生命・情報等教育研究支援室 ○ 河原井 勝一 保谷 博 大石 健一 X線顕微鏡の開発 生命・情報等教育研究支援室 ○ 河原井 勝一 保谷 博 大石 健一 こんにちは、生命・情報等研究支援室の河原井です。 長年に渡って機械工作ショップとして、物理工学系の各研究室に機械工作で研究支援してきました。 その一部として、青木研究室のX線顕微鏡の開発のために、スピンドル支持架台の設計製作をしました。 青木研究室から提供された資料を基に発表します。
X線顕微法の種類 投影拡大法 蜜着法 ゾーンプレート法 斜め入射ミラー法 多層膜ミラー法 走査法 X線は可視光に比べ波長が短く、電子線に比べ透過力が大きいという特徴を持ちます。 この特徴によって、元素固有の吸収端や蛍光X線を利用した特定元素の識別も行えます。 このように、X線は物体の原子レベルでの情報を得る重要な手段となっています。 X線顕微法の種類は、投影拡大法、密着法、ゾーンプレ-ト法、斜め入射ミラ-法、多層膜ミラ-法、走査法があります。 青木研究室では、斜め入射ミラ-法で開発しています。 斜め入射ミラ-法は、X線が鏡面にすれすれに入射する斜め入射領域では全反射が起こるこの特徴を利用した拡大斜め入射ミラ-を使用するものです。 分解能決定要因として鏡面形状の精度があります。
図 1 Woltor型斜め入射X線顕微鏡概念図 全反射を利用したX線顕微鏡の原理は1952年Wolterによって提案されました。 概念図を図1に示します。 入射および反射角は鏡面に対し1゜前後であるが、図では誇張して書いてあります。 反射鏡面は1つの焦点F1を共有する回転双曲面と回転楕円面からなり。 焦点F2を物点とし、ここを通るX線は2個の曲面で反射して焦点F3に結像する。 この2個の曲面の組み合わせでは、F2を通る光線は反射面を何処にとっても光路長が一定になる。 反射面を2回使うのは光軸から離れた物点の像のゆがみを少なくするためです。
金型母材とレプリカトロイダル鏡 これは、青木研究室で写させて頂いた物です。 金型母材とレプリカトロイダル鏡 これは、青木研究室で写させて頂いた物です。 曲尺の上に写ている物が、φ10のタングステンカ-ガイトを研磨加工した物で 研磨加工された母材はレプリカの金型として使われます。 上はパイレックスガラスを用いたレプリカです。 金型母材に真空圧着法で形成された物です。 左側の2つの曲面が先ほど話した斜め入射X線顕微鏡の反射面です。 斜め入射ミラ-法では、鏡面形状精度がパイレックスガラスで5.1nmnの面精度が要求されます。 このような、高精度な金型母材加工を行うにあたり。 理研製鋼株式会社製のNC旋盤UPL-120で研削加工を行うスピンドルを保持する架台の製作が必要になりました。
NC旋盤UPL-120 これが、NC旋盤UPL-120の写真です。 NC旋盤UPL-120 これが、NC旋盤UPL-120の写真です。 平らな面がテ-ブル面で、この面が前後左右に動いて加工物を切削または研削することにより、形状を決めます。 このテ-ブル面に、研削用の架台を設置しょうと思います。
NC旋盤UPL-120 テーブル面は、M6のネジが3cm間隔で10個そして10cmの間隔で平行にもう一列ネジが切ってあります。 NC旋盤UPL-120 テーブル面は、M6のネジが3cm間隔で10個そして10cmの間隔で平行にもう一列ネジが切ってあります。 このネジを使って架台を固定しょうと思います。
NC旋盤UPL-120 手前に有るのが、コントロ-ル部分です。 数値制御により、テ-ブル面を動かし加工物を予め決めた形状に加工します。
図 3 スピンドルNR-402E 次に、使用するスピンドルは「アストロ-E 400」超精密スピンドルNR-402Eで、拘束タイプアンギュラベアリングをフロント側に2個、リヤ側に2個組み合わせ、ラジアル方向、スラスト方向にも強い剛性が得られるように配慮した設計になってます。 小径エンドミル加工、小径ドリルでの穴あけ加工、スリ割り加工、面取り加工、研削加工などに使用できます。 図3にスピンドルNR-402Eの半断面図と軸付砥石装着した状況を示します。 表1に出てくる、オーバ-ハングはスピンドル本体と砥石との間で寸法線13で表した所です。
スピンドルの写真 これは、デジカメで撮りましたスピンドルの写真です。
