コミュニケーション ー患者・家族の意思決定を支えるためにー End-of-Life Nursing Education Consortium Japan クリティカルケアカリキュラム モジュール 6 コミュニケーション ー患者・家族の意思決定を支えるためにー
モジュールの概要 このモジュールでは、 ■クリティカルケア領域でのエンド・オブ・ ライフにある患者・家族の意思決定を支えるために、患者・家族と医療スタッフ、医療チーム内での良好なコミュニケーションが欠かせないことを理解する ■心理的危機の状態にある患者・家族とのコミュケーションが複雑であることを理解し、ケアについて考える
目標 1 2 3 4 5 クリティカルケア領域での エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション の重要性を理解できる エンド・オブ・ライフ・ケアにおいてコミュニケー ションに影響を及ぼす要因について説明できる エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できるコミュニ ケーション・スキルについて説明できる エンド・オブ・ライフでの意思決定における 看護師の役割について理解できる エンド・オブ・ライフ・ケアにおけるチームコミュニ ケーションの重要性とその方法を説明できる 1 2 3 4 5 3 3
講義内容 エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション Ⅰ. エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーション 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. 4 4
コミュニケーションとは 語源:communicare(ラテン語) 意味:共有する 言語・非言語による メッセージのやりとり 人 人 5 5
コミュニケーションの種類 ■言語的コミュニケーション ■非言語的コミュニケーション ●書き言葉 ●話し言葉 ●表情 身振り・タッチング 視線 ●表情 身振り・タッチング 視線 ●声の大きさ・調子 ●相手との対し方・距離の取り方・姿勢 ●服装・髪型 6 6
どのようなコミュニケーションが多く使われているか? 言葉 7% 表情 55% 声の調子 38% (Mehrabian A, 1981) ■何も話さなくても、多くを伝えている 非言語的なメッセージが重要 7 7
コミュニケーションに対する思い込み ■コミュニケーションは意識的なもの ■コミュニケーションは言語的なものが中心 ■言葉の意味は、発信者・受信者間で同じ ■コミュニケーションは一方向の活動 ■情報を多く与え過ぎることはない (ELNEC, 2007a) 8 8
患者のコミュニケーションのニーズ ■情報を得た上で選択すること ■情報を統合すること ■恐怖感を吐露し、恐れを言葉に表すこと ■コントロール感の維持 ■人生の意味についての話し合い ■希望を持ち続けること ■臨死期の疼痛や症状の管理について不安をなくすこと (ELNEC-CC, 2006a)
家族のニーズ 順位 家族のニーズ(n=45) 1 希望があると感じること 2 病院職員が患者を気にかけていると感じること 3 患者の近くに待合室があること 4 患者の状態の変化について家に電話してもらえること 5 予後を知ること 6 質問に率直に答えてもらうこと 7 患者の経過に関する事実を知ること 8 1日に1度は患者についての情報を受けること 9 理解できる言葉で説明してもらうこと 10 しばしば患者に面会できること ・・・ (Molter, 1979/常塚, 1984)
家族のニーズ調査からわかること ■コミュニケーションに関するニーズが半数以上 ■家族のコミュニケーションニーズ ●患者と一緒にいたい ●患者と一緒にいたい ●患者の状態の変化についての情報提供 ●意思決定のための情報提供 ●ICUなど病院内の環境についての説明 ●誰にどのような情報提供をしてもらえるのか ●患者のことを気にかけていること ●開かれた会話 ●傾聴(話を聴いてほしい、そして安らぎを得たい) など (Molter, 1979/常塚, 1984; ELNEC-CC, 2006a)より作成
クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフの状況 <患者の状況> ■来院時の状態や諸検査で予後不良と判断 ■回復を信じて集中治療を行う中でエンド・オブ・ライフと判断 ■増悪と緩解を繰り返しながらエンド・オブ・ライフに至る状況 ■意識障害や鎮静薬の投与下であるため意思表示できない ■呼吸困難などの苦痛症状で冷静に意思決定できない ■治療の継続や中止など、医学的検討の他に社会的・倫理的配慮が必要 先ほどまで全く健康と思われた人に事故や重病が突発し、極めて短い時間で死が切迫する <家族の状況> ■パニック状態に陥っていることが多い ■医師からの説明を十分理解できない ■家族全員で話し合う時間的猶予がない ■患者の意思を確認できない ■残された時間が短く、十分に予期悲嘆ができない (日本救急医学会, 2007)を参考に作成
医療スタッフに求められること ■患者と家族との関係を確認 ■患者や家族に付き添い、気持ちを聴くなどの情緒 的サポート ■理解できる言葉で説明 的サポート ■理解できる言葉で説明 ■悪い知らせは正確、かつ衝撃が少なく伝わるよう 説明 ■気持ちや考えを整理し、客観視できるよう支援 ■家族が代理意思決定できるよう、十分な情報提供、 共に考えるなどの支援 (ELNEC-CC, 2006a)を参考に作成 13 13
講義内容 エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーション 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 Ⅱ. 14 14
コミュニケーションに影響を及ぼす患者・家族の要因 ■生命の危機状態 ■心理的危機の状態 ■予期悲嘆の状況 ■複雑な病状 ■病状の理解や受けとめ方 ■年齢 ■患者と家族、患者以外の家族間の関係性 ■患者・家族が属する文化
コミュニケーションに影響を及ぼす 医療スタッフの要因 ■救命できなかったことへの罪悪感 ■コミュニケーションに関するトレーニングの 不足・自信のなさ ■死に対する恐れ ■患者・家族に感情を表出されることへの恐れ ■自分の感情が表出することへの恐れ ■患者・家族についての理解不足 ■個人的な悲しみの体験
講義内容 エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーション 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル Ⅲ. 17 17
エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる 基本的コミュニケーション・スキル ■傾聴 ■共感 ■沈黙 ■共にいること 18 18
傾聴 ■意識を集中し、‘耳’と‘心’を傾けて聴くこと hear(聞く)ではなく、listen(聴く) ■患者・家族に「この人とならば話を続けてみたい」と 思ってもらえるような態度・反応を示すことが大切 ●視線を合わせる ●うなずき、あいづち ●非審判的・許容的雰囲気 ●開かれた質問を用いる ●患者・家族が言いたいことを探索し、理解する ●患者・家族の言うことを自分の言葉で反復する (臼井, 1987) 19 19
共感 ■他人の意見や感情などにそのとおりだと感じる こと、またその気持ち ■患者・家族の気持ちに寄り添うことによって 患者・家族は癒される ■患者・家族の気持ちに寄り添うことによって 患者・家族は癒される ■「共感」≠「同調」 ■共感していることを患者・家族にしっかり示す ことが大切である (大辞泉 第2版) 20 20
共感していることの示し方 反映 正当化 個人的な 支援 協力関係 尊重 患者・家族から見てとった感覚あるいは感情を患者・家族に伝える 患者・家族の持っている感情面での体験を承認し、それが正当なものであることを伝える 正当化 援助したいということを患者・家族に明確に伝える 個人的な 支援 患者・家族と看護師間の平等関係と協力関係を示す 協力関係 患者・家族に敬意をはらっていることを言葉で示す 尊重 (池永, 2004) 21 21
沈黙 ■患者・家族が沈黙するのは・・・ ■看護師は、すぐに沈黙を破る必要はない 「患者・家族の言葉を黙って待つ」 ●非常に強い感情を抱き、それを言葉にできない時 ●気持ちや考えを整理している時 など ■看護師は、すぐに沈黙を破る必要はない 「患者・家族の言葉を黙って待つ」 ■沈黙が続くようであれば、しばらく待った上で タイミングを見計らい、言葉や沈黙の意味を 明確にする 22 22
共にいること ■人が全身全霊を傾けて、ある人のそばに立ち会い、人間相互の出会いを通じて他人の経験を受け入れるプロセス ■相手のことに(を)、 ●集中する ●傾聴する ●よく見る ●感じとる ことが必要 (Moch S & Schaefer C, 1992) 23 23
