提供し、目標設定の手助けをする。 ※いつも気にかけ見ている、手助けをするということ。 協力者であり一方的ではない。
5つの顔を持っていて, 3つのタイプを使い分けながら導いてあげる ことができるコーチ 「よいコーチ」とは ☟ 選手が目的とする場所に… 5つの顔を持っていて, 3つのタイプを使い分けながら導いてあげる ことができるコーチ
ハンドボールのコーチング ゴール型競技の特徴 1.敵味方が入り乱れる 2.状況の変化が激しい 3.似たような場面はあるが,全く同じことは二度 と起こらない 4.プレーヤーの経験値や能力によって様々なゲー ム様相(密集型,飛び出し型,半ゾーン型,ゾー ン型,システム・フォーメーション型)が現れる
ハンドボールのコーチングとは コーチング内容 1.技術の習得に関するコーチング 2.戦術(状況判断)の習得に関するコーチング 3.体力の向上に関するコーチング 4.ゲーム運びに関するコーチング 5.チームワークやメンタリティに関するコーチング
ハンドボールのコーチング 技術の習得に関するコーチング ①競技レベルに応じた習得すべき技術の選択 今,何を身につけておくべきか? 今,何を身につけておくべきか? ⇨チームがどのようなゲームをするのかに応じて身 につけておくべき技術を考える ②技術の成り立ちに関する知識(動きの構造的な理解) 動きのコツやつまずきの原因を的確にアドバイスで きる能力を身につける ⇨選手の感覚に響く言葉を探す能力
ハンドボールのコーチング 戦術(状況判断)の習得に関するコーチング ①基本戦術の整理と選択 そのときの状況においてとるべき,幾通りもある行動 の大まかなルールを決める ②ゲーム局面ごとの戦術構想を明確にする(ゲームの構 造的な理解) <ゲーム局面の例> セットディフェンス ⇨ 速攻 ⇨ セットオフェンス ⇨ バックチェック
ハンドボールのコーチング 体力の向上に関するコーチング ①ハンドボール競技に必要な体力要素の把握 ⇨ゲーム構想に合わせた体力の把握 ⇨ゲーム構想に合わせた体力の把握 ②試合期を見据えたトレーニング計画の立案 ③体力の評価と計画の修正
ハンドボールのコーチング ゲーム運びに関するコーチング ①ゲームプランに合ったプレーの選択 例)ゲーム序盤のプレーとゲーム終盤のプレーの違い 例)ゲーム序盤のプレーとゲーム終盤のプレーの違い ②ゲーム中の対処の仕方 ゲームの流れをつかませるコーチング ⇨連続失点中のプレーや連続得点中のプレー
ハンドボールのコーチング チームワークやメンタリティに関するコーチング ①モチベーションを上げるコーチング ②意志を強めるコーチング⇨気合いと根性!! ③人間関係構築のサポート ④目的をレベルアップさせるコーチング 選手が目指している場所に導く=コーチ 一方で… 選手が目指す場所を変えてあげるのもコーチの役目!
まとめ① 1.スポーツとは 「日常生活」を土台とした「非日常」の中で,勝敗を楽しむもの. 「日常生活」を土台とした「非日常」の中で,勝敗を楽しむもの. ⇨スポーツの位置づけが逆転してしまうと様々な悲劇につながるかも…
まとめ② 1.コーチとは 選手が目的としている場所まで導いてあげる人 2.よいコーチとは 5つの顔(教育者,科学者,易者,医者,役者) 選手が目的としている場所まで導いてあげる人 2.よいコーチとは 5つの顔(教育者,科学者,易者,医者,役者) を持ち 3つのタイプ(専制型・放任型・能力引き出し型) を使い分ける
まとめ③ ハンドボールのコーチングとは 1.技術の習得に関するコーチング 2.戦術(状況判断)の習得に関するコーチング 3.体力の向上に関するコーチング 4.ゲーム運びに関するコーチング 5.チームワークやメンタリティに関するコーチング を選手の目的やレベルにあわせて,自分の個性(得意分野 やキャラクターなど)を活かしながら試行錯誤し続けるこ と!