表-1 オーバ-ハングと回転数の関係 オーバ-ハング(mm) 最高使用回転数(rpm) 20 N×0.5 25 N×0.3 50 N×0.1 表-1 オーバ-ハングと回転数の関係 オーバ-ハング(mm) 最高使用回転数(rpm) 20 N×0.5 25 N×0.3 50 N×0.1 次にスピンドル取り扱い上の注意として、オーバーハングと回転数の関係が有ります。 軸付砥石の最高(適正)使用回転数、周速度は、適正オーバーハング(チャックから切刃までの距離)が13mmの時です。オーバーハングと回転数の関係を表-1に示します。 表1からオーバ-ハング20の時最高使用回転数が13の時の5割、25の時3割、50の時1割での使用回転数になります。 フルで使用出来るよう以上の点からオーバーハングを13mmで設計する事としました。 ※Nは、オーバーハング13mmの時の最高使用回転数
図 3 スピンドルNR-402E スピンドルを機械に装着する場合、スピンドルには図3の様にベアリングが内部に入っているので、ホルダ-に取り付ける場合には、出来るだけベアリング部を避けて取り付けなければならない。 図のように、ベアリングを避けたホルダ-取り付け区間が望ましい。 図に有るようにホルダ-取り付け区間の寸法は54.2です。
図4 スピンドル取り付け時の注意 また、スピンドル取り付け時の注意として図4のAの様に直接ネジで止めると、スピンドルの外サヤが変形し回転不良や発熱の原因となり、極端に寿命を縮めますので、図4Bの取り付け方法で取り付けなければならない。取り付け時の注意いとしてBの方法でどうしても出来ない場合はCの方法で取り付けてるとありますが、推奨しているBの方法で設計します。 材料の選択としてNC旋盤で加工する際にスピンドルの位置が煽られたりして、ズレないよう剛性と重量が有り耐食性が有ることからステンレスのSUS304を選びました。
図5 スピンドル支持架台構想図 スピンドルの支持位置は、図5の様にNC旋盤のテ-ブルに対し垂直とし、スピンドルのチャックを下向きの方向で考えた。上向きセットの場合、NC旋盤のテ-ブルと回転軸の距離が150mmしかなくスピンドル自体の長さが約140mmも有りこれに、軸付砥石や減速器を取り付けるスペ-スが無く出来ない事がわかる。 以上の条件と図5スピンドル支持架台構想図を元にスピンドル取り付け部分の設計をした。
図6 スピンドル取り付け部分 図6にスピンドル取り付け部の設計図を示す。図4のBに準ずるよう設計した。 図6 スピンドル取り付け部分 図6にスピンドル取り付け部の設計図を示す。図4のBに準ずるよう設計した。 結果、2mmのスリ割を入れるため加工上右端が29mmとした。また、M6のボルトで締め付けた時スピンドルを固定し易い様にスピンドル固定部分の肉厚を7mm削り薄くした。 スピンドル取り付け区間が図3で最大54.2mmであるり、スリ割り径150mmで入れらられる厚みが43mmで有ることで43mmを決定した。また、砥石の厚みの補正を締め付け区間でする為にもスピンドル取り付け区間と締め付け区間の43mmとの差11.2mmは有効です。
次に、スピンドル取り付け部分のNC旋盤のテーブル面からの位置を決定します。 図3から砥石の大きさX 適正オーバーハング13mm スピンドルのチャック部分とベアリング部分の寸法は 17.4+19.5=36.9(mm)となります X+13+36.9=X+49.9(mm) (8) 図5からテ-ブル面からNC旋盤の回転センタ-までの距離は150mmです。(8)式と合わせると X+49.9+150=X+199.9(mm) (9) Xは10mmとします 209.9mmとなり高さは最低209.9mm必要になります。設計では210mmにしました。 図6からテーブル固定プレートの厚みを10mm、左右の支柱が200mmに決定しました。 この高さですと、加工物と砥石が接触する10mmの間ではスピンドル取り付け部分の範囲に収まります。
製作したスピンドル支持架台 これが、製作したスピンドル支持架台です。 製作したスピンドル支持架台 これが、製作したスピンドル支持架台です。 潤滑用のホ-ス等取り付けられていますが、図5スピンドル支持架台構想図と同じ向きの写真です。
製作したスピンドル支持架台 上から見た、写真です。
製作したスピンドル支持架台 裏から見た物です。
生命・情報等教育研究支援室 ○ 河原井 勝一 保谷 博 大石 健一 X線顕微鏡の開発 生命・情報等教育研究支援室 ○ 河原井 勝一 保谷 博 大石 健一 設計上の制約を踏まえて、機械工作上可能な物としてスピンドル支持架台を製作する事が出来ました。 我々の日常的な機械工作が、各研究室の研究に寄与している事がわかります。 この発表にあたり、資料提供や便宜をして頂いた物理工学系青木先生ならび渡辺先生そして青木研究室の院生の皆様に感謝します。