講義内容 エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーションの重要性 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア Ⅳ. 24 24
代理人として患者の権利を擁護し、納得した 意思決定が行われるよう支援していく必要がある クリティカルケア領域での意思決定の特徴 ■多くが患者不在の代理人による意思決定である ■意思決定までのプロセスに急を要する ■意思決定の問題が患者の生命に直結する ●すべてが不確かさと曖昧な状況の最中、混乱の ままに行われる ●代理人としての家族の心に様々な葛藤や後悔を 残す 代理人として患者の権利を擁護し、納得した 意思決定が行われるよう支援していく必要がある (伊勢田・井上, 2003)
(日本集中治療医学会・日本循環器学会・日本救急医学会, 2014) エンド・オブ・ライフと判断した後の対応 ■絶対的に予後不良であり、治療を続けても救命の 見込みが全くない状態であると医療チームが判断した場合は以下を家族へ説明する ●これ以上の措置は患者にとって最善の治療とはなら ないこと ●患者の尊厳を損なう可能性があること ■医療チームは以下のいずれかを判断し対応する ●患者に意思決定能力、あるいは事前指示がある ●患者の意思は確認できないが推定意思がある ●患者の意思や推定意思が確認できない (日本集中治療医学会・日本循環器学会・日本救急医学会, 2014)
(日本集中治療医学会・日本循環器学会・日本救急医学会, 2014) 患者の意思が確認できない場合の対応 ■家族と十分に話し合い、患者にとって最善の治療方針をとる ■家族に現状を説明し、意思決定支援を行う ■家族に総意としての意思を確認し対応する ➊ 積極的な対応を希望している場合 ●あらためて患者の状態を正確で平易な言葉で説明し 再確認する ➋ 延命措置の中止を希望する意思がある場合 ●延命措置を減量、または終了する ➌ 医療チームに判断を委ねる場合 ●患者にとって最善の対応を検討し、家族と合意形成を 図る (日本集中治療医学会・日本循環器学会・日本救急医学会, 2014)
延命措置についての選択肢 ■現在の治療を維持する ■現在の治療を減量する ■現在の治療を終了する ■上記のいずれかを条件付きで選択する など ■上記のいずれかを条件付きで選択する など ●人工呼吸器、ペースメーカー、人工心肺などを中止、 または取りはずす ●人工透析、血液浄化などを行わない ●人工呼吸器設定や昇圧薬投与量など、 呼吸管理・循環管理の方法を変更する ●水分や栄養の補給などを制限するか、中止する ●心肺停止時に胸骨圧迫を行わない (日本集中治療医学会・日本循環器学会・日本救急医学会, 2014) ■臓器・組織提供 28 28
看護師は、患者・家族が納得のいく意思決定ができるよう 共に考え、寄り添うコミュニケーションが求められる エンド・オブ・ライフ・ケアにおける 意思決定での看護師の役割 ■患者・家族の情報のニーズや気がかりを把握し、医師や他の医療スタッフに伝える「代弁者」としての役割 ■患者・家族に対し「情緒的サポート」を提供する役割 ■患者・家族に対する「情報提供者」としての役割 ■患者・家族の揺れ動く思いに添い続ける役割 ■最終的に患者・家族が決定したことを支持する役割 (梅澤, 2007)より一部抜粋 (射場, 2000) 看護師は、患者・家族が納得のいく意思決定ができるよう 共に考え、寄り添うコミュニケーションが求められる 29 29
エンド・オブ・ライフにある患者・家族の 意思決定を支えるために必要なこと ■真実が曖昧に伝えられていたり、伝えられていない情報があると、患者・家族は最善の決定ができない 真実の伝え方や伝える内容に配慮が必要 ■エンド・オブ・ライフにおいて患者・家族に伝えるべき真実や情報は、悪い知らせであることが多い 悪い知らせを伝える場合の準備や 伝え方などに配慮が必要 (近藤, 2008) 30 30
悪い知らせを伝える際のコミュニケーションの重要性 p<0.05 がんセンターの医師13名と その医師を受診した がん患者147名を対象に 行った質問紙調査 悪いコミュニケーション 患者の不安レベル 45 よいコミュニケーション 40 ※面接中の医師の行動を評価し、 平均値以上を「よい」、以下を 「悪い」とした 35 30 よい知らせ (n=72) 悪い知らせ (n=10) ■よい結果を伝えられる時、コミュニケーションの善し悪しは、患者の不安レベルに影響しない ■しかし、悪い結果を伝えられる時は、不安のレベルに影響を及ぼす (Takayama T et al., 2001) 31 31
悪い知らせを“伝えられる前”のケアの実際 医療チームで提供する情報の一貫性を図る 患者・家族の 病状認識を確認する 患者・家族の気がかりを確認する ●今の状況について、○○先生からはどのように お話を聞いていらっしゃいますか? ●病気について、どのようなことを心配されていますか? 患者・家族の 意向を確認する 場を調整する ●今後の生活で、何か希望されていることはありますか? ●時間の確保 ●部屋の確保 他の家族にも来てもらえるよう調整する ●大事なお話ですので、他のご家族にも同席して もらえるよう、連絡していただけますか? ●対象の状況に応じて場所を変える (梅澤, 2007; 能芝, 2012)を参考に作成 32 32
悪い知らせを“伝えられている時”のケアの実際 面談が中断されないための配慮 緊張した場を 和らげるようにする ●患者・家族から顔が見える場所に位置する ●うなずき ●アイコンタクト OFF 患者・家族の 理解度、聞きたい ことが聞けている かを確認する ●患者・家族の言葉に注意 ●表情・姿勢などの観察 必要時、患者・家族の意向を医師に代弁する ●面接前に、○○が気がかりとおっしゃっていましたよね。その点について聞いてみましょうか? 積極的に傾聴し、 患者・家族が話す時間を作る 患者の価値と治療に対する 望みを明らかにする (梅澤, 2007; 能芝, 2012)を参考に作成 33 33
悪い知らせを“伝えられた後”のケアの実際 理解度や認識の確認 ●追加のご質問はありませんか? ●お聞きになった話を一緒に振り返ってみましょう ●先生からの説明をどのように受け取られましたか? 情緒的サポート ●「○○先生からのお話はショックでしたね」 ●「今のお気持ちを詳しく教えていただけませんか?」 情報の補足や追加 多職種チーム間での情報交換 (梅澤, 2007)を参考に作成 34 34
講義内容 エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーション 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーション Ⅴ. 35 35
チームコミュニケーションの重要性 患者・家族 ■多職種チームアプローチが重要であるため ■多職種で互いに支え合うことが重要であるため 看護師 (Vachon MLS, 2004) 看護師 医師 薬剤師 宗教家 ソーシャル ワーカー 患者・家族 歯科 衛生士 心理士 臨床 工学士 栄養士 PT OT ST 36 36
チーム内での良好なコミュニケーションのために ■日常的なコミュニケーションを大事にする ■定期的・タイムリーにカンファレンスを開催する ■効果的なカンファレンスにする ■各職種がルールに 基づいて記録する など 37 37
チームメンバーの衝突を解決するために ■チームメンバー間で意見の不一致や衝突が起こることがある。それらに建設的に対処するために・・・ ●問題や事態から一歩離れて見る ●患者・家族の問題に焦点を当てる ●自分の感情をそのまま表出せず、気持ちを素直に 言葉として説明する ●何について衝突しているのかを明確にする ●チームメンバー全員が納得のいく結論を見い出せ るよう歩み寄る 38 38
アサーティブネスの活用 ■アサーティブネスとは: 自分の考え、欲求、気持ちなどを率直に、正直に、 その場の状況にあった適切な方法で述べること。 自分も相手も大切にする自己表現法である。 ●自分の意見を押し通すものではない ●互いに気持ちや考えを出し合い、譲ったり譲られたり しながら歩み寄る ●自分の意見を「私は・・・と思う」の形で表現する ●双方に納得のいく結論を出す (平木 他, 2002) 39 39
アサーティブネスの例 (看護師の対応) ■痛みを訴える患者への対応: 医師は「鎮痛薬を増やす予定はない」と話すが、看護師は 「鎮痛薬を増やす必要がある」とアセスメントしている場合 非主張的 攻撃的 アサーティブ 黙っている 先生は本当に 患者さんのことを わかっているんですか! 痛みで夜も眠ることができていません。どうしたらいいか困っています。鎮痛薬について考えていただけないでしょうか。 40 40
アサーティブなコミュニケーション法 ■DESC(デスク)法 ●D:Describe(描写する) ●E:Express(説明する) ●S:Specify(具体的に提案する) ●C:Choose(選択する) →Sの提案に対して相手がYesといった場合と Noといった場合の答えをあらかじめ準備して おき選択を促すこと 例) 患者さんは痛みで夜も眠ることができません(D) 私たちはどうしたらいいか困っています(E) 鎮痛薬について考えていただけないでしょうか(S)
講義内容 エンド・オブ・ライフにおけるコミュニケーション エンド・オブ・ライフ・ケアにおいて コミュニケーションに影響を及ぼす要因 エンド・オブ・ライフ・ケアで活用できる コミュニケーション・スキル エンド・オブ・ライフにおける意思決定とケア エンド・オブ・ライフ・ケアにおける チームコミュニケーション 結論 Ⅰ. Ⅱ. Ⅲ. Ⅳ. Ⅴ. Ⅵ. 結論 Ⅵ. 42 42
結論 ■エンド・オブ・ライフにある患者・家族は、さまざまな意思決定を求められる ■患者が意識障害や鎮静剤投与下にある場合は、家族が患者の代理意思決定者となる ■看護師は、患者の権利を尊重した意思決定を行う家族を支えられるようなコミュニケーションを求められる ■危機的な状況にある家族の心理を踏まえ、医療スタッフ、医療チーム内での良好なコミュニケーションが重要である 43 43
補足スライド これ以降のスライドは、必要に 応じて使用してください 44 44
危機の種類:発達的危機と状況的危機 ■発達的危機 ■状況的危機 ●エリクソンの発達理論に基づいている ●エリクソンの発達理論に基づいている ●人間の生涯の中で多くの人が直面し、それを乗り越えていくことで成長していく危機 ●成長のための痛み(growing pain)とも言われ、発達課題に象徴される ■状況的危機 ●人間の生涯の中で偶発的に、多くの場合予期せず発生する ●人の幸福感を脅かす出来事から展開される ●病気、事故、災害、地震、戦争、新しい環境への移動 など (藤野・荒川, 1988; 黒田, 1994)を参考に作成
(Caplan G, 1961/加藤・山本, 1968; Aguilera DC, 1994/小松・荒川, 1997)を参考に作成 状況的危機にある人の特徴 ■これまでに用いてきた対処機制では容易に解決できない問題に直面している ■緊張と不安が増大し、解決策が見いだせなくなっている ■適応に向けて段階を踏み、通常4~6週間で良くも悪くも1つの結末を迎える (Caplan G, 1961/加藤・山本, 1968; Aguilera DC, 1994/小松・荒川, 1997)を参考に作成
(Caplan G, 1964/新福 他, 1970; 小島, 1988)を参考に作成 状況的危機にある人が辿るプロセス ■危機の4段階 第1段階 緊張の最初の段階。習慣的な問題解決のパターンを用いて解決しようとする 第2段階 問題解決ができず次第に緊張が高まり、感情面の混乱が生じる 第3段階 緊張は非常に大きくなり、希望のない喪失を感じる 急性の抑うつ症を経験する 第4段階 危機の最終段階。感情的にも知的にも大きな破綻を経験したり、あるいは、緊張は減じるが将来の社会的機能を損なう病的パターンを用いることで危機を解決する (Caplan G, 1964/新福 他, 1970; 小島, 1988)を参考に作成
エンド・オブ・ライフにおいて意思決定に関与する人々 患者 家族 医療 チーム コミュニケーションが大切
エンド・オブ・ライフを判断する際の患者の状態 ■クリティカルケア領域におけるエンド・オブ・ライフは、突然発症した重篤な疾病や不慮の事故などに対して適切な医療の継続にも関わらず死が間近に迫っている状態で、以下のいずれかの状態を指す ➊不可逆的な全脳機能不全(脳死診断後や脳血流停止の確認後などを含む)であると十分な時間をかけて診断された場合 ➋生命が人工的な装置に依存し、生命維持に必須な複数の臓器が不可逆的機能不全となり、移植などの代替手段もない場合 ➌その時点で行われている治療に加えて、さらに行うべき治療方法がなく、現状の治療を継続しても近いうちに死亡することが予測される場合 ➍回復不可能な疾病の末期、例えば、悪性腫瘍の末期であることが積極的治療の開始後に判明した場合 (日本集中治療医学会・日本循環器学会・日本救急医学会, 2014) 49 49
悪い知らせを伝えられる際に多くの患者が 望むコミュニケーション がん患者529名を対象に行った質問紙調査 ●質問に対して返答がある ●わかりやすく伝達される ●今後の治療方針についても話がある ●病気の状態について説明がある ●最期まで診療にあたることを伝えられる ●正直に説明される ●要点が明確に話される ●希望が持てることについても伝えられる ●今後の日常生活、仕事についても話し合われる ●患者と同じように家族へも配慮がある (Fujimori M et al., 2007) 50 50